そのころ日向家近辺は、カエルたちの鳴き声に包まれていた。  
・・・といっても別に、軍曹達が共鳴していたわけではない。  
 
「あ〜もう、うるさい!このカエルの声なんとかならないの?!」  
 
夏美が耐えかねて耳をおさえ、叫ぶ。  
 
「ハハ・・・。たしかにスゴイ声だよね。」  
「笑い事じゃないわよ冬樹!・・ただでさえ普段からカエルどもには悩まされてんのに、このうえ本物の蛙まで来られちゃたまんないわよ!―――いったいどこから聞こえてくるのかしら?」  
「ああこれ、東谷センパイの家からだよ。」  
「――――小雪ちゃん家、から?」  
 
冬樹が読んでいたオカルト本を脇において、説明する。  
 
「あのね、宅地造成で近所の池が埋め立てられちゃったんだって。いま蛙の繁殖時期だから、せめてその間だけでも・・・ってドロロがおとなりにため池を作って保護してるらしいよ。  
卵が生まれたら田舎へつれていくって言ってたから、それまでの辛抱だよ。」  
「う〜ん・・・まあ、そういうことなら・・・。」  
 
夏美がしぶしぶ納得する。  
 
「―――まあ、本物の蛙にツミはないもんね。・・悪ダクミするわけじゃないし。  
オフロにでも入って気分をリフレッシュしようかな。」  
 
本の続きを目で追いながら、冬樹もニッコリ笑った。  
 
「そうしなよ。さっき軍曹がおフロ洗っていたからちょうどいいんじゃない?」  
 
・・・さて、その日のフロ掃除当番・われらがケロロ軍曹は―――  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
「ゲロ〜〜〜今日もピカピカに磨き上げたであります!」  
 
 ケロロ軍曹は、腰に手をあてて自分の作業の成果をながめた。あたりに満ちる蛙の鳴き声が、こころなしか自分の偉業をたたえる歓声に聞こえる。あとは洗剤を流すだけだがまだ水が冷たいこの時期、水作業は  
正直気が乗らなかった。――我輩こんだけガンバッたんだし・・あったか〜いお湯で流すくらい、イインジャネ?  
 思い立ったら即座に実行!が彼・ケロロ軍曹のポリシーである。  
過去にそれで何度も事件を引き起こし、そのつど痛い目にあってきたわけであるが―――。このときも即刻シャワーの給湯で熱い湯をひねり出した。モウモウと湯気が立ち、洗い場の鏡が白く曇る。  
からだを包む湿気に気分がますます高揚する。うかれて石鹸を足に履き、軍曹はかるくスケートのようにすべらせてみた。  
――――――ヲヲヲヲッ!ちょ、ちょっとこの動き!なんかドムのホバーみたいでカッチョイイでありますッ!  
 
「フハハハハハッ連邦の白いモビルスーツめ!覚悟するでありますッ!」  
 
 湯の噴出するシャワーの首をオルテガハンマーのように両手で頭上にかかげながら、調子にのって洗い場をところせましと滑走する。のけぞって高笑いをしようとしたところで、ふいに足元の石鹸がはずれた。  
 
「ゲロ―――――――――――――――ッッ!!」  
 
 大きくもんどりうって水道の角で腰を打ち、そのままフタが半分閉じられた浴槽の中へと転がりこむ。シャワーの首がお湯を吐き出し続けたまま床に転がった。立ち上がろうとしたがあまりの激痛に声が出ない。  
 いれちがいに夏美が入ってきた。この惨状をみて、怒りに声をふるわせる。  
 
「・・・あのボケガエルッ!またやりっぱなしでッ!!」  
 
夏美は軍曹の存在には気がつかない。  
(・・・・な、ナツミドノッ・・・たすけて、でありますっ・・)  
「お湯がもったいないじゃない!――あとでとっちめてやらなきゃッ!!」  
 
 夏美は浴槽の栓がはまっているのを目で確認して、シャワーのカランを水道側に切り替えた。  
もうすこし奥まで覗きこんでいさえすれば、軍曹が浴槽の隅で倒れていたのを見つけられたであろう。  
だが・・・怒り心頭の夏美にそんな余裕はなかった。  
(ナツミど・・・・ゴボッガボガボゴボゴボ・・・ッ)  
―――この瞬間、せまいオフロ場はさきほどからのシャワーにより充分暖められ、局地的に軍曹の故郷であるケロン星の湿度にかぎりなく近づいていた。この湿気とあたりに満ちみちる発情期の蛙の鳴き声・そして  
夏美にたいする暗い復讐心がケロロ軍曹にかつてない変化をもたらし、やがては甚大な被害を自分にもたらすことを、このときの夏美はまだ知るよしもないのであった―――――。  
 
 
 そして夏美は鼻歌を歌いながら、脱衣所でシャツを脱いだ。  
―――ん〜、なんか・・また育っちゃったかなァ。ママみたいになると体育の授業ん時にからかわれるし可愛いデザインの服がなくなるし・・・困るなァ。  
 タオル一枚をからだに巻きつけ、湯気に満ちたオフロ場のガラス戸をひらく。洗い場にしゃがんで水道のお湯を止める。かかり湯をしようとオケを湯船に沈めかけると、ガツンとかたい手ごたえを感じた。  
・・・・・ガツン?  
 
 とたんにオフロ場にダース・ベイダーのテーマが高らかにひびきわたる。  
オケを押しのけて水面が渦をまき、異様な盛りあがりをみせた。あまりの出来事に  
あいた口がふさがらない夏美をよそに、水面は高まりつづける。そして・・・。  
 
ぐぽ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!  
 
――――――――嫌な機動音をひびかせて、ケロロ軍曹が登場した。  
 
「ち、ちょっとボケガエル!なにしてんのよッ!」  
「―――それはこちらのセリフであります・・。キュートでケナゲな我輩がコシを強打して湯船で倒れているにもかかわらず、カイホウどころか熱湯をお見舞いしてくれるとは・・・。  
我輩チョーブッチギレでありますッ!・・オノレ夏美殿、いやポコペン人日向夏美め!今日こそ目にモノみせてくれるわァ〜ッ!」  
 
コホオォ―――ッと不気味な呼気を吐き出しながら、軍曹が両手ぶらリ戦法のかたちで体をゆらめかせる。  
 
「いいからさっさと・・・出ていきなさ――いッ!!」  
 
 状況を思い出して、夏美が渾身のパンチを軍曹のボディにあびせかける。当たった瞬間、拳がぬるりと滑った。いつもならガラス窓を突き抜けて、おとなりまで吹っ飛んでいくはずの軍曹が今日に限っては微動だにしない。  
 
「・・・な、なんでッ?!」  
「フ、フフフ・・・ふはははははッ!今日の我輩はひとあじ違うのだよ・・・ッ!」  
 
 夏美は驚愕の表情で軍曹を見つめる。つやつやつやつや・・と、肌に異様な光沢があった。――こ、これってもしかして・・・梅雨の時のアレ?!  
 
「そのとおりッ!アノ頃の我輩だ!しかも・・いつものアノ頃ケロロをマスターグレエドとするならば今日の我輩はパーフェクトグレエドVer,Er!(←十八禁仕様のことらしい)!!  
―――発情期のカエルさんたちのタマシイの鳴き声が、我輩に原初のパウァーを思い出させてくれたゼ・・!覚悟するがいい日向夏美ッ!これから大人仕様の我輩がッ!ちいさなお友達立ち入り厳禁なスッゲーことをしてくれるわッ!!」  
 
 メゲメゲメゲメゲ・・・とこれまた嫌な呼吸音?をたてながらじりじりと軍曹が夏美に迫った。からだに巻いたタオルの端をむんずとつかまえる。  
 
「さ・・・させるものですかッ!」  
 
夏美も必死でタオルをおさえる。軍曹の手を叩き落そうと手が触れた瞬間、またもやヌルンと滑った。  
 
「ハアァ―――ッッ!!!」  
 
奇声とともに、唯一の砦であるタオルを奪われてしまう。  
 
「イヤアァ〜〜〜〜〜〜〜ッ!」  
 
 夏美はあわててからだを隠してしゃがみこんだ。この格好ではもはや反撃できない。  
 
「みるがいい日向夏美。我輩のこの動きを・・・ッ」  
 
 軍曹が左右にゆっくりとからだを振りはじめる。その手の動きはまるであの伝説の男のように北斗七星をかたちづくっていた。しかもだんだんと動きが速くなる。それをみているうちに夏美の頭が、なぜだかぼうっと霞んできた。  
 
「さあ、とりあえずは数々の無礼を・・・土下座して謝ってもらうでありますかな?」  
「バ、バカいわないで。それはアンタが・・・ええッ?!」  
 
 言っているそばから夏美のからだが、意思とは逆に軍曹に向かってひざまずく。  
 
「ゲーロゲロゲロ。よい格好でありますな。夏美殿が催眠術や洗脳電波にかかりやすい体質であることは夏の海岸や623のペンですでに立証済みであります!  
・・・さて、ここはエロパロ板にふさわしく、我輩にご奉仕をしてもらうでありますかな?」  
「・・・そ、そんな――ことッ・・・んッ、んんんッ!」  
 
 浴槽のヘリにドッカと座りこんだ軍曹に、夏美のからだが引き寄せられる。  
ひざまづいたかたちのまま、意思に反して夏美は自分から軍曹に唇を重ねた。黒々とひらいた瞳孔が大写しになる。そのしまりのない口に自分から舌を挿しこむ。自分のしていることが信じられない。だが、止められないのだ。  
 
「んう・・ッ・・・ん、ん〜〜〜ッ!」  
 
夏美のキスの奉仕を受けていた軍曹が、いったん口を離してふんぞりかえった。  
 
「―――どうしたのかネ?夏美殿・・・おててがオルスでありますよ?  
我輩の股間のMSM−04アッガイの、ヘッドユニットの面倒を見てもらえますかな?  
・・・大気圏突入時に耐熱フィルムは出ないが、かわりにもっとスッゲーシロモノが飛び出すことでありましょう。ゲロゲロゲロ・・・。」  
 
 言葉の意味はよくわからないが、なにやら非常にヒワイなことを言われているらしい。  
ぶっとばしてやりたいが、からだがいうことを聞かなかった。  
 それどころか、いわれたとおり軍曹の下肢のあいだに手が動いてぎょぎょっとする。  
自分のゆびがその未知の器官をそっと包み、前後にさするのを夏美は気が遠くなるような思いで眺めた。  
手のなかのその器官が徐々に膨張する。手を動かしつづける夏美の顔に、ケロンスターのついた白い腹が押し付けられる。  
このガンプラ職人のからだに染みついたシンナー臭が、鼻をついた。その腹部にキスをする。というか、させられる。  
 手の動きはそのまま、だんだんと自分の顔が下方にむかって下がっていくことに夏美は慄然とした。  
 
「夏美殿・・・。表面処理はていねいに、であります。バリが残っているとあとで引っかかってイタイ思いをするでありますよ?」  
 
 この場合、実際には丁寧にすればするほど逆効果なのであるが――――。  
夏美にはそんな知識もなかったし、そもそもそんな考えをめぐらす余裕もなかった。  
 そんなことより自分の唇が、白い腹部のさらに下―――股間のアッガイにむかってすすんでいくことにパニックに陥る。  
夏美のちいさな唇がふるえながらひらかれる。アッガイのモノアイ軌道路に舌がふれた。  
舌の先がモノアイ軌道路をつたって、つつつッ・・と105mmバルカン砲射出口をからめとる。唾液が糸をひいた。  
 さらに伏せようとする自分の頭を懸命に阻止しようと努力する。  
夏美の逡巡に業を煮やした軍曹が凶悪な糸目になって、その頭をガッシとつかんで引きおろした。  
 軍曹のパーフェクトグレエド・アッガイが夏美の口の中を乱暴に侵略する。  
 
「んッ!んぐッ・・・ん―――――〜〜〜〜〜〜ッ!!」  
 
そのくるしさに涙目になりながら、夏美は心のなかで必死に叫んだ。  
 
―――そんな、このままいったらあたし・・ッ・・ダメ!こんなのダメェ〜〜〜ッ!!  
 
 からだの強制するままに、身をのりだした夏美のひざがふいにすべった。洗い場の床がそこだけ白くぬめっている。  
―――じつはその部分は、軍曹がドムごっこをした際に流しそこねた石鹸の跡だったりするわけなのだが・・・。そんなことは夏美は知らない。ただ滑ったことでからだのバランスを大きくくずし、そのまま軍曹の腹にもろ頭突きをカマすかたちになった。  
 
「オウッ?!」  
 
 そのまま軍曹ともども、浴槽になみなみと張られた湯の中へなだれこむ。  
夏美のくちのなかに、あきらかに湯ではない苦い液体が満たされた。と、同時に  
湯へ飛びこんだショックでからだの拘束が解ける。当然夏美は、ひたいに青筋を浮かべて立ちあがった。  
 
「ボ〜ケ〜ガ〜エ〜ル〜〜〜ッ!!!」  
 
 湯船にへろへろと浮かぶへっぽこ侵略者の頭部を片手でわしづかみ、そのまま持ち上げる。  
その憤怒の表情に軍曹は、ややビビりながらも果敢にファイティング・ポーズをとった。  
 
「おッ・・や、やる気でありますか?このパーフェクトグレエドな我輩に、かなうものなら・・・。」  
 
 夏見が空いている手で、オフロ場の窓をガラリと開けた。―――春間近とはいえ、空気はまだまだ冷たい。  
たちまちオフロ場の暖気が消え、ツヤツヤと照り輝く軍曹の肌もその光沢を失う。タオルを巻きなおした夏美が、じりじりとせまった。  
 
「アンタ・・・。ぶつけた腰はもう平気なの・・・?」  
「ゲロッ?―――イヤもう、なんともないでありますが・・・・。」  
「・・・・倒れてたアンタに気づいてあげられなくて悪かったと思うし、そこは反省してるわよ?でも・・・でもね・・・・ッ!」  
「ゲ・・・・ゲロ・・・・夏美殿・・・?」  
「飲んじゃったじゃないッ!どうしてくれるのよバカ―――――ッッ!!!」  
「ゲ――――ロ―――――――――ッッ!!!」  
 
 
 うなりをあげる夏美のアッパー・カットをまともに浴び、軍曹はキリモミしながら戸外へと飛んだ。  
蛙たちの合唱がひときわ大きく聞こえる。昼間だというのに、軍曹の目には満天の星空が見えた。  
 
――ワァ、きれいなお星サマだナァ。北斗七星が良く見える。その脇に輝くちいさな星までも・・ウフフフ・・・。  
 
 
 
 
―――それ以降、ケロロ軍曹が「アノ頃ケロロ・大人仕様」になったという話は聞かない――  
 
          [END]  
 
 

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