足音が――聞こえる――  
 いつしかケロン体に戻っていたケロロは、暗い世界の中で小さな足音を耳にする。小さくて、  
地を気遣うような優しい歩調。これは……、女の子のものだろうか?  
 その音が次第にハッキリとしてきた所で、急に視界が開けた。右、左、後ろ、前と順繰りに  
確かめていくと、宇宙で比較すると体格の小さいケロン人である自分とも、さして身長差の  
ないほど幼い、ヒューマンタイプの女の子に名を呼ばれていることがわかる。  
 ケロロは前方に姿を現したその少女に視線を預けるも、背を向けていることで表情を窺い  
知ることは出来ない。子供らしく、小さな手足をパタパタとはためかせていた。  
「モア殿――? これはまた随分懐かしい姿を……」  
 背面だけでも見間違うはずがない。この少女は、地球で会う前の遠い昔、モアがもっと子供  
だった頃に世話をした、自分の記憶の中に残っている姿だ。ならば、今のモアがそんなに  
小さいわけがないと考えるのが自然だが、そういった疑問もなぜか考える気にはならない。  
 夢? それとも幻――? 迷う者は現在の状況に至るまでの過程をかんがみるものだ。  
しかし、先程まで何か大きな出来事が起こっていたような気がしても、頭にぼんやりと霞が  
かかったようで何も思い出せず、現況の把握は一向に進む気配がない。  
 トコトコ……  
 モアは、後ろにいる小さな大人を手招きするようにして優雅に道を駆けていく。  
(モア殿……、吾輩も付いていかなくては――)  
 ケロロは自分が置いていかれるようでジッとしていられず、フラフラとした足取りで歩を進め  
ていく。それは何かに指示されて身体が勝手に動くようで、自分の意識が作用していないよう  
な不思議な感覚だった。  
 
「……これは」  
 一歩一歩おぼつかない足取りで歩を進めるケロロの周り、その景色が過去から現在へと辿る  
ようにして、グルグルと移り変わっていく。ケロロは、ああ、そういえばこんなこともあったなと、  
思い出しては小さく笑い、郷愁に浸る間もなく次の新たな思い出が現れる。  
「はぁー……。こうやって吾輩の人生を思い出すのも、なかなか感慨深いでありますな……」  
 ゆっくりと歩いていたのだが、少女の浮くようなステップに遅れる気配はなかった。歩みを進め  
ながら――、やがて地球侵略へ行く頃と向き合う。  
 地球上陸に、日向家で始まった捕虜生活。どんどん増えていく仲間にも関わらず、全く成功  
しない侵略計画。そしてモアとの再開――。目的を忘れてしまうほどに捕虜としては充実した  
日々だった。  
「おっと」  
 幼い姿をしたモアが目の前で突然立ち止まると、ぶつかりそうになったケロロも歩みを止めた。  
そうこうしているうちに周りの景色はどんどんと進んで、ついには先程までの公園での出来事を  
映し出している。  
「あ……」  
 見えたのは黙示録撃炸裂の瞬間。そしてその後景色が無くなる、というか無のようになった  
感じだ。流れていた懐かしい光景がパッタリと途絶えると、ついさっきまでの出来事を全て思い  
出す。やがて、ケロロも自分の置かれている状況が徐々に不安になりだしてくる。  
「あ、あのーでありますな、何かこれって……」  
 道の先を進んでいた案内者のような少女に、ケロロは恐る恐るそう尋ねた。すると、小さな  
女の子は腰裏で両手を組みながら、クルッと振り返る。  
「お疲れさまでした。おじさまの旅も、ここでようやくおしまいですよ」  
 モアの顔を正面から見据えると、ケロロは心の中で「違う」と呟いた。少女が自分のよく知る  
者であるならば、本当に明るくて幼い子供のような雰囲気のはずである。だが、クールでどこか  
内面を表には感じさせないような、そんな調子で答えを返されたのだ。  
 
 よく知るモアには似つかわしくない冷美というべき雰囲気に、人違いかという不安に駆られて、  
無垢な幼顔をジッと見つめる。  
 外見はほとんどモアと同じように感じられるが、敢えて違いを言うなら、優しい印象を与える  
丸くてパッチリとした眼が、細目で端が吊り気味な感じに変わっていることだろうか。そこを中心  
とした顔全体の引き締まった印象が、物知りで聡明な大人の身体だけを、そのまま小さくした  
ような雰囲気にさせている。  
 向けられる懐疑の視線に気付いたか、モアがどこか妖麗な表情になって小さく笑った。  
「クス……、まるで初めて会うみたいな顔ですね。まあ、もしかしたらそれが正しいのかもしれ  
ませんけど」  
 ケロロの額を汗が伝う。雰囲気の違いこそあれ、二度聞けばその声がモアのものであることは  
明確だった。最早、明らかに尋常ではない状況に「もしや」と思って尋ねたいことがあるのだが、  
その返答を聞くのが怖くて、喉の所で本能的に発言が抑制されてしまう。  
 そんな内心を知ってか知らずか、幼体のモアがその疑念を読んだかのように答えを告げる。  
「そうですね。ご察しの通り、おじさまはもう死んでいます」  
「ケロォォォ――――ッッ!? マ、マジッスか……」  
 ケロロはショックで仰け反り、顔を両手で覆ってしまう。ボロボロな状態な上に、あんな至近  
距離で黙示録撃を受けて、ダメージ的にも肉体が限界だったのだ。推察するに、先程までの  
景色は記憶の走馬燈といった所で、今はさしずめ黄泉への道でも歩いているのだろうか。  
 
「――というのは冗談です」  
 ガクッ  
 それがジョークであることをモアが告げると、ケロロはガクンと前のめる。どうやら冷静そうな  
見た目とは反して、意外にお茶目な所があるようだ。  
「けれど、おじさまの本体がかなり危険な状態にあるというのは事実ですね」  
「そ、そんなぁ〜〜……」  
 おそらくここは宇宙空間でも地球でもその他の惑星上でもない。もっとも、それがわかった  
ところで、ケロロにはどうしようもないのかもしれないが。  
「でも、助かる方法はあります」  
 小さな少女は、余裕の充満した内面を感じさせるようにして、ケロロにわずかな笑みを向ける。  
「一体……、一体どうしたら!?」  
 まるで全てを手の内に入れたかのような幼モアの雰囲気に、ケロロは期待を込めながらそう  
尋ねた。  
「……これです」  
 モアが手を挙げて、そこへと意識を集中させる。次の瞬間、何もなかったはずのそこには、  
ルシファースピアが握られていた。少女の体躯が、近頃見慣れたものよりかなり幼いことから、  
相対的に巨大で迫力のあるものに見える。もしくは、普段の彼女らしからぬ冷厳な雰囲気が、  
付き合いのよい者にそう感じさせているのかもしれない。  
「ひぃぃっ、またなのでありますかッ!?」  
 それを見せられただけで、ケロロは少々大袈裟とも思えるほどに怯えだした。なにせ、先程  
その鉄槌を喰らったばかりであるのだから無理もない。  
「方法は後で説明します。ですがその前に、私の質問に答えていただけますか?」  
「質問……でありますか?」  
 どこか無表情な少女が、自分を真っ直ぐに見据えてくる。その視線には一点の乱れも無く、  
誤魔化しや逸らしの画策を全く考えさせないほどに強固だった。  
 頼る者一人の状況。そして前説の通りのモアの厳格な問い掛け。ケロロは考えるより先に、  
肯定の答え以外を自分が返すことはできないと理解する。  
 
「――わかったであります、答えられる範囲ならば。だけどその前に一つ、吾輩の質問に答えて  
くれないでありますか?」  
「……なんでしょう?」  
 目の前の幼い女の子は、質問を了承しつつも質問で返す行為に、文句一つ言わず応じてくれた。  
ケロロからはとても悪人には見えないのだが、突飛なシチュエーションで色々とわからないこと  
だらけだ。どうしても一つ、聞いて確かめておきたいことがある。  
「君は――、本当に吾輩の知ってる『モア殿』なのでありますか?」  
「……そうですね。その質問に答えるために、おじ様の知っている『アンゴル=モア』とは、どんな  
人物なのか教えてください」  
 間は数秒だけ。少女はそう言って、ほぼ即答した。質問の質問を質問で返されるという異常事態  
に、ケロロも段々頭が痛くなってきた。  
「答えてください」  
 単純に答える問題ではないだけにケロロが戸惑っていると、音量ではない、他の何かがこもった、  
力強い調子で少女に再度問い掛けられる。するとどうだろか、強引な感じではないのだが、そう  
までして気持ちを真っ直ぐにぶつけられると、それにすごく答えたくなるような、不思議な心境に  
なっていく。  
 やがて、自分の中のモアという人物像が自然と喉の辺りを通って声となり、一つ一つのイメージを  
紡ぎ始めた。  
「モア殿は――、優しくて、他人思いで、世話好きで、吾輩のことを慕ってくれて、いつも笑顔を絶や  
さなくて……」  
「そうですか……。それで、こんな私とは似ても似つかない、ということですね」  
 そう言う少女は、少しだけ悲しそうだった。そんなやり取りをすると、この少女は間違いなくモアだと  
いう不思議な確信が湧いて、ケロロは心の中で納得する。これが答えということなのだろうか。しかし、  
今自分が話したイメージと違っているというのもまた事実である。  
 
「人は――変わるんですよ」  
 憂いを含んだその声は、子供のセリフでも十分に説得力を持たせるものだった。  
 少女が両手を伸ばして、ケロロの腕を掴む。ここに来るまでの流れでは、この後モアに襲われ  
ることを警戒するはず。だが、なぜか抵抗の意識は働かず、すんなりと少女の行為を受け入れ  
ようとしている。  
「おじさまは、『私』を知らない。私には『私』を知っているおじさまがわからない……。だから――」  
 憂いの少女は、気付いた時には目尻で涙を光らせていた。それでも揺るがない意志のように、  
声が掠れることは無い。だから、ケロロもそれを遮ることはしなかった。  
「今のおじさまを……、私に刻んでください」  
「!?」  
 難解な少女の言葉に眉をひそめていたケロロだが、気になることを耳にした。モアは『今の』と  
言ったのだ。つまり、昔の自分は知っているということなのか? だがケロロには見当がつかな  
かった。そのくらい小さかった頃のモアとも、やはり感じが大分違っているように思えたからだ。  
 それからもう一つ……  
「刻む――?」  
「そうです。おじさまを私に感じさせてください」  
 緑の表皮に触れていた白肌の手が、脇口からケロロの背へと滑り込む。そして見つめ合う男女  
二人。モアが発した言葉の、この状況においての意味は、大体想像がつくものだ。  
「し、しかし――、それとここから帰ることに何の関係が?」  
 実年齢はともかくにしろ、少女の見た目からは、そういう行為に及ぶにはまだ早すぎるように  
感じられた。加えてその目的が見えてこず、ケロロは両手をWhatの状態にしてモアに問い掛ける。  
「関係――ありますよ」  
 ハッキリとしないケロロに、モアは少し拗ねたような口調でそう返した。そして、  
「……どうやら我慢できなさそうなので、感じさせていただきます」  
 と続けたのである。  
 
 チュッ……  
「!?」  
 突然だった。目の前の幼い女の子は、途中に一切の停止をしない軽やかな動きで、不意に  
ケロロの唇を奪ったのである。  
「ん…ふ…ぁ……、これが……おじさまの…味……」  
 喜悦の呟きが少女の口から艶息と一緒に漏れ出してきて、プルンとした唇の感触と共に  
接点から感じられた。かたくなに冷静さを携えていた少女の面持ちも、興奮が高まってきた  
のか、いくらか情熱的になってきたように見える。  
「んぐっ……、モア…ど…の……。っはぁっ」  
 強引な始まりながらも、触れ合ってからは優しかった口付けが離される。少女は残り香を  
堪能するようにしながら、唇を指の腹でなぞり、ケロロとの触れ合いを自分に染み込まそうと  
しているようだ。  
 ケロロは、不思議と逃げるような意志は働かなかった。少し冷静になってみると、眼前の  
幼子はとても可愛い。それも、初めのうちは子犬などを見て感じる可愛いだったはずが、  
今や立派に異性としての視点も交わっている。  
(っ……。こんなにも幼い娘に欲求を煽られるとは……。吾輩はどうしてしまったのであり  
ますか?)  
「おじさま、すごい顔になってますよ。もしかしてロ――」  
「ち、違うでありますっ! 吾輩は幼女になにかを感じるような趣味は決して……あっ」  
「そんな……ひどいです。おじさまにお世話になったのは昔の話ですから、こういう姿なのも  
仕方ないのに……うっ……ぐすっ」  
 モアはそう言って俯いてしまうと、目元に手を当てて、いきなりグスグスと泣き出してしまう。  
ケロロにしてみれば当然の否定だったのだが、モアを傷付けてしまったという罪悪感でオロ  
オロとするばかりである。  
 
「――冗談ですよ」  
 モアがそう言って顔から手を離すと、小悪魔的な笑みを浮かべた表情が露わになった。うそ  
泣きだったことがわかると、ケロロはホッと胸を撫で下ろしていて、モアの表情が段々と恥じらい  
のあるものに変化していったことには気付かない。  
 すると突然、モアがその珍妙な上半身服に手を掛け、もぞもぞと脱ぎ始めたではないか。  
「ちょ、ちょっとモア殿! 何をしているのでありますかっ!?」  
 胸上から下をすっぽりと覆っていた衣服が、スルスルと緩まって高度を下げていく。そのまま、  
まだ少しの隆起も見当たらない胸部をあっさりと通過すると、腰上の辺りまでストンと落ちていき、  
上半身が惜しげもなくさらけ出された。  
 幼い少女のまだ小さい胴は、雪で埋め尽くされた冬の大地のように白い輝きを放っている。その  
中にポッチリとした薄紅の尖塔が二つ、慎ましくそびえているのが見て取れた。  
「言ったじゃないですか……。おじさまを私に感じさせて欲しいんです」  
「え!? それってさっきのキスのことじゃ……」  
「駄目です、それだけじゃ全然足りません。……早速ですが、失礼します」  
 上半身を剥き出しにした半脱ぎ幼女の指が、性器の隠れたケロロの股間をまさぐりだす。  
「えっ、えええっ!?」  
 
「こんなつるぺたで、おじさまを興奮させられないかもしれませんけど、私……、一生懸命頑張り  
ますから――」  
 モアが想いを語り出しながら、普段は滑らかなケロン人の表皮だけが感じ取れる緑の股間を、  
小さな指が前後縦横に優しく往復させて擦り始める。  
「だ、だめなのでありますっ! そこをそんなに刺激されたら、吾輩の中でレボリューションがぁっ  
っっ!!」  
 モアは泣きそうな男の叫びを興奮の糧にするようにして、中指の第一関節を使い、股間の後面  
から中面をくすぐる。続いて淀みのない流れるような動きで、人差し指の腹を出すと、股間の前部  
をトントンとノックした。そこを、赤子の肌を触るようにして優しくさする。さらに、少女のさえずりは  
続いていた。  
「――エッチな私の身体で、いっぱい、いっぱい……気持ちよくなってください……」  
 愛撫と言葉の二重攻撃で、ケロロの股間もフィーバー寸前だった。そして、理性という名の牙城  
は、一人の少女の手によってあっさりと陥落する。  
「ああああっ!? もうダメぇぇぇぇぇっ!!」  
 ドォォォォォォン!!  
 絶叫を上げたケロン人からそそり立つは、泣く娘も黙る男の最終兵器。放っておけば、いつの間  
にかハイセンスな名前がついてオラオラと暴れ出しかねない、そんな肉の凶器が股間より屹立  
したのである。  
 

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