バレンタイン?  
あぁ、ペコポン人が昔の風習にかこつけて、甘菓子売りに躍起になる日のことだろ?  
ケロン星にいたころも似たようなもんがあったが、俺は全く眼中に無かったぜ  
むしろ、そういう幸せそうな場面を台無しにするのが俺流のバレンタインの楽しみなんだけどな…ク〜ックックック  
だから俺は、ああやっていちゃついてたりほのぼのしているとこを見ると虫唾が走る  
はっきり言って、バレンタインなんざ大嫌いだな  
あんなことで無駄な労力を消費するんだったら、カレーでも食ってた方がマシってもんだゼ  
…ん?「負け犬の遠吠えにしか聞こえない」だと?  
―――違いねぇ  
確かに生まれてこのかた、俺はあんな黒い固形物なんぞ口にする機会はほぼ皆無だったな  
でもあんな甘ったるい塊なんざ、俺の口にはなっから合うはずも無いだろ?  
ま、そういうことだな  
つー訳で、俺はこのくだらないイベントを更に盛り上げるために、最高の計画を進めてたんだが…  
いちいち説明するのも面倒だ、早速やっちまうかな…ククク  
 
 
 
『Yellow Valentine』  
 
 
 
今俺が精魂込めて作ってるのは、独自に開発した甘味料だ  
味も見た目も砂糖と寸分も違わない、ただの粉にしか見えないだろ?  
実はこれには面白い物が混入しててな、コイツを摂取するとある種の興奮状態に陥っちまうんだ  
ま、手っ取り早く言うと媚薬だな、これは  
この甘味料を街中で売りさばかれてるチョコの中に混入させればどうなるか、想像するだに愉快なもんさ  
催淫効果だけで止めておかなくても良かったんだが、このことを思いついたのが昨日だったからここまでが限界だった  
ヒマがあったら、味覚を一時的に破壊させたり精神錯乱状態にさせたりもできたんだがなァ…クククク  
「クルルさん、新たに2袋できました〜♪てゆーか順調生産?」  
「ああ、そこにでも置いとけ」  
っと、そういえばモアに手伝わせてるんだったな…脳味噌軽い天然女ほど扱いやすい人材はいねぇってな  
「ところで、このお砂糖は何に使うために作ってるんですか?」  
チッ…余計な詮索を…  
確かにコイツは扱いやすいけど、何かと面倒な話題ばかり振ってきやがる  
だが、俺が適当に「隊長から頼まれて作ってる」と言うと、あいつは馬鹿正直に信じて作業に戻っていった  
…やっぱり扱いやすいな、この女は  
さて、予定通り生産量も700kgに届きそうだ  
あとは機械が勝手に精製から梱包から全部やってくれるが、俺の仕事はここからだ  
明日にバレンタインを控え、どの家にも必ずカカオ豆の匂いが漂っている  
チョコの成分を目標と定めてこの特殊甘味料を転送させちまえば、あとは次の日になるのを待つだけで良い  
そうすれば、朝から奥東京は市をあげての大乱交祭りの会場と化す…さぞ壮観だろうな  
もちろん俺だって鬼畜じゃないから、記憶や情報等の後処理も大丈夫さ  
ここ地下基地や日向家には俺の監視カメラが目を光らせているのは周知の事実だが、同時にそれは街中にも設置してある  
この一大イベントを映像に収めて売れば収入も得られるし、俺の気分も晴れて一石二鳥って寸法さ…ク〜ックック  
 
時間はもう夜の2時を回った  
準備のほうも着々と進み、あとは転送装置へ甘味料を運んだら完了だ  
しかし、いくら待ってもその気配は無い  
不審に思って振り返ってみると…アイツがすやすやと寝息を立てて眠っているところだった  
全く、お前が動かないと何も始まらねぇんだぞ…畜生  
「オイ、起きろ」  
「…んん?」  
「これで終わりだ、早く起きろ」  
「ん"〜…」  
俺が肩をゆすって起こそうとしても、モアはむにゃむにゃと鳴いてるだけだ  
…ムカツク  
この女に構っている暇はない…俺は本来モアがやるはずだった仕事をすることにした  
なんのことはない、転送装置行きのベルトコンベアーに、袋詰めにした特殊甘味料を乗せていくという作業だ  
別にこいつの手を借りなくても、俺だけで出来る事だが―――では、  
「ムグッ!」  
お…アレ?  
オイオイ、たかだか7kgちょっとの袋だぞ?  
いつもインドアだったからといって、俺がそこまで虚弱なハズは…  
「ふんっ…グ……ッ!!」  
やっと半分乗せたと思ったその時、袋は俺の手から落ちて床に飛散してしまった  
こうなりゃこっちだって意地だゼ  
大体、モアが転寝なんてしなけりゃ俺が不似合いな肉体労働で四苦八苦することもなかったのに…つくづく、罪作りな女だな  
相変わらず寝息を立ててあいつは寝てるが、俺のほうはまだひとつも甘味料を転送してはおらず、既に3袋分が無駄になっている  
半ばヤケ気味になっていた俺は、脇にズラリと控えている大量の袋にげっそりとしていた  
「…ハァ」  
床に腰を下ろし、俺は額の汗を拭った  
…その時、妙に甘ったるい匂いを俺の鼻が感じ取った  
甘味料はごまんとあるが、それとは違う香りだ  
「クルルさん、お疲れ様です♪」  
「―――ッ」  
見ると、いつ起きたのか、あの女がホットケーキをこさえてこちらにやって来る  
差し入れのつもりなんだろうが、起きたんなら俺にこんな事させんじゃねェよ…チッ  
しかしここで怒っても仕方が無いし、俺は黙ってそいつの持ってきたホットケーキを口にした  
味はそんなに悪くは無ぇが、砂糖の入れすぎか滅茶苦茶甘く作ってある  
モアは俺の食う様子を見てニコニコしてやがるが、そんなに見てたら食う気も失せるだろうが  
「クルルさんが元気になるように、ちょっとお砂糖多めで作ったんですよ…てゆーか恐悦至極?」  
聞いてねーよ  
俺が面倒臭そうにケーキを食う一方で、モアは俺の側に腰かけると、自分の分のホットケーキを食べ始めた  
こいつ…遠足気分か?  
一体自分が何に加担してるか、解ってやってんのか?  
どっちにしろ、天然女の相手をするのは疲れると、俺は再認識するに至った  
 
曲がりなりにも腹は膨れたから、少しは体力も回復してきた  
やっとモアは積み入れ作業に着任し、いよいよこれからが本番だな…  
ラボのディスプレイに奥東京市の全景が映し出され、転送の準備も完了した  
そんじゃ、ショウタイムの始まり――――――……え?  
「く、クルルさん!?」  
「ッ…??」  
突如、俺は椅子から転げ落ちた  
まださっきの作業の疲労でも残っているのかと思ったが、ふと俺は嫌な予感に駆られた  
ディスプレイに視線を向けると、転送量一部不足と警告が出ている…  
ま、まさか…  
「オイ…お前」  
「クルルさん、しっかりしてください!」  
「お、お前…あのホットケーキ、何で作った?」  
「え?それはここで作ったお砂糖で…」  
――なんてことしてくれやがったんだこのガキ!!  
よりによってこの俺が特殊甘味料最初の被験者となるなんざ、いくらなんでも笑えねぇぞ?  
俺は思いっきり憤怒の視線をモアに浴びせたが、この天然がそんなことに気付くはずも無かった  
つーか、こいつも一緒にホットケーキを食べたんだから、じきに俺と同じ事に…  
「ふぁっ!?」  
…なったな  
まるで腰が抜けるように倒れたモアは、まるで何が起こったのか飲み込めていない顔をしている  
ザマァミロ  
「あ…れ?」  
「馬鹿が…あの砂糖にゃ、ちょいと細工がしてあったんだがよ…糞ッ」  
「へ?えっと……??」  
ともかく、こいつの相手をしている猶予はねぇ  
全部が終わったときに使用するはずだった中和剤がどこかにあったハズだ  
早く本格的に発症する前に使わねぇと…マズ…  
「ひぁっ!」  
「?」  
俺が中和剤を探そうとしたところ、あいつが突然びくりと跳ねた  
どうやら、俺より先にモアから効果が発現したようだ  
息が切れて喘ぎ、身体は芯からどんどん熱くなり、性的行為以外考えられなくなる…それが俺の仕組んだ薬の内訳だ  
ご覧の通り、モアの症状はじわじわと進行している  
クク、俺が考えてた通りの反応だな……って、ナニほくそえんでんだ俺!そんな暇ねぇだろ!  
こんな奴はほっといて、さっさと薬をだな…  
「はぁ…あ……くるる…さんッ!」  
「ぐっ!?」  
なっ…こいつ、俺の足を掴んで…ば、馬鹿野郎!離せと言って―――  
「!!」  
…ヤバい  
とうとう、俺の身体にも効果が現れはじめたらしい……  
 
喉が渇く…思考が効かない…これも想定した症状の…糞ッ  
完全にのぼせ上がったモアは俺を引きずり寄せると、ぐいっと頭を持ち上げた  
「クルルさん…う……」  
「止めろ…そんな目で俺を…ッ!?」  
いきなり、あの女が俺の唇を奪った  
俺は主導権を相手に取られる事ほど屈辱と思ったことはねぇ  
だが今は、体を回る快感が俺の肉体から悉く力を奪っている  
畜生…  
発情したばかりの俺とは違い、先に発情しはじめたモアはもう完璧に性欲の虜と化していた  
まるで唾液さえも飲み干さんばかりに啄ばまれ、俺の体はぎくぎくと震えた  
「あはは、だいぶ溜まってるみたいですねぇ〜…てゆーか精力絶倫?」  
「テメェ…いい加減に…」  
「それっ!」  
「っ!」  
突如、モアは俺の股間に手を伸ばし、既に勃起しかけていた陰茎を手中にした  
強く握られたので思わず俺も仰け反ったが、そんなことはお構いなしにあいつは事を進めていく  
「ん〜♪かわいいですね」  
「黙れ」  
「もうっ、素直じゃない人は…こうしちゃいます!」  
「う゛…おァっ!!」  
俺が止めるのも聞かず、遂には俺のを口に含みやがった  
ケロン人とこいつみたいな人間タイプじゃ、体格の差こそあれど性行為はギリギリ成り立つ  
しかし、よりによってこの女を抱くなんざ…納得できねぇ  
まぁ、今もこうして襲われてるのは俺なんだが…くっ!  
「んぷ…ん……ふッ…」  
舌や口内でもみくちゃにされ、早くも俺は限界に近づきつつあった  
亀頭を包むように撫でる舌遣いや注挿の連続は、流石の俺でも耐え切れるかどうか…  
時折、吸い取るように啜られるたびに、俺の背中はぞくりと痙攣した  
あの薬にはただ普通に性行為を行わせるだけにとどまらず、必要な一通りの技巧を仕込んである  
実際に薬でイッてても、処女だったりして行為にならなかったら話にならねぇから、一応の保険だ  
今のモアもその効力でこんなに上手に扱いてやがるが…ちったあ手加減しねぇと…も…ぁ  
「ぐっ!!」  
「!」  
――――――――――ッ!!  
「んぷ…く…い、いっひゃいまひらね(イっちゃいましたね)?」  
バカ…咥えたまま…喋ん…な……  
「っく……んく……」  
…モアは、俺が放った精液を躊躇せずに飲み干していった  
一方の俺は、薬との相乗効果で敏感になりすぎた体に叩きつけられた絶頂の快感に、しばし喘ぐ事しかできなかった  
「ぷはぁ…ごちそうさまです♪」  
「ハァ…クッ……」  
悔しい事に、俺のナニは一回射精したぐらいじゃ治まっていねぇ  
もちろん、俺がこうなってるということはモアも…  
「ね…クルルさん…?」  
まだ余韻から抜け切れていない体を動かすと、そこには一枚ずつ衣類を脱ぐモアの姿があった  
 
このままじゃ、前々から考えてた俺の計画も台無しだ  
こんな馬鹿げたアクシデントで全部頓挫させちまうなんて、俺らしくない…  
だが哀しいかな、俺の体は一寸も動いてはくれなかった  
そうこうしているうちに、すっかり全裸となったモアが、床に寝かされた俺の上に被さってきた  
「クルルさん…」  
「チ…」  
俺も呂律が回らなくなって来ているので、まともに反論すらできなくなっている  
しかし、ここで俺が自分を見失ったら全てがお仕舞いだ  
そ、そういや…中和剤はどこに…  
「じゃあ…いきますね?」  
「は…?」  
いつの間にやら、あいつは俺の上に座るような格好でいた  
ケロン人相手に騎乗位なんてしたら潰れるぞ?  
ラリっててもしっかりして欲しかったが、相手が相手なので俺は黙って受け入れるほかは無く…ん?  
「あれ…は…」  
俺は、横の台にさっきから探していた中和剤が置いてあるのを見つけた  
何だ…あんなところにあったのかよ  
しかしここからじゃ手が届かねぇ―――なんとかこいつをどかせて…  
「ん…ふぅっ!」  
「なッ?!」  
!!  
「…は…っ……入りまし…た…」  
勃起した俺のを、モアは自ら悦んで受け入れた  
発情してグチャグチャになった奴の膣内が、気が狂いそうになるほど気持ち良い  
…いや、マジでヤベェな…コレは  
「だいじょ…ぶ………苦しくないよう…動き、ますか…ら……んんんっ!!」  
「グ…うあっ!!」  
こっちを押し潰さないように手を付き、俺の上でモアが踊り始めた  
破瓜の痛みを感じていないのは薬の効果だが…  
う……ッ  
艶かしくも激しく腰を打ち付け、あいつは何の恥じらいも無くアンアン喘いでいやがる…  
にしても、あのバカ女がこんな表情を見せるとは…我ながらスゲェ薬を作ったもんだな  
「はッ!あ…ッッ……!!ん、ひあぁあっ!!」  
「ハァ…は…う……」  
俺も俺で常時だったらとっくにバテてるはずだが、未だに体のコンディションは最高潮を保ち続け、モアを深く貫いていた  
だが…もう限界みてぇだな  
アイツも俺も、注挿に余裕が無くなってきてやがる  
内部では俺のモノをモアの肉壁が何度も切なく締め付けている  
…そろそろか  
がしっと付かれていた手を掴むと、体勢を崩したモアが俺の上に覆いかぶさってきた  
汗でぐっしょり濡れたモアの柔らかな胸や腹が、俺の全身に密着する  
「ダメぇッ!クルルさん…あた…し…いい゛ぃッ!!」  
「耐えろ…マダ俺は…く…限界じゃねェ…」  
流石にこの姿勢は苦しかったが、何よりも快楽を優先して俺たちは絡み合った  
 
「ひああああぁっ!!あっ、ああっ、あああああああッッ!!!」  
「クッ…は…ぐぅ……ッ!」  
今度は俺が起き上がったことで、ようやく主導権を取り返すことが出来た  
これで、ひとまず安心ってトコか…  
「う…ん?」  
ふと、俺がモアを突くのに夢中になっていると、振動で脇から中和剤が転がり落ちてきた  
「いいっ!クルルさん…いいっ!!」  
「…くッ」  
だが、俺はそれを明後日の方角へと投げた  
拒絶する事はできないところまで、俺にもモアにも薬は浸透していたみてぇだな  
それから後は…俺はもう何も考える事ができなくなっていた  
ただ目の前の雌に快楽を求める、一匹の雄に成り下がったってとこか…ザマぁねぇw  
俺がこんな調子ならモアももっと乱れているはず…そう思い、薄れゆく理性の中で俺はアイツの様子を見た  
「きひっ…く…ふ、ううぅっ…ああっ!」  
幾ら何でも、ケロン人とペコポン体型じゃ体格差が生じるのは仕方がねぇ結果だ  
だからモアは俺の手が届かない胸を自分で愛撫し、不足している部分を自分で補っていた  
「んん゛ッ!お……う…ッ」  
「もう…良いか…は……」  
「きてぇ…クルル……さん………」  
真っ赤に高潮し、だらしなく流した涙や汗や涎を拭いもしないで、モアは俺に対し切なく懇願した  
…こういうシチュエーションも悪くはねぇかな  
この言葉が合図だったかのように、俺は一段と挙動を強め、更に深くアイツの膣内へ突貫していった  
「……ッ!!あひぃいっ!!いっ!あ…はあぁっ!!」  
「俺を…全部……喰らいやが…れ…ッ!」  
あまりに強く突くせいで、支えるために手をかけていたモアの太腿に、幾つも引っ掻いたような痕が付いていく  
時にその傷痕から血が流れたが、それさえも更に強い快感を引き出す材料にしかならなかった  
ま、俺の性癖を満足させるんだったら、この程度じゃほとほと足りねぇんだが…フツーにするのもオツなもんだ  
さてと……じゃ、終わらせるか  
「は…ふぅ…う……―――!!」  
「…鳴けよ」  
「あ…くはああああああああああぁぁッッッ!!!!」  
最後に、俺はモアの肉芽を強く抓った  
その瞬間、モアは目を一杯に見開き、折れるかと思うほど体を仰け反らせた  
同時に膣内が絶妙の収縮を成し、俺も遠慮なく欲望を吐き出す  
自分でも信じられないぐらい放たれる精液は、あっという間に内部の容積を満たし、結合部から溢れかえった  
「あふぅっ…うううううっ!!んうああああッッ!!!」  
「うあ…あッ…グ……」  
にしても、幾らなんでも絶頂が長くねぇか?  
実際は時間にして1、2分ぐらいイキっぱなしだったようだが、俺達にしてみれば長過ぎる時間だ  
この時ばかりは俺も本気で気が狂いそうだと思ったが…俺もつくづく傍迷惑な薬を作ったもんだ  
 
張り詰めた時間が過ぎ、ようやく自我がはっきりしてきた頃には、2人とも激しく息を荒げていた  
俺はモアの腹に伏せていたが、しばらくして未だに張り切っているナニを引き抜き、ぐったりと体を横たえた  
「ハァ……………俺も、莫迦だな」  
全く、ミイラ取りがミイラになってちゃ本末転倒だ  
次第に冷静さを取り戻していった俺は、行為の最中に投げ出した中和剤の事を思い出し、辺りを見回した  
すると、中和剤はあろう事か転送装置にダイブしてぶちまけられてやがった  
オイオイ…これじゃ俺の特性甘味料も全部台無しじゃねえか  
とはいえ、今度ばかりは快楽で自分を見失ってた俺のミスだから、どうこう言う筋合いはねぇ…か  
それじゃあ、このムダになっちまった砂糖の山は全部処理するか…  
「クルル…さん」  
っと…そういや、一回イったら少しだけ正気に戻れるんだったな  
モアは何が起こったか解っているのか知らないのか…きょとんとコッチを見ている  
やれやれ、何があったか説明するのもめんどいし、記憶を消して――  
「あの、どうでしたか…?」  
「は?」  
「こうでもしないとあたし、できなかったと思いまして…てゆーか有言実行?」  
何言ってんだ、コイツ?  
「実はクルルさんに持ってきたあのケーキなんですけど、あのお砂糖を使ったのは…確信犯だったんです」  
…へ?  
「だって、今日はバレンタインじゃないですか?だからクルルさんに…その…」  
「…」  
そういう事かよ…  
最初から特殊甘味料入りのケーキを俺と食べて、自分がバレンタインのプレゼント…とでも洒落込もうって寸法か  
中々ナメた真似を…と思ったが、最初から油断していた俺にも落ち度がある  
ホントはかなり怒っていたんだが、俺は呪詛の念を腹の内に収め、無言でジロリと睨むだけに止めた  
そんな俺の視線をものともせず、モアは成就できた想いに頬を赤らめている  
…面白くねぇっつうの  
「クルルさん」  
思いっきり不機嫌な俺に、モアが近づいて来た  
五月蝿えんだよ、今俺は…  
「まだ、したりないですよね?」  
………あっ!  
 
そういえば転送装置に放り込んだ中和剤は、既にセット済みの甘味料の中に染み込んで一滴も残ってない  
少量で効果を発揮するからあの大瓶ひとつ分しか作っていないし、新しく作るにも今すぐってワケにはいかねぇ  
そして今、俺もモアも未だ薬の効果が抜けきっていない…  
まさかこの俺がここまで巧妙にハメられるなんざ…稀に見る不覚だ  
悔しさで顔をゆがめる俺に対し、モアは色っぽい顔でこっちに向かって微笑んでいる  
たぶんアイツのことだから、ここまで確信犯ってことはねぇだろう  
畜生…畜生…  
モアは嬉々として俺の前に座すと、ぎゅっと抱きしめてきた  
「クルルさん、今日は…離しませんよ♪」  
知るか、離れろバカ女  
これだから…これだから俺はバレンタインってのが嫌いなんだよ  
確か、これの一ヵ月後にはホワイトバレンタインってのもあるみてぇだが…  
もうバレンタインは懲り懲りだ…モアの一方的な攻めで勝手に体が反応する中で、俺は深くそう誓った  
 
 
 
【THE・END】  
 

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