久しぶりの早帰り。  
秋は湯船で今日の仕事を思い返していた。  
「吉崎先生の原稿は全部揃っていたわよね…」「写植もばっちり…見開きのページ、フキダシのネームが大きすぎたっけ。  
明日デザイナーに」「新人君にアオリの文句任せたけど…15文字以内って言うの忘れちゃった」  
「そうそう、もうそろそろ来月号の巻頭カラーの話を吉崎先生のマネージャーさんのごもくさんに伝えなくちゃ…  
あの人携帯番号変わったんだっけ…」つぎつぎと仕事の段取りが出ては消えていく。  
 
「あーダメダメ!」考えをかき消すように秋は首を振る。「家に居るときは家のことを考えなきゃ。なんの為の早帰りだか。」  
「家に居るときは家の良き母として。会社ではシビアに編集部員として。」と小さく気を吐く。  
わかってはいるのだが仕事好きの秋は気を抜くとついつい仕事のことを考えてしまう。  
 
何か他の事…家のこと……「ケロちゃんのおこづかいは…」「冬樹の授業参観は…」他愛のない考えを無理矢理絞りだす。  
「夏美…そういえばこの間小雪ちゃんと…」先日見たビジュアルが浮かんだ。  
 
夏美と小雪が玄関先で抱きしめ合いながら唇を重ねあっていたのを。奥のドアの隙間からそれを目撃した秋はその場で凍りついた。  
二人がそんな関係になっていたのは勿論だが、そういう事にうとそうな夏美が…更に驚いたのは小雪に同性愛の気があるのは  
薄々判っていたがあの状況は少し違った。  
「あれ…夏美がリードしてたわよ…ね」  
 
二人は抱き合っていたがどっちがリードしているかは雰囲気で判る。秋自身も「そう」なのだから。  
同性愛で生きていくのはつらいものなのは自身が良く知っている、更生させるには今のうち、でも若いうちはそういう同性愛っぽい  
事にあこがれる事もある、ここでお小言言うのは逆効果かな…でも夏美もそういう年頃に…ひょっとして私の教育が目覚めさせたのかも…  
ぐるぐる考えが巡る。  
 
「そういえば…ご無沙汰…だな」とポツリと独り言を漏らすと軽く胸をさすってみる。  
 
電気が流れる。「ふぁっ…ああ……… …え?」思ったよりも大きな快感の波が来て少し驚いく。  
「小雪と夏美のキスシーン」を思い出しながら悶々と考えているうちに体が出来上がってしまったようだ。  
もう軽く力をセーブしながら秋は自身の豊満な胸をゆっくりと触り始める。  
 
「ん…ンン……夏美ったら…あんなに…あんな事…いけない子……ふぁッ!」  
 
湯船の中でも下腹部が熱くなって何かが染み出しているのが自身でわかる気がする。実際そうだろう。  
 
快感の中で秋の妄想も広がっていく。夏美と小雪が裸で抱き合い睦みあう。かつて自分がそうだったように。  
その経験を二人に当てはめ…自分の娘をダシにして快感を得る罪悪感が快感を更に加速させる。  
 
「アッ…夏美ったら…そんな…いけない事ママは教えてな…い……ンンッ!」  
 
更に快感を貪るように秋の手が下腹部に伸びる。暴走する妄想。その時風呂場のドアが開いた。  
 
「ママ、一緒に入っていい?」  
 
夏美だった。  
 
 
…気まづい。  
 
夏美は自分の横、洗い場で湯船に入る前に体を洗っている。  
 
秋の考えがぐるぐる回る。  
……夏美が入ってきた瞬間思わず声にならない声を上げてしまったが…自分のオナニーを見られていなかったのか、  
いやそもそも自分の艶声を聞かれていなかったのか…ちょ、ちょっとまって!夏美が入る前に思わず大きな声で「夏美」と言った覚えが…  
「夏美!」とあえぎながら自慰行為なんてまるで自分の娘をオナニーのダシにした変態みたいじゃない…いや実際そうなんだけど……  
それを見たなんていったら…もう私の母としての威厳が…関係が…(;´Д`)  
神様どうか気づかれていませんように…もし気づかれていたのならケロちゃんに、いや直にクルちゃんにお願いして…  
 
「ママ!」  
 
はっと我に返る秋。「はぃっぃい?!」反射的に返事をするも声が裏返ってしまう。  
「な、なに?夏美?」平静を装い夏美を見る。  
裸。夏美の裸。この健康的な肌に小雪の白い肌が重なったり舌が這ったり手首をリボンで結んで…そして。  
瞬時にあの時の妄想がフィールドバックされる。それを瞬時にかき消す。いつもの秋に、母親に戻るのよ!!  
この間0.1秒。  
 
「…変なママ。湯船に入るから少し後ろにずれて。」  
 
日向家では秋と一緒に風呂に入るのは「普通」だ。  
この間も5月病にかかった冬樹と一緒に風呂に入りその豊満な秋の肉体を駆使し5月病を治したばかりだ。  
ただ夏美も冬樹も大きくなってきたので一緒に入ることは「特別な時」だ。  
夏美は秋に何か特別な用があろうことは想像できた。逃げたいのだが先に逃げる訳もいかない。  
 
日向家の湯船はそれなりにあるが二人はいるには少しつらい。それゆえに秋が夏美を抱っこする形になる。  
自分に体を預ける夏美の背中を胸で感じながら恐る恐る口を開く。  
 
「夏美…あの、さっき……ね?」  
「ん?変な大声出したこと?」  
「入る前…聞いた?」  
「?聞いたけど…?いつもの事じゃない。どうせお風呂でお仕事のことブツブツ言ってたんでしょ?」  
 
…良かった…「アレ」を聞かれていない。秋の身体の緊張が抜ける。神様、ありがとう…すわ瞬間。  
 
「ウソ。」  
 
夏美の小さな声とほぼ同時に秋の唇に夏美の唇が重なる。  
秋の頭の中が真っ白になった。  
 
 
…秋の脳がフリーズしたあと、再起動。  
ええっと…私は夏美と一緒にお風呂に入ってそのあと夏美が……そして戻る感覚。  
口の辺りが生暖かい、夏美の顔が視点の定まらないほどなんでこんな近くに……  
久しぶりの感覚。これはキス…夏美と…キス?????  
 
「やめなさい!!」夏美を押しのけ離す。久しぶりのキスの味に混乱しながらも続ける。  
「ななな、何をしてるの、夏美!」  
 
夏美はシンプルに意外な言葉で答えた。  
「ママが好きなの。」  
 
??…秋は更に混乱した。好き?好きなのはわかるけどそんな!しかしとっさに口をついて出たのは  
「あなたには小雪ちゃんが…」と常識的にも的外れな言葉。  
 
「…見てたんだ、ママ…。私は小雪ちゃんが好き。でもママはもっと好き。」  
夏美が秋の首に手を回す。必死にはらおうとする秋。  
 
「ちょ…ちょっと待ちなさい!私達は…親子なのよ。しかも女同士……」  
 
「…隠してるんだろうけど…ママが女の人しか愛せない人って知ってるし…それに、  
親子なのに私の名前を言いながらいやらしいコトしていたのは誰?」  
!見られていた。動揺する秋に夏美は更に畳み掛ける。  
 
「それに私は知ってるよ。私はママと血がつながって無いって。私は昔パパだった人の連れ子だったんでしょ。」  
 
「!そ…それは…」至上の秘密。この秘密を知っているのは秋の母、秋奈と秋だけの筈。  
墓まで持っていくと誓った筈の秘密を何故、夏美が知っているのか。  
 
「不思議?私と冬樹の吉祥学園の書類を「ママが忙しいから」って提出したの私だよ?そこに戸籍の書類も。  
だから知った後に秘密でおばあちゃんに全部をそっと聞いたの。」夏美はそう言うといたずらっぽく、笑う。  
秋は忙しさに感けて大事なことをおろそかにした自分を呪った。  
 
「ママ。そんな悲しい顔しないで。私は知って悲しくなんかなかった。私嬉しいの。  
ママ以上に好きなママと血がつながってないから。だからこうやってキスも…」また再び夏美が顔を近づける。  
 
秋は日向家の秘密がバレてしまった事、夏美のゆがんだ愛情というたたみかける混乱と風呂の熱気、そして  
自慰を中断された身体のほてり。  
既に秋は夏美の要求に抵抗できなくなっていた。「最後の理性」の一本で繋がっている状態。  
 
そして最後の抵抗。  
「夏美…駄目。それをしてしまったら…私達、親子じゃなくなるわ。」  
 
夏美が耳元で囁く。  
「大丈夫。私の中ではママはママだよ。でも今はママよりもママをもっと愛して好きになりたいの。」  
 
動けずそのまま狼狽する秋に躊躇無く抱きつき、唇を重ねる夏美。  
 
「もう…私…」秋の中で何かがぷつんと切れた。  
 
どれくらいの時間が流れただろうか。長い長いキス。  
 
「ママ…わかってくれた?」夏美は唇を離すと秋の顔を覗き込む。  
 
キスに煽られたのか恥ずかしそうにほほを赤らめて夏美から目をそむける。しかし秋にはもう抵抗するそぶりは無い。  
それを同意と取って夏美は嬉しそうに笑顔を見せると秋の胸に顔を移した。  
 
風呂場に秋と夏美の嬌声と艶声が満ちる。  
「んんっ…駄目ッ…夏美!そこ、もっとやさしく…」秋が身体を軽くくねらせながら喘ぐ。  
「ママ可愛い…おっぱいが大きいと感じやすいって本当なんだね。」当初からこの戦いの主導権を取った夏美は  
秋の大きな胸を揉みつつ乳首を舌で転がして母親の身体をこれでもか、といじめている。  
 
「ふぁっ…夏美…ママ…おっぱい弱いの…だから…やさしくし…してぇッ!!」初めて娘に見せる恥ずかしい姿、  
娘の手前、快感に溺れる姿を見せたくないのか秋は必死に快感の波に耐えて懇願するが、夏美は聞く耳は持たない。  
それどころかだんだん秋に対する責めは激しく、秋の快感は大きくなっていく。  
 
「私、上手でしょ?小雪ちゃんだって本気になれば5分ともたないんだから。」そう囁きながら夏美は秋の耳を  
丹念に嘗め回し、噛む。ぞくぞくと違う感覚が襲い秋は軽くのけぞる。「ママここも弱いんだ。カワイイ。」  
「ねえママ。娘にこうやって苛められてこんなにおっぱいの先っぽ硬くして恥ずかしくない?  
あんなに外では立派なママがこんな娘に苛められて感じてる変態だったなんてみんなが知ったら…」言葉攻めも加わる。  
 
「久しぶりの第三者のとの行為」はいくら秋がその道の手慣れで多少の快感は抑えられるとはいえ既に秋の限界を超えつつあった。  
その上、さっきまで実の娘だった夏美と愛し合うという「近親相姦の上に同性愛」という神様にも許して貰えない行為から  
発する背徳感も後押ししていままで感じたことも無い快感を味わっている。  
 
「夏美…あそこも…いじって…んン…」秋は懇願。もう娘とか母とか関係ない。欲しい。もっと快感が欲しい。  
母が堕ちたのを見て夏美はクスっと笑うと秋の下腹部に手を伸ばした。  
 
全身に電気が走る。「ンン!ファアッ!!」秋の体が跳ね、湯船の湯が弾ける。夏美の指が秋の胎内に入っていく。  
「ここから冬樹が出てきたんだね…私も出たかったな…」  
「凄い…ママのここ、お湯の中なのにぬるぬるしてるのが判る…ママ…すごいえっち、ものすごいえっち……」  
母親の胎内の柔らかさを指先で感じながら夏美も知らず知らずに興奮している。  
 
秋はもう限界だった。  
「夏美…私…もう飛んじゃう!…夏美、キスして!!」というが早いか夏美に抱きつきいきなりのキス。  
娘とか夏美とか同性愛とか…頭が真っ白くなる。そしてやってくる最上級の快感の波。  
「ンン…ンンンンンンンッ!!!」秋が痙攣する。夏美におっぱいをねだる幼児のように必死にしがみつき、そして弾けた。  
 
秋は夏美と唇と肌をかさねつつ、果てた。  
 
 
さっきの喧騒からうってかわって静かな秋の部屋。  
秋のベットで抱き合ってたゆたう二人。  
 
秋はついさっきまでの超展開と呼ぶにふさわしい出来事をぼんやりと思い出していた。  
こんな関係になってしまったのに不思議と心は晴れている。きっと2、3時間経ったら自己嫌悪と思い出し羞恥プレイの  
スパイラルゾーンに陥って部屋を転げまわるに違いない。  
…それまではこの「夏美」という新しい小さな恋人とこうやって抱き合っていいかな、と思ってみたりもする。  
 
くすりと小さく笑う夏美。「なぁに?」秋は横の夏美を見やった。  
「!」思わず少しテレて顔を背ける両者。  
通じ合ったとは言え、夏美もこんな大胆なコトをして、秋もあんな恥ずかしい姿を夏美に晒してしまったことがまだ少し恥ずかしいのだ。  
 
「…あのね、ママ、昔覚えてる?」夏美が切り出す。  
「むかし?」  
「私が大きくなったら…」  
 
思い出した。夏美が幼稚園の頃に書いた作文だ。  
「「ママのおよめさんになる」って言ってたのよね。」秋の脳裏にあの頃の「自分の子供だった可愛い夏美」の記憶が甦る。  
 
「そう。そして今、ママのお嫁さんになれて…あの頃の夢が叶ったんだな…と思って。」幸せそうな笑顔だ。  
夏美は続けた。  
「ママはママだけど…会った時から大好きだった。だから本当にママのお嫁さんになろうって思ったの。でも大きくなって  
親子と、女同士ではそういうことが出来ないって判って…ママの娘として頑張ろうと思ったんだけど…秋奈おばあちゃんに  
全部聞いて…そして…ママのお嫁さんになれて…願いが叶ってだから嬉しいの。」  
秋は夏美に愛しさをキュンと感じて夏美を更にきゅっと抱きしめた。  
 
「夏美、キスしていい?」  
「誓いのキス?」  
「そんな…ところかな?」  
 
やさしい時間が流れる中、二人は誓いのキスをした。  
 
 
次の日。日曜日。  
 
夏美は秋のベットで目覚めた。  
昨日…そうか…ママと少し愛し合ってそのまま寝ちゃったんだっけ…  
秋はベットに居ない。出かけてしまったらしい。  
……夏美は昨日の事を思い出して丸くなってクスクス笑いながら秋のベットをゴロゴロ横転した。  
 
夏美は身だしなみを整えて居間に下りた。  
秋が暇そうにTVを見ている。夏美が声をかけるとやさしい笑顔で返した。秋のママだった頃とは違う笑顔、でもやさしい笑顔。  
二人の関係が変わったことを再確認した夏美は顔を赤くして俯く。  
あんな大胆に好きといってああいう仲になったのにどう接していいやら判らない。  
 
「ふ、冬樹は?」  
「朝早くから桃華ちゃんとミステリーゾーンの探検だって出て行ったわ。」  
「ボケガエル達は?」  
「なんだかマツタケと戦うとかなんとかでやっぱり朝早く。」  
「そ、そう、なんだかよからぬこと考えていなきゃいいんだけど…」  
 
夏美のぎこちない会話が続く。  
 
「ご、ごはん…」  
秋は立ちあがって居間のカーテンを閉めながら返す。  
「お昼まで寝てるのは貴方だけよ。おねぼうさん。」そういうと夏美に近づき夏美にキスをした。  
 
「ん…んっ」いきなりの展開に面食らって硬直する夏美だが次第に力が抜けて手を秋の腰に回す。  
ながいキス。秋がそっと唇を離す。唾液の糸が二人の唇を繋ぐ。  
 
「まず最初におはようのキスでしょ?」秋は夏美の目をみながらいたずらっぽく笑い、続ける。  
「そんなに固くならないで。私の子供だった夏美は好きな夏美に変ったけれど、夏美は夏美、今までの夏美でいいの」  
「ママ…。」心が嬉しくて熱くなって思わず涙が零れる。  
秋は涙をキスでぬぐうと「夏美は笑顔が一番なんだから」といって軽くまたキスをした。  
 

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