ケロロは頭をかいた。そっと夏美の顔の方に寄っていって、紅葉のような手でぺちぺちと肩を叩く。  
「まあまあ。我輩、子供の頃父にいっつもこう言われてきて、つい出ちゃったんでありますよ。  
夏美殿は十分強いであります。ウン」  
ケロロの父親は有名な軍曹で雷親父、母親は宇宙一度胸のいい主婦だと聞いていた。日向姉弟  
には物心ついた時から父親がいない。夏美は現実的でしっかり者の娘に育った。ケロロの瞳に  
自分の顔を映して、じっと真ん丸い顔を見つめる。無意識にケロロの背後にある宇宙の父性を  
探ろうとするかのようだった。  
「あんたってお父さんっ子?」  
色事のさなかに肉親のことを訊かれ、ケロロは面食らった。  
「まあ、そうでありますね」  
厳しかったことしか記憶に無いが、大事に思っていることに変わりは無い。  
「今頃は町内詩吟大会予選に出場している頃であります」  
「通るといいわね…」  
「ゲロッ。風呂場で延々と練習していてよくのぼせたものであります」  
「…あんまりもたもたしてたら、冬樹が帰ってくるわよ」  
「そうでありましたなぁ…では、もう一回」  
目を細め口元を緩ませ、ぴょんとケロロは夏美の顔に飛びつく。夏美はぬいぐるみを抱く  
ようにケロロを受け止めると、しっとりした口に自分の唇を乗せた。ケロロがいやいやと  
首を横に振るように、唇の端から端まで擦りつけるかのように滑らせる。ケロロがそっと囁く。  
「ちっちゃい唇、可愛いでありますな」  
ただいま交戦中なり。わが方の損害は極めて軽微なり。  
ちゅっちゅっちゅっちゅっちゅうっ。  
求め合う恋人たちの口付けの音が響き渡る。ぬるぬるの肌も、生ぬるいような熱いような  
体温も、ずっと接していると慣れてくるのだから恐ろしい。カエルとのキスで濡れるのも  
初めてだった。重なっているときにキスは難しいかもしれないけど…。  
 やがて一旦唇から離れたケロロが、夏美のおとがい、首筋を伝って下に下がり始めた。  
見下ろすと大きな漆黒の瞳に吸い込まれそうになる。自分の目をいくら見開いてもかの  
大きさに足りない。少女の体の中心を目指すケロロの目前に、夏美の年齢にしては豊か  
過ぎるような大降りの胸が現れた。全体が上を向いた重厚な豊熟…丸い果実!  
よく実ったでありますな、これならお土産にちょうどいいや! そーれ、わぁ、汁が溢れそう!!  
搾乳獣の乳房と変わらない温かな弾肉なのに、ケロロの頭の中でそんな想像が一気に駆け巡る。  
さっき散々嬲ったのに、またも止まって頬を擦り付けてしまった。乳首を赤子のような手のひらで掴んでしまった。  
このあたたかさとぷるぷる震える感触が癖になりそうだった。指先で潤みを帯びた先端が見る間に尖ってくる。  
そっと押し付けられてくるそれに唇や歯を寄せて更に尖らせてみたり、ぽんよぽんよとスイカを叩くように押したりしてみる。  
しかしスイカには絶対にない弾力性と、ふわりとした感じが、同族とはべつの切り口から女というものの性を主張してくる。  
感度は最高だ。胸だけでも奮闘のし甲斐がある。  
「んぅっ…ひゃっ…もうっ、やめてよ、くすぐったいんだから…」  
 
 「そんなこと言って、どうしてこんなにここがこんなになってるんでありますかー?」  
何やかんやと言いつつも満更ではなさそうな夏美の手のひらが、ケロロの腰に触れている。  
つんと上を向いたお尻の部分に偶然指先が触れてしまった。その瞬間、今までどちらかと  
いうと夏美をリードしていたケロロが、びくりと飛び上がるように硬直し、全身脱力した。  
「ううっ…そこはまだ早すぎるであります…」  
明らかに動揺し、その場で小刻みに何かを堪えているケロロに気づき、夏美は自分が今  
触れているところを確かめてみた。足の付け根からなだらかにカーブを描いて反り返って  
いる、ケロン人特有らしい形のお尻である。どうやら感じてしまう場所らしい。  
夏美は半ば興味本位で、五本の指で尻尾を包むと、つうっと先端に向って滑らせた。  
「おおぉおうっ」  
もしかしたらさっきの口奉仕よりも切羽詰った声で、ケロロがびくりと背筋を震わせる。  
もともと締まりの無い口が半開きになり、目が真ん丸く見開かれていた。溢れるのではなく、  
あくまで垂れるそれで口や体表から体液が染み出す。ただならぬ様子に、夏美は確信する。  
そうか、ここなんだ。ふうん…これなら、いきなり咥えなくても良かったかも。  
「この、ボケガエル…」  
夏美の胸の上で惚けたような顔のまま、ちっちっち、とマッチのような指を振ってケロロはニヒルに呟く。  
「こ、こんな時には、ダ、ダーリンと…呼んでほしいでありますなあ」  
「十年早いわよ」  
つうううううっ。両方の人差し指と中指の腹で交互に尻尾を撫で上げる。  
「あっはあああああんっ」  
甲高いケロロの叫びである。大きなぬいぐるみのような異星人が、生意気で扱いにくい侵略者が、  
憎めない(?)同居人が、喘いでいる。まるで男を弄んでいるような気分になってきた夏美は、  
妖しい笑みを浮かべながら、仮にも下士官の尻尾を夢中になって愛玩した。  
直接攻撃にさらされ、このままでは先に果ててしまうと思ったケロロは突然くるりと夏美の上で  
体の向きを変える。すなわち、あえて夏美が存分に尻尾を弄れるようにした上で、彼は夏美の爪先が  
見えるほうに向き直ったのだった。先端を指先でぷにぷにと摘まれる疼痛に堪えながら、ケロロは  
先程分け入った薄い森に手を伸ばす。前側から伸ばされた粘体は、小さな肉芽を探り当てた。  
間を置かずクリトリスのカバーを柔らかく揉み、同時に体を精一杯伸ばして片方のピンポン玉サイズ  
の拳を前から浅く潜らせた。ほとばしる嬌声。ケロロの手が肉壁に飲み込まれ、夏美の掌が反射の  
ようにケロロの尻尾を強く握ってしまう。ほとばしるゲロゲロゲロゲロオォッ。  
「…五分五分だなんて、夏美殿、魔性の女でありますか?」  
「アンタこそ、いきなりどこ触ってるのよぉっ」  
「言っても良いのでありますか…? えーっと」  
「だめっ、そこ、だめっ、もうっ、あぁんっ」  
少しだけカバーから顔を出したクリトリスを探り当てられた。そこを手中にされ、てろてろと嬲られる。  
淫らなそこは、もうケロロに負けないくらいに四六時中濡れっぱなしだった。  
 
 夏美ははっきり気がついていた。これまで目には見えなかったが、そこに男が、久方ぶりに妻か恋人のもとに帰って  
勇み高ぶっている前線の軍人がいたのだ。自分は初めてで、その相手なのだ。特に、独りきりでこっそりと見た女性誌  
の特集で読んで知った、男性に自分の特集を舐められるという衝撃…。中学生の彼女には実際にそれを確かめるための  
相手がいる筈もなく、疼く体を持て余しながら、風呂場でシャワーに青い悩みを吐露するしかなかった。ところが急に  
召使い同然にこき使える小さな宇宙人が転がり込んできて、しかもひょんなきっかけでこんなことになった。まあ色々  
試せてラッキー。こいつも落ちるトコまで落ちたわね〜。と思っていたら、夏美こそが落ちていたのである。ケロロ  
軍曹は執拗に、自分の肌と同じようになった、夏美の潤い続ける秘襞を愛撫している。そうこうしているうちに、  
すっかり蕩けて待ちきれなくなった男と女が出来上がった。結果的に濃厚なサービスを受けてしまったケロロの  
眼差しはすっかりぎらぎらした黒い情熱を湛えており、夏美の臍には既に熱い凶器と化した生殖器が汗をかいて  
押し付けられていた。夏美も散々の愛撫と小さな手にスイッチを捻られたことによって、火がついてしまっている。  
秘部がひくつき、本来の役割を果たしたいと蠕動していた。再び硬さと形を取り戻したそれに、夏美はそっと唾を飲み込む。  
期待半分不安半分だ。  
「夏美殿…そろそろ、いいでありますか?」  
「いいけど…ちゃんとつけてよね」  
「合点承知であります」  
あっさりと貰えた承諾に小躍りしつつ、どこからか取り出したゴム製品のパッケージを取り出しながら、ケロロは親指を立てた。  
 あまりに体格差があるので、お互いの目を見ながら初体験…という夢の実現は、普通よりちょっとだけ大変だった。  
夏美の大きく開いた足の中心に陣取ったケロロが反り返った自身に手際よく避妊具をかぶせ、両手で夏美のはじめての  
小さな入り口を左右に開いている。ガンプラ職人だけあって、手先の器用さは抜群だ。くちゅちゅと音がして、箱のように  
開けられる感触がする。触手のように蠢く指先が、内部に引っかかりがないかを確かめるかのように浅く慎重に膣口を探っている。  
夏美はともすれば突っ伏して喘ぎそうになるのを必死で堪え、両腕を支えに体を起こして、ケロロがしようとすることを見ていた。  
「では、そろそろ、いくでありますよ」  
「うん…いいわよ」  
ケロロが自分に突っ込もうとしているものは、前部が膨らんでいる…ナスを連想させる形状だった。  
それが、鏡で見たことのある自分の中心に押し当てられる。熱く硬い感触に、身がすくむ。  
「大丈夫大丈夫」  
何故だか目じりを下げ、パァ〜っと晴れやかな笑顔になったケロロがいた。  
そのえびす顔に気をとられた隙に、先端が潜った。先程ケロロの拳が潜ったのと同じ深度までで、そこから先は何かに引っかかったかのように進まなかった。  
…あたし、もう処女じゃなくなったんだ。  
夏美はぼんやりとそんなことを思った。最大限に開脚した中心にいるケロロが前傾するように自分に近づいてくる。  
「あーーーーっ」  
夏美は腕の支えを外し、背中をベッドに、頭を枕にがんがんと打ちつけた。経験したことの無い痛みがあった。  
 
 まさにケロロがいるところで、激痛が生まれている。じんわりと涙が滲み、一瞬視界が歪む。  
堪えきれずに腰を大きく振ってケロロを振り落とそうとするが、離れない。いっきに突きいって  
きたようで、根元まで子宮の入り口まで刺さったかのようだった。  
「痛いじゃないのっ」  
「いやいや、一瞬の辛抱でありますよ。すぐに痛みは引くであります」  
宥めるように言いながら、ケロロは最深部まで深深と夏美と繋がった状態を維持している。  
にんまりと口角を上げて笑う。何だか違和感を覚えた。  
「とっ、とにかく、一旦離れてくれる?」  
「まあまあ…。今下手に動く方が痛いでありますよ。しばらく一つになったままでもいいと  
思うであります」  
「もうっ…」  
夏美は動くことによる痛みを予感しつつも、とにかく強引に一度ケロロを離そうとした。が、違和感の続きがあった。  
「…?」  
先が大きく肥大したケロロの逸物が、どういうわけか夏美の中に引っかかっている。狭筒に栓をはめてしまったが如くだ。  
潤う膣道にそんなことは起こりそうに無いのに、どうして。まさか…電話先で言いたくない症状ナンバーワンの膣痙攣?  
ゆっくり血の気が引くのを感じつつそろそろと身を起こした夏美の股間に、ケロロがくっついていた。普通に考えれば  
ありえない交わり方に、夏美は呆然と下を見る。自分の股間にしっかりとつながった、ケロロの体と恍惚とした顔があった。  
「ゲロ締まる…。中で動いてるっ、であります…気持ちイイ…」  
混乱とも嫌悪ともつかない感覚が背筋を走る。  
「やっ…やだっ」  
白昼からカエル型宇宙人と交情をさらしている自分を、家族や友達に見られたら、死ねる。悲鳴に似た声が口から飛び出た。  
「何これ、外してよ、変じゃないっ」  
「我輩、もういい歳なんでありますよ。Hするのに命の危険を冒すなんて、もっと若い者のすることで…」  
「って言いながら、どこに入ってるのよ」  
ケロロはもう、夏美の足の付け根の茂みに顔を埋めてくつろいでいる。  
「あ〜極楽極楽〜。未通娘の××は最高でありますな〜♪」  
「ねぇ聞いてたのっ!?」  
「もうっ、サッキュバス星人に目をつけられたらいい男は終わりでありますから…塹壕にでも隠れているほかないでありますなぁ」  
「何面白すぎること言ってるのよっ」  
入ったまま、離れない。内部で膨らみがひっかかっているのか、小さな手を夏美の臀部に添えているだけなのに、  
立ち上がっても五キロはあるというケロロの体は落ちないのだ。強靭な筋肉で小さなオスを支え、ぶら下げている夏美。  
ちなみにアンコウの夫婦は夏美の理想とする夫婦像からは百万光年離れている。夏美がベッドの上でじたばたと暴れ、  
 
手を添えて剥がそうとしても、体表がぬるぬるした粘液に覆われ、滑って掴めない。  
 
 どっ、どっ、と心臓が重い鼓動を打ち始めた。どうやら効き始めたようだとケロロは思った。  
自身が夏美の胎内で動き始めるまで、あと少しだろう。そうしたら、この日向夏美は三時間の間  
自分を咥え込んでよがり狂い、快楽の叫びと体液とを垂れ流し続ける予定だ。やがて心身ともに  
我輩の虜になる。体と心を絡めて捕らえてしまえば、ポコペン侵略の邪魔どころか手下にするこ  
とも難しくないだろう。捕虜生活の雪辱を果たすときがくるのだ。以前冗談で買った男根塗布系  
の処女用の媚薬を、このポコペン侵略の最大の障害に対するにあたり初めて使った。説明書は半  
分までしか読まなかったが「初めての衝★撃。女性の心は、決して貴方から離れません♪」が売  
り文句だった。  
「あっ…よくなってきた…」  
夏美が状態を素直に述べる。膣内で心臓並の鼓動を打つ男根など、このポコペンのどんな男も  
持っていないだろう。ふとそんなことを思って、ケロロが静かに話し始めた。今までの夏美への  
はなむけのつもりだった。  
「夏美殿。夏美殿は立派であります」  
夏美が複雑そうな顔をする。  
「…可愛らしいであります。ガンプラと同じくらいに好きであります」  
はなむけであることを意識した、ケロロの最大限の賛辞だった。夏美の頬が  
一層上気し、体中が紅潮していくようだ。潤んだ瞳が自分を見ている。心配ない。  
「夏美殿、夏美殿の大事なここは、何のためにあるのでありますか?」  
「えっ?」  
思いついたことはいくつかあるが、桃色の想像だったことに加えて呂律が回らず、  
夏美は口に出せないまま三秒が過ぎる。ケロロは硬度を維持したまま、できの悪  
い生徒を持った教師のような表情で溜息をついた。何だか腹が立ったところでケ  
ロロの怒張が、夏美の中で蛇が鎌首をもたげるような動きをした。膨張した部分が  
ざらりと上の壁に触れ、夏美は未知の快感に小さく震える。案外、このため?  
「赤ちゃんを産むためであります」  
ケロロが目を細めたのに対し、夏美は目を見開く。ケロロの模範解答は、その通り  
過ぎるほどにその通りだった。…つけてた筈よね!? この体勢で抜けないかしら!?  
夏美の目を見たケロロが淡々と言う。  
「ケロンの避妊具は宇宙一、なんでありますよ。大体我輩、ポコペン人の体についても、  
ちゃんと勉強してきたであります」  
ケロン軍が事前に調査したデータは進化過程、成長過程、文明発展の粗筋、寿命、食性、  
諸文化、地域ごとの勢力図、社会、様々な化学物質の平均的な致死量まで、実に多岐に渡った。  
「よく聴くであります。オカイチョウは繁殖のため、また快楽のためにのみするものにあらず!  
でも、気持ちよくなきゃ生きてる意味が無いっ」  
生と死の間を何度も潜り抜けてきたケロロの実感がこもった台詞だった。  
「オカイチョウって…」  
意外な方言でケロロの口から出てきたセックスを意味する言葉に呑まれ、夏美  
は呆然と詭弁を聞き流してしまっていた。  
「大丈夫大丈夫、そのうち、軍曹様のもっと欲しいっ、とか言わせちゃうでありますから。そうしたら…ゲロッ」  
愉しい夢を語るケロロの口上は、途中で止まった。顔が、頭が、熱くなってくる。  
 
 不意の衝撃に、ただ一つのイメージが去来した。容赦の無い大波。何者をも  
寄せ付けないケロン星の激流が、冬の日本海の荒波が、高熱の蒸気を伴ってケ  
ロロの脳を打った。見えないそれは激しい頭痛のようにケロロの脳の奥にもろ  
にかかる。がぁん…と呆然と立ち尽くす。血の気が引き、表情をなくして目を  
見開く。夏の日の氷のように蕩けていくだけの夏美は、それを不思議に思うだ  
けだ。  
「そ、そんな…我輩、どうなってしまうでありますか…」  
媚薬の説明書を半分までしか読んでいなかったことが災いした。ケロロは「女  
体の中で逸物がニョロロの如く暴れまわる」ということまでしか知らなかった。  
自分は夏美のはじめてをどっぷり愉しみつつ、ある程度の理性を保ったまま、  
天敵をじっくり調教するつもりでいた。まさか意外な副作用があるなど、  
思ってもみなかった。だが、この媚薬は処女に女の悦びを教える代わり、  
男には一時の快楽と多大な体力、精神力消耗を強いるものだったのだ。  
だから定価の半額で売っていた。軍曹割引も利いたのだ。ケロロが説明書を  
読み直してこの致命的ミスに気づくのは、実に次の日以降のことになる。  
徐々に衝撃から解放されていくケロロは、また少し変質していた。  
「失敬。御託は止しにするであります」  
そこには、過日のある側面がそっくり再生したような「アノ頃ケロロ」がいた。  
夏美は気づいていない。  
「まだ痛いでありますか?」  
「んっ…何だか濡れてきたのと、アンタのが動いてて…痛くなくなってきた、みたい」  
「そうでありますか。でも油断大敵、怪我などされては…」  
夏美は少しだけケロロを見直そうかと思った。  
「長く楽しめないでありますからなぁ」  
ギシ、とベッドのスプリングが軋んだ。ケロロが胡桃ほどの膝を支えにして、  
己を浅く引き、また押し戻す。今日が初仕事の夏美の襞は、寄せては返す波  
のようだ。波打ち際のように、ピンク色の泡をくっつけている。鎌首部分は  
もう自分で意思を持ったかのように、夏美の胎内をあちこち探り回っている。  
普段では有り得ないその動きが、ケロロの快感をも倍増させていた。  
「ぁあっ…ボケガエルっ…」  
開脚した夏美が、感極まり繋がったままベッドに仰向けになってしまった。  
後頭部をシーツに擦りつけ、顔だけをベッドに埋めて慄く。瑞々しい乳房が  
遠くに行ってしまった。  
「そこよっ、そこ…今すごく気持ちよかったから、そこに当てて」  
「だったら、ケロロと呼ぶであります」  
三十センチ程上から降ってくるそれは、やけに心に触れてくる声音だった。  
どこか真摯さも感じさせるそれに、悪口や軽口を言えなくなる。何より、今  
感じた疼きを自分のものにしたいと思った。  
「若しくは、ダーリン」  
「ダ…」  
「若しくは、シャア様」  
「ボケガエル」  
夏美でも名前くらいは知っているロボットアニメのヒーローの名前だった。  
 
 ケロロの目が凶悪な歪みを帯びて細められる。  
「ラブラブやーめた、であります。貴様、その口の聞き方は何だあああああ!?」  
がくがくと揺れる夏美の体の中心に、何度も何度もケロロがぶつかってきた。  
バスケットボールが一箇所でドリブルしているみたいと思ったのは、彼の頭が丸いから。  
ぐちゅぐちゅというか、とにかく絶対人には聞かせられないものすごい音がする。  
一呼吸と一呼吸の合間に挟まれる刹那の思考が、窓やドアの鍵や留め金のことを考える。  
すごい。こんなにいいなんて知らなかった。雨戸も閉めておけばよかったかしら。やだっ、広げられてるっ。  
夏美はたまらず仰け反って逃れようとしたが、ケロロは繋がったまま決して抜けない。  
ケロロの剛直はナマズのように太く豪快にぬるぬると暴れ、そのくせひどく精確に夏美の  
感じるスポットを探り当てて突いてくるので、実際のところ声を堪えることはできなかった。  
すぐに壁際に追い詰められる。ひんやりした壁に背中と頭がぶつかり、逃げ場が無くなる。  
予想外に強いケロロの小さな手足によって壁に縫い止められると、もう為すがままだった  
固定され、存分に行き来される。この間、ひっきりなしに夏美は叫び続けている。  
後頭部が小さく何度も壁とぶつかるため、少し前かがみになる。それでも制御  
できない叫びというものを上げ続けるなんて、虫歯を治療しに行った小学校  
低学年以来だった。こんな時だけひどく気の利く家事手伝いが、ちゅうちゅうと  
胸先を吸っている。長い舌が伸び、隙のある首筋や鎖骨を嬲っていった。  
その度に締め付けてしまう。締め付けても難なく抜き差ししてきて、  
膣奥の子宮口をごんごんと叩く。衝撃が体の中心に響いた。もう駄目、喉がカラカラ。  
私の体はカエルみたいに全身濡れている。  
その時、夏美の体の一番奥の部分が少し開いた気がした。そして夏美の意思とは関係なく、  
開通したばかりの膣全体が強い収縮を始め、異種族の性器を奥まで飲み込み搾り上げていく。  
スポーツで全身が引き締まり、スタイル抜群の夏美の体が壁を登るように伸び上がった。  
水分を迸らせる彫像のようだった。ケロロをくっつけたまま、今までになく激しく下肢を前後に振る。  
下肢にしっかりと食らいついた「×××××」が歯を食いしばって振り落とされ  
ないようにしながら腰を動かし、内部で×××を暴れさせる。陸に上げられた鯛を思い出した。  
あれとまったく同じだ。中でも外でもばたばた跳ねている。死ぬ。泣くような声を出して、  
夏美の体が跳ね、そのままベッドに横になるように倒れ込んだ。しかしケロロは一回でやめるどころか、  
すぐに夏美の中で硬さを取り戻した。夏美の言葉も聞かないまま後ろに回り、角度を変えて進入してきた。  
熱いコーヒー缶を思い出した。  
「はぁうっ!?」  
またもカエル独特の跳躍力を足の付け根で発揮され、夏美は立ち上がることもできなくなった。  
地面などなくても、宇宙を股にかける星の軍曹の強靭な足腰の筋肉は、男根の  
根元を支えにして女体を存分に跳ね回った。夏美はいつしか自分の前に戻って  
きていた小さな身体を両手で、あるいは体全体で股に押し付けるようにして、  
存分に熱い肉棒を味わう。  
「夏美殿。我輩の…お尻も、さっきみたいに触って欲しいであります」  
夏美は渇いた喉を使うこともなく、体を起こした。互いに向かい合う繋がり方、  
座位のようになる。夏美は小さな子を抱きしめるように屈み、子宮と同じくらい  
の高さの場所を探る。つんと立ったぬるつきが触れた。ケロロの背筋が真っ直ぐ伸びる。  
「なつみどの、そこ」  
 
 夏美がさらに屈み、汗ばんだ掌が降りていく。ケロロの顔に乳房が押し付け  
られた。まん丸の顔が左右の乳房の間に挟まれる。夏美はぶるぶると震える  
ケロン人の尻尾を、先程のことを思い出しながら、上下に擦った。  
「あうっ…こんなこと、…だってしてくれない…」  
ケロロは上ずった声で口走る。挿入しながら、尻尾を弄られるなど。おおぅ…。  
考えるだけでっ…。我輩っ、我輩っ…。  
追い詰められたケロロは、案外早く夏美に尻尾愛撫の中止要請をすることになった。  
次の交わり方だが、一度は死に掛けたケロロに一番負担をかけない方法は、夏美が  
上になることだった。それも、腰の真ん中ピンポイントで。今度はケロロが足を  
開く番だった。体の中で一番熱くて硬くて弱い部分を提供する。潤んだ目の夏美に  
見下ろされ、しばらく張型役に徹していたケロロは、しばらくして目を見開き、  
夏美の舌が咥内に侵入するのを許すことになった。夏美は体をくの字に折り曲げて、  
自分からカエル型宇宙人の唇を求めてきた。  
秘部から肉芽を通して体全体に増幅されて発信される快楽が、夏美からすべての  
しがらみを取り去っていく。  
ああああああああああああああ。  
夏美は中腰でやっとベッドから這い降り、中腰、蟹股のまま、当てもなく部屋を  
彷徨い、がくがくと腰を震わせて嬌声を吐き出し続けた。どこまでもケロロが  
ついてきたが、もはやそれを気にする理性が、なかった。あって当たり前の  
ものだった。アンコウの夫婦もきっとそうだろう。最後には後ろ向きに足を  
一杯に伸ばして跳躍し、仰向けに着地した。体がエビのように反り、軍曹は  
容赦なく高地と塹壕を同時攻略する。力なく腕をシーツに打ち付けながら、  
何度目かの絶頂を迎える。ここで二人はやっと「水分補給」のために一時  
休戦に同意した。避妊具はぱんぱんだった。結局、抜かずに夏美は八回達していた。末広がりで縁起がいいネ♪  
 ようやく平静を取り戻したケロロと夏美。台所でウーロン茶を二人で飲む。  
やっと人心地がついた。着替えようということで、シャワーを浴びてから  
ダークグリーンの生地に大きな黄色の星がついたシンプルな一枚のTシャツを、二人で着てみる。  
ケロロの胸板に夏美の胸がぴったりくっつく。Mサイズに二人、もうぎゅうぎゅうだ。  
もはや新婚の悪ふざけだった。悪ふざけついでに、もう一戦交えようかという気にもなる。  
同じ目線で語り合う。夏美がいたずらっぽく釘を刺す。  
「ねえ…ママや冬樹のいるところでは、うまくやりなさいよ」  
「了解であります」  
片手で敬礼、片手で夏美の乳首を握りながら、爽やかな笑顔で言い切るケロロだった。  
「今度は正常位でいくでありますかな」  
「えっ?」  
さっきやらなかったっけ? と夏美は思ったが、ケロンの正常位は地球で言う後背位ということだった。ひとしきり笑った後、始めようとした矢先…。  
「アリョ〜」  
媚薬の副作用により、ケロロは一昼夜の眠りに落ちてしまった。  
次に目覚めた時、傍らには学校から帰ってずっと看病してくれていたらしいな夏美の寝顔があった。  
 
 義弟となる冬樹の七五三の衣装を仕立て直した羽織袴を身につけ、白無垢の  
花嫁を待つケロロは、春の日の陽射しの中でつややかな緑色の肌を風に当てて  
いた。洋館風のこぢんまりとした式場の控え室の窓からは、新緑ののどかな  
風景が臨める。世は太平だ。  
「どうしてこんなことになっちゃったのかナー…」  
大きな夜色の瞳に、舞い散る桜の花びらが映る。あれから何年も経った。  
その間に、何千回夏美とHしたのだろう。もう、もともと二人の肌は一つのも  
のだったのではと思うほど、毎日のように隠れて交わっていた。それにこの数  
年の間というもの、何回ガンプラやサブカルチャー関係の記事を書いて雑誌に  
載せただろう。最初は視点が面白いということから採用されたのだが、ほかの  
仕事も引き受けたりしていて、ついに何やかんやで食べていけるようになって  
しまった。何より、ケロロは単なる家事担当から、完全に日向家の一員になっ  
てしまっていた。こんなことでは、結婚話がまとまってしまうのも無理はないだろう。  
 そもそも自分はこの星を侵略しに来たはずだった。ところが、本星の政変で  
ポコペン侵略は一旦凍結され、現在は駐在武官のような立場になっている。  
敵性宇宙人の監視や情報収集も立派な軍務だ。他にも大事なことはたくさんあったが、  
すべては本星からの指令を待つほかないだろう。それより式に呼んだ自分の両親は  
ちゃんと着いただろうか。宇宙郵便が遅れたせいで、ケロンからの出発がぎりぎりに  
なってしまったという。道に迷っていないだろうか。冬樹に駅まで迎えに行って  
もらったが、ちゃんと会えただろうか。それだけが不安で、自分も玄関がよく見える  
ここに留まっているのだった。しばらくして、軽いノックの音がする。  
「どうぞ〜」  
ドアが開いて、笑顔の式場の係員が顔を出す。ドアを開けた後ろから、綺麗に化粧を  
施して一世一代の花嫁姿を見せた夏美に、ケロロはこの光景を一生忘れないだろうと思った。  
その時、表に車の止まった音がした。開いた窓から冬樹のものらしい青年の声と、  
懐かしい故郷の言葉で話す中年の男女の声が聞こえてくる。ケロロはぱっと輝くような笑顔を見せた。  
 

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