「……どういう事よ、ドロロ」  
「言ったでござろう。これも全ては、小雪殿への恩義のため……」  
「こんなの、小雪ちゃんが喜ぶわけないでしょ!!」  
きつく巻かれた縄の中、夏美は身を捩ってドロロをキッと睨み付ける。  
燃えるような視線に、いつしか心がぐらつくようになっていた自分自身を、ドロロは既に自覚していた。  
アサシンとして強靱に鍛え上げていたはずの、自分の心。  
まさか、地球人の小娘相手に乱されようとは、思ってもみなかった。  
それも、旧友のみならず、自分を救ってくれた恩人の思い人相手だと言うのに。  
恋愛は自由とよく言うが、それでも自分の節操無し加減には気が滅入る。  
いっそ夏美が誰かのものになってしまえば、と、小雪へ捧げると言う名目で誘拐してきたのが、つい先程の事だった。  
「……酷いよ、ドロロ」  
ふいに聞こえた夏美の声が、思考の渦に飲み込まれそうだったドロロの意識を呼び起こした。  
俯いた状態で発せられた覇気のない言葉に訝しみ、ゆっくりと夏美の傍まで近付く。  
間近まで近寄ってきたドロロの姿を認めると、夏美はふいっと視線を逸らし唇を噛んだ。  
その目元に光る涙に気付き、ドロロは動揺し、更には動揺した事に再び動揺した。  
夏美に嫌われると言う事を自分が恐れていると言う、その事実に。  
諦めを選ぶ事ができなくなるほど、何時しか肥大してた思いの大きさに。  
「夏美殿、拙者は……」  
「……ドロロは」  
思わず弁解をしようとしたドロロの台詞を、夏美の台詞が遮る。  
しっとりと濡れた睫の間から涙が溢れていくのを、ドロロは無意識に美しいと感じていた。  
 
「他のカエル共と違って、ドロロは……  
 ドロロだけは、こんな事しないって……信じてた、のにっ……!!」  
「……夏美殿……!」  
ギロロや小雪に対する罪悪感を、忘れた訳ではなかった。  
それでも、夏美が今までの自分に多少なりとも信頼を寄せていてくれたということ、  
そして、その信頼が失われそうになっている事が、ドロロの行動から躊躇を奪っていた。  
「っ……」  
夏美の唇に、自分のそれを重ねる。布を巻いたままだった事に気付き、慌ててそれを取り払った。  
直に唇を触れあわせても、夏美は嫌がるでもなく受け入れる。  
焦がれ、渇望していた夏美の唇は、涙の味で少し塩辛かった。  
「……ドロロ」  
「自分の物にならぬなら……そう思ってたでござるが……」  
小さな手と舌で、ドロロは涙で汚れた夏美の頬を清めていく。  
続く言葉を待って、夏美は表情の読めないドロロの瞳をじっと覗き込んだ。  
「無礼を許しては下さらんか、夏美殿……拙者、最早辛抱堪らぬっ……」  
「や、あっ!」  
次の瞬間、身体のサイズからは予想もできない程強い力が、夏美の身体を床へ押しつけた。  
スカートから覗く太股にドロロの手を感じ、夏美の背がびくりと震える。  
「ドロロっ……!」  
「お慕いしているでござるよ、夏美殿っ……」  
「っ」  
「好いていて、惚れていて……この拙者が……っ!」  
太股をなぞっていたドロロの手が、じわじわと上へ昇っていく。  
スカートの中へ潜りこんだ手は、ほどなくして夏美の下着へと触れた。  
慈しむようにドロロの掌が夏美の双丘を撫で、次いでその谷間、秘められた場所へも滑り込んでいく。  
「っあ!」  
 
窪んだ尻穴の辺りから膣口、尿道口にかけてをじんわりなぞられ、夏美は思わず声を上げた。  
ナイロン製の下着と、じっとり汗ばんだ肌の感触が妙なコントラストになり、ドロロの興奮を煽る。  
薄い布を隔てた場所で、夏美の身体の奥から滲みはじめた体液が濡れた音を立てた。  
「そこ……やだ、ぁっ……」  
形を確かめるようになぞっていた下着の中央、膣口にあたる部分が、  
下着越しでも分かる程にヒクヒクと収縮を繰り返している。  
姿を隠していたクリトリスも、既にドロロの目に分かる程に自己主張を始めていた。  
「……御免」  
腰のに掛かっていたゴムの部分を掴み、ドロロは小さく息を吐いた。  
覚悟を決めて、夏美の身体からゆっくりと下着を脱がせていく。  
濡れた下着と股間の間で、愛液がまるで下着をつなぎ止める  
最後の抵抗のように、つぅっと細く糸を引いた。  
「……ドロロ」  
怯えたような夏美の声に、ドロロは黙って夏美の表情を見上げる。  
征服欲をそそる、艶やかな表情。上気した頬が、劣情を駆り立てるけれど。  
「これが、最後の砦……」  
呟き、夏美の身体を拘束していた縄を切る。  
刀を鞘へ収め、ドロロは夏美に向かって頭を下げた。  
「申し訳ござらん、夏美殿。どうか拙者を殴っては下さらぬか」  
「ドロロ……?」  
「衝動に我を忘れてしまったが……やはり拙者、愛する人へこれ以上の狼藉はできぬ……」  
黙ってその言葉を聞いていた夏美が、ゆっくりと身を起こした。  
次の瞬間、ドロロの頬が乾いた音をたてる。  
しかし、思ったよりも遥かに衝撃がなく、ドロロは瞑っていた目を恐る恐る開いた。  
 
「……夏美、殿?」  
「……ドロロの、ばか。いくじなし」  
ドロロの頬に、ぽたぽたと熱い雫が降り注ぐ。  
夏美が泣いているとすぐに気付きはしたものの、それをなかなか理解する事ができなかった。  
停止した様な思考状態のまま、ただただ、夏美の美しい泣き顔に見とれていた。  
「そんなに私が好きだっていうならっ……無理矢理奪ってみなさいよっ……!!」  
「夏美殿、それは」  
「私はっ……!!」  
夏美の腕が伸びて、ドロロに縋るように絡み付く。  
手首に残った縄の跡に、それどころではないと思いつつも心が痛んだ。  
「誰かから好きだなんて言われたの……はじめて、だったんだからっ……!」  
「つ、つまり、その」  
まるで少年時代のように、ドロロはぎこちなく言葉を紡いだ。  
夏美の涙で濡れた肩が、夏美の触れている場所の全てが、燃えるように熱かった。  
「僕が触っても……いやじゃ、ない、の?」  
ドロロの言葉に、夏美がこくりと頷く。  
満たされる思いを感じるより先に、ドロロは再び夏美を床へ押し倒していた。  
性急に重ねた唇はやっぱり涙の味がしたが、何故だかとても甘く感じた。  
 
 
元来隠し事のできない性格のドロロが、小雪とギロロにいつまで隠し通していられるのか。  
人の秘密に敏感なケロロやクルルやタママに、いつまで悟られずにいられるのか。  
不安は多々残りはするものの、秘密の関係は今密やかに幕を開けたのだった。  
 

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