晩秋の時期ながら、穏やかな天気に恵まれた昼下がり。眠気を誘うような暖かい空気に
包まれた中、ソファに転がるようにしてうたた寝をしている少女がいた。
「すぅー…、すぅー……」
「む…、夏美…寝ているのか……?」
家の中を歩いていた俺は、何とも無しにそれに気付いた。そしてゆっくりと歩み寄っていき、
夏美の顔を覗き込む。
夏美はとても気持ちよさそうに眠っていた。静かに寝息を立て、時折顔を小さく動かしている。
その様子は、いつもの活発な性格とは似付かない、何とも可愛らしいものだった。
「ふっ…。夏美が静かにしていると、こうも違った感じに見えるとはな……」
珍しいものを見るようにして、その寝顔をマジマジと確かめる。このまま放っておいたら、
いつまでこの姿でいるのだろうか? 主として夏美の性格に惚れ込んでいる俺にとって、
別人のように見えるのと相まってか、不思議な感情に支配されていく。
うららかな天候の家の中は、シーンとした静寂に包まれている。それとの相乗効果もあってか、
目の前の少女と異質な空間に迷い込んだような錯覚を覚えた。
「こうも静かだと…、まるで眠り姫のようだな……」
そんな雰囲気に、自分に似合わないようなセリフが、思わず口を飛び出す。自分の発した
言葉を心の中で言い直すと、軽く苦笑が漏れ出した。
陽光が窓から差し込み、少女の身体を暖かく照らしている。それを何の違和感もなく見つめて
いる自分がいる。俺はいつしか、目の前の美しいものに魅入られてしまったようだ…。
「んん……。くぅー……、すぅぅ……」
何秒も、何分も、その姿を見続けた。こうして見ると、目の前の少女はあまりにも無防備だ。
そのせいか、いつもは見ないような所へもつい視線がいってしまう。
「…ん?」
ミニスカートが必要以上にずり上がり、太ももの付け根の近くまでが、惜しげもなくさらけ
出されている。腿に付いたムチムチとした肉の質感が俺の情欲をそそり、思わず下着を
覗き込みたくなるような衝動に駆られた。
この温暖な天候のためか、もうすぐ冬だというのに、服は胸元が大きめに開いたものだった。
これは仕方ないだろう。男なら目が行くはずだ。いや、むしろいかなければ失礼だろう。そこは
呼吸と合わせて、膨らんでは元に戻り、の繰り返しをしている。首根から鎖骨にかけてが、U字に
開かれたそこを、なぞるように視線を這わせていった。
「…おい」
横になってはだけたそこからは、魅惑の双丘のラインを覗く事が出来た。もう少し体勢を崩せば、
先端の突起まで見えてしまうのではないかと心躍らせる。
これは、まだ幼い年齢にしてみれば大きめだ。しかし、呼吸運動で何気なく動いているそれが、
何とも言えないエロスを俺に伝えてきている。堪らなくなった俺は、そんなふくよかな胸部へと
手を伸ばしていった。そしてまずは、服の上から優しく……
「おいと言っているだろうが!!」
「おっと、こりゃ穏やかじゃないねェ…。ク〜ックックック……」
クルルは両手を上げて、降参の意を示す。ギロロが手に持った銃口の先を、クルルの後頭部に
押し当てていたのだ。
「途中から妙なナレーションが入ったと思ったが、貴様だったか…。一体、いつから居た?」
「さあ…? 長かったんで覚えてないがねェ…。眠り姫をいつまで見てんのかと思いましたぜ…?」
「…なっ!?」
「眠り姫…。プッ…、ク〜ックックック……」
堪えていた笑いを爆発させるようにして、クルルが吹き出した。余程おかしいのか、涙目になって
いるように見える。
「じゃ、俺はこの事を隊長以下に報告しなきゃならないんで、そろそろ行かせて貰いますぜェ……」
クルルはそう言うと、突然走り出して部屋を飛び出していく。
「なっ…。まっ、待たんか貴様――っっ!!」
こんなことを言いふらされては堪ったものではないと、ギロロも銃を構えたままで、すぐさま部屋を
飛び出していく。そして二人はドタドタと走り去っていった。
「んんー……。うるさい…わねぇ…。静かに…しなさい…よぉ……。むにゃむにゃ……」
残されたのは、そんな喧噪の元になった少女だけである。さすがにうるさかったのか、一瞬だけ
目が覚めたが、また瞼を閉じると夢の中へと帰っていくのだった…。