ケロロ小隊が地球侵略を開始する前日、  
来たるべき時を静かに待つケロン軍の空母の中、ギロロ伍長の部屋をノックする音が聞こえた。  
「誰だ」  
「……タママ…二等兵ですぅ…」  
消え入りそうな、明らかに沈んだ声。  
「…開いている」  
少しして伏し目がちにタママが入って来た。  
「何の用だ」  
ギロロは武器を磨いたまま、ギロリと視線を向ける。  
「実は…伍長さんに相談が…あるんですぅ…」  
しかしその先の言葉が出て来ない。  
 
(やはりな…)  
戦場ではよくある事だ。まして初陣ならば尚の事。タママは今、恐怖と戦っている。  
「タママ…恐いのか?」  
ギロロの言葉にハッとし、タママは顔を紅くする。  
「…はい、ですぅ…」  
「死ぬのが恐いのか?」  
「…はい…ですぅ」  
眉間に皺を寄せ、涙目のタママが答えた。  
「俺もだ」  
えっ?とタママが聞き返そうと顔を上げると、ギロロの優しい笑顔が目に入り、堪えていた涙が一気に溢れた。  
 
 
 
「―全く、人の部屋に入ってきていきなり泣くとは、貴様それでも軍人かっ」  
口ではそう言っていても、表情は優しい。  
「俺は今までいろんな戦士をみてきたが、貴様ほど格闘の技が冴えている奴は初めてだ  
貴様は強い。明日からは期待しているぞ」  
いつも怒ってばかりのギロロからは想像できない、励ましの言葉。  
 
「さぁ!!明日は早い、とっとと部屋に帰って寝るんだ」  
 
「あっあのっ、伍長さん!!」  
「む、まだ何かあるのか?」  
「ボ・ボクを、女にして下さいぃ!!」  
「なっ何を急に言い出すんだ!?……ん?女?」  
「そうですぅ!実はボク女なんですぅ!!」  
「ぬゎぁにぃぃ〜〜〜〜!!」  
 
顎をガクガクさせて、顔はいつも以上に真っ赤になっているギロロ。  
「き・貴様が女だったとはな…」  
そういえば思い当たる節もある。  
か細い身体。高い声。  
なにより男にしては可愛過ぎる顔、だ。  
「ダメ…です…か?」  
上目遣いでお願いされ、ギロロはいっそう顔を赤くする。  
「いや、そういうワケでは…おお俺は貴様の上官であるからして…うぷっ!!」  
しどろもどろになっているギロロの隙を付いて、タママは自らの唇をギロロの唇に合わせた。  
「―っやめんか!」  
 
思わず肩を掴み引き剥がす。  
「やっぱりボクなんかじゃダメなんですね…伍長さんはボクの事なんか嫌いなんですぅ!!」  
うつむき肩を振るわせ、また泣き出してしまった。  
「いや、そうじゃない、そうじゃないんだ。その…本当に俺でいいのか?」  
「はいですぅ♪」  
泣いてた筈が、可愛らしい笑顔で向き直る。どうやら泣きマネだったようだ。  
「全く、やられてしまったようだな。お返しだっ」  
今度はギロロが隙を付き、タママの唇を奪う。  
「もう、伍長さんたらぁ」  
その後二人は見つめ合い、再び唇を重ねる…ですぅ。  
 
 
「…てな感じで伍長さんはボクにメロメロですぅ」  
「伍長さんのデカマラは軍でも有名だから期待も大きいですぅ♪」  
 
そう、今までの事柄は全部タママのモーソーだったのだ。  
そのモーソー通りにギロロの部屋の前に立つ。  
「いよいよですぅ…(ゴクリ)」  
コンコン  
「誰だ」  
「タッタママ二等兵ですぅ!!」  
「…開いている」  
(キター―――――!!)  
「(ドキドキ)失礼します…」ピンッ  
「え」  
何かが足に引っ掛かったと思った瞬間――――――  
 
「まだまだ甘いなタママ二等兵」  
「ボ、ボクを…おんな…に…」  
初歩的なトラップに引っ掛かり、真っ黒コゲになってしまったが、それでも必死にアピールをしようとするタママ。  
しかし、戦場を目前にし、テンションが上がりまくっているギロロの耳には届かない。  
「明日からはこんなものでは済まんぞ、気を引き締めるのだな!!ククク…フハーッハッハッ!!」  
 
薄れゆく意識の中で、タママは「こいつは無理だ」と悟った…。  
 
 
 
少しして、廊下に転がるコゲコゲタママに走りよる一人の影  
「どうしたでありますタママ二等兵!?」  
「軍曹さぁん!」(…こいつでもいいか、ですぅ)  
 
その後、ケロロの超絶テクでメロメロにされるタママは、また別の話…  
 
終わり。  
 

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