「っあ……あ、ギロロぉっ……」
密室から聞こえる悩まし気な声。
夏美の部屋の前、ギロロを除くケロロ小隊の四人は、
押し合いへし合いドアにコップを押し付けていた。
「くーっくっくっく、跳ねっ返りの割りにいい声出すじゃねぇか……録音して売るかな」
「夏美殿……まさかギロロの手で大人の階段を昇るとは思わなかったであります……ううっ……」
「ケ、ケロロくん……やめようよ、やっぱりこんな……」
「それなら兵長さんだけ帰ればいいじゃないですかぁー!」
ヒソヒソ声で会話する、四匹のケロン人。
それでも、部屋の中から甲高い声が洩れれば、反射的に静かになる。
「誕生日プレゼント」と称されたギロロを連れて
夏美が部屋に戻ったのは、もう二時間近くも前だった。
「あ……ああっ、あっ……!!」
甘く響く夏美の声を聞きながら、四匹のケロン人は胸にそれぞれの思いを抱いていた。
いいなぁ、伍長さん……僕もいつか、軍曹さんと……。
くっくっく、サウンドオンリーってのも結構マニアがいるんだよな。
ケロン人と地球人のカップルでござるか……喜ばしい事だが……小雪殿……
ゲロゲロゲロ、い〜い弱味握っちゃったもんねェ〜。
それぞれの思惑を知る事も無く、窓の外では蜜月が鈍く輝いていた。
奉仕の白薔薇
「っあ。あふっ、そ、そこぉ……」
「コ。ココがいいのか、夏美ッ!?」
「や、嫌、痛ぁ……でも、気持ちいぃー……」
艶かしい会話の応酬が続く。
しかし実際に行われているのは、お約束ながら「マッサージ」だったりするのだ。
また「拾った」と称し、危険な目に遭ってまでプレゼントを
用意されるよりは……という夏美の苦肉の策である。
「あっ、はぁっ、はぁ」
煌々と輝く電灯の下、汗に濡れた夏美の素肌が艶っぽく光った。
俯せた背の下、布団との間で潰された乳房がギロロの集中力を奪う。
「ちょっと、どこ見てんのよ! ちゃんと集中してよねっ」
「ん、あ、おうッ!?」
夏美に咎められ、ギロロはまた夏美の上で体を動かす。
ギロロの手によって、揉み解されていく夏美の柔肌。
上昇していく夏美の体温と、ギロロによって上昇していく室温。
「ギロロ変なトコ見るし、やっぱ部屋の電気消そうかなぁ……」
甘い吐息と共に呟かれた言葉に、ギロロの体温(と室温)が更に上昇した。
上半身裸体の夏美の上に乗る……今の状態でも幸せと興奮で
どうにかなってしまいそうなのに、電気まで消されてしまっては、
とてもじゃないが自分の理性に自信が持てない。
「な、なつ、なつ、なつみ、そ、そ、そ、そ、それはッ」
「よし、消ちゃおっ! きーめたっ!」
腕で胸を隠しながら、夏美は勢い良く立ち上がった。
バランスを崩したギロロが、コロリとベッドの上に転がり落ちる。
汗でしっとり湿った、夏美の匂いのするベッド……
理性のメーターは、そろそろ振り切れて臨界点を突破しそうだ。
「夏美ッ、ま、待……」
服の上からのマッサージでは足りず、部屋に連れ込んで、
地肌へ直のマッサージを受けてから約一時間、興奮状態のギロロの、
情熱愛情情欲etc……たっぷり三割増の奉仕を受け続けた結果、
心はともかく夏美の身体は、ギロロのテクにメロメロトロトロ、
すっかり虜仕掛けになってしまっていた。
「消すよぉ、ギロロ?」
夏美の指が、電気のスイッチにかかって。
光と言う名の貞操帯が、小さな音とともに消え失せて。
途端、ふわり漂う淫媚なムード。サヨナラベイビーフェイズ。
翌日。夏美の腰の痛みは、揉み返しなのか他の理由なのか、
夏美の身体を揉み解したギロロは、心まで揉み解す事ができたのか、
全て見ていて知っている月は、何も語らず太陽の影へ身を隠したのだった。