「この坊、借りるで。あんたら人、悪いさかいなぁ」  
 
まだ幼い赤ん坊を、刀の先で揺らしながら、男――沢下条張 が呟いた。  
そして、飄々とした背中を見せつけ、張は道に消えていった。  
 
借りるとは聞こえがいいが、赤ん坊の伊織は、体のいい人質であった。  
今は無き刀匠で男の父、新井青空の最後の一振りを手に入れるがゆえの。  
 
いや、人質ならまだ良いほうだろう。  
おそらくその刀で、伊織は試し斬りの対象にされてしまうだろう。  
現に、張が最後に見せた表情には、そう云う種の暗さが宿っていた。  
 
曇天が、悲嘆にくれる男女を押しつぶすように包み込んでいた。  
 
しかし、それから間もなく、道の向こうに気配を感じる。  
見覚えのある、直立した頭髪。そして、鞘の先で泣き続けるわが子。  
再び張が姿を現したのだった。  
 
「あかん、忘れ物しとったわ」  
 
悪びれるようなふうも無く、むしろ馴染みの店を訪ねるような  
気安さで張が呟いた。口許には笑みすら浮かべている。  
 
何を忘れたというのだろうか。  
まさか、伊織を返してくれるような慈悲心のある相手ではあるまい。  
それともまだ聞き足りない何かがあったのだろうか。  
赤空が、妻の梓が、張の真意をはかろうとするより先に、張は云った。  
 
「赤空はん、奥はん、すこうし貸してんか」  
「え」  
 
意外な張の言葉に、赤空の思考回路が一瞬凍りつく。  
そんな、赤空の反応を見るまで無く、返答を聞くまで無いといったように、張は続けた。  
 
「今日、いいのが手に入ってやな。試し斬りしたくてうずうずしてるんや。  
ワイはすぐ試さな気が済まんてな。  
 奥はん別嬪さんや。斬り心地ええやろ」  
 
「ば・・・・・・  何を莫迦な!」  
 
伊織だけでは飽き足らず、妻まで手にかけようというのか。  
赤空は妻を後ろ手に庇う。  
そして、草鞋を砂に摺らしながら、張との間を空けるように後退していく。  
 
意に介さず、悠々と近づく張。  
 
「く、来るな!!」  
 
「あんた邪魔や」  
 
張が言うや、鈍い音がした。それと同時、赤空の喉から低い声がもれる。  
いや声というよりも、胸から飛び出した音、といったほうが正確かもしれない。  
 
張がいつの間にか握っていた鞘で、赤空の胸を突いたようだった。  
赤空は背中から倒れこむと、胸を押さえながら、のたうち回る。  
辺りに、濛々と土ぼこりが舞い上がった。  
 
「あなた!! あなた!!」  
「・・・・・・逃・・・げろ・・・・・・」  
「厭ぁ! あなた!」  
 
張は、赤空にすがりつく梓の襟をつかむと、  
赤空から引き剥がすように梓を引き上げた。  
 
そして、眼下の赤空の胸を再度突いた。  
九尾を突かれた赤空は、腹の奥から鈍い音を漏らし、そのまま悶絶した。  
 
「あなた!! あなた!!」  
「だいぶ手加減したさかいに、すぐ気づくやろ。  
・・・・・・坊も、今は邪魔やな。代わりに置いてくわ。  
ほな赤空はん、奥さん借りてくで」  
 
張は梓の腰を抱えると、そのまま肩に担ぎ上げた。  
 
「いやぁ! あなた! 伊織!」  
 
脚を振り、背中を叩き、頭を振り、全身で抗う。  
しかし張にとってみれば、それは蚊が刺すほどの抵抗にもならなかった。  
 
「離して! お願い!」  
「まぁ、すぐ済むわ」  
 
張は梓を担いだまま、店の中に消えていった。  
響いていた伊織の、甲高い鳴き声が、徐々に小さくなっていく。  
 
 
「きゃ」  
店の奥の、普段は居間なのであろう。  
畳に、投げるように転がされた梓は、軽い悲鳴を上げた。  
そのはずみで乱れた裾を、咄嗟に両手で直す梓。  
そして張から逃れようと、座ったまま後ずさりする。  
 
張は、口許に不敵な笑みを浮かべたまま呟いた。  
 
「世間じゃ、刀狩の張や言われてるけどな。  
 何も刃の付いたのばかりが興味やあらへんで」  
「・・・・・・」  
「 ―― これが今日手に入れたやつや」  
 
と張は懐から黒い物体を取り出した。  
 
長さおよそ6寸、太さおよそ指4本分。  
手元から徐々に弧を描き、溝を経て一旦膨らみ頂点に至る。  
そして頂点の垂直な亀裂。  
 
淫具 ――― 明らかに勃起した男根の形状であった。  
生殖という生理目的を取り払った、無機質な官能の道具。  
淫具という性質上、おそらく防水目的で塗られている黒漆が、  
怪しく光沢を放ち、淫靡な黒い艶を浮かべていた。  
そして、張はそれを、梓の眼前に据えて呟いた。  
 
「刀や。まぁ斬るのは女専門やけどな。堺で偶然手に入れてやな・・・・・・」  
 
手に入れたいきさつを述べる張。  
言葉のなかに喜悦が混じるのは、収集家が、自慢のコレクションを他人に披露するときの特徴だろう。  
 
「・・・・・・」  
 
しかし梓には張の言葉など、全く耳に入らなかった。  
大きな眼をさらに見開いて、その醜悪な光沢に引き込まれるようにじっと凝視していた。  
この醜悪なものの用途は、一児の母だけにすぐ分かる。  
 
夫のあたたかな愛情しか知らないそこを、情愛の欠片もない無機質なそれに破られる。  
愛情の結びを産み落した操を、無慈悲に蹂躙される。  
梓は端正な顔を両手で覆う。指の間から嗚咽が漏れ始めていた。  
 
「奥はん、脱いでんか」  
 
追い討ちをかけるように張が云う。  
まるで知己との挨拶のような軽さである。  
 
「脱いでや。あまり、手荒にはしたくないよってな」  
 
「・・・・・・」  
 
――そんなこと、できるはずないではないか。  
じっと身体を硬くし、首を小さく振る梓。  
肩まで伸びた長い黒髪が、小刻みに揺れる。  
 
「奥はん」  
「・・・・・・」  
 
張の催促を頑なに拒む梓。  
何度も何度も横に振られる首、そして嗚咽のみが梓の無言の返答だった。  
 
張は舌打ちをする。  
そして、これまで閉じられていた左目を大きく見開く。  
そして――。  
 
「無視するなや!!! このアマァ!! 早ぅ脱がんかい!!」  
 
いらだった張から、怒声が響く。  
驚いた梓が顔を上げるよりも先に、梓はその場に押し倒された。  
 
張が梓の裾を割る。  
梓に馬乗りになりながら、梓の胸を広げる。  
帯紐を解く。  
幾重にも結ばれた紐を引きちぎる。  
 
逃れようとする梓をうつ伏せにする。  
梓を後ろ抱きにする。  
拘束を喪った着物はただの一枚布にすぎない。  
肩から着物が抜け落ちる。  
衣が次々に梓の白い肌を滑り落ちていく。  
 
 
白く光芒を放つ柔肌に、艶やかな長い黒髪が絡みつく。  
華奢といったほうがいいような、細い四肢が晒される。  
細い身体に似合う、小さな胸が晒される。  
薄い茂みが、奥の操が晒される。  
 
 
張は懐から、これも淫具なのだろう、革製の枷を取り出した。  
一糸まつろわぬ全裸の梓の上肢を、それできつく固定した。  
手首は頭上で交差され、その枷が交点となる。  
両腕は左右方向の自由を失い、窮屈な前後の動きのみが許されていた。  
 
張は、梓の足を抱え込むと、梓の亀裂に、これも黒漆で塗装されている、2寸ほどの楕円形のものをあてがった。  
その物体の中央に溝があり、その溝をへらのような棒が走る。棒の片側には鋸状の凹凸がある。  
 
それは「丸虫」という、張が必ずといっていいほど、最初に使う淫具である。  
溝の付いた裏面には親指大の山があり、それが恥部に刺さり亀裂を少し押し広げる。  
その山のふもとには豆粒大の切片があり、内部の歯車によって小刻みに動く仕掛けである。  
 
さらに手前にも豆粒があり、恥部の突起物をちょうど覆うように配置されている。  
これも歯車によって小刻みに動く。  
張が棒を引きながら、嬉々として梓に説明する。  
 
張が棒を引く度に、梓の全身が小さく震える。  
張が棒を押すたびに、梓が小さく声を漏らす。  
 
「妙な気分やろ」  
「・・・・・・」  
「変に、愛撫するより速いさかいにな」  
 
丸虫の足元が徐々に湿り始め、やがて浸り始め、泉になる。  
張は虫を除け、梓の泉に指を差し入れる。  
 
指に絡みつく粘液をかき回し、すくい取った愛液を、梓の口内にさし入れる。  
梓の舌で拭うように指を絡ませる。  
不快な苦味が梓の味蕾を包む。  
 
丸虫の愛撫で、梓の息は上がったのか、腹部はゆっくりと上下していた。  
 
「おっけーやな。ほな、これいくで」  
 
聞くや梓は、足を窄め、内股を密着させる。体を捻り、その部分を隠そうとする。  
張は梓の無駄な努力を苦もなく追い払うと、張は黒く禍々しいそれを、梓の胎内に差し入れた。  
 
ずぷり。  
ゆっくりと漆黒の陰茎が、梓の泉の中にその身を浸していく。  
 
それが中ほどまで沈んだところで、梓は大きくのけぞった。  
 
夫のそれと比べ明らかに硬く、長く、太いそれが、梓の奥を押し広げていく。  
梓が初めて体験する巨根であった。  
さらに漆で塗装されたそれは、なまの肉棒の温度など無く、ただ冷たく、梓を芯から凍らせていた。  
 
「嫌! ああっ! 嫌ぁ!」  
恐怖、苦痛、そして屈辱が梓を叫ばせた。  
 
梓の反応を楽しみながら、張が前後に抜き差しする。  
「これ、天狗いうんやけど、これだけなら普通のと変わらへんやろ?」  
 
「ここからや」  
張は男根の握りを変えた。  
 
どういう構造になっているのだろう。  
蜜壺のなかで天狗は、むくむく音を立てるように仰角を鋭くしていく。  
張がそれを押し込むと、亀頭が上側の子宮の内膜に突き刺さる。  
 
肉壁の抵抗を受けた亀頭が左右に振れ、回転し、蜜坪の内壁を蹂躙する。  
いつしか、抵抗がない場所に当たる。 そこには梓の、女の、恥部の敏感な部分があった。  
 
(あっ、なに、これ・・・)  
さっきまでの屈辱感だけの摩擦とは違い、体の芯から強制的に訪れる官能。  
突かれる度に反射的に恍惚が襲う。  
そして子宮の奥から波のように押し寄せてくる快感は、重なり合い、共鳴し、強くなっていく。  
 
快感が声となって、恍惚が吐息となって漏れる。梓は咄嗟に下唇を噛んだ。  
 
(あっ、どうして・・・・・・)  
 
思っても見ない自分の、淫らな身体に梓は嫌悪を感じた。  
羞恥のせいだろうか。梓は身体が熱くなっていくのを感じた。  
 
「ええやろ」  
 
張の言葉に、頑なまでに首を左右に振る梓。下唇は噛まれたままだ。  
 
「ええやろ、これは。女の性感帯いうらしいで。  
 古い本にも載ってるそうや。強制開花いうてな。  
我慢せんかて、声出してええで。  
そのほうが天狗も喜ぶわ。」  
 
「・・・いや・・・・もう・・・・止めて・・・」  
 
かぶりを振るう梓。  
 
「やめて、ええんか?」  
 
張は手を止めた。  
 
「・・・・・・あ・・・ だめ・・・」  
「せやろ」  
 
張は鼻で笑う。  
涙が溢れていた。涙が伝う頬は恥辱の色に染まっていた。  
 
張がさらに続けると、梓はだんだんと、恍惚に耐える苦痛に耐えられなくなってきた。  
下唇の戒めが徐々に解かれていく。  
 
突きに同期して梓は声を上げる。  
そしてその声が、ひときわ大きくなったと思うと、  
接合部から液体がこぼれだした。  
精液のような粘りはなく、少々のにごりはあるにせよ、水のようにさらさらとしていた。  
 
梓は崩れ落ちた、息が弾むように荒い。  
その一方で、守れなかった操への倫理が、梓の瞳に大粒の涙を浮かばせていた。  
憎むべきはこの男とはいえ、夫からは感じ得なかった絶頂を感じてしまった自分が悔しい。  
 
張は満足気に天狗を引き抜いた。  
 
そして張は、自分の男根を取り出した。  
それは天狗よりもさらにもう一回り大きいように映る。  
 
「自慢の一振りや。奥さんだけええ想いして、ずるいさかいにな。」  
「・・・・・・」  
「哂うとこやで」  
 
張は梓を立たせ、尻を突き出させると、梓を背後から突いた。  
 
梓のそこには既に抵抗はなく、やすやすと、むしろ包み込むように張のそれを受け入れる。  
粘液が肉棒に纏わりつき、潤滑油となって張を恍惚へといざなう。  
梓の粘液が張に攪拌され、波紋が十重二十重に重なり張を包む。  
そしてやがて ――  
 
どぷり。張は梓の奥深くに注ぎ込んだ。  
 
 
 
「後は旦那はんに慰めてもらってや。青空はんの刀も早く見たいさかいにな」  
 
ことが済んだ後、暫くして張は梓にうそぶいた。  
 
そして、泣きじゃくる伊織を拾い上げると、何事も無かったように消えた。  
そして今度こそ、再び現れることは無かった。  
 
理不尽な陵辱への絶望からか、暫くの間、梓の口からはただの一言も発せられることはなかった。  
ただ嗚咽のみが漏れ続けていた。  
 
 
 
 

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル