〜日向姉弟近親相姦?…の巻〜  
 
純和風に改装された日向家の縁側で、夏美と冬樹、小雪とドロロの三人と一匹は、日本の夏を満喫していた。  
大規模な停電で灯りの消えた街並みはしんと静まり返り、中天に掛かる天の川が密かに瞬く。  
田舎へ帰省した時のような穏やかな風情に、夏美は弾ける線香花火の火花を眺めながら、小さく目を細める。  
ジジジッと最後の火玉が地面に落ちて消えると、ドロロがすっくと立ち上がり、小雪の顔を見上げた。  
「さて、小雪殿」  
「あ、うん。夏美ちゃん、私達、そろそろお暇しますね」  
「えっ、もう?」  
腰を上げてチョコンとお辞儀をする小雪に、夏美は意外そうに問い掛けた。  
電気の明かりが無いせいで感覚が曖昧になっているとはいえ、まだそれほど遅い時間でも無いはずである。  
しかし、小雪は夏美の目の前に顔を寄せ、口元へ人差し指を立てて軽くウインクする。  
「これから私達、日課の夜の見回りにいかなきゃいけないんですよぉ♪」  
「左様。まして今宵は、町の灯りが絶えた事に乗じ、不埒な悪行に走る輩が増えぬとも限らんでござるからな」  
「あ、あっそう……」  
重々しく頷くドロロへ曖昧に答え、夏美は引き攣った笑みを浮かべた。  
それは忍者というより警察や警備員の仕事に思えるが、当人達が納得しているのならとやかく言う事でもない。  
「では、これにて御免!」  
「じゃあ夏美ちゃん、また明日〜♪」  
「うっ、うん、二人ともがんばってね……」  
一人と一匹が同時に手印を切ると、その周りでひゅうっとつむじ風が舞い、次の瞬間には姿が消え失せる。  
月光の下、民家の屋根を軽々と飛び跳ねてゆく二つの影を、夏美は半ば呆気に取られて見送った。  
 
「はぁ……。何て言うか、ある意味ボケガエルよりも謎よね、小雪ちゃんってば……」  
小雪達の姿が見えなくなると、夏美は急に疲れを覚えたようにカクッと肩を落とした。  
マヌケな侵略者が日向家にやって来てからというもの、不思議や不条理は日常茶飯事だが、彼女はまた特別だ。  
何しろ、宇宙人の怪しげな道具とは関係なく、日本古来の伝統を今に受け継ぐ由緒正しい(?)くノ一である。  
おまけにちょくちょく色めいた雰囲気で迫ってくるので、ノーマルな夏美としては余り油断できない相手だ。  
気を取り直して大きく伸びをすると、夏美の口から小さな欠伸が洩れた。  
「ふぁ……、むにゅ。さて、今日はもうやる事ないし、早目に寝よっかな?」  
欠伸を噛み殺して呟くと、その言葉に釣られるようにして、夏美の脳裏へじわじわと眠気が押し寄せてきた。  
サンダルを鳴らして縁側に近づき、灯篭の光の中で読書を続けている冬樹に声を掛ける。  
「冬樹、あんたはどうする?」  
「んー。今いいところだから、もうちょっと起きてる」  
「あんまり夜更かしするんじゃないわよ。明日寝不足になっても知らないからね」  
「うーん、分かってる」  
どう見ても上の空で返事をしているようにしか見えない冬樹に、夏美はやれやれと苦笑した。  
長年姉弟をやっているだけに、こうなったらちょっとやそっとでは動かない事など、夏美も充分理解している。  
「じゃあ、下の戸締りお願いね。お風呂の栓もちゃんと抜いとくのよ?」  
「うん分かった。お休み、姉ちゃん」  
「お休み、冬樹」  
本からちらりと顔を上げて告げる冬樹へ軽く手を振り、夏美は居間を横切って自分の部屋へと向かう。  
(……あれ? なんか忘れてるような……?)  
自分の台詞のどこかが引っ掛かったものの、睡魔に襲われた夏美の頭では、その疑問を深く追求できなかった。  
 
                      ◇  ◇  ◇  
 
「くぅ……。すぴぃ……」  
ベッドに入って一時間も経った頃には、夏美はぐっすりと寝入っていた。  
夏掛けの布団は端に蹴り飛ばされて、寝巻き代わりのチューブトップとショートパンツだけが身体を覆うのみ。  
窓は網戸を残して全開にしてあり、普段は鍵を掛けている部屋の扉も、風を通す為に大きく開け放たれている。  
あられもない姿で四肢を伸ばし、すやすやと健やかな寝息を立てて、夏美は夢の世界を漂っていた。  
(ん……。あ、涼しい……)  
薄く汗ばんでいだ胸の谷間に夜風が吹き抜け、その爽やかさが夏美の意識に軽く触れた。  
邪魔な布が取り去られた開放感に、素直な喜びが湧き上がり、幸せそうにムニムニと唇を動かす。  
夏美の臍の脇にポタリとぬるい雫が落ち、その刺激に滑らかな腹がピクンと震えた。  
(雨……じゃ、ないわよね……? ええっと、今夜の天気予報は……。そっか、停電だっけ……)  
大の苦手であるナメクジの如きのろのろとした思考で、夏美はどうでもいいような事をつらつらと考えた。  
そうしている間に、今度はショートパンツがずり落ちていき、その下のショーツまでが徐々に脱がされていく。  
身じろぎすると一旦は止まるものの、またしばらくすると様子を窺うように、そろそろと引き下げられる。  
(もう……。そっちは、脱がさなくても、いいってば……。……へ? 脱がす? 誰が?)  
尻の下を擦ってゆく布地の感触に、夏美は今更ながらの疑問を覚えた。  
うっすらと目を開くと、窓から差し込む月明かりに、冬樹の姿が青白く浮かび上がっている。  
夏美はそれでもまだ状況を理解できず、妙に真剣な表情で衣服を剥いでゆく弟の顔を、ぼんやりと眺めやる。  
(なんだ、冬樹か……。おどかさないでよね……って、納得してどうすんのよっ!?)  
納得しかけてから、弟に服を脱がされているという異常な事態に改めて気付き、頭の中で盛大に突っ込む。  
寝惚けていた頭が一気に覚醒し、夏美は慌ててベッドから飛び起きた。  
 
「なっ、ななっ、なにっ、なんなのっ!?」  
「あ……、姉ちゃん……」  
夏美は壁際にババッと後ずさり、手足を引き付けて身体を隠し、上擦った声を出した。  
チューブトップは鎖骨の辺りへたくし上げられ、ショートパンツとショーツは太腿の付け根まで下がった状態だ。  
改めて見れば冬樹は何故か素っ裸で、しかも全身をびっしょりと濡らし、シーツの上に水滴を垂らしている。  
冬樹の股間のものが異様なまでに大きくなっているのを目撃し、夏美の動揺は更に加速した。  
「ふっふっ冬樹っ! あんた何してんのよっ!」  
夏美はあまりの事態に衣服を整える事も思いつかぬまま、顔を真っ赤にして冬樹に問い質した。  
こういった行為の意味はおぼろげに理解できない訳でもないが、どう考えてもこの状況は異常過ぎる。  
すると冬樹は熱に浮かされたような声色で、夏美の姿を見下ろしてゆっくりと口を開いた。  
「僕、寝る前にさっぱりしようと思って、お風呂に入ったんだ……」  
「……え?」  
いきなり脈絡の無いように思える話をされ、夏美は呆けた声を上げた。  
同時に寝る前の会話と似たような引っ掛かりを覚え、軽く眉をひそめて記憶の中を辿る。  
「そうしたら、なんかホワンとした匂いがして、頭がクラクラして、エッチな事しか考えられなくなって……」  
「あっ!」  
(思い、出した……っ!)  
続く冬樹の言葉に、夏美は頭の隅に残っていた疑念の正体に気付き、大きく息を呑んだ。  
小雪が戯れに風呂の湯の中へ混ぜ込んだ、忍びの媚薬入り特製入浴剤。  
同性という事で何とか抑制できたが、湯船で彼女に胸を触れられた時の甘い疼きは、今でも明確に思い返せる。  
しかし、この期に及んでようやくそれを思い出しても、もはや後の祭りであった。  
 
「だから、ねえ……。姉ちゃんの裸、見せてよ……」  
男と女では効き目が違うのか、冬樹は媚薬のもたらす興奮に、完全に理性を吹き飛ばされているようだった。  
欲情に荒い息をつきながら、ベッドの上に四つん這いで乗り上がり、じりじりと夏美へ迫ってくる。  
熱気すら漂う欲情した雄の雰囲気に、夏美は猛烈な貞操の危機を感じ、強く身を竦めた。  
「だっ、ダメに決まってるでしょっ! こらっ、それ以上近づかないでよっ!」  
「どうして、そんな意地悪するの……? 僕、どうしても姉ちゃんの身体が見てみたいんだ……」  
「ダメだったら! 冬樹っ、いいかげんにしないと、おっ、怒るわよっ!?」  
夏美が必死に言い募っても、冬樹は一向に正気を取り戻す兆しもなく、ふらふらと手を伸ばして来た。  
言う事を聞かない弟の姿に怒りを覚え、夏美はどもりながらも片手で冬樹の顔を捉え、押し返そうとする。  
しかし、冬樹はそんな夏美の手首を握り締めると、いとも簡単に脇へと外していく。  
その信じ難いほどの腕力に、夏美の背筋にぞっと怖気が走った。  
(うそっ! どうして振り解けないのっ!?)  
渾身の力を込めて抵抗しても、まるで鋼鉄で出来ているかのように、冬樹の腕はビクともしなかった。  
基礎体力では桁違いに差があるはずなのに、媚薬で正気を失っているせいなのか、今はまるで歯が立たない。  
冬樹は暴れる夏美の片腕を固く抑え付けながら、続けて乳房を覆うもう一方の腕も掴み取ろうとする。  
「やっ、やめてっ! あたし達、姉弟なんだから、こんなの絶対ダメなのっ!」  
「関係ないよ、そんなの……。お願いだから、姉ちゃんのおっぱい、見せて……?」  
「あんたはただ、媚薬でおかしくなってるだけなのっ! 冬樹、ねっ、落ち着いて! あ、やぁっ!?」  
力で敵わないと見るや、夏美は声音に懇願の色を加えて、興奮した冬樹を懸命に掻き口説いた。  
けれど冬樹は、身を捩って逃げる夏美の手首を強引に捕らえ、そのままぐいっと引き剥がしてゆく。  
夏美の両腕は冬樹の手で背後の壁へ磔のように縫い止められ、隠すものを失った豊かな乳房がプルンと弾んだ。  
 
「はぁ……。姉ちゃんのおっぱい、やっぱり大きいや……」  
「や、やだ、見ないでっ! 見ないでよ、見ないでったらぁ!」  
年に似合わず素晴らしく発達した二つの膨らみを間近で眺め、冬樹は感嘆と歓喜の入り混じった声で呟いた。  
幼い頃には一緒に風呂にも入った間柄とは言え、男性としての目で裸を見られる激しい羞恥に、夏美は泣き叫ぶ。  
じたばたと身を捻る度に、柔らかな乳房が不規則に揺れ動き、先端の桜色をした小さな乳首が跳ねる。  
その妖しい様にゴクンと生唾を飲み込むと、冬樹は双丘の間に顔を埋めていった。  
「んんっ……。あったかくて柔らかくて、すごくいい匂いがする……」  
「いや、いやあっ! こんなの、こんなのやだってばぁ!」  
甘えるというより顔全体で愛撫するような冬樹の行為に、夏美はぶんぶんと首を振って抗った。  
熱い吐息が素肌に直接吹き掛けられ、顔の凹凸が乳房を押し潰し、敏感な先端が頬肉に擦られてゆく。  
冬樹に鼻を鳴らして肌の匂いを嗅がれる事が、どうしようもなく恥ずかしい。  
なのに、夏美の身体はゆっくりと疼き出し、刺激を受けた乳首が徐々に固くしこっていった。  
「姉ちゃん、おっぱい、吸ってもいいよね……? ん、ちゅっ……」  
「やあぁっ! だっ、ダメぇっ! 冬樹、そこっ、吸っちゃ、ダメ……っ!」  
音を立てて乳房の先端を吸い上げられると、夏美は駆け抜ける快感をはっきりと自覚した。  
心は拒み続けているのに、身体がこうも容易く反応し始めている事に、夏美の頭へふと疑念が浮かぶ。  
その時、冬樹から嗅ぎ覚えのある香りが一際強く立ち昇って鼻腔の奥をくすぐり、異変の理由を明らかにした。  
(あ……、この、匂いっ……。やだっ、あたし、また……)  
身体も拭かずに風呂から出て来た冬樹の全身からは、今もなお媚薬の香気が濃密に漂っていた。  
冬樹の体臭が混ざったその淫靡な匂いは、前とは比較にならないほどの勢いで、夏美の理性を侵してゆく。  
頭の芯を痺れさせる、媚薬の強烈な効能に、夏美の瞳はトロンとした曇りを帯びていった。  
 
「んむ、ちゅぷっ、はぁっ……。姉ちゃんのおっぱい、おいしい……。んちゅ、はぷっ……」  
「あ、んんっ! 冬樹っ、そこばっかり、舐めたら……、んっ……、あ、やぁっ!」  
唇と舌で執拗に胸元をなぶられていく内に、夏美の腕からはどんどん力が抜け始めていた。  
想いとは裏腹に、淡い色の乳首はピンと張り詰め、与えられる快楽に歓喜のわななきを続ける。  
抵抗が収まって来た事を悟った冬樹は、抑え付けていた夏美の手首を解放し、両の掌を乳房へと伸ばす。  
そして、緩やかに揺れる二つの柔肉へ指を這わせ、感触を確かめるようにゆっくりと揉みしだいていった。  
「ねえっ、ふっ、冬樹……。お願い、こんなのっ、もうやめてっ……あ、はぁっ……」  
「はっ、はぁ……。すべすべで、ぷにぷにして、すごくエッチだ、これ……」  
「んふぅっ、ん、バカっ……。そんな事っ、言わないでったら……ん、んぅっ!」  
快感に肢体を震わせながら夏美が切れ切れに訴えても、冬樹は全く耳を貸さずに、彼女の胸へ没頭していた。  
水風船で遊ぶように何度も上下に揺さぶり、指をうにうにと動かして、白い乳房が淫らに歪む様を楽しむ。  
軽く握って乳首の付近をぷにゅんと掌から零れさせ、左右の突起を夢中になって交互にしゃぶる。  
夏美が示す反応に、冬樹は目新しい玩具を手に入れた幼児の如き満足げな笑みを浮かべ、更に弄んでいく。  
手指の動きに合わせて歪む豊満な双丘は、塗りつけられた唾液によってぬらぬらと照り光っていた。  
「むちゅっ、るろっ、はっ、ぷぅ……。姉ちゃん、姉ちゃんも気持ちいいんでしょ……?」  
「ちっ、違う……。あたし、気持ち良くなんか、ないっ……あふぅっ!」  
「嘘ついても駄目だよ……? ほらここ、こんなに硬くなってる……」  
「や、っはぁ! ちがっ、あんっ、これは違うんだからぁ!」  
弱々しく押し返そうとする夏美の腕は、その度に煩わしげな冬樹の手によって、左右に振り払われていった。  
隆起した乳首をくりくりと指先で弄られて、夏美の腰の奥から熱い雫が込み上げる。  
再び腕を突っ張らせると、何故か今度はあっさりとそれに従い、冬樹は夏美の肢体からふらりと身を離した。  
 
「あ、え……?」  
支えを失った両腕をくたりとシーツに落とし、夏美は呆けた顔で冬樹の姿を見直した。  
もしかしたら、やっと正気に戻ってくれたのかも知れないと、淡い期待がその脳裏に浮かぶ。  
しかし、冬樹の瞳はぎらついた欲情の眼差しで、夏美の閉じた太腿の付け根を食い入るように見据えている。  
夏美が今まで見た事の無い弟の表情に怯みを覚えると同時に、冬樹は喉にからんだ声で告げてきた。  
「次は……、姉ちゃんのあそこ、見せて……」  
「やっ、イヤっ! そんなの絶対イヤっ!」  
「姉ちゃんが嫌でも、僕は見たいんだ……。見せてくれないなら、勝手に見るよ……?」  
夏美は反射的に胴に引き付けた膝を抱え込み、足先を絡めてしっかりと脚を閉じた。  
異性はおろか、どんな相手にも見せた事の無い秘部を弟に見られるなど、とても許容できるものではない。  
だが、そんな強い拒絶も物ともせず、冬樹は夏美の脚に手を伸ばし、組んだ足首を解いてゆく。  
太腿の付け根にわだかまったショートパンツとショーツが、最後の砦のように冬樹の視線を遮っていた。  
「邪魔だよ、これ……」  
「あっ、痛っ!?」  
冬樹は自分の望みを阻む布切れを掴み取り、一気に膝まで引き上げた。  
勢い余った指の爪に柔肌を引っ掻かれ、その鋭い痛みに夏美は小さく悲鳴を洩らす。  
夏美が苦痛に気を取られた隙に、冬樹は彼女の前でずいっと身を屈め、鼻先を股間に近づける。  
そして、ぴったりと合わさった腿肉の狭間に両手を潜り込ませて、そのまま左右に割り開く。  
「うわぁ……、これが、女の子の……」  
「ああっ、ああぁぁぁ……」  
月明かりに順応した冬樹の目は、吐息が掛かるほどの近距離で、初めて見る女性の陰部を明確に捉える。  
乙女の秘密を間近で観察される深い恥辱と喪失感に、夏美は抵抗する気力を失い、虚ろな声を発した。  
 
「姉ちゃん、もうちゃんと生えてるんだね……。こんなにふさふさしてる……」  
「あ……。あっ、あぁ……」  
(見られてる……。冬樹に、あたしのあそこを、目の前で見られてるぅっ……)  
まだ柔らかい秘毛を指先でまさぐりながら、冬樹は感心したようにひっそりと呟いた。  
冬樹が喋るのに合わせて、僅かに湿った巻き毛が細かく揺れ、夏美の背筋にゾクゾクと震えが走る。  
殆ど呆然とした夏美の頭の中で、実の弟に秘所を晒しているという事実だけが、ぐるぐると駆け巡ってゆく。  
その時、遊離しかけた意識を現実に引き戻すように、熱くぬめった何かが秘裂を縦になぞった。  
「ひうっ!?」  
「ん……。姉ちゃんのここ、しょっぱくて美味しい……」  
「や、やだぁっ! なっ、なにしてんのよぉっ!」  
冬樹の台詞に、自分の大事な部分を舌で舐められたのだと知り、夏美は思い出したように足をバタつかせた。  
見られるだけでも気が遠くなるほど恥ずかしいのに、そこの味を確かめられるなど、到底耐えられない。  
しかし何度か背中を踵で強く蹴っても、冬樹はしっかりと夏美の両足の根本を掴んだまま、再び舌を伸ばす。  
そして、猫が皿に注がれたミルクを飲む時のように、ぴちゃぴちゃと音を立てて一心に舐め始めた。  
「あっ、あっ! ふゆっ、だめ、あっ、やっ、あんっ!」  
「ふむっ、ちゅぷっ! んっん、んくっ、はぷ、ぴちゅ……」  
(やっ、こんなの、嫌なのにっ……! どうしよう、きっ、気持ち、いいよぉ……っ!)  
下から上へと繰り返し花弁を辿ってゆくざらついた舌が、夏美の股間に燃え盛る快楽の炎を巻き起こした。  
唇からは無意識のうちに甘い喘ぎが洩れ、身体のあちこちが電流を受けたようにピリッと痙攣する。  
滲んだ蜜は流れ落ちる暇も無く、冬樹によって素早く丹念に舐め取られ、代わりに唾液が塗りつけられていく。  
腰が蕩ける程の快感の連続に、夏美の意識はとうとう自分の身体の反応を肯定してしまった。  
 
「ぬむ、じゅぷっ……! むもっ、んぬぬっ、んぷ、ぢゅっ……!」  
「あはぁっ! はぅっ、やっ、なか、入れちゃ、んっ、あっあ、ああぁっ!」  
やがて冬樹の舌には更に力が篭り、ぬたぬたとのたくりながら肉襞の合わせ目に侵入していった。  
夏美も今まで何度か自分で慰めてみた事はあるが、その時も表面を撫でるだけで、中まで指を入れた事は無い。  
それなのに、冬樹の舌は遠慮も容赦もなく不可侵の領域まで入り込み、刺激を知らない粘膜を掻き分けてゆく。  
体内を他人の器官が動き回るという嫌悪感も、それによって起こる悦楽の波に呆気なく流されていった。  
「ずちゅるっ、はぷっ! るろろっ、くちゃ、ぬむっ、ん!」  
「はくぅ! っあふ、きゅうん、あっやっ、はぁんっ!」  
(だめ……だめぇ……! このままじゃ、あたし、あたしっ、もうっ……!)  
奥から湧き出る蜜を大きく啜り上げると、冬樹は夏美の秘裂に唇を押し付け、尖った舌先で陰核を弄り始めた。  
夏美は最も敏感な箇所から炸裂する官能の爆発に、あっという間に意識を染め上げられ、強く背を反らす。  
絶頂を堰き止める術など、経験の無い夏美が知る筈も無く、ただ幼児のように首を左右に振る。  
その間も、冬樹の唇は外にはみ出た襞をついばみ、踊る舌が包皮を捲って、小さな花芯を舐め回してゆく。  
硬い舌先に肉芽をぐりっと押し潰された瞬間、夏美の瞼の裏で目も眩まんばかりの閃光が弾けた。  
「ふああぁぁぁっ!?」  
極みに達した夏美は、宙に浮いた爪先を限界まで突っ張らせ、冬樹の顔面にプシャッと潮を吹いた。  
潤んだ瞳を大きく見開き、ガクガクと全身を震わせて、甘美な悦楽に酔い痴れる。  
(あ、あたし……。ふゆきに、おとうとにされたのに……、きもちよすぎて、いっちゃったぁ……)  
頭の隅で流れるそんな思考さえもが、却って夏美の身体に背徳的な喜びを掻き立てる。  
絶頂の痙攣が治まると、夏美は背後の壁にもたれるようにして、ズルズルとベッドに倒れ込む。  
トロッとした濁りのある愛液が秘所から尻を伝って零れ落ち、シーツの上にじわりと染みを作った。  
 
「はっ、はぁ、姉ちゃん……。僕もう、我慢できないよ……」  
顔に飛んだ飛沫を腕で拭うと、冬樹はいきり立った肉棒を跳ねさせながら、崩れ落ちた夏美へにじり寄った。  
ぐったりとなった肢体を手元に引き摺って、ショートパンツが絡んだままの膝を大きく持ち上げてゆく。  
幼い肉茎はすでに限界まで膨れ上がり、包皮の先からまだピンク色をした亀頭を覗かせている。  
自分の股越しに冬樹の滾り切った男性器を見せ付けられ、夏美の脳裏に僅かながら理性の片鱗がよぎった。  
「姉ちゃん、いいよね……? 姉ちゃんだけが気持ちいいなんて、ずるいもん……」  
「あ……やっ……」  
(やめて、ふゆき……。はじめてのあいてが、おとうとだなんて、そんなの、いや……)  
実の弟に処女を散らされる恐怖に、夏美はぎゅっと目を閉じて、ふるふると力無く首を振った。  
快楽に痺れた手足は思うように動かず、拒絶の言葉を紡ごうにも、声帯も舌もろくに言う事をきかない。  
せめてもの抵抗に太腿を閉じてみたところで、脚を持ち上げられた状態では、秘所を隠す事さえ叶わない。  
冬樹は片手で夏美の脚を押し退け、もう片方の手で反り返った先端を宛がうと、そのまま一気に腰を進めた。  
「いくよ、姉ちゃん……? んっ……と、ん、んうっ!」  
「やあああぁっ! あ、……え?」  
破瓜の苦痛に身構えていた夏美は、冬樹の腰が密着しても一向に痛みが訪れない事に、呆けた声を出した。  
ドクドクと脈打つ硬い感触は感じ取れるのに、舌が入った時のような中を抉られる感覚がまるで無い。  
(いたく、ない……。というか、はいって……、ない?)  
恐る恐る目を開いて自分の下半身を見てみると、太腿の隙間から冬樹の肉棒がひょっこりと顔を出していた。  
大量のぬめりと冬樹の経験不足が重なり、先端が入り口から滑って、膣口から外れてしまったらしい。  
それほど性的な事に詳しくもない夏美には、これがいわゆる『素股』という状態である事など知る由も無い。  
ただ奪われずに済んだ安堵と、今度こそ入って来るのではないかという不安だけが、その胸に渦巻いていた。  
 
「はぁぁ……。姉ちゃんのここ、ぬるぬるして気持ちいい……」  
「あっ、ん!」  
気付いていないのか、それともこれだけの刺激で充分だったのか、冬樹はうっとりと溜息をついた。  
小さく腰を揺らし、滑らかな内股と濡れた秘唇に囲まれた陰茎を何度か前後に動かす。  
ごつごつとした肉茎の腹に外側の襞を擦られて、夏美の口から思わず甘い喘ぎが洩れる。  
夏美の太腿の付け根を両手で抱え込むと、冬樹は本格的に腰を使い始めた。  
「はっ、はっ、んっ、はぁ、はっ!」  
「ああっ! くぅ、んんぅ、やっ、あっ!」  
恥骨と硬い肉棒の間で秘所をぐりぐりと押し潰され、夏美は押し寄せる官能に大きく身悶えた。  
夏美の愛液と汗、股間に塗られた冬樹の唾液と鈴口から滲む先走りが混じり、潤滑油となって律動を補助する。  
一度頂点まで押し上げられた夏美の身体は、新たな感覚を受けて歓喜に打ち震え、再び悦楽の階段を登り出す。  
早くもコツを会得し始めたのか、冬樹の動きの幅が広がり出し、それと共に速度も上がっていった。  
「はっ、んっ、姉ちゃ、んっ、くう、はぁ!」  
「やぁ、んふぅ、あぁっ、やはぁ、あっ、あぁん!」  
大きく引かれた腰が突き入れられると、冬樹の先端が浅く沈みかけ、夏美は慌てて下腹部に力を込めた。  
侵入を拒まれた亀頭は膣の入り口でにゅるんと滑り、陰核を強く擦り上げつつ臍の下へと抜ける。  
駆け抜ける快感に夏美の力が抜けかけた処で、冬樹は素早く腰を引き、そしてまた同じように突き込む。  
(やっ、やだぁ……! はいるっ、はいって、きちゃうぅ……!)  
気を抜けばあっさり貫かれてしまいかねない勢いに、夏美は腰を打ち付けられる度、きゅうっと膣口を締めた。  
しかし、その場所に集中すればするほど、湧き起こる快感も強くなり、抵抗する意思の力を削り取ってゆく。  
緊張と弛緩、拒絶と悦楽の絶え間ない繰り返しに、夏美の意識は次第に混濁していった。  
 
「はぁ、はぁっ! 姉ちゃん、僕っ、すごく、いいっ! 姉ちゃん、いいよっ、姉ちゃんっ!」  
「いやっ、んぁん! やはっ、んくっ、ふやぁ!」  
(だめ……だめよっ! こんな、まけちゃ、でもっ、あぁっ、いい……っ!)  
冬樹はギシギシとベッドを軋ませながら、うわ言のように何度も呼び掛けて、夏美の身体を蹂躙していった。  
慣れない運動にびっしりと汗をかき、ゼンマイ仕掛けの人形の如くカクカクと腰を使う。  
もう受け入れてしまえと誘う本能の囁きを振り払い、夏美は必死になって緩みかけた膣口を閉ざし続ける。  
やがて冬樹の陰茎はムクリとその体積を増し、何かを待ち望むかの如くひくつき出した。  
「姉ちゃん、僕、もう、出そうっ! はっ、んっ、出る、出るよっ!」  
「ああっ、ふあぁ! んにゅう、やっ、やらぁ、もぉ、らめぇ!」  
(おわって、はやく、おわってぇ……! でないと、でないとっ、あたしぃっ……!)  
切羽詰った声で訴えつつ、冬樹は怒涛のような激しさで、最後の高まりを追い求めてきた。  
火がつくのではないかと思える程の強い摩擦に、夏美は快楽でもつれた舌を操り、己の限界を告げる。  
朦朧としながらも残った力を下肢へ掻き集め、膣口をきつく収縮させ、内股を寄せて肉棒を圧迫してゆく。  
夏美が快楽に屈するほんの一歩手前まで追い詰められた時、冬樹の陰茎がビクンと脈動した。  
「出るううぅぅっ!」  
「んっ……ああぁぁぁん!」  
冬樹が背中を仰け反らせて精を吐き出すのに追随し、夏美は二度目の絶頂に至った。  
黄白色に濁った濃い粘液が、まるで残り少なくなったボディソープのような出方で、夏美の腹に降り注ぐ。  
「はぁぁっ……。はぁぁ、んっ、はっ、ねえ、ちゃん……」  
動きを急速に緩めながら冬樹が荒い息をつくと、勢いを無くした精液が垂れ、赤い巻き毛の上に滴り落ちる。  
その白濁は身体の曲線に沿って秘裂の脇を流れ、夏美の愛液と混じってゆっくりと尻肉を伝っていった。  
 
「ぁ……は、っ……、ふ、ぅ、ぁ……」  
(こ……れで、おわ……り……? もう……、ゆるし……て、くれる、の……?)  
冬樹に負けず劣らず乱れた息を継ぎ、夏美はぼんやりと祈りにも似た想いを巡らした。  
もう一回挑まれれば、気力の全てを使い果たした今、抵抗する事はとても出来そうに無い。  
その願いがどこかに通じたのか、欲情に歪んでいた冬樹の瞳が、段々と落ち着いた色合いを取り戻してくる。  
そして我に返った様子でハッと息を呑むと、夏美の顔をおずおずと見下ろして来た。  
「あ、あの……。姉ちゃん、僕、その、ごめん……」  
(ごめ、ん? ──ごめん、ですってぇ!?)  
正気を取り戻した冬樹の謝罪の言葉をきっかけにして、夏美の胸に猛烈な怒りが込み上げてきた。  
例え本意ではなく、媚薬の効果に操られただけだとしても、到底許せる物ではない。  
夏美は激情のままに萎えた身体を起き上がらせると、渾身の力を込めた拳で冬樹の顔を張り飛ばした。  
「うわぁっ!? あっあのっ、姉ちゃん、ほんとにごめんっ!」  
「ごめんで済むかっ! このバカ、ヘンタイっ、とっとと出てけっ!」  
怒りと悔しさにボロボロと涙を流しながら、夏美は目に付いた物を手当たり次第に冬樹へ投げつけていった。  
冬樹は懸命に詫び続けていたが、机を持ち上げ始めた処で生命の危機を感じたのか、慌ててドアから飛び出す。  
当たる対象を失った夏美は、浮かせた机から手を離すと、床の上へ力尽きたようにペタンとへたり込んだ。  
「ふっ、ふみぃ……。こんなの、もぉ、サイテーよぉ……」  
激怒の炎が治まってくると、後に残ったのは、意に沿わぬ行為で二回もイってしまった自分への後悔であった。  
実の弟に無垢な身体を散々もてあそばれたのに、今までにないほど感じていたのは紛れも無い事実である。  
冬樹を叩きのめしても、原因である小雪に八つ当たりしたとしても、それでどうなるというものでもない。  
「あたし、汚れちゃった……。汚されちゃったよぉ、623さぁん……」  
どこぞの二番目の子供とそっくりの台詞を呟き、夏美はえぐえぐと泣きじゃくった。  
 
                      ◇  ◇  ◇  
 
「そうよ、消すのよ……。それしかないわ……」  
その翌日、夏美はゾンビのようなオドロオドロしい足取りで、冬樹の部屋へと向かっていた。  
あれから一睡もしていないらしく、真っ赤に泣き腫らした目の下には隈ができ、顔色も紙のように白い。  
だらりと垂らした手には物々しいフォルムの光線銃らしきものを下げ、フラフラと廊下を進む。  
やがてドアの前に辿り着くと、夏美は声も掛けないままに、冬樹の部屋へと足を踏み入れた。  
「あ、う、姉、ちゃん……。昨日は本当に……って、なっ、なに、その銃……?」  
自分から訪れて来た姉の姿にたじろいだ冬樹は、彼女が携えたいかつい形状の武器に、さぁっと青ざめた。  
夏美はその問いへ、無言でスチャッと銃口を弟の額にポイントする事で答える。  
「え、ちょっと、姉ちゃん? まっ、まさか、僕を、こっこ、殺っ……」  
「消えなさい、冬樹……っ!」  
「うわあぁぁっ!」  
最後まで言わせず、夏美は静かに引き金を絞って、渦巻き状の怪光線を冬樹に浴びせ掛けた。  
しかし、バッタリと倒れた冬樹には全く外傷が無く、意識は失っているものの、呼吸や顔色にも変化は無い。  
夏美が使ったのは、あれからクルルを脅して超特急で作らせた、『記憶消去光線銃(イヤナコトハナカッタコトニガン)』。  
これで冬樹と自分の昨夜の記憶を抹消して、全てを無かった事にするというのが、夏美の出した結論だった。  
「こうしちゃえば、何も問題ないのよ……。そう、なんにも無かった……、無かったんだからぁ……」  
銃口を己の眼前に向け直し、夏美は何度も言い聞かせるようにブツブツと繰り返した。  
不幸中の幸い、身体に決定的な傷は刻まれていないのだから、後はお互いが忘れてしまえば証拠は残らない。  
一晩寝ないで考えた夏美の、これが精一杯の解決策だ。  
覚悟を決めてそっとトリガーを引くと、夏美の意識は闇の深淵に落ちていった。  
 
「ふはははは! ケロロ軍曹、辛い過去はキッパリ忘れて、ただいま社会復帰でありますっ!」  
それからしばらくして、二人が倒れた部屋の前の廊下へ、やけに清々しい表情のケロロがやって来た。  
ムービーデータのダウンによる虚脱状態からも立ち直ったらしく、無意味に高笑いを上げながら胸を反らす。  
「いやあ、『零れた水は、また汲めばいい』と太田コーチも言ってますしな! ……おや?」  
ケロロは部屋の前を通り過ぎかけた処で、床に寝そべった夏美と冬樹の姿に気が付いた。  
ピョコピョコと近づいていくと、意識の無い二人を交互に眺め、床に放り出された光線銃を手に取ってみる。  
「はて、これはクルルの新発明ですかな? しかし何故ここにこんな物が……?」  
小さく首を傾げてケロロが銃をいじっていると、やがて気が付いたらしく、二人はもそもそと起き上がった。  
特に深い考えもないままに、ケロロはぼうっとした顔をする姉弟に晴れやかな声を掛ける。  
「やあ、夏美殿も冬樹殿もおはようであります。ところで、一体どうして床で寝てたんでありますかな?」  
「「………………」」  
夏美と冬樹は無言のまま、じと〜っとした目つきでケロロの手元に視線を寄せる。  
何だか妙な雰囲気を感じ取り、ケロロは間の抜けた笑顔を次第に引きつらせていった。  
 
「あ、あの、お二人とも、その目はなんですかなっ?」  
「……あのさぁ、あたし、夕べからの記憶が無いんだけど、それってその銃のせいよねぇ?」  
「僕も、何があったか覚えてない上に、体中がズキズキするんだけど、どういう事なのかな、軍曹……?」  
「えっ? ええっ!? わっ、我輩、何もしてませんですよ? この銃もここで拾ったんですよっ?」  
全く身に覚えのない言い掛かりをつけられ、ケロロは迫り来る二人にオドオドと弁解した。  
しかし、普段の行いが悪いせいか、その言葉には説得力という物がまるで無い。  
「あんたの他に、誰がそんな事するってのよ……?」  
「ひどいや軍曹……。僕、ちょっとこれは許せないなぁ……」  
パキパキと拳を鳴らす夏美と、絵にも描けない恐ろしい形相をした冬樹が、ドス黒いオーラを放って歩み寄る。  
二人に挟まれたケロロは、蛇に睨まれた蛙と言う表現そのままに、ガクガクと脂汗を流して硬直する。  
──こうして、一匹の尊い犠牲者を生み出すことにより、日向家は昨日までの平穏を取り戻すのであった。  
めでたしめでたし。  
 
「そんなん納得できるかグギャアアアァ!?」  
 
〜END〜  
 
 
 

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