(やったぁ、大接近!!)
二人きりの日向家のリビング。計画では、邪魔な連中は当分来ない、様にしてある。
ごくごく自然に冬樹の手の上に自分の手を重ねる桃華。
熱くなってくる冬樹の手の体温を感じながら、作戦の成功以上を確信して桃華は(ニヘ〜)としていたのだが…
「……あ、あのさぁ……」
「?」
「あのさ『桃華』ちゃん。正直に本当の事言うよ…その…僕、好きな人が……」
ニヘ〜の笑顔のままショックを受け固まる桃華。
「出来たっていうか、気付いたってほうがいいかな。今まで身近すぎて……」
「…………………………わ、」
「でも、でもね。僕はその娘の事を本気で好きなんだ。これは絶対(キッパリ)なん…」
「!!私っ!!ダンゼン応援しますねっ!!冬樹君っ!!」
「………え?…って…早いよ…ちょっと…まだ続きが」
「!あ、スイマセン私ちょっと用事を。……あっっっと!」
涙を見られないようにリビングを飛び出し……かけるのだが、机につまづき、
「あのね!」「あ、の、ゴメンなさいゴメンなさい」有無を言わさず飛び出す桃華。
「…違うよ!つまり…その娘っていうのがぁ…」
聞えてない桃華は、顔を見せずに部屋を出てしまい、冬樹はひとり残される。
「……聞いてよ最後まで…西澤さん……ボクは…」
『特装版マル秘テクニック 告白は演出で決まるっ!であります』が手から落ちる…
扉の向こうでうずくまる桃華。そして…
(…私、私これから、どうしよう?)
A:許せネェ!誰だか知らねェがアピール不足なら肉体で勝負だ。
裏桃華に心をまかせて部屋に飛び込み押し倒す。
B:冬樹くんの気持ちを尊重しなきゃ。
自分に未練を残さぬ為、悪女になりきり遊びまくる。
――――選択を迷う桃華だが、正解はあっけなく「C」だった。
C:即効で誤解を解く冬樹。そして二人はハッピーエンド
と思いきや、そこから一向に関係が進まない。
ついに桃華は偶然を装い、冬樹を乱パに誘い出す事に。
つづく。
「あッ、冬樹く〜ん。こっちですわ〜」
「桃華、ハァハァ御免よ、遅くなっちゃってハァハァ」
――――5年後
不思議な偶然で、なぜだか私立の大学に一つだけ合格した冬樹は、なぜだかそこに入学する事になり、
なぜだか一緒に入学する事になった桃華と、必然で恋人関係になった。
「オカルトパーティーっていう位ですから、薄暗い時間の方が雰囲気ありますわ」
「でも、そこ会員制なんでしょ。聞いた事無いサークルだったけど…よくチケットが手に入ったね、桃華」
冬樹、と呼ばれるのは姉ちゃんみたいで抵抗があると言われて、桃華はずっと、冬樹くん、と呼んでいる。
名前を呼ぶ度に、甘えた気分になれるので実は気に入っていた。
「(くるぅり)冬樹くぅ〜ん。西澤グループを舐めていませぇんかぁ〜。
非公開制の倶楽部だからメジャーでは無いですけれど、そこが狙い目なのでぇ〜す」
「ウンウン、そうだよね。あー桃華が恋人でよかったー」
ぎゅっと手を握り赤くなる冬樹。…だが、そこでオワリ。
抱き寄せるでもなく、キスを交わすでもなく、それ以上に進んだ事が無いのだ。
(手をつなぐ度に、私の胸の奥に火が灯る…でも、その火は燃え上がる事も、消えてしまう事も無く、
ずっと私の身体の中で燻ぶり続けているの。ずっと、ずっと……)
カラダはもう男と女で確かに恋人関係なのだが、中学校から進展の無い二人の関係に、桃華はついに決意した……
「……えーと、ここ。この建物ですわ」
「…普通だ…いやいや、きっと希少価値が高(ブツブツ)…」
建物の中に入ろうとする二人の前に、ヌッと巨体の男が現れる。
「……………いらっしゃいませ………………こちらへどうぞ………………」
(び、びっくりした!案内係の人かな?)
(脅かすんじゃねぇよ。これからの事で緊張しまくってるてぇのに)
男は関係無いかのようにどんどん先へと歩いていく。
「なんだか、ずいぶん奥に行くんだなぁ」
先行する冬樹の後ろ姿に桃華は心の中で謝る。
(ごめんなさい、でも私イマノママなのは嫌なの。ガマン出来ないの……)
「……この部屋が会場で御座います。それでは……ごゆっくり」
男にグイと部屋に押し込まれ、後ろで鍵のかかる音がした…
「?えぇ??こ、こ、これ、これ、は???」
かなり広い部屋なのに、ムンとするような熱気と臭気。複数の男と女の激しい息遣いに混じってくる声。
薄暗い部屋の中で何が行われているか、見えなくとも理解できた。
(す、すごい…解ってるけど、やっぱりドキドキするわ)
奥の方は良く見えないが部屋の各所に紫色の明かりが灯されている。そして周りに映し出される男女達が…
「ぅぅあぁぁぁ!」
いきなりの声に二人が右を向くと、ぶるんと豊満な乳房が揺れるのが見えた。
「あぁ〜いいぃぃ!」
自分の手で乳房を揉みしだきながら女は腰を上下にさせる。
女の白い足の間から垣間見える男は、ハァハァと熱い吐息を漏らしながら女の秘裂に指を潜り込ませる。
「いいのォ〜」パンパンと音を響かせながら女は妖艶な笑顔を浮かべていた。
そして女はその淫靡な笑みをこちらに向ける。
「ハッ。うぅぅ……」思わず視線を逸らし、冬樹は下に俯く。
だが、視線の先にはGパンのみの半裸の女が寝そべっていた。
「んむっ!んぐっ…ふぅっ、んふぅっ!」チュブチュブと卑猥な音が響く。
男の腰に手をかけて女の頭が揺れる。「ふうんっ、んっ、クチュ、ピチャ…」
口元から唾液が垂れ卑猥な音がより一層大きくなる。女の空いている左手は自分のGパンの中にあった。
(すごいわ……こんなことまで。わたしもいつかは…)
「あっ!あっ!あはぁ!イク!イクぅ」
大きな歓喜の声に顔を上げると、部屋の中央に長髪を乱した白い姿が見えた。
彼女は恍惚の表情で身を震わせると男の影がゆっくりと離れていく。
目が慣れてきたのだろうか、その周りに男が2人いるのが見える。
「はぁ…は、ああぁ……次…早くっ、んっ、んん〜っ」
1人が唇を責め始め、もう1人は横から乳首を愛撫する。
「んん〜っ…ぷはっ!はあっ、ああ……こっちにもぉ〜っ!!」
暗がりから、別の3人目の男が待ってましたとばかりに加わった。
女の秘裂にペニスをあてがうと立ったまま突き上げる。
「あうっ!ふぅっ!奥に、奥にあたってっ!」口からだらしなく涎を流しながらも女の表情は潤いを増していった。
(これが…快楽なんだ)
理性を吹き飛ばすその感覚に桃華は小刻みに震えた。
痴態を見せ付けられ、我慢していたのだが身体が(あぁ…)求めていた。
眼前で繰り広げられるあまりにも淫らな光景。
無意識に股間に指を這わせようとしていたのに気付き、こぶしを握り締めて堪えた。
(そうよ!これよ!これなら冬樹くんだって……)
見えない手が身体を這い回り、湧き上がる衝動に翻弄され身じろぎする。
(この身体の疼きを抑えられるのは、ただ1人だけ…冬樹くんしかいない!
そして、今ならきっと冬樹くんも、私を、『桃華の身体』を、求めている筈よ!
さらに周りの雰囲気で罪悪感や倫理感も低下!どうにでもなる!さぁ来て!冬樹くん!)
だが、冬樹の方を見ようとするも目が離れない…それは冬樹も同じだった。
あっけにとられ赤面しながらも、瞬きもせず状況に見入っていた。
「はあっ、はあっ、ああ……じゃあ…こんどは」
促されて横にいた男は仰向けになる。女は腰の上に跨ると、ゆっくりと腰を降ろし
次なる快楽に身を引きつらせた。「あっ、あふぅっ、あっ……」
もう1人いた筈の男はいつの間にか後ろで別の女と、いや男と?
よく見ると、さっき彼女を愛撫していたのは女だった。(え…?じゃ女同士で、い、いいの…これって?)
現場の設定はポール任せだったので、詳細な人選は桃華は全然知らなかった。
(??女同士って………そういえば東谷先輩…)
桃華は話しかけようとようやく冬樹を見上げる。
「あっ…」
桃華の視線は冬樹の腰で止まった。そこはもう服の上からも分かるくらい隆起していた。
「ああ…」桃華は震える手を伸ばしかけるが、ハッと我にかえる。が、視線は止まったままだ。
(こんなになって…。それに…)まるで大きさを確かめるように桃華のしなやかな指が空中で揺れる。
その表情は酔ったように紅潮し、瞳は畏怖と期待に満ちていた。
(今すぐ…冬樹くんに飛びつきたい……あぁ計画が……でもすぐ…シタイ……でも)
久々に自問自答する桃華。
(舐めたい。イヤ駄目だっ!本にも書いてあっただろ。それはまだ先の段階だっ。
イイエもう既に恋人同士ですものっ!一心同体なのよ。自分の指をしゃぶるようなもんだ。問題ねェ!
ダメダメ!冬樹くんが望まないなら、自分からは絶対駄目よっ!)
混乱する桃華。興奮した上に、この温度と湿気のせいか、ぐるぐると背景が回る。
半分ケモノの眼に変貌し、獲物を目の前にした女豹のオーラを漂わせていた。
「あらぁ、可愛いわねボク……なーに彼女がウブで始めてくれないの?かわりにお相手になりましょうかぁ?」
秋ママを超える巨乳の女性が妖艶な微笑を浮かべ全裸で冬樹に寄って来る…「ダっ!」
「ダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
会場に響き渡る絶叫。近付いて来た女を桃華は全力で突き飛ばす。
そのまま壁に激突した女の周囲にばらばらとハンガーやコートが散乱する。
全員が振り返り注目を浴びるのだが、皆ハッとして、気付かぬフリを決め込み行為に戻った。
(しまったぁ、だめじゃないのワタシ!予定では…)つい無我夢中でキッカケ役の女を突き飛ばしてしまい、桃華は後悔する。
(冬樹くんからソノ気になってくれないと意味ないのよ!!)
「……………そうか。わかったよ」
「えと……えへへ…その、なにが?」
すっとぼける桃華に、冬樹は女の方を指差す。
崩れ落ちたジャケットからこぼれたIDカード、そこに僅かに『NPG』の反射文字が…
「それと、恋人である桃華の気持ちをわかってなかった事も、わかったよ」
「…え…冬樹くん…」
「僕たちは二人とも同じ事を考えていたんだね」
「…あっ!あん…ふ、冬樹くん…」冬樹の手がいきなり桃華の胸を掴んだ。桃華がゾクゾクと背中を振るわせる。
実は冬樹もあと一歩を踏み出す事が出来なかっただけ…
もう二人に言葉は要らなかった。そして、ごくりと唾を飲む。
(じゃ……)(うん……)
見詰め合ったまま、溢れる想いを確認しあう。
「あ!あのぉ……脱ぎます……から……」
桃華は服に手をかけ、慌て気味に次々と脱ぎ捨てていく。
が、何かを思い出し桃華は手を止めた。そして微笑して切なげに囁いた。
「冬樹くん…………桃華の……カラダ……見て…」
ぱさりと、全てが脱ぎ落ちる。女としての成熟が始まったばかりの裸体。
落とした服から足を抜けさせると、桃華は羞恥と期待感で頬を真っ赤に染めた。
最近の桃華はこの時の事をずっと考えていた。まずああしよう、そしてこうしよう。
ここに訪れる前から計画はしていたのだ。これはその予定を実行しただけに過ぎない。
そう。こうなるのを期待してここに来たのだから。しかし……
「…………やっぱり…恥ずかしいから……あんまり……見ないで」
顔を手で覆った。(ダメだわ…やっぱり想像とは恥ずかしさが全然違ってる……)
計画を妄想し、あげくに部屋で自慰に耽る事も何度もあった。
妄想の中の冬樹の前で、もっと過激な行為に及ぶ事すらあったのに。
計画の一歩目である、桃華の裸体を見せ付ける事すら現実には難しい。
それと同時に、現実と空想との境界が少しずつハッキリとしていくのを感じる。
(……そう、これは夢じゃないの。恥ずかしさも愛しさも全部現実……)
確実に現実を認識し、桃華は顔を上げ冬樹に言う。
「わたし…冬樹くんとひとつになりたいっ!!」
全裸で冬樹の元に飛び込み、小声で付け足す。
「…そして全部、アナタのものに…なりたいの…」
冬樹は静かに桃華の頭をそっと撫でて、キスをする。
唇を塞がれた瞬間、桃華の身体を痺れが駆け抜ける。
「っっ!…ん、んううっ!」桃華が舌を絡ませてきた。べちゃべちゃと音がして、唾液が交換される。
「んっ!んぷぅっ…んっ、んっ、んっ、んふぅっ……!」
「んんぅっ!ふぅっ…ちゅぷっ…」
桃華の舌が冬樹の口の奥まで侵入し、熱い感触が口内を嘗め回す。
(なんだか、私キス慣れしてる?……こんな激しいキス、初めてなのに…)
思考が定まらず興奮した桃華は、積極的に腕を回して冬樹に絡み付いていく。
「「んぷっ…んっ…んっ…」」
いつしか互いに舌を絡め、口の中でお互いの唾液を混ぜ合わせていた。
ちゅぷちゅぷという音が周りに響き、舌の感触と唾液の味がさらに興奮を引き出す。
「ぷはっ! はあっ、はあっ、ああ……っ……」
やっと解放された。熱い吐息が桃華の口からあふれだす。
唾液が糸を引いて唇と舌をつないでいる。それを桃華は恍惚の表情で見つめていた。
冬樹が腕を離すと、桃華は腰が砕け座り込んでしまった。身体に力が入らない。
背中からそっと抱きとめて「キス…好きなの?」と桃華に聞いてみる。
喉をなまめかしく動かしながら桃華は答える。「う…ん…そうかも」
そして冬樹は背中から腕を回し、桃華の見事に成長した膨らみへと手を伸ばす。
「大好きだよ……桃華の事」
その台詞だけで、桃華はポーッとなってしまっている。
冬樹の両方の手が乳房を覆い、優しい愛撫が始まる。
「あはぁ……んっ……うん」柔らかい乳房を揉みしだかれる度に桃華の興奮が高まっていく。
成熟した乳房は冬樹の掌の中で何度も形を変え、ゆさゆさと揺れている。
「とぉ……もっとぉ…」
冬樹は先ほどの優しい愛撫とは対照的に今度は激しく揉みしだいた。
「きゃあっ!ああっ…はあぁぁぁんっ……うぅぅんっ…」
さらに激しく乳房を弄び、それと同時に桃華の乳首をかすかに触れるように擦る。
「あっ!……あぁ!………変な感じ……」指先で、緩急をつけ、微妙な力加減でくすぐる。
「はぁっ!あっ!はぁ…とろけるぅ…おっぱいのぉ…んっんっんっっあああっっ!」
桃華の声が高まり、切なげに首を振る。
「冬樹くん…あ…あ………と…ろけ………」
「どう?」
ゆっくりと冬樹の方に振り返るその顔は、既に悦楽に支配されていた…
「わた…わたし、……も、もうダメかも……」
「ダメ?」
早く私の中に入れて欲しい。限界を訴えかける懇願の表情に、髪の毛に指を這わせたあと、もう一度軽くキスをした。
すると桃華は、いきなり思いっきり身体中を絡ませて来た。
そして、自分の出来る限りの甘えた声で「キテぇ」とつぶやいた。
冬樹は秘裂をほんの少し中指で撫でる。たった少しの刺激だけなのに、桃華の身体は大きく反応する。
キラキラとした粘着質の液体が、もう十分なほどに指に絡まっている。
位置を確認する微妙な指の迷いが、膨らんだクリトリスに僅かに触れる。「ひゃんっ……」
痛みを感じたのか、それともそれ以外の何かを感じたのか、桃華は冬樹の下からそろそろ抜け出し、自分で自分の秘裂の襞を広げた。
「ここです…ここに、冬樹くんのをください」「ここ?」
「ぁあ!…そこ、うん、そこにっ!!(あぁぁぁはやくぅぅ)」
桃華は冬樹を誘うように腰をモジつかせ、さらに自分の性器を割り開きピクピクと震える。
ようやく場所が理解できた冬樹は、濡れそぼるその場所にペニスをあてる。
桃華はうっとりとした瞳で見つめて、脚を胴に絡みつけた。
ニチャ…という音とともに、亀頭の先が小さな膣口に潜り込んだ。
(っ……いたっ……)ほんの少し挿れただけなのに、ずいぶんな苦痛だ。
「桃華、大丈夫?」
冬樹が声をかけると、桃華は真っ赤な頬で笑って答えた。
「うん、平気………」(平気よ。これが私の待ちのぞんだ瞬間ですもの)
一方で苦痛、一方で快楽を感じながらも、桃華にとってそれは両方歓喜であった。
「わたし、大丈夫…だから。…これで冬樹くんと、一つになれるんだから」冬樹は桃華の両手をしっかり握り締めた。
「桃華!!」冬樹は一気に腰を動かし、狭い穴の中から桃華を貫き通す。
勢いよく挿入されたペニスが、桃華の狭い膣道の最も深い所に達した。
下腹部いっぱいに感じる侵入物が桃華の全てを書き換えるかのように襲ってくる。
だが、十分過ぎる愛液により、襲ってきたのは苦痛より快楽の方が遥かに大きかった。
(!!な…なんて、気持ちいいの!!)
苦痛を通り越して襲ってきた快楽に桃華は身悶えした。
「……はっ……ふぅ……動いて……はや、くぅう……」
冬樹は改めて桃華を見る。目尻に涙を浮かべているのは苦痛のせいか。
逆に冬樹は、あまりの快感にもう少しで発射しそうだった。
「はっっ、もっと…ツヨくぅ…もっとぉ!…キモチいい……もっと……」
桃華がどこか遠くを見るような眼で、そう呟いた。
冬樹は快楽に身を委ねる決意をして、身体の求めるまま腰を動かし始めた。
「あぁ…はっ…はっ…ふゆ…きっ…くん…ふゆ…きっ…くん…!」
桃華の小さい身体が冬樹の下で揺さぶられる。
(な、なんかヘン……ヘンだ…初めてなのに…こんなに……)
全ては、冬樹と交わる為に作り上げたこの状況なのだが、それは桃華自身も巻き込んで、更なる興奮を引き出していた。
いつのまにか桃華の腰も動いていた。自分から求め、腰を振って、無意識の内に快感を高めようとしている。
もはや桃華の身体は快楽を貪るだけの機械と化し、彼女の意思とは無関係に冬樹のリズムに合わせ腰を叩きつけている。
僅かに泡立った潤滑油はふたつの機械を加速していった。絶頂は目の前だ。そして、
「ぅ!い・いくっ!」
桃華は意識が飛びそうな快感の中で、身体を痙攣させ絶頂に達した。
「あっ!!あ・あ・あ・あぁぁ!」
身体中で快感が歓喜へと変換され桃華の腰の動きが止まる。
だが、まだ射精してない冬樹は動きを止めず突き続けた。達したばかりの桃華は言葉にならない喘ぎ声を上げる。
「…ゃぁい…」揺れる桃華の中で快感も歓喜も興奮も全てがシェイクされる。「…ぁぁぅ…」
全感覚を掻き回され次々に襲ってくる快楽の波に桃華は抵抗も出来ない。「…ぃぅぁぁ…ぁぁ…」
「うっ」
次の瞬間、躊躇する間もなく冬樹は桃華の中に思いきり射精していた。
そして自分の中に温かい物の存在を感じ、桃華は再び絶頂に達した。半開きの口から息だけが漏れる。
――――そのころ
プロジェクトHの作戦地域のすぐ横の公園に、目立たぬ様に偽装したバンが数台。
非常時に備え待機している西澤家特殊部隊である。
撤収の準備も一段落して各自で休憩を取っている所だ。
そこからまた少し離れた木陰に赤く光るホタルが一匹…
(御嬢様の近くでは、なかなか吸えなかったからな。
……最近、どうも喫煙量が増えたか。良いのやら悪いのやら……ん?)
近くで吉岡平正義が顔を伏せしゃがみ込んでいるのが見える。
「…今頃きっと、ふたりは、もう………」
ハァ、と自分も気付かぬ大きな溜め息をつく正義。ポールは、うなだれる正義に近づきポンと肩に手を置く。
「あ、ス、スイマセン」
「…んっ」
ポールは箱から一本とって正義に差し出す。
「?」
「スイマセンじゃない。吸ってみろ」
「えっ、いいえ、自分は煙草は吸わないのですが…」
「ゴタゴタぬかすな、いいから、吸・え・!」
無理やり正義の口に捻じ込むと、ポールはそのまま片手でライターを点す。
シュボッ!「ん、ん、ん、ん、ぷはぁーーーーーっ」
大きく広がる白い煙は、先程の溜め息よりも大きく見えた。
「ひどいじゃないですか、煙草吸えないのに………?あ、あれ?吸えた」
「フーーーッ。これでまた、ひとつ、大人に、なったんだな」
「…?……オトナ?」
ポールは正義の頭に手をやると一緒にしゃがみ込んだ。
「………プッ……ふっ………ふふふっ」
半笑い半泣きの正義に、ちょっと小さめにポールが囁く…
「それはそうと…お前好みのイイ娘いるんダガ。条件次第で紹介してやらんでもない…」
―――ネオン瞬く街角の公園に赤く光るホタルが二匹。
――――数日後
帰り際に桃華がそっと擦り寄ってまた尋ねてくる。
「アノ…今日もお部屋に伺っても宜しいでしょうか」
「え。あ、ああいいけど…(小声で)あの、今日もなの?」
紫色の瞳を揺らして、桃華は夢見る様に大きく言ってのける。
「ウンッ!だってワタシ!毎日Hするたびに二人の距離をカラダで何度も再確認できて、
とっても幸せな気分になれるんですものォ!!」
「う、うわぁっ!そんなロコツに大声で言わないで!」
――――そして、冬樹のアパート
「ああーっ!も、桃華ぁ」
「もっと……もっとぉ!!……あぁぁーっ!わたし…」
すると、唐突に夏美登場。
両腕に買い物袋、手に荷物を抱えたまま、ドアをおしりで開けて後ろ向きで入ってくる。
「冬樹ーっ。いるー?チョット買い物に出たら買い過ぎちゃってさぁ、ここで、え…」
ベッドの上のふたりは気付かない。ゴクリと唾を飲む夏美。
「うわ…その…お邪魔…ゴ、ゴメンネーッ」
ピューッという擬音と共に夏美は部屋を飛び出していく。
「ハァハァ……は、はじめて…見ちゃった。
びっくりしたぁ……そーか、そりゃまぁネェ二人とも恋人だし……でも、はじめて見た。すごいんだぁ…」
ナレーター「弟以上に奥手な夏美ちゃんは、いまだに…」
夏美「ウルサいのっ!ホットイテ」
ナレーター「ス、スイマセン」
やれやれ、おしまいっ。であります。