クアハウスフロナガン機関―地底ではケロロ小隊が『先客』と激闘を繰り広げ、女湯では夏美と秋が至福の表情で
サービスシーンを繰り広げていた頃―
「ふぅ〜…」
男湯では日向家唯一のその入湯者、冬樹がやはり弛みきった表情で湯を満喫していた。
「いい湯だなあ…」
少年は気づかなかった。一人、二人と、浴場にいた男が姿を消していたことに。
「そっそうですね…。あの…冬樹くん。お、お背中お流ししましょうか…?」
「うん?…じゃあお願いしようかな西澤さん………って西澤さん――――!?」
冬樹の横にはいつの間にか、白いバスタオル一枚をその身に包み、肌をその名が示すかのようにほんのりと
桃に染めている桃華が湯に浸かっていた。
「どどどどど、どうしてココ(男湯)に西澤さんが……!?」
「だって…ココは『混浴』ですもの」
「そ、そんな…?」
馬鹿な、と冬樹は辺りを見回し、ようやく浴場にいる人間が男女1:1の割合になっていることに―いつの間にか
男湯の客は全て消えうせ、浴場にいるのは冬樹と桃華だけであることに―気がついた。
(せっかく出演できたってのに、奴隷コス見せただけで帰れっかよ!なァ…?)
恥じらいを携えた桃華の裏側に潜む分身の声を、冬樹は聞いた気がした。そして「この異常事態は
彼女が持つ計り知れない様々な『力』が働いた結果なのだ」と推測するのに、彼は1秒を要さなかった。
「さあ、あちらで…お流し致しますわ」
「だ、駄目だよ西澤さん。その…僕はこの後も出番があるし、ただの背中流しでも
こういうのをお茶の間に見せたらコードに引っかかる…」
「それなら心配要りませんわ。さっきこの後の冬樹くんの出演はオフになりました」
(おふ…)
「タマちゃんたちの頑張りと健康的なお色気シーンを全面に押し出していこうという方針になったそうですわ」
(脚本家の横っ面札束で引っぱたけば一発だぜ!)
「で、ですから…何も心配することありませんわ…」
(多分続きません)