某月某日、午後零時零分、ケロロ小隊に関わった人類以外、全ての時間が止まった。  
『惑星麻酔』により、星全体が仮死状態となってしまったのだ。  
無論、そんな技術など知らない冬樹は新しい侵略者が何かをした、ということしかわからなかった。  
彼ら以外の人々は動きを止めて、物言わぬ人形のように道に佇んでいる。  
ギロロに「逃げろ」と促された日向姉弟はただ闇雲に街中を走り回っていた。  
どれぐらい走っただろうか? いつ他の異性人に襲われるかもしれないという恐怖を孕みながらの逃走は、  
二人の体力と精神を確実に擦り減らせていった。  
 
「大丈夫…、追手はいないみたい」  
 
走り回った末、しばし休むために、ちょうど周りからは一目でこちらを確認できない  
死角へと二人は逃げ込んだ。荒い呼吸を交えながら、辺りを見回した後、  
冬樹は背後にいる姉の夏美に声をかけた。  
 
「どこに逃げても同じよ…。宇宙人からは絶対に逃げられないわ…」  
 
夏美の声は沈んでいた。その弱気になった姉に気付き、  
冬樹は振り返り、彼女を見る。  
 
「ボケガエル達だって本気を出せばこれ位できたのよ。  
 それなのにアタシ…いい気になって…」  
 
夏美は壁にもたれ、俯きながら言う。  
いつもの快活な姉はそこにはいなかった。  
 
「そんな事ないよ!! 軍曹達とは友達になれたから今まで平和でいられたんだ!  
 軍曹達だって、本気で地球侵略をしようとは思ってなかったよ!」  
 
冬樹は気落ちした姉を慰めるため、慌てて否定する。  
 
「…それで、こんな事になったんでしょ…?」  
 
しかし、夏美はそれを聞き入れない。  
ますますうなだれて、弱々しい声で返す。  
「…姉ちゃん」  
 
夏美は壁に背をつけたまま、ずずっと音を鳴らし、膝を抱え、その場に座り込む。  
 
「もうつかれた…、走るの、や…」  
 
冬樹は彼女を見下ろす格好で、少しの間、彼女を見つめていた。  
どうすればいいか? どうすればいつもの元気に魅力溢れる姉に戻るのか?  
冬樹は考える。だけど、すぐに同じ場所にいては危険だ、  
という別の思考が働き、うずくまる夏美に手を差し伸べる。  
 
「姉ちゃん、場所を変えよう。同じ所にいるのは危険だよ」  
 
夏美は差し伸べられた手の平を俯いたままきゅっと握る。  
姉の手が驚くほど冷たかったことに冬樹は戸惑ったが、  
掴んでくれたことの安堵感にそんな戸惑いは一瞬で消えていった。  
しかしそれも束の間、不意に夏美の手に力が込められる。  
 
「わわ!」  
 
手を握り、立ち上がるかと思ったが、逆に夏美は自分の方に冬樹を引っ張った。  
冬樹はバランスを崩し、そのまま夏美に覆い被さる。  
二人は折り重なりながらドサッと音を立てて、地面に倒れ込む。  
 
「いてて…、姉ちゃん、ごめ──」  
 
謝ろうとすると、突然、夏美は冬樹の両頬に手を揃えた。  
姉の手は相変わらず、ひやりと冷たい。  
その冷たさに気を取られている冬樹の唇に夏美は自らの唇を密着させた。  
生暖かく柔らかい感触が冬樹の唇に伝わる。  
 
「ん…」  
 
冬樹は驚き、目を見開く。夏美は瞳を閉じ、端にうっすらと涙まで浮かべているのを冬樹は気付く。  
しばらく、唇を合わせていると、夏美は冬樹の頬を撫で始めた。  
冬樹は夏美のその撫で方に応じるように目を閉じキスに没頭する。  
そうまるで、あの夜のように。夏美は唇を離すのを、冬樹と離れるのを、  
不安がるみたいに、弟の背中に腕を回し、きつく抱き締める。  
夏美が着ているクリーム色のセーターと冬樹のワイシャツが僅かな隙間もなく密着する。  
服越しとはいえ、姉の弾力のある双乳が、冬樹の薄い胸板に当たる。  
むにゅっとした柔らかな張りだった。その柔らかさに気をとられていると、  
夏美の舌が口内に入ってくる。  
 
「んぅ…、ふ…」  
 
夏美の鼻息が妙に艶めかしく聞こえる。  
唾液でぬめったその紅い舌は、冬樹の舌までいとも簡単に辿り着く。  
夏美の甘い唾液を乗せた艶めかしく動く舌が冬樹の舌に絡み付く。  
姉の舌と戯れるのは二度目の経験だったが、  
感触も味も一度目とはまるで違っていた。  
夏美が積極的なことが起因しているのかもしれない。  
気付くと冬樹も夏美の舌を貪っていた。  
くちゅ、ちゅ、といやらしい唾液の水音が耳に響く。  
こんなことをしている場合ではない、と頭ではわかっていても、  
口腔を中心に広がる快楽も、艶音も止めることができなかった。  
どれぐらい唇を重ね合わせていただろうか。  
冬樹はやっとの思いで劣情を断ち切り、理性を呼び起こした。  
地面に手をつき、上半身だけ持ち上げて、唇を離していく。  
唾液の梯子が冬樹の未練を表すようにいやらしく二人の間に渡されていった。  
夏美は瞼を開けて、円らな瞳で冬樹を見遣る。  
もうしないの? アタシとするのは嫌なの?  
と姉が語りかけているようだった。  
立ち上がらなくてはいけないのに、どうしても冬樹は身体が動かない。  
動悸は高鳴り、どうしても、盛り上がる姉の乳房、官能的に濡れる唇と瞳、  
それらの間を行ったり来たりしてしまう。  
しばらくすると、熱い吐息も、体温すらも感じられる距離で、  
二人は舌の代わりに視線を絡み合わせていた。  
 
「ねえ冬樹、あの時の続き、しよっか?」  
 
小首を傾げ、夏美は微かな笑みを見せながら冬樹に言った。  
 
その瞳にはうっすらと涙を浮かべている。  
無理して微笑んでいるのがわかってしまうそんな笑みだった。  
冬樹はそれを見て、胸が締め付けられるような感じがした。  
答える代わりに、首を横に振るのが精一杯だった。  
 
「姉ちゃんの事、嫌いなの?」  
「…、嫌いじゃないよ」  
 
喉が詰まりそうだった。それでもなんとか言葉を紡ぐ。  
 
「ホント言うとね──、冬樹、あの夜、覚えてる?」  
 
冬樹は目を逸らし、頷く。  
忘れるわけがなかった。次の日からケロロ達にも母にも悟られぬよう、  
普通に接していたが、あの姉の唇の感触も、乳房の柔らかさも、  
記憶にこびり付いて、決して消えることはなかったのだ。  
 
「あの時の僕はどうかしてたんだ。姉ちゃんにあんなことするなんて…」  
「ねえ冬樹。お願いだから、そんなこと言わないで」  
「でも…」  
 
夏美はそっと指先で冬樹の口を塞ぐ。  
 
「あのね、冬樹、聞いて。あの日、あの夜、アタシが『やめて』って言って、  
もし冬樹がきかなかったら、あのまま、抵抗しなかったと思うの…」  
 
冬樹はその言葉で、再び姉の顔を見る。  
夏美はやはり微笑んでいた。涙目で。  
その微笑を見ると、またずくんと冬樹の胸はきつく締め付けられた。  
 
「それって…」  
 
冬樹は魅入るように夏美を見つめていると、夏美は恥ずかしくなったのか、  
両手で顔全体を覆った。  
 
「変な姉ちゃんでしょ?」  
 
姉の啜り泣く声が聞こえてきた。  
どうしたらいいのか、冬樹は迷う。  
 
「姉ちゃん…」  
 
しかし、すぐさま冬樹は決断したように顔つきを変え、  
夏美の腕を優しく掴み、顔を覆う手をゆっくりと取り払った。  
 
抵抗はなかった。手の平が無くなると、夏美の充血した瞳が見えた。  
涙の跡が目元からくっきりと残っている。  
それを瞳に映すと、冬樹の迷いはあっさりと消えていった。  
冬樹は夏美に唇を近づける。  
夏美は目を瞑り、弟の唇を待ち構えた。  
唇に冬樹はキスをするかと思ったが、予想は外れた。  
あの夜、夏美が最初にした時と同じように、  
冬樹の唇の感触は額にやって来た。  
冬樹は夏美の前髪を指先で除け、ちゅっと音を立てて、軽くキスをした。  
そして、両頬を手に添え、舌で夏美の涙を舐め取った。  
 
「少し、しょっぱいや…」  
 
冬樹がやや顔を顰めて言うと、夏美はくすっと笑った。  
 
「当たり前でしょ、涙なんだから」  
「そうだよね」  
 
冬樹はとても緩やかな動きで、夏美の胸元に鼻を埋める。  
 
「姉を泣かせるなんて、あんたって女泣かせね…」  
 
冬樹は何も言わず、優しく服の上から乳房に手を添える。  
しっかりと姉の乳房の肉感が伝わった。  
冬樹はそれだけでドキンとする。  
このまま強引に姉を襲ってしまいそうだった。  
だが、冬樹は首を振り、必死に自分の中の獣を封じ込める。  
今、姉を労わり、慈しむことができるのは自分しかいないのだ。  
自分の手で姉が震えているのがわかる。  
 
「優しくするつもりだから…、安心して…」  
 
それだけ言って、冬樹はブラウスの裾をスカートから取り出し、  
そこから手の平を入れていった。  
 
「ひゃうっ」  
 
夏美は腰を跳ね上げ、軽く啼いた。  
冷たい秋風に晒されていた冬樹の手は驚く程、冷たかった。  
 
用具が取り揃えられている体育館の倉庫で、  
姉弟は、床にマットを一枚、敷き詰め、その上で抱き合い、  
冬樹は夏美を組み伏せるように、上から見つめる。  
ここに来た理由は、やはり、他の人間は止まっているとはいえ、  
外ですることに少々、抵抗があったからだ。  
倉庫の電球は切れてやや暗い上に、  
あまり入ったことのない用具室では、勝手がきかなかった。  
だが、冬樹も夏美もそんなことはさほど気にはしていない。  
これからすることが重要なのだ。  
冬樹は先ほど、冷たい手で姉の珠肌に触った反省を踏まえて、  
しばらくの間、夏美と指と指を絡め、手の平を温めあっていた。  
夏美は冬樹の指を口元に持っていき、はぁ、と熱い吐息をかけたり、  
指先をその花びらのような可憐な口唇の中に含んだりした。  
充分に温まると、冬樹はだらしなく出されたままのブラウスの袖から  
再び、手の平を忍び込ませていった。  
 
「んぅ…」  
 
夏美の腰はまた僅かに跳ね上がった。  
 
「まだ冷たい?」  
「ぜんぜん、ちょっとびっくりしちゃって…」  
 
夏美は首を横に振り答える。  
冬樹の手の平はいきなり姉の乳房に行くことはなかった。  
できるだけゆっくりとお腹の辺りを撫でている。  
つつっと、何かを探るような動きで、その妙な指先の動作が  
夏美には少しだけくすぐったい。  
お腹の中心にあるヘソに指先が到着すると、  
冬樹は夏美の髪の中に唇を埋めて、そこにキスをした。  
 
「どうしたのよ、冬樹?」  
 
がっつかない弟の行動に、夏美は驚きを禁じえない。  
 
「どうしたって、何が?」  
 
きょとんとあどけない表情を冬樹は浮かべた。  
夏美は「うっ」と一瞬だけ恥ずかしそうに顔を背ける。  
確かに、夏美の驚きは的を射ていた。  
この年頃の少年なら、もう少し焦ったり、  
動きにぎこちなさを残してもいいものなのに。  
しかし、冬樹の一連の動作には焦りもなければ淀みもない。  
まるで、こういうコトをするのを何度も、  
綿密にシミュレーションしていたみたいだった。  
 
「姉ちゃん」  
 
髪の毛の唇を埋めさせた、冬樹のくぐもった声が聞こえる。  
冬樹は匂いをひとしきり嗅いだ後、赤い髪の毛から、唇を離し、  
もう一度、官能的に濡れた姉の唇に、禁忌の接吻をした。  
甘い唾液が二人の口内を行き来する。  
自然と二人は脚を絡み合わせる。  
夏美のむっちりとした太腿に硬い冬樹のオトコが当たった。  
ズボンの上からでも彼の熱い滾りがわかる。  
限りなく興奮しているのだ。  
その勃起物に夏美は太腿をすりすりと摺り寄せてみた。  
冬樹はそれに驚き、目を見開いて、唇を離す。  
そして、今までにないぐらいの真剣な顔つきで姉の顔を見た。  
 
「この後のことを僕がすると、絶対にやめないよ、  
 姉ちゃんが止めてって言っても、やめないよ。それでもいい?」  
 
言い終わると、冬樹はごくりと唾を飲み込んだ。  
冬樹に余裕が有るのだと、思っていた夏美だったが、  
最初から弟はそんな物など微塵も持ち合わせていないようだった。  
僅かにヘソを触る手が震えているのがわかる。  
弟は拒絶されていることを恐れていた。  
また、受け入れられることも恐れている。  
矛盾した想いが彼の中ではせめぎ合っていた。  
必死なのだ、弟は。  
少なくとも、夏美にはそう感じられた。  
多分、「止めて」とアタシが言ったら、冬樹はやめるだろう。  
これは理性の警告なのだ。冬樹の葛藤も夏美には  
痛いほど、わかってしまう。  
そんな苦しい冬樹の想いも、優しさも夏美には愛おしくなる。  
止まらないのは自分も同じだ、と夏美は思った。  
 
「バカ…、野暮なこと訊かないの…」  
 
耳元に唇を近づけ、夏美は囁く。熱い吐息が冬樹の耳たぶを溶かす。  
それが合図だった。お腹を撫でていた、冬樹の手の平は、  
一瞬にして、昇っていき、夏美の下乳にまで到達していった。  
すうっとブラの下から、潜り込ませる。  
 
冬樹の手の平にしっとりと乳房は吸い付く。  
思わず、感嘆の声が出るほどだった。  
心なしか、あの日よりも大きく、そして、柔らかく感じられる。  
たまらず冬樹は指先を乳房に沈ませ、動かし始める。  
 
「んぅぅ…」  
 
掬うようなリズミカルな動きだった。  
力加減は、宣言通り、とても優しい。  
まるで、冬樹の生き方を集約したような揉み方だった。  
 
「くっ、うぅん…」  
 
片方、揉んでいた手の平はもう一本増やされる。  
 
「姉ちゃんのおっぱい、柔らかいや」  
 
埋めていた顔を上げて、冬樹はさっきのお返しとばかりに、姉の耳元で囁く。  
 
「あ、はぁぁ…、ふ、冬樹、アタシ、耳弱いから…、んっ…」  
「本当?」  
「う、うん」  
 
訊かれて答えると、夏美の耳たぶに熱い何かが触れる。  
 
「ひゃぅ、な、何ぃ?」  
 
熱い何かは耳たぶを包むように蠢く。  
正体は艶めかしい水音ですぐにわかった。  
冬樹が舌で舐めているのだ。  
ぴちゃ、ぴちゃ、と唾液の音を響かせて、冬樹の舌は夏美の耳をねぶる。  
 
「冬樹ぃ、アタシ、耳、弱いって…いっ…言ったでしょ?  
 やめてよぉ、バカぁっ!」  
 
ポカッと冬樹の頭を軽く叩いた。  
 
「ごめん、姉ちゃんの反応が可愛くて、つい…」  
 
ちゅっと耳にキスをして、それで冬樹の耳責めは終わった。  
夏美は、はぁはぁ、と胸を上下させて、荒い呼吸を繰り返す。  
甘痒い妙な余韻が耳に残る。  
きゅっと手の平を握って、冬樹の熱い舌を待っても、もうそれはやって来なかった。  
本当にこれで終わりなのだ。「やめて」と言ったら本当に冬樹はやめてしまった。  
だが、ぽうっと中途半端な耳の余韻に浸っている暇はない。  
冬樹の手の平は徐々に激しくなってきたからだ。  
ただ、激しいだけじゃない。気持ち良くさせようとする冬樹の想いが伝わり、  
夏美は弟の愛撫でじんじんと火照り始める肉体とは別に、  
心までも熱くなってくる。  
 
しかし、ブラのカップが邪魔をしてか、冬樹は思うように揉めずに、  
四苦八苦していた。夏美もまたそれがもどかしい。  
『ブラジャーを外して直接揉んで』、と言えばいいのだが、  
それも自分からは躊躇われた。  
姉弟での性の戯れだからこそ、羞恥が邪魔をしてしまう。  
 
「姉ちゃん、背中上げて…」  
 
冬樹は愛撫を中止して、そう告げる。  
思わず、「え?」と夏美は言葉が漏れそうになった。  
口に出てしまっていたのだろうか?  
違う。冬樹も下着に邪魔されるのが、嫌になったのだ。  
想いが通じ合えたような気がして夏美は嬉しかった。  
夏美の瞳は潤み膜が張り、扇情的な瞳で冬樹を見る。  
 
「姉ちゃん?」  
 
冬樹は自分を見つめる、夏美を不思議そうに見つめる。  
すると、すうっと姉の腕は伸びてきて、冬樹の黒い髪を撫でた。  
 
「今してるのはフロントだから、大丈夫」  
 
夏美は軽くウィンクする。  
 
「フロント?」  
 
聞きなれない言葉に冬樹は繰り返す。  
 
「そ、フロントホック。前にホックがあるの…」  
 
冬樹はブラウスの下をもぞもぞと動かし、  
開ける部分を手探る。  
 
「真ん中、真ん中」  
 
夏美の言う通りに、ブラジャーの真ん中に手を遣る。  
指先に金具が当たる。  
 
「これ?」  
「そう」  
「外していい?」  
「ダメって言ったらどうするのよ?」  
 
弟にやられっぱなしでは少し癪なので、ちょっと意地悪を言ってみる。  
不思議だった。こんなことをしていると、まるで別世界に移動したようで、  
さっきまでの不安も、宇宙人への脅威も次第に薄らいでいっていた。  
 
「うっ…」  
 
姉の言葉に冬樹はやや躊躇いながら、ブラジャーのホックを外し、  
するりとブラウスの下から、取り出す。  
夏美がしていたのは清潔そうな純白のブラだった。  
冬樹はそれを脇に置く。いよいよ直接触られるのだ。  
冬樹はどんな風にするのだろう?  
気持ちいいのだろうか? きっといいのだろう。  
夏美は期待に胸を高鳴らせた。  
 
目を瞑り、神経を集中しようとしたが、それは憚れる。  
熱い視線を冬樹は姉の瞳に投げかけたままだからだ。  
ヘソの上を通り過ぎると、冬樹は夏美にキスをした。  
一度だけじゃなく、何度も小鳥が戯れるような軽いキスを繰り返した。  
ぴくぴくと夏美の女体が揺れ、ぷるぷると何も付けていない双乳がいやらしく震えた。  
その瞬間、夏美はある事に気付く。  
それは恥ずかしくて、恥ずかしくて、死にそうになる事実だった。  
顔が、かぁっと熱くなり、火が出そうになる。  
しかし、冬樹の指に抗うことはできない。  
夏美はそんな自分も知って欲しかったのだ。  
乳丘の下に指先が触れる。そこはさっきまで優しい愛撫が続いていたので、  
完全に蕩けていた。触れるだけで、声が出そうになる。  
指はどんどん上に昇る、その動きはあまりにもゆっくりで、  
冬樹が焦らしているのでは、と夏美は勘繰ってしまう。  
ついに先端の突起を取り囲む、ぷっくりと膨れた乳輪に触れた。  
 
「あぅん…」  
 
いよいよ、アレがばれてしまう。  
指が中心へと潜行していった。  
乳首へと指先が触れた。ピクンと二人は身体を震えさせる。  
冬樹の目は大きく開く。彼はとてつもなく驚いた。  
 
「ね、ねえちゃん…」  
「あんっ、冬樹、ごめんね、Hな姉ちゃんで…。ふぁ…」  
 
ねっとりと濡れたような甘い声が冬樹の耳に絡み付く。  
冬樹の指には硬く尖る感触があった。  
姉の先端は硬かった。こりこりとした感触が冬樹を震えさせた。  
こんなにしてるなんて。姉は自分の愛撫で感じてくれているのだ、  
それが冬樹には嬉しくもあり、興奮もさせた。  
 
「だめだよ、そんな声出されたら、僕…」  
 
冬樹の中で情欲が滾りだす。硬くなった乳首ごと、乳丘を甘く押し潰す。  
夏美の女性の象徴である柔らかな果実は、冬樹の手の平の動きに応じて形を変えた。  
つんと尖る、先端を指で挟み、もみくちゃにする。  
時々、軽く引っ張ると、夏美の乳首には微細な電気が流れるように痺れてくる。  
それは甘い痺れだった。それは徐々に夏美の身体を浸食していく。  
 
「あ、んんぅ! ふ、ゆき…。か、はぁ…」  
 
びくびくと小刻みに女体を震えさせた。  
制服の下で、くなくなと身体をもじつかせる。  
きゅっと両乳首を摘まれた時、  
夏美の身体に快感の奔流が押し寄せ、  
思わず弟の名を呼びながら、淫らに啼いてしまう。  
 
「ひっ! あぁんっ、だめ、乱暴にしないでっ!」  
 
夏美はいやいやとかぶりを振る。  
冬樹に恐れを感じることはなかった。  
乱暴さの中にも気持ち良くなってほしい、という愛情が伝わってくるからだ。  
 
ただ、これ以上、荒々しくされたら、ますます乱れてしまう。  
弟に乱れた自分を見られると思うと、夏美の下腹部はずくんと火照る。  
でも、見て欲しい。こんな自分も見て欲しい。  
冬樹に胸を弄られて、快感に翻弄される姉を。  
しかし、そこで、冬樹の手の動きは止まってしまった。  
はぁはぁ、と荒いリズムで呼吸を繰り返し、一度、唾を飲み込んだ。  
 
「ぁ、冬樹ぃ? ど、どうしたの?」  
「ごめん、約束破りそうになっちゃった」  
 
忘れていた。弟は「やめて」と言ったら本当にやめてしまうのだ。  
冬樹に他意はない。それが余計にややこしい。  
焦らしているわけでも、駆け引きをしているわけでもないのだ。  
 
「んぅぅ、そうだけどぉ…」  
 
もじもじと身体をくねらす。  
冬樹は制服から手の平を取り出す。そして、裾を掴む。  
何をするのだろう、と夏美は弟の様子を伺った。  
冬樹はセーターとブラウスを捲り上げた。  
姉の健康的な肌が桜色に火照る身体がいやらしかった。  
胸まで露になると、冬樹はしばらく夏美の身体を魅入っていた。  
張る乳輪とぽつっと尖る可憐な先端がエロティックである。  
空気に触るだけで溶けてしまいそうなぐらい柔らかく見える。  
 
「姉ちゃんの身体、やっぱり綺麗だよ」  
 
はぁ、と冬樹は溜息を出す。  
 
「んぅぅ、そんなまじまじと見ないで、冬樹。恥ずかしいわよ」  
 
冬樹の熱い視線が夏美の肉体を焦がす。  
身体をくねらせて視線から逃れようとする。  
それでも夏美は悪い気はしなかった。  
弟の視線だけで夏美は気持ち良くなってしまう。  
この感情は異常かもしれない。  
身体も言葉も拒んでいるが、心奥は熱烈に弟の視線を受け止めていたかった。  
その時だった。弟はおもむろに乳房に顔を寄せると、  
唇に接吻するみたいに、視線と同じ熱いキスをピンク色の乳突起にする。  
 
「はぅっ、ふ、冬樹ぃ…っ! んん、あぁぅ…」  
 
夏美の身体はビクンと跳ねて仰け反り、  
ミルクを溶かし込んだような白い喉を弟にまざまざと見せ付けた。  
唾液でぬめる弟の唇が女の敏感な乳突起を突き、  
快感の細波が断続的に夏美を襲ってくる。  
 
「どう? 気持ちいい、姉ちゃん?」  
「う、うん、気持ちいいよぉ、冬樹」  
 
胸の前にある弟の黒い髪を両手で撫でながら夏美は言う。  
姉の声は鼻にかかり、甘ったるい。  
その声に気を良くしたのか、冬樹は姉にもっと感じて欲しいと、  
キスの雨を彼女の乳首だけではなく、  
いやらしく膨れる乳輪にも繰り返す。  
 
「あぁん、いいよぉ、冬樹ぃ、あたし、おかしくなっちゃうよぉ…」  
 
決して激しくない唇の愛撫が夏美をもどかしくもさせる。  
その愛情の詰まったキスだけで充分なはずなのに、  
更なる快感を身体は求める。  
弟の呼吸も次第に荒くなり、息をするたびに、  
冬樹の吐息が敏感な先端にかかり、  
夏美の双乳は肉体ごとぷるぷると揺れる。  
その様子は艶めかしく、冬樹の行為をエスカレートさせていく。  
冬樹は硬い突起物に歯を立てて、軽く甘噛みする。  
 
「あふぅ…、あぁっ! それは…、だ──っ!」  
 
『だめ』といいかけて夏美は慌てて口を噤んだ。  
そんなことを口にしたら、きっと冬樹は止めてしまう。  
もっとして欲しい、でもいやらしい姉と思われたくはない。  
切迫した想いが、夏美の脳内を駆け巡った。  
しかし、口を塞いでいるため「んぅぅ」と苦しそうな声を  
室内に響かせることになる。そのため、本当に辛いのだと冬樹は勘違いしてしまった。  
 
「ご、ごめん。姉ちゃん、痛いよね!?」  
 
冬樹はそう言って、歯を離した。  
すると、ねっとりとしたぬめりのある唾液が、  
ぬぅっと冬樹の舌と夏美の乳首を一瞬だけ繋ぐ。  
その情景はあまりにも卑猥すぎる。  
あんな隠微な舌で舐められていたと思うと、  
夏美の身体はかぁっと火照ってしまう。  
しかも唾液でしとやかに濡れる自分の乳首が弟の舌を待ち焦がれるように  
ひくひくと震えているような錯覚すらした。  
 
「ぁ、違うの冬樹。い、痛いとかじゃなくて…、その…うぅ…」  
 
『もっとして』と言葉に出せばいいのだが、  
何故か、それは躊躇われる。自分から弟の舌愛撫を切望するのは、憚れるのだ。  
自ら望むいやらしい姉だと思われたくはない。  
卑怯な姉だと自嘲して、心の中では『ごめんね、冬樹』と謝る。  
夏美は犬みたいに「はっはっ」と荒い呼吸を繰り返すだけだった。  
唇から零れる吐息は火のように熱かった。  
 
鳶色の瞳も涙の膜が張り潤みだす。  
じんわりと汗をかいた身体を小刻みに揺らし、  
更なる高みに昇らせてと、懇願するように弟の頭を必死に撫で続ける。  
その時、冬樹は舌をちろっと出して、また姉のピンク色の先端を軽くつついた。  
 
「あんっ…」  
 
びびっと甘い電流が夏美の突起を中心に流れる。  
弟の熱の籠もった舌先により蕩けるように、身体が熱くなり、  
ついには下腹部までもが疼いてくる。  
 
「もっと、して欲しいんだよね?」  
 
恐る恐るという言葉がぴったり当て嵌まる声で、冬樹は姉の顔を見上げて訊く。  
 
「んんぅぅ…」  
 
その言葉に夏美は目を瞑り、首を縦に曲げて答える。  
そんな声で、そんな顔で、そんな聞き方をされたら、嫌なんて言えない。  
そして、弟の舌による奉仕は、『嫌』と言うような代物ではなかった。  
熱の籠もったそれは、はしたない夏美を呼び寄せる絶好のカンフル剤なのだ。  
 
「いいの…、ふゆきぃ、もっと…、お願い、もっとぉ…」  
 
恥辱に塗れながらも彼女は鼻にかかる声で叫ぶ。  
弟にそうねだる姿はどっちが年上なのかわからないぐらいだった。  
 
「やっぱり良かったんだね。姉ちゃんが痛いのかって、僕、勘違いしちゃった」  
 
そんなことない、ありえない、と夏美は首を振った。  
 
「だって、すごいんだから、ふゆきは…あぁん…」  
 
言葉を訊きながらも冬樹の舌はねっとりと動く。  
その舌は鋭敏に感じ取るようになった姉の快感を的確に捉えている。  
堪えられなくなった夏美はぎゅっと冬樹の頭ごと抱き締めた。  
『姉のスペシャルホールド』と本来なら照れ隠しにふざけて言いたいが、  
夏美にはそんな余裕はもうなかった。  
冬樹の歯が軽く突起物を噛んだ時、夏美の身体に稲妻が走った。  
 
「あぁ! ああ!! ふゆきぃーー!!」  
 
ビクンと夏美の身体は大きく仰け反った。  
まさかおっぱいだけでこんなに気持ち良くなるなんて。  
姉弟の戯れということ禁忌のスパイスが、  
より夏美の感度を上げたのか、二人の相愛がそうさせたのか、  
夏美にはわからない。ただ現在、頭の中で廻る快感が  
夏美の思考を止めていった。  
白い何かが弾けて、「くぅん」と啼き、  
そして、顎を仰け反らせ、ビクビクと細かい痙攣を夏美は続けた。  
 
「いいの? 気持ちいいの、姉ちゃん?」  
 
冬樹は震える姉に向かって優しく舌で奉仕して、  
淫猥な唾液を立てる。  
 
「うん。いい、いいの…ふゆきぃ…。姉ちゃん、  
もしかして、イっちゃったかも…?」  
「え? イったって? 姉ちゃん」  
「そう冬樹の舌が凄く良すぎて…、んん…」  
 
「あはは」と夏美は軽く笑った。  
弟にされるのがこんなに気持ちイイなんて。  
ふっと身体の力は抜けて、抱き締めていた冬樹の頭を放した。  
その時、冬樹の嬉しそうな笑顔が視界に入った。  
ドキンと夏美の心臓は一度だけ強く鳴る。  
きゅんと胸が締め付けられる想いだった。  
こんな幸せな笑顔をもう見られない…。  
そう思うと夏美はやるせない気持ちになる。  
地球を、いや、弟を守れるのは自分しかいないかもしれない。  
ギロロに託された何かの装置を夏美は思い出した。  
そうだ、今までもずっと地球を守ってきたのだ。  
今度だってきっとできるはずだ。そして冬樹を守ってみせる。  
夏美はそう思い、ポケットに仕舞い込んでいた装置を握った後、  
目の前にある弟の柔らかい髪の毛を撫でた。  
 
「ごめんね、冬樹、アタシ弱気になってたみたい」  
 
真っ暗な天井を見上げ、ケロロ達の顔を思い浮かべる。  
 
「続きはまた今度でいい?」  
「こ、今度って?」  
「アタシが地球を救った後かな? いいわよね?  
 冬樹は辛いだろうけど、終わってからのご褒美ってことで? ダメ?」  
 
夏美は口端を上げて、にっこりと笑い、いつもの快活な表情を弟に見せた。  
そんな顔をされたら、冬樹はどうしようもない。  
姉の表情が戻ったことが何よりも嬉しい。  
熱く滾る冬樹のモノは中途半端だけれども、  
それは姉の言う通り、後のご褒美にしておこう。  
 
「約束だよ?」  
「もちろん」  
 
夏美はそう言って冬樹の唇を触り、優しく彼の股間を撫でた。  
 
 
おわり  
 

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