切っ掛けは、一冊の本であった。
この本さえ無ければ恐らく夏美は発芽しないまま眠る種であっただろう。
だが、偶然がその種に水を与え、芽吹かせてしまった。この罪深き本が
何故夏美の目に触れる様になったのか。
一か月程前、奥東京市の中古書店での事であった。夏美は久々にここを
訪れた。読書の秋、じっくりと小説でも読む気がして来たのである。普段は
様々な部活動の助っ人を頼まれる事が多かった為に忙殺されていたが、大型
連休が入り多少なりとも暇が出来、なんとなく手持無沙汰になったのであった。
気になるタイトルのハードカバー版をかなり安価で購入出来てご機嫌になった
夏美が、ついでに漫画でも…とコミックコーナーに差し掛かった時に事故が
起こった。大学生位の年嵩の男とぶつかり、互いがうっかりと小脇に抱えた
本を落としてしまったのだ。
「あ…済みません。僕慌ててたもんで…。」
と男はあたふたと落ちた本を拾うと中身も確認せず足早に立ち去ってしまい、
夏美はやれやれ、といった感じで残された本を拾い、暫くコーナー内を探索
していたが、連休のせいか目ぼしいコミックは売り切れていた。
「何かツイてなかったけど、紅茶でも淹れて本読も…。今日はボケガエルが
家事当番だから、ちょっとはのんびりしようっと。ロイヤルミルクティー
それにたっぷりのお砂糖!そうしよう!」
頭の中で甘いミルクティーの想像をしただけで先程のアンラッキーが一気に
打ち消され、うきうきして夏美は小走りに駆け帰宅した。
帰宅後、夏美はキッチンにいたケロロに
「ボケガエル、悪いけどロイヤルミルクティー淹れてあたしの部屋に持って
来てー。今日はお砂糖大匙二杯ねー。」
と注文しながら階段をテンポ良く上がって自室に入り、机に向かい購入した本を
書店の紙袋から取り出した。
「あら…?あたしの買った本じゃないわこれ。ぶつかったお兄さんの本かしら?
表紙は知らないマンガっぽいけど…。いいや、読んじゃえ!」
夏美は精々ケロロがミルクティーを淹れて来る迄の暇潰しとページを捲った。
だがそこには暇潰し以上の興奮が待っていた。
美しい女王が男奴隷のピアス入りの性器と肛門を徹底的に嬲り弄ぶ様が艶かしく
無修正で描かれていたのだ。そう、夏美とぶつかった青年が購入したマニアックな
同人誌が夏美の購入した本と取り違えられていたのだった。
夏美は食い入る様に本を熟読する。特に女王に感情移入してのめり込んでいく。
男を支配し、精を絞り尽くす女王になりたいと渇望し始めた。ページを捲る度に
太ももをもじもじと蠢かせながら夏美は興奮し、自ずと自身の性器に指を這わせ
触れると最も感じる小さな突起を撫で、転がした。
「あっ…あぅん…う…。気持ち…いい、けどこれじゃない、これじゃない…!」
自身の肉体的快楽よりも、奴隷を嬲る支配欲を優先したいと思う辺りが夏美の
空恐ろしい処である。そのレベルの女王はそうそういるものではない。恐らく
天性の魔性であろう部分が大きい。その上、このマニアックな本で男を玩具として
扱うテクニックを学び、試したい欲望が膨れ上がっていた。
小休止し、ケロロの淹れたミルクティーを飲み一旦落ち着きを取り戻しつつ
夏美は気付いた。小憎たらしい口を利きながらも自分を優位にしてくれる存在に。
『あれ』は自分には本当は抗えないであろう事に。それにケロン人の肉体にもかなり
興味も湧いている。『あれ』は苦痛には強いだろうが、快楽という鎖で雁字搦めに
縛り上げてやれば良いと。
道具は二種類だけで良い。バンダナ一枚とオリーブオイル。これだけで『あれ』を
絞り尽くすには十分と言っても良い。夏美は箪笥から大きめのバンダナを出し、
通過地点の台所でオリーブオイルを手にして庭に下りた。多少緊張はしたが、夏美は
『あれ』のテントの中に飛び込んだ。
『あれ』――ギロロは珍しく昼寝をしていた。だがあくまでも仮眠といった具合で
あった為、夏美が飛び込んだ際には目覚め、
「何だ、何か用か?」
等と無愛想に夏美に問い掛けた。よくある出来事で目覚ましみたいな物だと感じて
ギロロは大きく欠伸する。そこに、にたりと微笑しながら夏美が躍り掛かった。
「ななな何だ何だ!夏美何を…!」
「静かにした方がいいわよギロロ、気持ち良くなりたいんならね…。」
夏美はギロロを組み敷いて頬をちろりと舐めながら股間を撫でた。ギロロの背筋に
衝撃が走り、びくっと一瞬仰け反らせ反応しつつも
「うっ…止めるんだ夏美、こんな…。」
とギロロは一応抵抗の素振りを見せた。が、身体は正直である。いつもはつるりと
している股間がもりもりと形状を変化させて肉塊を反り立たせた。
夏美は掌の感触の変異をはっきりと受け取り、ぷっくりと肥大したギロロを
見ようとするが、ギロロは小さな手でそれを隠そうとする。余程恥ずかしいのか
「見るな…!あぁ…、止めてくれ、頼む…!」
と哀願していた。しかし天性の魔性を騙す事は出来ない。夏美にはその哀願が
『暴いて下さいませ…。』
と届いていた。夏美はそこで用意していたバンダナを手に取り
「一番可愛がって欲しい所を隠しちゃう悪いお手々だねギロロ…そんなお手々は
使えない様にしちゃうよ…。」
そう囁きながらギロロの手首を後手に軽く縛った。その戒めはあくまでも軽く、ギロロ
にはいつでも抜け出せる程度であった。だがしかしそれは
『抜け出しても良い、但し二度と快楽は与えない。』
その意味が含まれている事をギロロは瞬時に理解した。
剥き出しにされたギロロの物が夏美に視姦される興奮で口から透明な粘液を出し、
淫猥に鈍く光る。その粘液を夏美が指先で掬い取り、先端全体に塗り付けていく。触れられる
度ギロロの肉がぴく、と揺れ動く様を夏美は楽しんでいた。が、それだけでは物足らなくなった
夏美がギロロの肉全体を扱き立て始める。多少手荒に、しかしギロロを確実に追い詰めて行く。
「ギロロ…きちんと感じてる?こんなにかちかちなのは感じてんだよね…淫乱…!」
「あっ…夏美…い、嫌だイく、駄目だ!あぁあっ!」
「一杯出して…もっと、もっと…!」
夏美の無茶な指遣いでもギロロという楽器は低く甘い音色で音を出し、張り詰めた糸が
弾け飛んだ。びくびくと射精したギロロの肉は茎内に残っていた一滴迄精液を搾られたが、
まだ治まらず脈打っている。そこに夏美はオリーブオイルを垂らし、先端を掌で包み込み
上から肉の芯を押さえる様に揉み込んだ。
「ひぃっ!な、夏美それは止めてくれ!ああっ!」
ギロロが叫びながら腰を振って逃げようとするが、構わず夏美は強引に且つ執拗にその愛撫を
続けた。
射精直後の愛撫は約5分程度続いた。
ギロロはその間極上の快楽と同時に地獄の責め苦を味わっていた。腰が抜けて感覚が鋭敏に
なり、ギロロは泣きながら夏美に縋り付き許しを乞うが一向に聞き入れられず、延々と強烈な
感覚に弄ばれた。それが何故5分程度で終了したか?というと…。
結論から言えばギロロが「潮を吹いて」肉が張りを失い、肉体、精神共に疲労し切って
しまった為である。地球人は個人差があるにせよ男でも潮を吹ける。夏美は例の本で
学んだが、ケロン人でも同じ現象が起きるか実験してみたのであった。後のギロロ曰く
「出す時の感覚はイく時よりもマイルドだが、直前迄の強烈な愛撫の感覚と出る量の多さで
吃驚した…最初は。だがもう慣れっこになっちまった。何しろ毎日だからな。」
次の夏美の目標は、後ろの開発と拡張との事である。