「軍曹さぁん(女性)」  
タママ二等兵(男性)は心の中で、憧れの人の背中に儚く呼びかける。飽くま  
でもしなやかに引き締まり、何度も頭の中でかき抱いた後姿を余すところなく  
視界に収め、唇だけをそっと動かす。我ながらなんて不甲斐ないんだろう。  
毎晩頭の中では肉欲の限りを尽くしているというのに、現実では指一本触れら  
れないなんて。  
「それでも僕は、軍曹さん(秋ママに並ぶナイスバディ★)のお役に立てるこ  
とが幸せですぅ」  
これも本音だ。敬にして愛すべき上官ケロロ軍曹。隊長の素質を持つ数少ない  
ケロン人の一人。歴戦の勇者。ポコペン侵略軍先攻部隊隊長。童顔タママの永  
遠の女神。しかし。  
「軍曹さん、辛いんですぅ? どうぞ、僕でよかったら存分に…」  
頭の中では淫らな女となった女神の口を犯し、手を汚し、胸を這い、熱い底な  
し沼はゆきゆきて底に至る。想像を絶する職務上のストレスを、ケロロ軍曹は  
こうやって癒すしかないのだ――という設定で、自分を供する淫夢を見る。  
それでやっと、朝に目を見て挨拶できるようになるのだ。階級の差よりも軍事  
行動という状況よりも、尊敬憧憬欲望が入り混じっている感情の渦と、告白し  
た先の不安が蓋をしていた。昔から気性の激しさ、独占欲の強さでよく問題を  
起こしてきたが、最近比較的落ち着いているのはこの理由からだった。  
 「おじさまったら、無理しちゃ不可ませんよ〜ってゆーか温故知新?」  
気になることは他にもある。苦々しげに女同士の楽しいお喋りが聞こえてくる  
方を見遣る。そこにはケロロ軍曹と、地球人の姿を借りたアンゴル族がいた。  
そもそも、どうした訳で見目麗しいケロロ軍曹(女性)を「おじさま(アンク  
ル)」と呼んで憚らないのか。正直気になるのだが、いつか聞いても笑って教  
えてくれなかった。その時いつか殺そうと誓った。とにかくあいつと軍曹さん  
の間の親密な空気が、嫌でたまらない。  
「何が『レディ・モア』ですかぁ〜」  
半ば八つ当たり気味に、言葉の端々を拾いたくもなるのだ。  
あの女、気に入らねえ。  
アンゴル=モアに対しての、掛け値なしの殺意が胸に燃え盛る。日頃からきち  
んと威嚇しているが、あまり度が過ぎると困ったような顔でケロロに見られて  
しまうので、程ほどにしておかなければならないのが辛い。これで同盟関係に  
ある「惑星の断罪者」の一族でなかったら、とっくにタママ・インパクトをか  
ましているところだ。…性根に軍人魂を叩き込むスパルタ式で知られるケロン  
の新兵教育は思わぬところで惑星全体を救っていた。  
「どうして僕があそこにいるんじゃないんですぅ〜っ!?」  
そんなある日、タママは見てしまった。  
 
 同盟を、破棄したい。  
タママが最初に思ったことはそれだった。軍事国家体制のケロン星では、経済  
成長と防衛上の理由を背景とした拡大政策を続けている。それ故に選挙権、被  
選挙権と軍役は表裏一体である程だった。そんな星では自然と立派な軍人が偉  
い人といわれるようになる。特に宇宙侵攻軍などは、ケロンに莫大な利益、権  
益を引っ張ってくる繁栄の旗手だ。首尾よく星の攻略、占領に成功すれば、う  
ちのお兄ちゃんが、町内のあの人が、宇宙の隅々から故郷に錦を飾るのだ!  
蛇蝎のごとき宿敵バイパー等から故郷を守るため、激戦に散った先人の話にケ  
ロン人は肩を震わせ涙を流すが、明るい話題には機嫌よく共鳴する。現在は  
(捏造も含めて)同時代の偶像としてメディア、おもちゃ業界他各方面で脚光  
を浴びている宇宙侵攻軍の最前線に立つケロロ軍曹。全宇宙に通用するような  
あふれる美貌、吸い込まれてしまいそうな黒く丸い目、数百人からの報道陣、  
軍幹部、敵を前にしても堂々とした態度と才気、とってもめりはりの効いた体  
型、厚い人望。日向家で見せるダメダメな姿からは想像できないような顔を持  
つ緑の華。今日のお召しは生地が小さくて乳房の盛り上がりがほとんど出てし  
まっているカーキ色のレース調ブラジャーと、限りなく面積が小さくTバック  
に近い「下着」。何よりもそれが目に飛び込んできたとき、タママの思考は停  
止し、代わりに情欲が沸騰した。無数の光点が中心で集結しつつあった。万が  
一、ケロロ嬢が硬骨漢ギロロ伍長や愉快犯クルル曹長、ついでに幼馴染ドロロ  
兵長あたりと睦み合っているところに遭遇したならば、タママ二等兵はその場  
で気が触れてしまっていただろう。しかしこの時その側にいたのは「障害物」だった。  
 
 その名も「星の断罪」という超パワーを持った破壊神アンゴル族の姫、アン  
ゴル=モア。よたった網の目のような各星各人の思惑や利害という複雑怪奇な  
宇宙の文脈の上で、浮島のようにぽつんと浮いているアンゴル族に咲いた小さ  
な花だった。ケロン星とアンゴル族(アンゴル族と同盟を結べる勢力は極めて  
稀)は昔から同盟関係にあり、交流の歴史も長かった。この同盟がケロンの安  
定、発展、拡大に寄与してきた部分は、見えないだけでとても大きい。万が一  
アンゴル族の姫がケロン人に殺されるようなことでもあれば、ケロン人どころ  
かケロン星そのものがおじゃんだ。そんな訳で、この同盟維持の意義は、尻尾  
の生えているような子どもでも知っている。…筈なのに、それなのに、タママ  
の正気は一旦保たれたが、良識は消え去った。モアの、身体の割に豊かな桃を  
思わせる乳房を収めているのは、一般的な学生向けの白を基調としたブラジャ  
ーだ。若木のように伸びやかな脚を生やしているのは同じく白いハイレグカッ  
トのパンティ。それらハート型の布ぐるみに、タママは何も感じない。彼はた  
だ一人の女の崇拝者だった。散乱しているお菓子やジュース、漫画にゲーム、  
ガンプラから見て、どうやら女二人のパジャマ・パーティーと洒落込んでいた  
ようだが、この馬鹿は「僕の」聖域に触れてしまっていた。タママの視界の隅  
に、ジュースと紛らわしいカクテル缶飲料の空き缶が映る。畜生。  
「きゃははははっ。おじさまのおっぱい大きい〜っ。てゆーか天下無双?」  
「やっ、やめるでありますモア殿っ。くすぐったいってばぁっ」  
この状況で「おじさま」は完全にミスマッチな呼称だと、ぼんやりタママは思  
った。完全にたちの悪い陽気な酔っ払いと化したモアの指が、手が、ケロロを  
組み敷くように押さえつけている。ケロロは組み敷かれてやったまま、少女の  
指にパンティを捉えられ、腹心の部下の目前に裸体、特に下半身のほとんどを  
晒されてしまっていた。タママが想像していた通りの、大きく張り、いい子を  
産みそうな垂れたところのない臀部が目に飛び込んでくる。遠慮のない若い女  
の指が、ことさらにパンティを上に引っ張るようにして、その白さと中心にあ  
るものの存在をタママに向かって強調してくる。薄褐色のマシュマロが、ケロ  
ロに重なる。そうしてきつそうなブラジャーの内部に侵入した細い棒のような  
指が、豊満な乳房を揉みしだいている。乳首にまで魔手が達したことは、熱い  
吐息とともにケロロが身をよじったことから分かった。さらにモアの手は遠慮  
を知らず、さらに長年の知己の足を開かせ、部下の前にお尻を突き出させた。  
生唾が湧くのと唾棄すべき思いが湧き上がったのが同時だった。  
やめるですぅやめるですぅっ。  
軍曹さんの足も。  
軍曹さんのお尻も。  
軍曹さんの胸も。  
軍曹さんの腕も手も指も脳も顔も頭も。  
僕のなんだよおおおおぉぉっ。  
 
 初陣で、混沌が牙を剥いて待ち構える市街に降り立ったことが思い出される。  
あそこで新兵だった自分は初めて戦場に降下し、実戦で銃を撃ち、刃をふるった。  
だが劣勢の友軍の応援に向かう最中ついに負傷し、出血多量で意識を失いかけた  
自分を、自身の危険も顧みず救ってくれたのが、今のケ・ロ・ロ・軍・曹・さ・  
ん・なんですぅっ。全身血まみれの重武装に覆われた小柄な僕を背負って走る、  
大きく上下するあの人の肩、肩越しにでも見えた胸部、大きなあたたかい背中。  
一生忘れない。あの時はお礼を言う暇もなかったが、野戦病院に入院中読んだ  
新聞記事(隣のベッドの奴が読んでいた場所を引きちぎった)に載っていた  
「ケロロ軍曹凱旋インタビュー」で名前を知ることができた。運命だと思った。  
ついでに「早く結婚しろって父親がうるさいんでありますよ(笑)」との一文も  
しっかりメモした。独身でいてくれてありがとう宇宙一のひと。お陰で突然夫を  
亡くして涙に暮れる未亡人と偶然出会って慰める好青年を演じていつのまにか  
ズルズル、なんて鬼畜な真似をしないで済みました。そして退院、部隊の再編で  
再びあの人の顔を見ることができたときの感動と言ったら…。何をしてでもこの  
人に僕は一生、どこまでも、一番近い場所でついていくと誓った。嗚呼懐かしい。  
さらばアンゴル=モア。僕と軍曹さんの絆は、今でさえ幾多の戦場を供にした  
戦友という、宇宙で一番固い絆だ。ただのお姫様で、せいぜい軍曹さんに「仕方  
なく」遊んでもらってたようなお前とは魂の結びつきが全然違うんだよ。何が  
「おじさまのおっぱい大きい」だ!? お前を殺せて、すんごく嬉しいよ!!  
ケロン星がどうなろうと、宇宙を敵に回そうと、軍曹さんと二人、宇宙で一番  
幸せになってみせるぜ!  
「よさんかタママ二等! 許されんことだっ」  
ついにこの日が来たかという慨嘆を声に滲ませて、タママ・インパクト射出態勢に  
入っていたタママを制止するため駆け寄ってくるのはギロロ伍長だった。どうやら  
ついにケロロに対して実力行使を図ろうとしたと思ったらしい。その頃にはあまり  
の殺意にケロロとモアもタママに気づき、青い顔で後ずさっていた。間一髪で集中  
が途切れ、タママはエネルギー砲から人に戻って不承不承敬礼する。  
「貴様ら、何て格好をしているっ」  
安否を確認するためにケロロの部屋の中を見遣ったギロロ伍長は、妙齢の女性  
二人のあられもない姿に慌てて視線を逸らした。  
「全く、タママ二等兵! どういうことだ!」  
「何のことですぅ?」  
今までの殺意はどこへやら、しれっと模範兵の顔でタママは答えた。  
「僕はただ、軍曹さんにお夜食をお持ちしただけですぅ。そうしたらこの女…  
アンゴル=モアが、居まして。僕はずっと戸口に立っていましたよ?」  
「ふざけるな。タママ・インパクトを撃とうとしていただろう」  
「いやー。何か驚いちゃったですぅ。がーんて顎が落ちただけで」  
 
 
 【卑怯なバイパーの襲来により、それまでバラバラだったケロン人は初めて  
一つにまとまったのです】ケロン星定小訓練所歴史教科書「かがやくケロンの  
歴史」序文より。  
タママは、今気づいたようにケロロとモアを一瞥した。  
「あぁっ。お二人とも、なんて格好ですぅ?」  
ばっと今更のように顔を背ける。だが敏速ケロロは既に軍服を着用し、モアに  
もシーツを纏わせていた。  
「…無理あるだろ、それ」  
とにかく命が助かってほっとした面々だったからか、いつの間にかギロロは  
地球侵略がちっとも進んでいないことを思い出して着衣したケロロに説教を始  
め、モアも帰り、その夜は何事も無かったかのように更けていった。ケロロ小  
隊にとってこの程度のトラブルは日常茶飯事でもあったため、本当に一見何事  
もなかったかのようだった。  
 誰もが寝静まった夜、タママ二等兵はいつものようにケロロ軍曹との愉しい  
想像プレイの世界に没入しようとしていた。  
「やっと二人きりになれましたね軍曹さん」  
「タママ二等…いやタママ。ずっとこうなりたかったであります」  
が、今日に限ってそこから先が上手くいかなかった。やっと自然なシチュエー  
ションでケロロといい雰囲気になれたと思ったら、視界の隅にアンゴル・モア  
がちらちらと映る。次々に場面、設定、小道具を変えてみたが、一度などアン  
ティーク調の部屋も家具もベッドも何もかもが大きい不思議の国の寝室でおっ  
始めたところで、巨人アンゴル=モアが遥か頭上の巨大な鍵穴から月のような  
目を覗かせて二人の痴態を興味津々という表情で見下ろしているのに気づいた。  
…遥か上。  
「てゆーか天網恢恢?」  
 
現実の闇の中にタママはかっと目を見開く。弾かれるように上体を起こした。  
ほとんど腹筋だった。いつもの紅顔の少年然とした面差しはどこへやら、唇は  
捲れ上がり、どう見ても凶漢の形相であった。  
「あのアマーーーーー!!」  
小さな、それでいて大きすぎる不安が胸をよぎる。  
………しよう。  
「今度会ったらタダじゃおかねぇーーーーっ」  
……どうしよう。  
「証拠隠滅、完全犯罪ですぅーーーっ」  
…だったらどうしよう。  
「んー、作戦を考えないと…」  
ついに一文が完成してしまった。  
「あっ…」  
もし軍曹さんが同性愛者だったらどうしよう。  
……。  
………。  
……………。  
「かかか関係ないもんねーーーー!?」  
気づくとタママは目を血走らせて絶叫していた。  
だが、この既に「軍曹さんと人生まっとう計画」まで立ててしまっている男が  
一旦精神崩壊の危機に陥ると、もうじっとしていられない。  
 
 気がつくとタママはクルル印の盗聴器と隠しカメラを手にしてケロロ軍曹の  
部屋の前にいた。もう夜遅い時間だしかの人は寝静まっているだろう。もしか  
したらガンプラ作りに夢中になっているかもしれない。とにかくこの蟻型諜報  
機を使って、おつきあいできるかどうかの大前提だけでも確認するですぅ。  
いざとなっても………ももも問題ないですぅー(?)。とにかく、一旦軍曹さ  
んの注意を逸らした状態で、こいつらを部屋に入れなきゃ…。  
最悪の事態は極力考えないようにして、タママは誤解を受けそうな時間帯に挙  
動不審な様子で、最愛の上官の部屋を訪れた。  
「こんな時間に男を部屋に入れたら、どうなるか分かってんのかコラーーー」  
ドアが開いた瞬間にタママ自身が内心思ったことだったが、何で僕はこの人の  
声で同じ台詞を自分の耳で聞いてるんだろう、と不思議に思った。それを最後  
に、突撃兵タママ二等兵は気を失った。  
 昔から人一倍好色な体を、ケロロは持て余していた。経験豊富で、軍歴は男  
性遍歴と連動している程だった。  
「我輩、自分がこんなに有名になるとは思ってなかったんだよね〜」  
一抱えもある生乳を揺らして男に乗っかりながら、下士官としてはエリートコ  
ースに乗っているケロロ軍曹は呟いた。  
 
「今は誰かと適当につきあうなんてこともできないしさー」  
上意下達が絶対の軍隊の世界で、上官と部下が関係を持つなどご法度だ。加え  
て幼馴染と硬骨漢は作戦の主戦力となる位置にいる上に、下手に深い仲になる  
と次の休暇には家族と顔合わせということになりかねない。愉快犯には下手に  
脅迫のネタになるようなものを提供するわけにはいかない。冬樹殿は…まだ  
ギリギリ子供。待たなきゃ。そう言い聞かせて、必死で夜中に誰かの部屋のド  
アをノックしようとする衝動を抑えていた。あ、忘れてないでありますよ。  
そんな瞳を潤ませないで。タママ二等は…純粋な瞳が嬉しいのと、並外れた嫉  
妬がちょっと怖かったりして。いや、なんでもないであります。急に血走った  
目で我輩を見ないでよぉ。  
「かといって毎日毎日一人よがりじゃあ、満たされなくなっちゃうわけよ」  
言下に大きく腰を上下する。暫く言い訳めいたことを言うのをやめて、若く張  
り詰めた肉棒を喉元まで味わう。やがて最初の軽い絶頂を迎えたらしい。ケロ  
ロの全身がうっすら汗ばんだ。しっとりと緩んだ秘部がタママを包んでいたが、  
ケロロは再度息づくナスを入れ直した。  
 その心の隙間をがっちり埋めてくれたのがガンプラ作りだったという。  
「とにかく精神が集中されるわけ。煩悩が清められるわけ」  
月に一度の、性欲が荒れ狂う数日以外は。再び体が上下するのに合わせて、  
ぷるんぷるんと乳房が揺れる。腹筋背筋大胸筋は見事に鍛えられていた。  
「毎日毎日色んなモビルスーツと…」  
「それ聞きたくないですぅ」  
「アチャー。引かれたョ…」  
タママは緊縛され組み敷かれ、卓越した口技によって充血した局部の根元を二  
重にした輪ゴムで止められ、転がされて、長年の夢が叶う栄誉に浴していた。  
 
 決して嫌がっている顔はしていないタママに向かって、ケロロは謝した。  
「んっ…突然、悪かったでありますタママ二等」  
タママに不満のある筈がない。念願の台詞を口にしてみる。  
「何を言うんですぅ。どうぞ、僕でよかったらご存分にですぅ♪」  
「あ、そう? じゃ遠慮なく。まったくチミったら、もうちょっとでいきそう  
ってところに訪ねてきたんでありますから…我輩、ついに理性失っちゃったのよ」  
「えへへ…」  
来訪の目的を言う必要はなかった。  
「アリガト。じゃ、もっと気持ちよくするでありますからね」  
ケロロは目元を桃色に染めて、淫らな女神の笑みを見せた。タママは初めて  
見るケロロ軍曹の表情に、独占欲を少し満たされるような嬉しさを感じた反面、  
瞬間ぞくりとした。ふっと冷静になると、好き者の女性にいいようにされて  
いる自分がいる。達しても放てないようにされた己自身は、血が集まりきって  
色が変わり、痺れたようになりながらも直に憧れの女性の粘膜に包まれていて、  
感覚は鋭敏だった。無論あまり長くこの状態でいると、大変まずい事態になる  
処置であることには変わりがない。少々マゾヒズムを刺激されるような、およ  
そ自分には合わないようなシチュエーションだ。だが、意外にもとても幸せだ  
った。この人が悦ぶことならば。  
「今夜はメチャクチャになりたい気分であります」  
タママは突き上げて応えた。ぐちゅっと音がして、先端が膣奥にぶつかる。  
びくびくと剛棒が内壁に絡みつかれ貪られて、それをねじ切るような動作でケ  
ロロの腰が前後に動いたのと、その下の足の指が開いて数秒間硬直したのが同  
時だった。  
軍曹さんのためなら、火の中水の中軍曹さんの中ですぅ★  
 
 糸が切れたようにがくりと脱力したケロロを、タママは慌てて抱きとめよう  
とした。が、縛られているために腕が動かず、騎乗位で繋がっていたケロロを  
転がしてしまうに忍びなく、タママは自分の体で受け止めることにした。温か  
い女体が勢いよくかぶさってくる。  
「うぅっ…」  
何とか受け止めたものの、ケロロの立派な乳房がクッションのように胸板にぶ  
ち当たり、息が詰まった。貫いていた自身も勢いで抜けてしまう。寂しさのよ  
うな喪失感が、萎えられない自身によって継続されてしまっている。贅沢なク  
ッションのお陰でケロロの顔との距離も縮まらなかった。その感情をそのまま  
顔に出したタママを見て、汗ばみ上気した顔に、照れたような蕩けた表情を乗  
せたケロロが言った。  
「タママ二等、スマンであります」  
 タママは出さないまま、途中から緊縛を解いて体を自由にしてもらった。  
輪ゴムをようやく外すと、達した時の白濁が零れ落ちてくる。  
 あ、出てくる…ちょっと休みたいですぅ。  
タママは一休みしようかと思ったが、まだ満足しきっていないらしいケロロの  
挙動と積年の願望を叶えるべく、ここは絶倫の若者を装うことにした。  
「軍曹さ〜ん」  
自由になった手で、いつものように馴れ馴れしくケロロに寄り、上腕に触れる。  
「ご機嫌うるわしゅう★」  
「ご機嫌麗しゅうであります」  
初めてケロロの素肌を掌で味わい、タママはその手を親指の方向にずらしてい  
った。二の腕では到底隠しきれない有名な巨乳が、熱く息づいている。側面か  
ら掌を当て、タママは輪郭を確かめるというよりは愛玩するように、そっと時  
計回りに優しく撫でた。ケロロはそんなタママの手首をそっと取り、強く自ら  
に当てながら逆時計回りを指示した。タママはその通りに胸への愛撫を始める。  
こうしてケロロは自らの双球をそっくり部下に預けてしまった。時折くすぐっ  
たそうな声を上げて、タママの引き締まった体に腕を伸ばす。武骨な女軍人の  
ものなのに甘い匂いのする指先が、ケロロの乳に奉仕している筋肉を仕舞った  
鎖骨や胸部に触れ、指の腹で愛しげになぞった。タママはしばらくして、言葉  
を待たないまま腰と腕を曲げて顔を近づけ、ケロロに接吻を乞う。どこまでも  
献身的な部下に、ケロロはそれを許した。始めは遠慮がちに唇を包んでいただ  
けのタママは程なく大胆になり、舌を入れて歯列を探り、前歯を舌先でつつく  
と歯茎を嬲り、その奥の舌を求めた。舌からして筋力の違う両者が邂逅し、同  
じ音を響かせる。言葉のなくなったそこで、唾液が跳ねる音が延々と響く。  
ケロロの手がタママの肩を抱く。掌が肩を掴み、自分の方へと引き寄せていく。  
もう胸先がタママに触れた。  
 数度の絶頂とキスだけでは飽き足らず、すぐ次の一戦に雪崩れ込んでしまう  
自分に気づいたのか、唇を外したタママが胸に吸い付こうとする時、ケロロは  
思わず言った。  
「こんな風じゃなかったら…」  
ナイスバディで感じやすい体の男好き。もてもての花形。それ故の深い悩みが  
あるのだろう。ケロロの口から出た言葉を、タママは強い意志で打ち消した。  
「そんなの軍曹さんじゃないですぅ!」  
「え」  
「軍曹さんは、今のままが一番ですぅ! 僕は今のままの軍曹さんが好きなん  
ですぅ! 人なんてしょせん変わるときは変わっちゃうんですから、いつでも  
自分を好きな軍曹さんでいて欲しいんですぅ。それがいいんですぅ僕はそう  
信じてますぅっっ」  
何も考えずに一気に言ってしまっていた。勝手に口を突いて出た言葉だった。  
言ってから我に返ったタママに、ケロロは心の琴線が爪弾かれて潤んだ瞳を向けた。  
「…ありがとうであります。タママ二等」  
 
 ケロロはタママを見上げると、自然にタママ自身を掌で包む。今度は覚醒し  
た状態でそれを受け入れるタママは、眩しいものを見たように目を細めた。  
やっぱり普通がいいですぅ♪  
タママの男に直に接し、ケロロは熱い吐息を漏らす。欲望の塊を熟達したケロ  
ロに愛でられているタママは、すぐさま充血した。親指の腹、掌の窪みで膨ら  
みの継ぎ目や先端を転がすようにうがーーーっ。  
「軍曹さぁん…」  
一番の弱点を相手に委ねたまま突撃を敢行してしまう。すっかり棒状になった  
熱塊がケロロの手から弾んで飛んだ。タママはケロロに立つよう促すと、何故  
かうつ伏せのように体をひっくり返した。目の前にベッドがあると思ったら、  
ケロロは一言もなしにどんと後ろから突き飛ばされた。  
「えいっ」  
「ポウッ?!」  
ケロロの上半身がベッドに倒れ込む。崩れかけた膝と、ついさっきまじまじと  
見たばかりの丸いお尻を、タママはよいしょと起こした。さっきまで自分自身  
を咥え込んでいた濡れそぼった双丘の間が目に入る。そこにはタママの刻印が  
くっきりと捺されていた。人差し指をそっと近づけ、そこに触れる。その刺激  
だけでぴくりと反応した。続けて、指を差し入れてみる。何の障害もなく、  
スムーズに飲み込まれていく。続けて中指も揃えて入れる。じゅぷっと貪る  
音がした。タママの意図を察したケロロが顔を上げて訊く。  
「タママ…立ちバックって好きなの?」  
「好きですぅ。これだと僕が気をつけをすれば、どーんですからぁ☆」  
「ふんふん。イイネ」  
身を起こし、ケロロが臀部を高く上げて突き出した。するとタママの熱が周辺  
にぶつかる。焦ったように逸れてしまうタママをケロロが慎重に襞の間に導く  
時、タママはケロロの乳房に手を伸ばし、近づきながら応えた。この態勢なら  
比較的小柄な体格のタママも深づくりの軍曹も楽しめそうだというわけだった。  
 
 「行きますよぉ」  
常備されていたらしいゴム製品をケロロから受け取って装着し終わると、言う  
間にタママはケロロの中に押し入ってきた。ケロロは熱く硬い感触で満たされ  
ていくのを、穏やかに受け入れる。タママの体がぐんと伸び上がり、ぴったり  
とケロロの尻に密着した。骨盤同士がぶつかる音と、皮膚が鳴らす乾いた音が響く。  
「んぅっ…」  
思惑通りにタママは天井に届き、その衝撃にケロロが呻く。タママは先ほどよ  
りも余程鮮烈な粘膜を覆う濡襞の感触に、ようやく歯を食いしばって射精を堪えた。  
入れたばかりなのに、もう食らいついてくる。まるで咀嚼されているようだった。  
あ、味わわれてるですぅ…。  
「軍曹さんのエッチ〜」  
「何を、タママにと、う、こそ…」  
内部のむず痒いところを掻こうとするように、ケロロの腰が小刻みに動く。  
ほとんど習慣化されているらしいそれに、タママは軍曹の底知れなさを感じた。  
「ケロロ軍曹さぁ〜ん」  
到底掌に収まりきらないメロンのような乳房をぐにぐにとつぶしながら、タマ  
マは万感の思いで呼びかけ、少し腰を引いてずるりと自らを中ほどまで引き出  
し、乾いた音を立ててケロロに突き入れた。すぐに短い抜き差しが始まる。  
「あっ…あっ…あぁっ…若い子っていいわ、やっぱ…。これが私(笑)?」  
脚を肩幅よりも大きく開き、部下の肉棒を受け入れる、いや搾り取るという  
表現が合うほど愉しみ始めたケロロは、素直に女の声を上げていた。ゆっくり  
と上体を前傾させ、下肢を完全にタママの方に差し出す。タママはそれを受け  
取り、モアとケロロが下着姿でいたときのことを思い出した。  
「くっ…あの女、軍曹さんを中途半端に感じさせやがって…許せねえ」  
ここまで来ても、まだタママの心にはアンゴル=モアがかすかに引っかかって  
いた。ケロロの中からかの女の存在を消すように、タママは打って変わって  
深く突き上げ始めた。汗が飛び散る。  
 
 思いきりぶつかってきた若いタママに、ケロロは何らの技巧を施すことなく、  
また軽く達してつんのめった。本日十度目の絶頂への足がかりを掴んだケロロ  
軍曹の秘部にねぶられ、タママ二等兵は足の親指に白くなるほど力を入れ、ゆ  
っくりと抜き差ししたり、あの戦場でケロロに背負われていた時のことを思い  
出したりした。急に想いが叶ったことを実感した。  
「生きててよかったですぅ…」  
「そだねっ…こんなこともできるもんねっ…」  
軍医に、もう少し治療が遅かったら、意識を失っていたら、命が危なかったと  
言われたんですよ…。  
タママは愛の池に飛び込む自分を思い浮かべ始めた。生きててよかった。ケロ  
ロの背中に飛び降りるように最後の一突きを敢行したタママは、霞む視界の中  
で思った――。  
軍曹さんも一緒にイッちゃったんだ…。  
ケロロも深く達しているらしい。自分に負けず劣らず激しい気性が、標的が決  
まると狂おしいほどに注がれる愛情が、本人にも制御不可能な筋肉の収縮とし  
てびゅくびゅくと蠕動している。一瞬息が止まって、全力疾走した直後のよう  
に激しく酸素を求めている。しかし達して急激に重くなり、芯を失いつつある  
タママの体を、母なる大地のように受け止めてくれた。  
 
 栓を開けるとプシュウと炭酸の抜ける音がした。立ち込めていた情事の残り  
香が少しずつ換気されている中、くねった瓶からグラスにとくとくと注がれる  
それは、無数の泡粒を立ち上らせる。  
「たーんとお飲み〜」  
「はいですぅ」  
「「乾杯☆」」  
ひとまず今夜は満足したらしいケロロ軍曹は、高価い炭酸水をタママに振舞っ  
た。甘さの全くないそれを一口ずつ口に含み、たまにゲップをしながらタママ  
は飲んでいる。  
チョコレートが欲しいですぅ…。  
舌に刺激の強いそれをちびちびと口にしながら、タママはずっと疑問に思って  
いたことを聞いてみることにした。ところがその事実関係の中に存在する「あ  
の女」のことを思い浮かべただけで、タママは俯き嫉妬深い自分で呼びかけて  
しまっていた。  
「軍曹さん」  
何故か黒いオーラを滲ませたタママの声音に、冷水をかけられたようにケロロ  
は振り向きいつでも逃げられる体勢に入る。だが何度も達して腰がぐらつく今  
の状態でタママ・インパクトでも撃たれたら、本当に危ない。ケロロは裏返っ  
た声で返答した。  
「何かなっ」  
「質問に答えて欲しいですぅ」  
一言だけタママは訊いた。  
「あの女が軍曹さんのことを『おじさま』って呼ぶのはどうしてですぅ?」  
目を見開いて強ばった顔をしていたケロロは、はぁっと安堵の息をついた。  
 ケロロは昔のことを少し語った。育った家のこと。故郷の両親のこと。ガキ  
大将だった子供時代のこと。ケロン人の社会参加、軍役のこと。  
「何でモア殿が我輩のことおじさまって呼ぶのかっていうとね、我輩が初めて  
モア殿に会った時、モア殿は軍曹っていうと、こうたくまし〜い、ハートマン  
軍曹みたいなの想像してたみたいなのよ」  
ケロロは軍役に就いた初期に、アンゴル族の本拠地にいたことがある。その時  
にモアと知り合ったのだ。とても慕われ、今は姉妹同然である。  
「だからか最初緊張してたんだけど、会ったら意気投合してさ――我輩も遊ん  
だりして。『おじさま』っていうのは、二人だけの愛称みたいなもんであります」  
タママはどこか遠いところでケロロの言葉を聞いていた。聞いてしまえばなん  
とも呆気ない。  
 
「なあんだ…そうだったんですかぁ」  
「それだけのことであります。タママ二等」  
欲情を満たされて部屋着を纏い、隊長モードに戻りつつあるケロロ軍曹を、タ  
ママは黙して冷静に眺める。まん丸い大きな黒い目もナイスバディも淫乱なと  
ころもガンプラ好きなところも立派な隊長だというところもetc…。そして心に  
決めた。もう何があっても絶対に変わらない。  
やっぱり、軍曹さんしかいないですぅ。ちょっとぐらい時間がかかっても、身  
も心も完全に僕のものになってもらいますぅ。戦場でも平常時でも、僕は軍曹  
さんの手足となって軍曹さんを護る。邪魔する奴は抹殺!!!!!  
タママが考えていることの一部を読んだのか、ケロロもやや真剣な目つきにな  
り、言葉を選びながらタママに命じた。  
「だからさ、タママもモア殿にもうちょっと余裕というものを持って接して欲  
しいんだよね。仮にも誇り高いケロン軍人でしょ」  
「…気をつけるですぅ。同盟関係ですしね」  
殊勝に頷いたタママに、ケロロは首肯した。  
「よろしい」  
 ある日の平和な昼下がり。  
「おじさま〜」  
優しい声音のアンゴル=モアが、一休みしているケロロのところに手作りのク  
ッキー、紅茶のポットとティーカップを乗せたお盆を持って歩み寄ってくる。  
ケロロはぱぁーっと景気の良い笑みを浮かべた。  
「ティータイムでありますね」  
「はい☆」  
弾むような会話が行われているところに、タママ二等兵が報告に訪れた。  
「あ…」  
至近距離にタママ二等兵。血走った目がモアを射抜く。あまりの剣幕に、モア  
はケロロから離れようとした。ケロロが眉根を寄せる。…が、今日は何だか様  
子が違った。タママ二等兵は拳をぶるぶる振るわせつつ、壮絶な笑みを浮かべて掠れた声を出した。  
「ふ、ふん。いいですぅ」  
いつもと違ってケロロと親しげにしても、「大人の余裕」を見せるタママに、  
モアはすぐににっこりと二心のない笑顔を向けた。アンゴル=モアはただただ  
清らかだった。  
「はい。タママさん」  
「うぅ〜」  
軍曹さん、今夜は寝かせないですぅーーーーー!!!  
モアが皿に乗ったクッキーを差し出す。タママは何だかもったいぶって、本当  
は大好きなそれを摘み上げた。ケロロは「やりすぎだっての」と呟いている。  
モアは皿をテーブルに置くと晴れ渡った空を仰いだ。  
「てゆーか天壌無窮?」  
 

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