「このっ、ボケガエルー!」  
「ケロッ!」  
 
ケロロは反射的に跳ねる。  
夏美の回し蹴りはケロロのつま先ギリギリを通過。  
思わぬ成功に喜びの表情を浮かべるもつかの間、手のひらを最大限に使った頭部鷲掴み、そして投げられる。思い切り。  
背面だけがぺったんこになったケロロに、元通りにしなさいよっ。と背中越しに言い去っていく夏美。  
そこでDVDは終了した。  
4色のカエルの集まった一室でケロロは机をバンッと叩き、注目を集める。  
 
「諸君!どう思うかね!この怪力!」  
「どうっていわれてもぉー・・・」  
 
軍曹への返答に困ったタママはチラリとギロロ、クルルの反応を待つ。  
 
「ふんっ、いつもと変わらないじゃないか」  
 
ギロロと思った事が同じだったのに安心し、そうですよぅ。と頷く。  
ところでちゃんと壊した家具は直したんですか?と夏美の怒りの原因について聞こうとタママがお菓子を飲み込み発言しようとしたが、特殊な笑い声が聞こえてやめる。飲み込む前に口内のポテチを増やした。  
 
「クックック、前より力が強くなったな」  
「そう!そうであります!さすがクルル曹長!前より体のひねりが少ないのに力が強化されているのであります!これは由々しき事態!」  
「貴様の鍛錬が足らんのだ」  
「ちょっとギロロ伍長!そんな他人事みたいに!」  
「他人事だろうが!悔しければ鍛えろ!軍人だろ!」  
「あ、軍曹さん、今日はそろそろ帰りますねぇー」  
 
桃っちと約束があるんですよー。とにこにこと席を立つタママ。  
便乗しギロロも今日の議題がこれだけなら帰る。と続く。  
タママは笑顔で手を振り、ギロロは眼でケロロを貫く。  
それに怯んだケロロは引き止める言葉も喉に詰まる。  
大きな眼には部下の背中が扉で完全に遮られる光景が映った。  
ガクリ。と大げさに項垂れるケロロ。  
だがそのまま控えめなククク笑いをしているクルルに悲劇のヒロインのように弱弱しく、しかししっかりとしがみ付いた。  
 
「ねぇーん。クルルぅー」  
「ククっ。それで、オレはどうすればいいんだ?」  
「なんかこうーペコポン人の筋力を弱めるーとかそういう発明できないかなぁーなーんてぇー」  
 
これはペコポン侵略にもおおいに役立つと思うんだよね!と私的な恨みをカモフラージュするケロロ。  
そして期待していた答えを見事言うクルルにケロロは顔を輝かせた。  
 
後日、『か弱いか弱い夏美殿作戦』の手順が決定、そして決行。  
実験対象、日向夏美。  
作戦開始。実験対象者帰宅直後。  
 
「くぅー、ドキドキしてきたぁー」  
 
作戦開始までもう少し。ケロロの体内時計が鳴りはじめる。  
この作戦が成功すれば、もう夏美殿が我輩にあれこれ偉そうに命令することもなくなるであります。  
ペコポン侵略もこれが成功したら予算を集めて規模を大きくすれば・・・。  
ケロロの頭に邪な考えが駆け巡り、素敵な未来にケーロケロと鳴いた。  
その時無線機が鳴る。とる。  
 
「標的、日向夏美。もうすぐ玄関につくぜぇー。クックック」  
「こっちはすでに準備完了であります!」  
 
無線機を端っこに置くとケロロはエプロンのポケットの中の感触を確認する。  
準備OK。玄関のドアを瞬きもせずに凝視する。  
ドアノブが動く。緊張が走る。  
 
「ただいまー。あれ、ボケガエルどうしたの?」  
 
ドアが閉められる。これで空気の逃げ道は減った。  
まるいまるい眼を見開く、ポケットに手を突っ込む、取り出す。  
 
「夏美殿!覚悟であります!」  
「え、ちょっ!な」  
 
ポケットから取り出したのはスイッチ。夏美が何か言い終えるの前に押す。  
瞬間ブシューっと玄関が白い煙に包まれる。  
作戦手順その1、眠らせる。  
ケロロはすばやく近くの部屋に非難。  
夏美も後追いかけ部屋に入ってくる事も予定していたが、驚きから煙を吸い込んでしまったらしく音がない。  
そっ・・・と顔半分を出し覗く。玄関に横たわる赤い髪。  
 
「こちらケロロ軍曹であります。作戦成功!ぐっすりであります」  
「じゃぁさっそくこっちまで運ばなきゃな。ククッ」  
 
ケロロは作戦通りクルルの発明品を使って一人夏美を運ぶ。迅速に。  
クルルのラボに着くとそこにはペコポン人一人横たわれる台。  
そこに夏美を横たえる。  
台の上を見れば何か大きく緻密な機械。  
 
「おぉ!これでペコポン人の筋肉を弱めるのでありますな!」  
「この機械で特殊な電波を出し筋肉を脂肪に変える。それで筋力は著しく落ちて、か弱い、平均女子以下となる。クークックック」  
「ほほーぅ、さすがクルル曹長!でー、どのくらいかかるでありますか?」  
「まぁ1時間くらい状況をみながらだな。やりすぎちまうと脂肪しかない大変な状況になっちまう」  
「脂肪だけのふにゃふにゃペコポン人になったら大変でありますからな!」  
「ほい、スイッチオン」  
 
クルルがスイッチを押すと静かな起動音をたて動き出す。  
特殊な見えない電波が夏美を包んでいる証拠だろう。  
しかし一時間何をしていようか。とケロロは悩む。  
クルルは夏美殿の様子を見ているし。と思った所で眼を見開く。  
 
「ク、クルル曹長?」  
 
実験対象の上着をグイっと捲る。  
下着も外すのではなくずり上げる。  
弾力のあるものが開放。  
 
「なななななななにをしてるでありますか!?」  
 
突然の行動に頭が混乱するケロロ。  
それに見向きもせず今度は2つのものを両手で掴む。揉む。  
 
「筋力が脂肪に変わるのを確認してんだよ。自らの手で確認するのが一番確実だからな。クーッククク」  
「い、いやしかし、そそそこは脂肪の塊というか」  
 
そこを確認してもあまり意味はないのではとモゴモゴ口を動かすケロロをさらに無視してクルルは作業を続ける。  
グッと力を入れれば力の通りに形が変わる。  
もにゅ、もにゅ、もみ、もにゅ。  
 
「わーわー!クルル曹長!夏美殿が起きてしまうでありまーす!」  
 
ケロロは息を吐くように話して静かに騒ぐ。  
夏美殿起きないで起きないでと願いつつも夏美殿起きてー!と矛盾した考えがぐるぐるぐるぐる。  
 
「・・・んっ・・・・・」  
「ケロッ!」  
 
夏美から吐息が洩れる。  
ケロロはビクリと体を硬直させる。  
が、少し顔の位置をずらすとまた小さな寝息をたてはじめた。  
その間も構わず自在に柔らかいものを動かすクルル。  
両側から包み込む。そして揉む。  
豊富なそれはどう力を込めても柔らかに動く。  
眼で楽しむ手で楽しむ。  
そして指の間に突起を挟みこみさらに揉みしだく。  
催眠ガスはよほど協力なのか夏美が起きないのに罪悪感が募る。  
 
「ク、クルル曹長、そんなにする必要は・・・なぁぁぁぁぁぁ!!」  
 
片手の力を緩めへその方へと滑らせ、その先へと滑り下りようとする指先にケロロは話途中で絶叫した。  
近くにあったものを引っ掴みクルルを力の限りぶっ叩く。  
 
「にょ!」  
「さ、作戦は中止であります!」  
 
連れてきたのと同様の方法でケロロは光の速さで夏美を連れて移動する。  
とり残されたクルルは頭の痛みをさすって自分を誤魔化しながら椅子に座りなおす。  
 
「感触忘れない内にぬいとくか」  
 
〜fin〜  
 

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