毎週夏美が楽しみにしている623の『俺ラジオ』。今週も夏美はいそいそと  
コンポの前に座り、電源を入れた。今週は葉書職人が考えたり知っていたりする  
替え歌の特集で、夏美もきちんとネタを考えて投稿していた。  
 夏美は秋の務めている出版社からお歳暮で去年は新巻鮭を丸ごと一匹貰い、  
それを捌いたり消費するのに苦戦したことから、簡単ではあるが鮭ネタを思い付き  
投稿していた。普通の中学生ならば鮭など捌かないが、夏美は一流の主婦でもある。  
だが思いのほか鮭は難敵である。あの大きさや柔らかさと格闘して、身の一部は  
マリネ、尾の部分はムニエル、他の部位は焼き鮭と三種類も作ったのは流石と  
言えよう。しかしそれ故に人一倍年始には鮭に憎悪を抱いていた。  
『623の俺ラジオ〜♪今回も沢山投稿を有難う!今週は替え歌特集〜!  
スタッフがきちんと歌うよ!最初のお葉書はラジオネームなっちーさんから♪  
『幸せなら手を叩こう』の替え歌だよ!  
 幸せならシャケ叩こう♪  
 幸せならシャケ叩こう♪  
 幸せなら態度で示そうよ♪  
 ほらみんなでシャケ叩こう♪  
いいねいいねなっちーさん!しょっぱなに相応しい替え歌サンキュー♪』  
 
 「よ…読まれた…。これで苦労が報われたわ!」  
 そう、夏美は鮭など見るのも嫌になっていた。食材を粗末にする事は出来ないが、  
出来得る事ならば鮭など殴ってやりたくなっていた位夏美は鮭にうんざりして  
いたのだった。だが番組内で真っ先に紹介され、623から褒められた事で鮭の事は  
良いネタ作りに貢献してくれたわ、と許す気になった。  
 『さてさて、ここからはどんどん紹介していくよ!次のお葉書は…』  
 ここからは取り立てて面白くない、地味で皆が知っているメジャーな替え歌が  
どんどん紹介され行き、番組が終了する前のトリを飾るラストがやって来た。  
ここは夏美レベルの葉書職人では到底辿り着けない、かなりレベルの高い未開の地。  
今回はどんなコアなネタが紹介されるのか、夏美はうずうずしながらCM開けを  
待っていた。  
 『さーあ、いよいよ最後の替え歌!ラジオネーム大艦巨砲主義さんからの  
凄ーくエッチで懐かしい替え歌!フルコーラスでいっちゃうよ!あの懐かしい  
『時をかける少女』の替え歌で、タイトルは『マスをかける少女』いっちゃおう!  
 お客さん私のあそこを 突然舐めたりしないでね♪  
 そんな事したら私 貴方の息子口に入れて♪  
 私は 私は 笛吹き人になる〜♪  
 口でいかせる少女 一分でいかせてあげる♪  
 バックも正常位もSMもOKだから お金頂戴〜♪  
 
 昨夜の夢は懐かしい 幼い頃に遊んだ遊び♪  
 偶然机の角に あそこが触れた時感じて♪  
 私は 私は 一人あそこを濡らしたの〜♪  
 マスをかける少女 いつも右手が動く♪  
 あそこにメンソレ塗って擦るやり方がお気に入り〜♪  
 
 金を稼ぐ少女 ホテトルマントル何でもやるわ♪  
 年寄りでもお金沢山くれる人ならば サービスしちゃう〜♪  
 皆ラストにはビックリしたかな?大人には内緒だよ♪では来週をお楽しみに!』  
 「ちょっ…ちょっと何なのよこの展開!エッチ過ぎるわよ!…大艦巨砲主義?…って事は  
あのあいつがこんなやーらしい替え歌知ってたか作ったって事!?」  
 夏美は顔を紅潮させながらすっくと立ち上がり、走ってリビングまで駆け降り、硝子戸を  
勢い良く開けた。  
 
 ギロロは『俺ラジオ』を基本的にチェックしている。夏美が葉書職人である事を知り  
自分も投稿の楽しみを知ってしまったせいもあるが、夏美のネタをチェックする為でもある。  
お気に入りのプロシード2800型宇宙通信機で毎週ほぼ欠かさずオンエアーを待ち、冒頭のポエムで  
夏美のネタが流れた時等は祝杯の代わりに加糖緑茶を一杯やらかして就寝に就くのが癖になっていた。  
今週は替え歌特集でポエムこそ無かったが、一発目の替え歌ネタで夏美が採用され、そう言えば  
年末に美味いマリネを食わせて貰ったな、と思い出しながら緑茶の用意をした。今週は替え歌なので  
なよなよした愛だの恋だのといった歌が無く、非常に珍しくギロロにも聴きやすい番組構成と  
なっていて、ギロロも安堵していた。  
 「ペコポン人のネタもなかなかやるな。俺達がガキの頃にも替え歌が流行ったもんだ。  
ケロロ等はかなり無理矢理なネタを作って、クラス中を湧き上がらせていたな…。」  
等と呑気に緑茶をすすっている。普段侵略侵略と騒いでいる割に、この男もケロロと大差無い呑気さを  
持っている。まあそうでなければ緊張感で潰される事を知っている所がプロの軍人であろう。  
 しかし、予測不可能な展開が彼を待ち受けていた。ラストで自分のラジオネームを騙り、かなり  
卑猥な替え歌を投稿した奴がいたのだった。最初は  
 「ん?俺は今回投稿してないぞ?しかもペコポンの歌でまともに知っている物など殆ど無いが…。」  
と一瞬思ったが、聴いてビックリおげふぃんな内容でギロロは通常の三倍どころか256倍  
真っ赤に変色した後、これを夏美に聴かれたかと考え、赤と青が入り混じった、言うなれば顔の  
表面だけを兄ガルルの様な紫色に変色させた。  
 「な、なんじゃこりゃあ…!お、落ち着け俺、まさか夏美も俺のラジオネームは知らんだろう。  
それに実際に俺の投稿では無い。もし詰問されてもきちんと説明出来る。大丈夫だ!」  
と甘い考えを持っていた。  
 
 「ギロロ…あんたって奴は…!」  
 案の定夏美がリビングからギロロのテントにやって来た。それもそうである。奥東京市に大艦巨砲主義  
等と御大層なラジオネームを付ける軍事マニアは人口の0.0001%もいない希少種である。そんな奴が  
軽薄に感じるであろうラジオにあの様な猥雑な投稿等する筈も無い。やるとしたら家の居候では無いかと  
夏美は考えたのだった。  
 「ちょ、ちょっと待て夏美。何か、用か…?」  
 「とぼけるんじゃないわよ!ラジオのラストの大艦巨砲主義ってあんたでしょ!知ってんだから!」  
 「い、いや俺じゃない!確かに俺はあのラジオネームだが、あんな投稿はしとらんぞ!第一俺は  
ペコポンの歌等殆ど知らんし、替え歌が作れる訳無いじゃないか!」  
とギロロは非常に真っ当な説明をしていたが、夏美から意外な反応が返って来た。  
 「あんた…戦場にいたのよね…。その、なんて言うか…慰安婦とか、いた?」  
 「な、何を言い出す…!子供が訊く話じゃない!部屋に帰ってもう寝ろ!」  
ギロロは予想外の質問に戸惑いを隠せずまるで昔堅気の父親の様な答えを返したが、夏美の  
 「もう子供じゃないわよ!」  
の叫びにぴくりと反応してしまい、  
 「語っても良いが…つまらん話だぞ…。」  
と悲しそうな表情をした。  
 
 二人はいつものブロックに腰掛け、焚き火に当たりながらぽつり、ぽつりと話し始めた。  
 「…最初に言っておくが、俺は慰安婦を買った経験は無い。それだけは…信じられるな?」  
 「うん…。」  
 「結論から言うと慰安婦はいた。だが強制徴用では無かったぞ。皆正規のルートから雇用した  
プロの売春婦だ。彼女達は生命の保障があったから、俺のいつもいた前線にはいなかった。  
それに死ぬか生きるかの瀬戸際で女を抱ける度胸がある奴等いやしないしな。」  
 「…何か、悪い事訊いちゃったわね…。ごめんね、ギロロ…。」  
と夏美が珍しく項垂れる様を見てギロロは慌て、  
 「な、何も悪くなんかないぞ夏美。所詮俺は一山幾らの機動歩兵だ。ただ、それだけだ。」  
と更に夏美を悲しませる逆効果な台詞を吐いてしまっていた。  
 だが、その台詞が禍転じて福を成した。夏美の腕がギロロの身体を抱き締めて来たのだ。  
柔らかく、だがきつくギロロの身体を夏美は抱いた。  
 「な、夏美…。」  
 「少し黙ってて…。こうしたいの…。」  
 
 暫く二人は焚火の前で抱き合っていたが、ギロロが  
 「そう言えばさっき子供じゃないと言っていたが、もしやお前サブローと…?」  
と逆に質問し始めた。幸福感から逆に嫉妬の炎が燃えて来た。だがそんなギロロに  
 「馬鹿ね、そんな訳ないじゃない。あたしは単なる片思いをしてるのよ。好きだけど仕方ないわ。  
それに、今は…。」  
くすりと笑いながら夏美はギロロから身体を少し離し、ギロロの傷痕に軽く口付けて囁いた。  
 「あんたが、いるもの…。」  
 
 それは最初同情であったのかも知れない。だが燃え盛る焚き火の炎を前に夏美は何故かギロロが  
愛おしくなっていた。この異星人の悲しみを、例え侵略者であっても癒したいと心底思った。  
自分を捧げるのも、もしかすると戦いの一つと感じたのかも知れない。  
 「…あたしの部屋に行こう、ギロロ。流石にここじゃ嫌だわ。最初位はまともな所でしたいもの。」  
 「な、夏美…?一体何を言っているのか判らんぞ?」  
 「ニブチンねあんたって。まさか女から全部言わせるつもり?…まあ良いわ。サービスできちんと  
言ってあげるわよ。あんたとしたいって言ってんの。まさか嫌とか?」  
と夏美が言うと、とんでもないとギロロは首をぶんぶんと横に振った。とんだ瓢箪から駒である。  
この好機を逃しては駄目だ、とギロロの頭のアラートが鳴りまくる。  
 「わ、判った夏美、そ、そんな事に気付かんで済まん!」  
 顔を4096倍真っ赤にしながらギロロは夏美の手を取り、二人はどちらからともなく歩き出した。  
 
 夏美の部屋に着くとギロロが  
 「俺はムードとか知らん男だが、出来るだけ頑張ってみる。ペコポンでは誓いを立てる時には  
どうすれば良い?」  
と夏美に問うと、以前から憧れていたのか夏美は映画のワンシーンの様に  
 「そうね、誓いながら手の甲に軽くキスしたりするわ。ってあたしったら乙女チック…。」  
ぽおっと頬を染める夏美の手を取り、ギロロが  
 「俺は夏美に苦痛を与えない。それだけは誓う。」  
たった一言だけであったが、それだけ誓いながら口付けた。  
 
 夏美がベッドに横たわると、ギロロは着衣の上からそっと夏美の柔らかく発達した乳房を下から上へ  
撫で上げ、掌で包み込み人差し指で乳首を探し出して転がしてみた。ぴくりと夏美の身体が反応し、  
乳首が徐々に硬く弾力を見せる。それを確認するかの様にベストのボタンを外し、シャツを捲り上げて  
色付いた乳首に吸い付いた。  
 「やっ、あっ…ギロロぉ…やっぱり恥ずかしくなって来ちゃった…。」  
 「誘ったのはお前だぞ、夏美…。最後迄、苦痛以外では根を上げるな…。」  
手をゆっくりと脇腹に逸らせつつ、乳首を甘噛みしてギロロが囁く。その低音の声が甘く夏美の耳を愛撫  
していた。そしてまたゆっくりと手を乳房に上げながら、ギロロは夏美に口付けた。  
 「んっ…んっ…むっ…。」  
 唇、舌同士がまぐわっているかの様な深いキスで夏美は溶けてしまいそうになっていく。只のキスと  
簡単な愛撫だけで夏美が陥落していく様をギロロが見逃す筈も無く、次の愛撫に移った。はあはあと息を  
荒げる夏美から唇を離し、下半身の辺りに移動して閉じられていた太腿に割り込み、内側の目立たない  
部位に軽くキスマークを付けながら、柔らかな手で優しく擦った。だがギロロは一向に性器には触れず  
執拗に脚への愛撫を黙々と続ける。  
 「夏美、したくなったら自分から指示を出せ…。でないと俺は指先迄舐め上げるぞ…。」  
ギロロが脅迫めいた事を興奮した声で言うと夏美はうっとりとした表情で  
 「判ったわ…もう、あんたとしたいわ…。あたし限界…。」  
と甘く堕ちていった。  
 
 ギロロは普段どこに隠しているのか判らない大きさの性器を夏美の性器の上からショーツ越しに  
突き付けて、ぐり、と軽く突いた。濡れ、充血している事をきちんと確認する為にギロロは  
夏美のショーツを脱がせ、脚を開かせた。  
 「ちょっ…そんなトコ見ないで…!」  
 「駄目だ、初めての苦痛を与えたくないからな…。」  
 夏美のぬかるんだ性器にギロロは指や舌先で丹念に刺激を与えた。夏美の身体が羞恥と快感でひくつき  
白い肌が花開く様に染まる。指を三本挿入され、夏美は最初の内は違和感と圧迫感で息がし辛かったが  
やがてそれにも慣れたのか、自ら  
 「多分、もう大丈夫よギロロ…。今なら痛くないと思うわ…。」  
と羞恥を堪えつつ囁くと、ギロロは柔らかく夏美を開かせていった。  
 夏美の言った通り、最初の苦痛は全く無かった。逆に受け入れた時に快感を覚えて夏美は驚きつつ  
甘い声を堪えていた。  
 「うっ…あぁ…、あん…っ…!」  
 「痛くないか夏美…?」  
 「だ、大丈夫…よ…、あんたこそ、だ、大丈夫なの…?」  
気丈にも夏美が問い返す。緩やかな腰使いでギロロは快楽を味わいながら  
 「俺もまだ大丈夫だ…何とかな…。」  
と言い夏美を深く突き上げた。和合は時間を忘れさせ、時間は和合を終焉へと導いていく。夏美がひくりと  
痙攣の様な動きを見せ、己の指を噛みながら絶頂の息を激しく吐いた。  
 「んむうぅ!んーっ…!」  
 「良く頑張ったな夏美…!俺も、もういくぞ…!」  
夏美の絶頂を見届けたギロロが腰を激しく振り立てながら、暴発した。  
 二人は、元は咲いてはいけない仇花であった。だからこそ咲いて咲いて、尚も咲き誇った仇花になった。  
 
 「そう言えばギロロ、あんたの投稿じゃ無かったら、あれ誰だったのかしら…?」  
 「知らんが、あれは本当に誰なんだ?…まあ良い。判らなくてもな。」  
と二人はリスナー同士で静かにピロートークしていた。真相を知るのは623と、ネタ提供者のみである。  
 

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