皆さん、どうも、ナレーターです。
超劇場版ケロロ軍曹2 深海のプリンセスは既に御覧になったでしょうか?
今回このスレで展開されるお話はその劇場版のパラレルストーリーのようなものです。
もしケロロ達が擬人化していたら、もし劇場版オリジナルでは登場しない人物がいたら。
そのもしも、すなわちIFはケロロ軍曹の物語にどのような変化を与えるのでしょうか?
ケロロ軍曹の世界自体、我々の世界から見れば奥東京市といった架空の街がある事から、
もしもの世界、すなわち平行世界ことパラレルワールドになりますが。
これはケロロ軍曹オリジナル本編が始まる以前に、IFによって分岐、そこから派生した
現実の歴史とはどこかが異なる歴史を歩んだもう一つの地球での、つまり現実世界と
並行して存在するパラレルワールドで起こったケロロ軍曹のお話です。
ちなみに平行世界である以上、現実世界と異なる歴史背景や、それによる日本領土の違い、
自衛隊が存在せず日本軍のままであるという、相違点等が見られますが御了承ください。
口上が長くなりましたが言いたいことは以上です。
ではお楽しみください、もう一つの劇場版、エロパロ版ケロロ軍曹2 深海のプリンセスを。
南太平洋上、某海域
物語は嵐の中、戦艦と空母を中核とする艦隊が航海しているシーンから始まる。
日本海軍の誇る連合艦隊に所属する第三機動艦隊は、ハワイ王国近海で行われた
米軍艦隊との合同演習から帰還、南洋における日本領土の一つであり海軍の根拠地でもあり、
トラック環礁に建設された宇宙開発の為の海上都市、トラック宇宙港を目指していた。
艦橋およびCICに配備されている軍人たちは、普段通りに黙々と作業を続けている。
「このまま行けばもう少しでトラック海軍基地に着くか……」
「はい、演習も大成功を収めましたし、後は無事に帰還するのみです」
「西澤グループの開発した最新システムを導入したお陰だな」
「西澤グループ様々ですね。しかし司令官、今回の演習には不可解な点もありました」
「ああ。米海軍の艦艇の事故だろ? 原因不明の衰弱状態の乗組員が言うには白い怪獣
みたいなのに襲われたと」
「ええ。その件に関してなんですが、事故の後でハワイの陸に上がった時、カフェでこんな
話が耳に入ってきたんです。老人の、ある祠がハリケーンの影響で破壊されたという内容の
話だったのですが……」
「祠と事故がどう関係するんだ?」
「老人は米軍艦艇の事故を聞いてこう言ったんです。祟り神キルル様は目覚めてしまった。
キルル様の力の源は負の力、だから力を求めこの地の民だけでなくアメリカ軍をも襲った。
そしてキルル様は強くなってこの世は終わる、と。高齢で半ばボケているのもあり誰も
まともに聞いていませんでした。でもハワイ王国全土で似たような衰弱事件が起こっている
のは確かです」
「我が国でも奥東京市で似たような事件が起こったが、どういうことなんだ?」
戦艦艦橋内部の席に座る艦隊司令官とその副官が雑談中、突然艦内に警報が鳴り響く。
「前方に障害物です!」
「潜水艦か?」
クルーの声に司令官は質問する。
「いいえ、もっと大きい。浮上してきます!」
彼らが見たのは自分達の乗っている艦が小さく見えるほど、大きく盛り上がった海面だった。
〈キルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル……〉
それと同時に鳴き声らしきものも聞こえてくる。
各艦艇は海中から現れようとしている巨大なものにサーチライトを当てた。
「ま、まさか、さっきの話から予測して、こいつが米艦艇を襲ったものの正体?」
「ハワイ王国からずっとこの艦隊を追跡していたのか!?」
サーチライトに浮かび上がったのは、前作劇場版に登場したケロン星の超古代侵略兵器キルル。
そのサイズは奥東京市に出現した初代キルル巨大バージョンの数倍はある。
おそらく話題にあがっていたハワイの祠に第二のキルルが封印されていたのだろう。
そして台風の被害によって封印が壊され活動を開始したらしい。
二代目キルルはサーチライトに上半身を照らされながらゆっくりと艦隊に近づいてくる。
艦隊のクルー達の身体の各所にはキルルの額と同じ「×」マークが浮かび上がっているが、
そんなものに気をかける暇など今の彼らには皆無だった。
「巨大生命体、接近してきます!」
「慌てるな! 奴が敵意を持っているのは確かだ。戦艦の艦砲射撃でしとめる!」
我々の世界の大和とよく似た形状だが、近代化され二回りも大きい巨大戦艦前方の
第一砲塔と第二砲塔に弾薬が装填され、標準をキルルに合わせる。
「発射準備完了!」
「てぇーー!!!」
次の瞬間56サンチ砲弾6発が轟音とともに放たれ直撃、キルルは爆炎に包まれた。
誰もが勝利を確信した、しかし……煙が晴れた時、すさまじい絶望感が襲ってきた。
「も、目標、依然健在!」
「バカな!? 56サンチ砲の直撃を喰らって無傷だと!?」
そしてまったくの無傷な二代目キルルが攻撃態勢に入った寸前――。
どこかから"歌声"が、子供が歌っている子守歌のようなどこか懐かしい歌が聞こえてきた。
異様な気配を感じ取ったキルルは周囲を見回す。
次の瞬間海面から二つの光球が飛び出し、左右から別々にキルルを包囲した。
歌声がどんどん大きくなってゆく中、キルルは光に包まれ、最後に粒子となって消滅した。
「た、助かった…………のか?」
「夢じゃないよな。それにあの光はいったい……」
嵐はキルル消滅とともに収まり、空では綺麗な星が見えている。
艦隊の誰もが目の前の光景に呆然としながら、青白い二つの光球を見つめていた。
ただ彼らは光の中に影が浮かび、会話をしていることまでは見抜けなかった。
だが光球の正体を見破った者達がいた。
嵐が去った後の夜空に残っている雲の中から話し声が聞こえてくる。
空に浮かぶシルエットは女の子、身に纏うはキンモクセイの香り。
「ダディ……あれは」
「我々の手に余る。冬樹君達の力も必要だ」
少女の問いに頭のカチューシャが答える。
「フユキ…………」
そして舞台は日本へ移る。
日本本土、奥東京市、季節はジリジリと暑い夏。
ケロロ小隊が居候させてもらっている日向家の浴室、今一組の男女がまぐわっている。
女は日向家の長女、日向夏美。
男はサラサラな赤い髪に、美少年の部類に入るイメケンな容姿で、
年齢は夏美より二、三歳年上だろうか?
特徴として顔の左側に目の上を通る大きな古傷がある。
ここまで言えば正体はわかるだろう。
赤髪の若者はギロロである。
そもそもクルルの技術によってケロロ小隊全員が地球人化したのが始まりだった。
地球人化したきっかけは、ケロロが自由にガンプラを買えるようになりたいという、
なんとも情けなくどうしようもない理由だったが。
しかしギロロが地球人になった事は、夏美との関係にも変化を与え、
最後二人は晴れて相思相愛の関係になった。
話は風呂場の光景に戻る。
既に何も身に着けていない二人は一通りの前戯をすませ、互いを受け入れる準備を整えていた。
「ああ……」
夏美が切なそうに首をそらす。
ギロロの掌が夏美の全身を撫で、唇が水滴を吸い取ってほの赤い跡を肌に残す。
「ギロロ……」
愛おしそうに夏美は両腕を伸ばして、自分の体を抱えて愛撫を続けるギロロの
髪をそっとまさぐった。
ギロロはその掌に導かれるように、己の唇を夏美の唇に重ねる。
(あたたかいな)
髪に触れる掌、甘い唇、滑らかな舌、何度身体を重ねようが夏美の魅力は尽きない。
「ねえ、ギロロ―――もう私はいいからひとつに……」
唇を離して小さな声で言うと、夏美はゆっくりと指をギロロのものに這わせる。
遠慮がちにギロロの下腹部にある分身を包む夏美の手は徐々に大胆になり、
むずむずしたもどかしさがみるみる快感に変わっていった。
「お願い……」
隆々とみなぎったみなぎった肉棒をそっと捧げ持つようにして、夏美は濡れた瞳で懇願した。
(夏美……俺だけなんだな。夏美のこんな姿を知ってるのは)
愛おしさの中、愛する夏美の乱れる姿をもっと見たいと夢中になる。
「ギロロ―――」
想いに捕らわれていたギロロは、夏美の呼びかけで我に返った。
「……いくぞ」
ギロロがうなずくのを見届けて、夏美はそっと彼に背を向け、壁に両手を置いて、
腰を突き出した。
静かに、夏美の入り口を確かめる。
滑らかな尻の下で、既に充分に濡れて開いた花肉が、とろりと粘ついた液体を流しながら
ギロロを待ち受けている。
ちゅぷ、と濡れた音がして、夏美の秘所が先端を咥え込んだ。
「はぁん……!」
夏美は心の底から快楽に酔ったように、甘く細い喘ぎ声を上げる。
静かに腰がうねりだし、外見の可憐さとは裏腹に、貪欲な肉洞がギロロ自身を深く、
奥へ奥へと招き入れてゆく。
「あっ、うぅん―――あ……ん、ギロロ―――」
丸いヒップが揺れて、くびれた腰がギロロを誘うように蠢いた。
たまらなくなってギロロが腰の動きを速めると、くちゅん、くちゅんと熱い蜜が
音を立ててかき回されてゆく。
「んっ、はぁ……あふぅ――」
夏美もつられるように腰の動きが早くなり、小刻みに髪が震えているのがわかる。
「ギロロ、もっと―――もっと、中に――ああ……」
深く繋がりたいのか、快楽を求めてなのか、夏美はギロロを振り仰いで愛訴の声を上げた。
ギロロはちょっと考えた末に、繋がったまま思いきって夏美の太ももを抱え上げた。
だてに鍛えているわけではなく、辛くはなかった。
その姿勢で、再度思い切り突き込んでやる。
「ああぁああっ!」
ぐちゅっ、ぐちゅっ―――。
「あんっ、あっ―――はぁんっ、す、すごい……ああんっ!」
かなり練れた膣壁をこそげるように、あちこちを突き回すと、夏美も狂ったように
腰をくねらせて呼応する。
「はっ、あふ……あ、いい、いいの―――」
夏美の背中の窪みにたまっているのが汗か水滴かわからないくらい、前身をほの紅く
上気させて悦楽にうち震えている。
「あふっ、あ、あぁ―――そこ……!」
瞬間、きゅっ、と夏美の最奥がしまった。
亀頭がねとねととした熱い粘膜に絡め取られ、その快感がギロロの背筋を駆け昇る。
ギロロはぶるん、と身体を震わせた。
「夏美、最高だ……」
思わず出た言葉に夏美の身体が反応する。
膣のひだがざわつき、ギロロの肉棒を決して離すまいとするように締めつけた。
それを無理矢理引きはがすかのように、ギロロはピストン運動を続け、強引に抜き差しする。
「んんっ、あっ、す、すごいよぉ――――」
夏美の喘ぐ姿を見て、射精感がずん、と身体を襲う。
かちかちになった肉棒でギロロは夏美の中を奥を何度もこじった。
「あ――――あっ、い、いっちゃう、いきそうなの……ギロロ―――!」
夏美の絶叫が浴室に響き渡り、次の瞬間。
「うっ」
夏美の膣肉はギロロのものを喰いちぎるほどに締め上げ、ひくん、ひくんと
しゃくりあげるように震えた。
もう限界だった。
「夏美、俺も―――」
「ギロロ、ギロロも一緒に、一緒に―――ああんっ、いくうぅぅっ!」
夏美の背中が反り返り、全身に力がこもる。
足の指がきゅっとすぼめられ、彼女は達したようだった。
ギロロの中を怒涛のごとく射精感が駆け抜けた。
風呂場での情事を終えた二人は、火照った身体をシャワーで冷やした後、
リビングに移動、ギロロは武器を磨き、夏美はテレビを見つめていた。
ニュースでは南太平洋で起こった日本艦隊の事故と、ハワイで合同演習時に
起こった米艦隊の事故との関連性を語るシーンが放送されていた。
それが一区切りついたら、次に青空を飛ぶ風船が映し出されたCMが始まる。
「夏美、どうかしたのか?」
ボーっとテレビを眺めていた夏美は、ギロロの声で現実に戻される。
「夏休みに入っても変わりばえのしない毎日が続いてるなって、考えてたのよ。
ママの仕事が忙しい時だし、あたしがしっかり家の事やらないとね。でもまあ、
我が家が一番よね。ギロロもいるしね」
負け惜しみとも慰めともつかない台詞を呟いたが、ギロロがそばにいるのもあり、
孤独感を感じる事はなかった。
「そ、そうか」
「でも、どこかに行きたいと思うのはホント。海水浴でも行けたらいいんだけど」
ギロロと夏美がまるで新婚夫婦のような空気を形作っていると、
「ただいまぁ〜」
「おじゃまします」
玄関から冬樹と桃華の声が聞こえてくる。
「冬樹おかえり〜。桃華ちゃんいらっしゃい」
リビングに入ってきた二人は筒みたいなカプセル型の水槽をテーブルの上に置いた。
「何だこれは?」
ギロロがカプセル内部に浮かんでいる物体を見て聞いてくる。
カプセル内部には、青い尻尾の生えた胎児のような生物が、
タツノオトシゴのような姿勢で浮いている。
「UMAかもしれないって、西澤さんが持ってきてくれたんだ」
「今日のニュースでやっている、艦隊が巨大生物と遭遇した海域で、
うちの調査隊が発見したんです」
冬樹と桃華がギロロの質問に答える。
「ああ、さっきニュースでやってたやつね」
夏美は先程見ていたニュースの内容を思い出す。
「こんな生き物がいる海、思いっきり調査できたらいいのになあ」
オカルト好きの冬樹はカプセルの中の生物に夢中だ。
それを桃華は見逃すつもりはなく、勇気を振り絞って言葉を放つ。
「あの……冬樹くんさえよければ、これを見つけた海域に一緒に『行きたいか? そこに……』」
桃華の言葉はどこからともなく聞こえてくる女の子の声、彼女にとって最悪な相手によって遮られた。
台所の方向から声の主が放つキンモクセイの香りがしてくる。
突然の声に驚いた冬樹がその方向に視線を向けると、そこにいるのは闇の者を刈る少女。
「アリサちゃん!?」
「また会えてうれしい……フユキ」
アリサ=サザンクロスその人だった。
「突然、どうしてここに?」
こちらに黙々と歩み寄ってくるアリサに冬樹は疑問の声を投げかける。
アリサは冬樹の目の前で歩みを止めると訳を語りだした。
「求めるものは同じ。だから迎えに来た」
「えっ?」
「そこから先は私が説明しよう」
アリサの着けている、猫耳型のカチューシャの姿をしているネヴラが代弁する。
「南太平洋でこの国の艦隊と巨大生物が遭遇したのは知っているね。実はその場に私達もいたのだ。
我々はハワイから南太平洋へ移動している強力な力の波動を感知、それを狩ろうとした。
姿を現した獲物は白い巨体に額に赤いバツ印があり、キルルルルルという鳴き声をしていた」
「まさかキルル!?」
「君がそう言うのなら、キルルで間違いないだろう。そのキルルは艦隊を襲おうとしていた。
だが次の瞬間、何処からか歌が聞こえてきたのだ。そして海面から光球が浮かび上がり、
キルルをあっさりと倒してしまったよ。ここに来たのは君の協力が必要だからだ。
あの光球の正体を突き止めるために。冬樹君、どうか力を貸してくれないか?」
「さあ行こうフユキ、例の海域へ」
「ちょ〜っと待て! 冬樹くんを南の島に誘ったのはあたしが先だぞ!!」
折角の、冬樹くんとの南の島で二人っきりラブラブ大作戦を邪魔された桃華は、
裏桃華の面を剥き出しにしてアリサに噛み付いてきた。
しかしアリサは気にすることなく話を続けようとする。
「ちょ、ちょっと二人とも、特に桃華ちゃん冷静に」
夏美がこの二人を仲介しようとする中、さらにここに空気を読まない者が乱入してきた。
勇壮な音楽とともに床が割れ、そこから緑の髪の少年がせり上がってくる。
顔つきは童顔で幼い感じだが、ギロロと同い年だ。
もう気づいている人は気づいているだろうが、彼は地球人化したケロロ軍曹である。
おおかた新しい侵略作戦を思いついたので、それを皆に披露するつもりなのだろう。
「ゲ〜ロゲロゲロ。愚かなペコポン人……」
「ただでさえややこしい状況を、これ以上ややこしくするんじゃないわよ!
このボケガエルーーー!!!!」
口上が終わる前にケロロは夏美に外まで殴り飛ばされた。
「まだどういう侵略計画なのかも、言ってないのにぃ〜〜〜」
塀に半身を陥没させながらも泣くケロロ、しかし同情する者は皆無だった。
この後、結局南の島へは日向家、ケロロ小隊、その関係者一行で行く事になった。
「ちっきしょう……こうなったら南の島でチャンスを作るしかねえ。あの女〜今に見てろよ」
裏桃華がぶつぶつと呟いたのは言うまでもない。
舞台は再び南太平洋へ。
あの後夏美と冬樹の母である日向秋の許可をもらった後の行動は迅速だった。
ケロロ達一行は、日本から西澤グループの航空機でトラック諸島へ直行。
そこから同じく西澤グループ保有の豪華客船に乗り換え、目的地を目指していた。
『――そっちは快適なの?』
「うん、天気も快晴だし。とっても楽しい旅行になりそう」
受話器の向こうにいる母親に夏美は嬉しそうに答える。
秋は編集部の仕事が忙しく、一緒に来るのは無理であり、今も仕事中だ。
受話器の向こうからは、大きな声や電話の音といった喧騒が聞こえてくる。
なのにこっちはデッキで心地よい風にふかれながら、ガーデンチェアでくつろいでいる。
向こうはしめ切り前の戦場なのに、なんだか申し訳ない。
そう思っている今だって、夏美にとっては大切な人、ギロロが隣にいてくれている。
こんな時も武器の整備をかかさないのはギロロらしいが。
夏美は受話器に耳を傾けたまま、にっこりと彼に微笑みかける。
次の瞬間、ギロロ真っ赤になり、磨いている武器もテーブルの上に落としてしまった。
身体を何度も重ねている仲なのに、こういうウブな部分は変わっていない。
『本当はママも一緒に行きたかったけど、夏美もいるし大丈夫よね。もう時間だから
切るけど、皆にもよろしくね!』
「うん、ママもお仕事がんばってね」
「な……夏美、日向秋はなんだって?」
夏美の突然の微笑みによるフリーズ状態から解除されたギロロが聞いてくる。
「うん、皆で思いっきり楽しんできなさいって」
母との電話を終えた夏美はそう答えると、ギロロが先程持ってきてくれた最高級の紅茶
を飲んで一息ついた。
ところでこの豪華客船、やけに人が少ないと感じてないか?
―――と、思った人、それもそのはず、なぜかというと……。
この巨大豪華客船全てが貸切、しかも内部は西澤邸が再現されている細かさ。
さすが西澤ピーチグループの財力――全ては冬樹と過ごすために用意されたものだ。
同じデッキの、夏美とギロロがいる場所から少し離れた場所に冬樹、桃華、アリサが
テーブルを囲んで座り、執事のポールが少し離れて待機している。
しかし、場を包む空気は一触即発寸前、険悪な雰囲気だった。
西澤桃華は不機嫌の極みにある。
なぜなら愛しの冬樹の知り合いが同行するならまだしも、
冬樹を巡る恋敵であるアリサまで一緒にいるのだ。
穏やかでいられるはずがない。
現在桃華とアリサの視線がぶつかりあい、激しい火花が発生していた。
冬樹もこの空気には気付いており、この場を和ませようとなんとか話題を絞り出した。
「も……もうすぐ問題の海域だよね」
発した言葉のお陰か場の空気が少し和らぎ、冬樹も一安心する。
「ああ……私達が謎の光球を確認したのもこの辺りだ」
「この辺りの海域は全て西澤グループが買い取りましたので、じっくり調べられますよ」
アリサに続いて桃華も負けずに答える。
このチャンスを逃すつもりはなく、桃華はさらに話を続ける
「あの、それで……この先の島でキャンプになるんですが、今晩の食事は、
私と冬樹くんで作ろうかなあなあんて思って……」
「うん、そうだね折角探検隊気分で来たんだし、テントを張ったり、料理を作ったり……
アウトドアも楽しみだね」
と、うなずく冬樹、そこにアリサもキャンプ話に加わる。
「狩なら私に任せろ。あと私の身体は人間にかなり近づいているから食事も問題ない」
「別にお前には聞いてねえんだけどよぉ〜。冬樹君との会話邪魔すんじゃねえよ」
「お前こそ邪魔をするな。フユキと話をしているのは私だ」
「――んだとゴラァ〜!!」
売り言葉に買い言葉、せっかく和んだ空気は険悪なものに元通り。
「二人とも落ち着いて〜! こんなところで喧嘩しないで〜〜〜」
そして冬樹は二人の喧嘩を止めるのに必死だった。
一方、テーブル上に置かれたカプセルの中の青い胎児は夏美を、日向家にいる時から
じっとカメラのような無機質な瞳で見つめていた。
「ドロロ、島が見えてきたよ」
「どれどれ……おお! 確かに」
豪華客船の頭頂部にいるのは小雪と青髪の美少年。
小雪より二、三歳年上で、ケロロやギロロと同世代に見える地球人、そうドロロだ。
遠くに見える小さな島を期待に満ちて眺めている。
「島に着いたら夏美さんやギロロと、ビーチバレーしようね」
「ギロロくんも一緒でござるか。それは楽しみでござるな」
ドロロと小雪は顔を見合わせて微笑んだ。
一方少し離れたプールサイド付近のデッキチェアで、ケロロ、タママ、モア
といった面々がのんびりとくつろいでいた。
「やっぱペコポン人形態で来て正解だったね〜。ケロン人の姿じゃ海水は合わないもん」
そう言いながらケロロは呑気そうにガンプラカタログに目を通していた。
本来ならここでギロロのツッコミが入るはずだが、肝心の当人は夏美に夢中なので
こちらのことなんて見向きもしていない。
すっかりリゾート気分に浸っている、自分と同じ年齢くらいの地球人の姿を
しているケロロに見とれながら、モアは幸せいっぱいなため息を漏らす。
「モアは幸せです。だっておじさまとて一緒に南の島でバカンスなんて。
てゆーか、婚前旅行?」
「なんだとゴルァ〜〜〜! うたるっぞぬっしゃ〜!!!」
冬樹と同年代らしい容姿で、中性的な雰囲気の地球人形態のタママは嫉妬の炎を燃やす。
かわいい顔も目くじらを立てていきりたつ形相のせいで台無しである。
そんな雰囲気をスルーしてケロロはどこからかスイカを取り出した。
「みんな注目。今からペコポン夏の風物詩、スイカ割りを行うであります」
モアもタママも、スイカを見た途端に目を輝かせケロロの手伝いを行う。
一通り必要な道具を揃えた後、ケロロは離れた場所にスイカをセット。
「それじゃ、私からいきまーす」
最初に目隠しをしたモアが、タママに回される。
「モア殿〜。ガンバ〜♪」
「はーい。おじさま〜♪」
モアとケロロの何気ないやりとり、タママの嫉妬の炎を再燃させるには十分だった。
「あの女ぁ〜、許せねぇですぅ〜」
タママはモアの回転を止めた後、彼女の背中をスイカとは別方向に押したのだ。
モアはよろよろしながらも、そのままケロロにめがけて歩き出した。
しかも持っているのはルシファースピア、これにはケロロの顔も青褪める。
「ちょ、ちょっとモア殿、スイカは反対。こっちじゃ……」
「ハルマゲドン、十兆分の一!」
無情にもケロロが言い終わる前にルシファースピアは振り下ろされた。
「ギィ〜ヤァ〜!!」
そして爆音と悲鳴が響きわたる。
さらに悲劇は終わらず、発生した爆風はガンプラカタログを空へ吹き飛ばす。
「ゲロ〜! 我輩のガンプラカタログ(各MSの細かい設定資料つき)がぁ〜」
黒こげになりながらも、ケロロは空を舞うカタログを捕まえようとするが、健闘空しく
そのまま海に落ちてしまう。
「ケ〜〜ロ〜〜」
滝のような涙を流しながらケロロは真っ白になってしまった。
「ク〜ックックッ……こんな暑い中、よくやるぜ」
「とかいってクルルもついてきてるじゃん」
サブローと、外見はサブローと同じ年齢で金髪でメガネをかけた人物が話している。
その正体は地球人化したクルル、二人のいる場所はケロン軍潜水艦ロードランジャー内部だ。
潜水艦は豪華客船の船底にコバンザメのようにピタリとくっついている。
二人はそこから海上の様子をモニターしていた。
当然ケロロが黒こげになるのもしっかり見ている。
「ほう、例のエネルギー反応が二つあるな。場所は豪華客船上ともう一箇所は……?」
クルルの操作によって、モニターには海域の全体図が映し出される。
豪華客船付近にあるもう一つのエネルギー反応をチェックしてみた。
モニターに映ったのは、海に落ちたガンプラカタログを何かが泡に包んで回収する光景だった。
「クルル……これって」
サブローの問いかけに心底愉快そうにクルルは返す。
「ああ、こりゃあ面白いことになってきやがったぜぇ……。ク〜ックックッ……」
to be continued……