「お前、あの女に惚れてんだろ?」  
 
唐突に飯塚が言い出した。  
いきなり何を言い出すのか、剣心は驚いて飲んでいた味噌汁を勢い良く噴き出してしまった。  
 
「ごほっ・・・げほっ・・・うぅん!・・・い、いきなり何言い出すんですか!?」  
 
「きったねーなぁ。その驚きよう、さては図星だな?」  
 
口角を上げ、髭を触りながらにやにや笑う。  
 
「まあ、年頃だからなぁ。ほらこれやるよ。酒にちーと混ぜるだけでいちころだぜ?」  
 
飯塚は琥珀色の紙に包まれた怪しげな粉薬を剣心の袖にそっと差し伸べた。  
 
「なんですか、これ?」  
 
「ふふふ・・・媚薬だよ」  
 
「は!?媚薬?ちょっ、飯塚さん!」  
 
「上手くやれよ、若造」  
 
剣心の言葉も聞かず飯塚はそそくさと部屋に戻ってしまった。  
 
・・・参ったな・・・媚薬なんて貰ってもそれを使うのはかなりの抵抗がいる。  
それに俺は別に彼女に惚れてる訳でも無い。飯塚さんの勝手な勘違いだ!  
そういえばあの女がこの旅館に来てからどれぐらい経っただろう。  
気付けばいつも隣にいた・・・気がする。  
仕事が夜遅く終わっても彼女は必ず起きていた。  
それはただ眠れないのか・・・それとも俺を待っているのか・・・  
 
自室に戻る途中そんな事を考えたいたら人にぶつかってしまった。  
同時に食器が割れる音もした。  
 
「すまん・・・つい考え事を・・・・・・・・・」  
 
「緋村さん?気を付けて下さいな。夕食はもう終わったのですか?」  
 
そこにいたのは彼女―-雪代巴だった。  
手早く割れた食器を片付ける。勢い良く割れたらしく皿の破片がかなり細かくなっていた。  
 
「あとは私がやっておきますのでどうぞお休みになって下さい」  
 
「あ、あの、巴さん」  
 
さっきの飯塚の言った事が浮かんだ。  
媚薬、酒に混ぜると、イチコロ・・・そんな言葉がぐるぐると駆け巡る。  
でも悪い事をしようとしてるのには違いない。  
 
「緋村さん?」  
 
悩んだ挙句最後に「やっちまえ!」と怒鳴る飯塚の顔が浮かんだ。  
 
「あ、あの・・・今晩酒でも飲まないか?」  
 
「・・・・・・はい、喜んで」  
 
少し間を置いた後、彼女はいつもの無表情で答えた。  
 
・・・糞・・・もうどうなっても知らん!それに媚薬なんて冗談だろう・・・・・・  
 
 
もう初夏も過ぎた頃なのに今晩は一段と冷え込む。  
道理で酒が美味いはず。  
暑い日本酒は体の深まで温めてくれる。  
 
「今夜は冷えますね」  
 
同じ事を思っていたのか巴が口を開く。  
 
飯塚から貰ったあの媚薬というやつをこっそり巴の酒に混ぜておいた。  
もう一亥程時間が経つのに一向に変化が見られない。  
やっぱり飯塚の冗談だったのだと剣心は少し安心した。  
 
「あぁ・・・もう夏だというのに冷えるな」  
 
その後も他愛の無い会話を繰り返しそろそろおひらきにしようか、という時だった。  
 
「あっ・・・」  
 
小さな声が聞こえた。  
 
「巴さん?」  
 
「・・なんだかだか・・・立ち上がれません・・・」  
 
立ち上がろうとした巴は腰が抜けたように立ち上がれなくなってしまったようだ。  
 
「大丈夫か?」  
 
さりげなく巴の腕をひっぱった。  
 
「あっ・・・ん」  
 
少し腕を握ったぐらいなのに何故だかもの凄く色っぽい声が剣心の耳に入った。  
 
まさか・・・・・・媚薬。今ごろ媚薬が効いてきたのか!?つーか本物だったのか!?  
 
「お酒が・・・急に回ったのかも知れません・・・」  
 
何時の間にか巴の真っ白な顔が桜色になっていた。  
呼吸も少し荒く苦しそうにも見える。  
 
「・・・・・・ともえさん・・・少し横になってれば・・・」  
 
媚薬を使い卑怯な手で彼女を汚すなんてやめよう等思っていたが彼女の姿を目の当たりにすると理性がぶっ飛んだ。  
まるで悪魔が囁くかのように剣心はゆっくりと布団の上に巴を誘導して行く。  
 
横になった巴は更に色っぽい。  
荒い呼吸のせいで胸が規則正しく上下する様は一層剣心の心を駆り立てた。  
 
巴の額にうっすらと汗が滲み出す。  
どうやら暑いようだ。  
部屋はどちらかというと寒いほうだった。  
それは酒をのせいなのか、媚薬のせいなのか。  
剣心は無言のまま着物の帯を少し緩めた。  
帯を緩めた胸元からはうっすら桜色に染まった滑らかな肌が覗いた。  
そっとその肌に指を滑らせると巴の口から小さな声が漏れる。  
どうやら媚薬のせいで肌が異常に敏感になっているらしい。  
肌に触れるだけでこんなに感じるなんて性行為になるとどうなるのだろうか…。  
そんな事を考えて行くうちに勝手に手が進んだ。  
もう理性なんてどうでも良かった。  
 
「あっ…ん…」  
 
首筋にゆっくりと舌を這わせる。  
素早く着物を脱がし柔らかな胸に触れた。  
大き過ぎず、小さ過ぎず、丁度手に収まるぐらいの形のいい胸だった。  
その胸の頂きににある突起を舌で優しく愛撫する。  
また一段と巴の声が大きくなった。  
 
やがてゆっくり手を下腹部へと滑らせる。  
巴の肌はまるで絹のようだった。きめ細かく真っ白な肌。  
 
秘所に触れるともう十分に濡れていた。  
指で割れ目をなぞり一番敏感な部分に触れる。  
巴は声を上げ大きく体をくねらせた。  
そのまま愛撫しながら指を膣内へ入れた。  
十分に濡れているので簡単に入ったが中は狭い。  
もう一本指を入れ、中を広げ指を大きく動かすと、どんどんと愛液が溢れて来る。  
 
「あぁぁ…やぁっ…」  
 
苦しそうに喘ぐ巴。  
剣心もそろそろ限界だった。  
性器を取り出し挿入しようとした時巴が待ってっと小さい声で言った。  
 
「?」  
 
まさかここまで来て…と思った瞬間、巴の白い指が剣心の性器に触れる。  
 
「……巴さん…?」  
 
そのまま指で性器を愛撫しながら巴は自らの口に含んだ。  
温かい舌の体温が痛いほど性器に伝わった。  
長い髪をかき上げながら上下に口を動かし舌を器用に使って舐め上げる。  
時折覗く真っ赤な舌が妙に厭らしく見えた。  
その行為が余りにも可愛くて、そんな彼女がとても愛しく思えた。  
 
「はぁ…ぁっ…ともえ…」  
 
もう限界に達するという頃、巴は静かにこくりと頷いた。  
そしてそのまま巴の口の中に勢い良く精液を吐き出した。  
 
吐き出してと言う剣心の言葉も聞かずに、巴はごくりと喉を鳴らし精液を飲んでしまった。  
 
余りに愛しくて剣心はそのままきつく巴を抱きしめた。  
 
剣心は窓際にもたれ、巴の細い腰を持ち上げた。  
巴の秘所は十分濡れている。  
少し狭い膣内に剣心の性器が奥まで入った。  
 
「あぁぁあ…んっ…ぁぁっ……・・」  
 
苦しそうな表情の巴、しかしゆっくりと自ら腰を振る。  
剣心も下から腰を突き上げた。  
水音と二人の吐息だけが部屋中に響く。  
 
「あぁん…あぁぁっ!」  
 
巴が限界に近づく頃剣心はより一層腰を突き上げた。  
子宮にまで届くかと思われる性器は、すき間無く巴の膣内を埋め尽くし  
動いた反動で溢れ出る愛液は剣心の腿を濡らした。  
 
やがて二人は達し、剣心は巴の中に再び精液を放った。  
 
その後、長い接吻を交わし長い眠りに落ちてしまった。  
 
 
朝目覚めるとそこには巴の姿は無かった。  
昨夜の事を思い出してみると少し後ろめたい気持ちになった。  
彼女は覚えているだろうか…しかも媚薬を使って彼女と寝てしまった。  
どんな顔をすれば良いのだろうか。  
 
「よぉ」  
 
飯塚が何食わぬ顔で挨拶してくる。  
 
「……ちょっと飯塚さん、あの媚薬とかいう薬、本物だったんですか?」  
「媚薬〜?あぁ、昨日のやつか?さてはお前ヤったのか?」  
 
相変わらずデリカシーの無い男だ。  
 
「あれなぁ、ただの小麦粉だよ」  
「…………は!?」  
「だーかーらー媚薬なんて初めっから無かったの」  
「!!??」  
「まぁ、何にせよ良かったじゃねーか」  
 
飯塚はまたそそくさと去ってしまった。  
いいように飯塚にからかわれたらしい。  
剣心は魂が抜けたようにぼーっと突っ立ている。  
 
媚薬じゃなかった…?じゃあ昨夜の彼女は一体・・・。  
酒が入り過ぎたにせよちょっとおかしい。  
思い返せばかなり積極的だった。良く考えたらあんな事初めてで出来やしない。  
いいように俺は彼女にもて遊ばれてるのか……。  
剣心の謎は深まるばかりだった。  
 

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