操の心中は幸福と戸惑いが渦巻いていた。
京都の中でも滅多に人が通ることの無い、この林道。
日が傾きかけ、虫の声すら聞こえない静寂の中、蒼紫は操を抱擁していた。
(蒼紫様…)
このまま時が止まってしまえばいい。操は高鳴る鼓動を抑えつつ、そんなことを考えていた。
だが、その激しい鼓動は蒼紫の体からも伝わってくることに気付いた。(蒼紫様も緊張してるのかな?)
そう思うと、ますます愛しくなってくる。
操は、蒼紫を抱き締める腕に力を加えた。
そうしているうちにも蒼紫の鼓動は激しさを増し、体は燃え上がる様に熱くなっていく。
(こんなに熱い…。蒼紫様、風邪でも引いてるんじゃ…)
操は蒼紫の異変に気付き、そっと顔を上げた。
しかし、操の視線の先には、いつもの優しげな蒼紫の表情は無かった。
焦点の合っていない眼には狂気の光が宿り、口元は邪悪な笑みに歪んでいた。
「ひっ…!?」
あまりの変貌に、操は先程までの愛しさも忘れ、蒼紫から体を離そうとした。
と次の瞬間、蒼紫は凄まじい勢いで、操の右肩に咬みついてきた。
「いやあぁぁぁぁ!!」
焼けるような激痛と理解できない恐怖に襲われ、操は蒼紫の腕の中で必死にもがいた。
「いやぁ!や、やめてぇ!!」
蒼紫は突然、操を突き放した。
「きゃっ!」
操はろくに受け身もとれず地面に転がり、強く頭を打ちつけた。咬みつかれた肩の傷は柘榴の様に口を開き、勢いよく血が流れ出ている。
「ひっ、ひいぃぃぃ、いいぃぃぃぁぁ…」
あまりに突然の、そして有り得ない出来事に操の頭は混乱し、うわ言に似た悲鳴を絞り出す事しか出来なかった。
「た、助け…助けてぇ…蒼紫様ぁ…蒼紫様ぁぁ…」
操は自分を襲った目の前の人物を認識出来ず、ひたすら蒼紫の名前を呼び続けた。強く頭を打ちつけたせいか、あらぬ方向にむかって救いの手を求めようと這いつくばる。
蒼紫はゆっくりと操の前に回り込むと、髪を掴んで無理矢理に顔を上げさせた。そして空いている方の手で、ズボンの中から硬く屹立した陽根を覗かせた。
(うぅっ…)
操は男の物を見るのはこれで三人目だったが、これまで見てきた物とは全く違っていた。毒蛇の様な禍々しい形に、赤黒い奇妙な色。そして何よりも、子供の腕くらいはありそうな巨大さ。
蒼紫はそそり立った陽根を、ゆっくりと操の顔に近付けた。
(い、いやぁ…)
まるで剛壮な手槍を思わせるそれは、意識を持っているかの様に操の鼻先で揺れていた。それには愛しい人の大切な一部という感情など湧き起こる筈も無く、自分の乏しい知識から最大限予測し得るおぞましい行為だけが頭の中を駆け巡っていた。
「あ…あぁ…あ…」
操は髪を鷲掴みにされ頭を引っ張り上げられながらも、いやいやと頭を振って虚しく抵抗した。「……ワ……ロ」
(えっ?)
それまで一言も発しなかった蒼紫の口から、金属を擦り合わせた様な不気味な声が響いた。
「クワエロ」
そう言うが早いか、蒼紫は半開きになった操の口に、いきり立つ陽根を捻じ込んだ。
「んぐぅっ!?んんっ!んむぅぅっ!!」
あまりの大きさに顎の関節がミシミシと音を立てて外れそうになる。
「ぅんんんおうぅ!んぐがぅ!ぅんぐうぅ!」
必死に腕を振り回す操の抵抗など意に介さず、蒼紫は人間離れした力で万力のように頭をを掴み、激しく腰を動かし始めた。
「んぐ!ぅぐ!んぐぅ!ぅう!ぐぐぅ!ぅんぅ!」ますます硬度を増す陽根は、操の咽喉の奥深くに突き刺され、強烈な吐き気と無呼吸状態を生み出した。
「ぐ…ぐぐぐぐぅ…うぐぐっ…うぐぅぅぅ」
蒼紫の律動に合わせて涙と涎が止めどなく流れ、呼吸も嘔吐も許されない苦しさに、今は肩の傷の痛みも完全に忘れていた。
「うぅ……ぐ……う……ぐ……」
延々と続く無呼吸状態に、遂に操の意識に闇が拡がり始めた。その闇は甘美に満ちておおり、凄まじい吐き気を忘れさせてくれた。操は、それが確実に死に向かう闇と分かっていても、身を任せたかった。
「う…………ぐ…………」しかし、そう簡単に楽にはさせないとばかりに、蒼紫は律動をさらに激しくさせた。
「ウ…ウウ…ウ…」
絶頂が近付きつつある蒼紫は野獣の様な唸り声をあげ、律動は常軌を逸したものとなり陽根が咽喉を突き破らんばかりになっていた。
「ウグゥウオオォッ!!」
野獣の咆哮と共に操の咽喉奥深くに勢いよく精を放った。
「!?」
大量の白濁液は食道と気管に容赦無く流れ込み、甘美な闇に身を任せていた操は一気に現実に引き戻された。
「んうぐぅ、ぐぅええぇぇぇ!!うげえぇっ!!げほぉっ!!げほぉっ!!げほぉっ!!げほぉっ!!」
陽根を口から引き抜かれると同時にそれまで忘れていた強烈な吐き気が甦り、操は激しい嘔吐と咳き込みにのたうちまわった。
咽喉の奥に放たれた白濁液を残らず出し尽しても、なお嘔吐と咳き込みは続く。
「げはっ!げほぉっ!ごほっ!げぇっ!ごほぉっ!」
徐々に吐き気は落ち着き自律呼吸を
取り戻しつつあったが、苦痛と疲労に包まれた操はそのまま地面に突っ伏していた。
「ぐぅっ…げほっ…うぐぅ……うっ……うぅっ……うえぇ、うえぇぇぇ……うえええぇぇぇぇ………」
地獄から解放された安堵と恐怖・理不尽・苦痛の残り香などの感情が混じり合い、操の眼から涙が後から後から溢れ出てきた。
「うえぇぇ、ええぇ…ひっ、えええぇぇ…ひっ、ひっ…」
(何故?どうして?何故?どうして?何故…)
蒼紫が何故、自分にこんな酷い仕打ちをするのか?
つい半刻前までは愛を確かめる様に抱き締め合ったのに。
操はまるで自分の周りがこの世で無い様な錯覚に捕われた。
「えっ…えっ…うえぇぇ…ひっ、ううぅぅぅ……蒼紫…様…」
ならば、もし今ここがこの世で無いのならば、やはり自分には…
「あ…蒼紫…様…蒼紫様ぁ…蒼紫様ぁ…」
操は先程まで受けていた凌辱を忘れたかの様に、泣きながら蒼紫の脚にすがりついた。
「蒼紫様ぁ…助けて…くださ…」
自分を凌辱した張本人にすがりつき、哀願する操の頬にそっと手が添えられた。
「あ、蒼紫様っ」
操は救われた様に顔を上げた。
だが次の瞬間には蒼紫の手は、操の喉を絞めあげていた。顔には相変わらず邪悪な笑みが張り付いている。
「ぐぅっ…いやぁ…蒼紫様…いやぁ、いやぁぁぁーーー!!!!」
「うぐぅぅっ……」
蒼紫に両手で首を絞め上げられ、操の表情は苦悶に満ち、冷たい汗が全身から滝の様に流れ落ちていた。
絞め上げる力は気管と頚動脈を押し潰す程の圧倒的なものかと思えば、かろうじて息をつけるくらいに弱められる時もあった。まるで簡単に意識と抵抗する力を失うなと言わんばかりの強弱のつけ方だ。
「ぐぅっ…かはっ……や…め…」(どうして、蒼紫様が私にこんなことを? こんなの嘘…)
操の頭の中は疑問と恐怖と蒼紫への想いがぐるぐると渦巻いていたが、身体は襲いかかってくる苦痛を払い除けようと必死に虚しい抵抗を続けていた。
そして、首にかけられた手を引きはがそうと蒼紫の前腕に手をやった時に、操は改めて気付いた。
(なっ…!? 何なの、この熱さ…)
抱擁されていた時も熱くなった蒼紫の体温は感じていたが、今では人間とは思えない程の異常な熱を発している。
(こんなの…普通の人間じゃ…)
操は霞む眼を凝らし、なんとか蒼紫の表情を捉えようとした。
曇りかけた視界の中、蒼紫の眼が放つ異様な光だけが、操の意識に焼き付けられていく。
炎の様に燃え上がる狂気と氷の様に突き刺さる冷酷さ。
(あの眼…どこかで…)
しかし、そこで操の思考は中断された。
突然、蒼紫が操の唇に喰らいついてきたからだ。
蒼紫の舌が、操の口内を浸入しようと唇をこじ開けにかかる。
「んぅっ…うっ…ぅぶっ…んんぅ…うぅぅう…」
操は必死に歯を食い縛り、固く唇を結び、灼熱の蛞蝓の浸入を拒んだ。
しばらくの間操が抵抗を続けていると、蒼紫は諦めた様に唇を離した。
そして絞め上げていた手の力を緩め、頬や瞼、耳に優しく口づけを始めた。
「…えっ!? ……っ…………」
蒼紫の突然の豹変に驚きつつも、普段から感じ慣れていた優しさに、操はそれまで受けた苦痛を忘れ徐々に警戒を解いていった。
「…ん……んっ……んんっ…んぁっ…あぅ…ふあぁ……くぅん…」
操は次第に悦びの声をあげ始めた。
蒼紫は操の耳朶に優しく舌を這わせながら、耳元で囁いた。
「…馬鹿ガ」
「……ふぇ?」
蒼紫は操の首から右手を離すと、脱力している操の鳩尾に強烈な拳打を浴びせた。
操の身体が三寸程、宙に浮き上がる。
「ぅぐうぅぅっっ!!!!」
胃が破れるどころではない。胴体の真ん中に大きな穴が空いたかと錯覚する程の衝撃だった。
「ぅぐぇっ…かはぁっ…がぁっ…げぇっ…」
息が全くできない。さっきとは比べ物にならない吐き気。痛みというより体が内側から破裂しそうな苦しみ。
蒼紫は、身体を折り曲げ悶絶している操の顔を再び引き上げ、口内に舌を捻じ込んだ。
涙と涎と胃液にまみれた、世にもおぞましい口づけ。
胃液で苦味の増した操の歯や舌や口蓋を、まんべん無く蒼紫の舌が這い回る。
「…ぐぅ………えぅ………うぅ…」
もはや白目を剥き半失神状態の操の口内を犯すのは、蒼紫にとっては容易なことだった。
蒼紫は操の舌を吸い出し、充分に持て遊んでからがりりと咬んだ。
「っ!!」
その引き裂かれる様な痛みで、またしても操の意識は地獄の現実へ引き戻された。みるみるうちに操の口内に血が溢れてくる。
やがて蒼紫は操の唇から顔を離し、じっくりと観察する様にその顔を見つめた。
涙に濡れた虚ろな眼、赤黒い血を溢れさせた唇、この世のものとは思えない苦痛に満ちた表情。
蒼紫は操とは対照的な、歓喜に満ちた邪悪な笑みを浮かべた。
だが、しばらく操の顔を覗き込んでいた蒼紫はあるものを見付け、顔を歪め再び激しい狂気の炎を燃やし始めた。
ここまで凌辱を重ねられてもまだ、操の瞳の奥には蒼紫への想いが残っていたのだ。
「あ……あ…蒼紫…さ……ま……」
震える操の指が蒼紫の顔に触れようと伸びてくる。
それはもう苦痛や恐怖とはかけ離れた、操の無意識の行動だった。
「…気ニ入ラネェナ」
蒼紫は操の手を取ると、無感情に捻り上げ腕の骨を折った。
「ぎゃあああぁぁぁぁ!!!!」
操は凄まじい悲鳴をあげ、それと同時に蒼紫が両手を離した為、無惨に地面に崩れ落ちた。
「………ぅ………ぁ…………ぅ……」
地面にうつ伏せに倒れ込んだ操は声にならない呻き声をあげていたが、力尽きたのか逃げようと体を動かすことは無かった。
その様子を見ていた蒼紫はゆっくりと操の後ろに回り込み、そばにしゃがみ込んだ。
そして、両手で操の装束を掴み、力を込めて破り始めた。
「……い…や………も……や……め………蒼……」
操は身動きの取れないまま、装束を破られていくのを感じていたが、やがて、気絶した…
蒼紫は相変わらず邪悪な笑みを浮かべ、呟いた。
「オ前ラニモ地獄ヲ味アワセテヤルゼ…」
その怪物じみた力で、蒼紫が操の装束を破り終えるのに十秒もかからなかった。
装束を破られた操はほぼ全裸の状態で健康的に日焼けした肌を晒している。
無駄の無い引き締まった身体だが、丸みに欠けた平坦な胸や小振りな尻はひどく幼さを感じさせた。
ただその胸の頂きについている不釣り合いに発達した乳首は『少女』ではなく『女』の物だった。
蒼紫は手荒く操の胸や背中、尻ををまさぐったが、その身体は何の反応も見せなかった。
(………)
蒼紫はしばらく首をかしげ考え込んでいたが、そのうち何かを思い付いた様に口角を吊り上げ舌舐めずりをした。
(…気絶シタママジャ面白クネェ)
蒼紫は右手の親指を、操の後頭部と首の間あたりにある窪んだ部分に当てた。
そして、第一関節まで沈むくらいに親指を強く押し込んだ。
「……!!!」
大きく眼を見開き、身体を強く反り返らせ激しく痙攣する操。
身体中に電気が走ったかの様な反応が終わり再び倒れ込むと、意識を取り戻した操はぜえぜえと荒い息をつき始めた。
その様子を見ていた蒼紫は満足気に笑うと操の腰をがっしりと掴んだ。
「…な…に………あぁっ!?」
強引に腰を浮かせ両膝を突かせると、両腕が折れて支えにならず横顔を地面につけている為、自然と尻を高く突き出す羞恥に満ちた格好となった。
「…や……ぃやぁ…」
恥毛の生えていない閉じたままの陰裂や薄桃色の菊門が暮れかけた日の光に照らし出され、その部分の幼さとは裏腹の歪んだ淫靡さを釀し出していた。
「…うぅ……だ…め……みない…でぇ…」
未だ男を知らない十六歳の操にとって自分の秘所を人の眼に晒すのは、それまで受けた暴力よりも遥かに苦痛をもたらす事だった。
「…うっ…うっ…ふえぇぇぇ…ひっ…ぅえぇぇぇ…うっ…うっ…」
蒼紫に晒され、蒼紫に見られていると思うと、操は恥辱のあまり鳴咽を洩らすしかなかった。
「…やあぁ…うぅっ……こんなの…やだぁ…うぅっ…」
蒼紫はそんなことはお構い無しに、顔を密着しそうな程に近付けて操の秘所を細部まで観察していたが、やがてその小振りで引き締まった尻を乱暴に揉みしだき始めた。
「…あうぅっ! …い…たい……いたい…よぉ…」
尻の肉を力任せに強く掴まれる。
「…いっ…いた…い」
尻のあらゆる場所に強く爪を立てられる。
「…あぅっ……うぅ……いっ……いたっ…」
尻を左右に強く拡げられ、菊門がいびつに形を変える。
「…ぅうううぅぅぅっ…! んうぅ……やぁぁぁぁっ!」
少女の固い尻の感触と苛虐心を煽る反応を楽しんでいた蒼紫はボソリと呟いた。
「…モウイイダロウ」
蒼紫は腰を高く突き出してうつ伏せた操の脚を大きく開かせた。
そして操の腰に身を寄せ、おもむろに屹立した陽根を菊門に当てた。
操は熱く焼けた炭火を菊門に当てられた様な感覚にびくっと身体を震わせた。
そして、精一杯頭を回して自分と蒼紫の格好を見比べているうちに、性の知識に乏しい操にもこれから彼が何をしようとしているのか想像がついてしまった。
(…!? …ま、まさ…か……そんなとこに…)
蒼紫の陽根が力強く押し付けられる。
「…い、いや……。ぃいやあぁぁぁぁ!! やだやだやだ!! いやっ、助けてぇぇ!! 絶対やだぁ!!」
それまでの無抵抗ぶりが嘘の様に、操は激しく抵抗した。
両腕が動かず腰を押さえられている為、左右に頭を振り、背中を伸ばし、バタバタと両脚を掻く。
あれだけの大きさの物を入れられる事、初めての性交なのに衆道の様に菊門を奪われる事、そしてそれを行うのが最愛の人だという事。
あらゆる思考が錯綜する中、操は今までに無い勢いで激しく抵抗し、泣き叫んだ。
「いやぁっ! やめてぇっ!! やだ、やだぁ!! いやあぁっ!! お願いっ、蒼紫様ぁぁっ!!!!」
最初、蒼紫は暴れる操を持て余す様に眺めていたが、やがて喜びに満ちた恍惚の笑みがその顔に張り付いた。
まるで、それぐらい抵抗してくれた方が楽しみがいがあると言わんばかりに。
そして蒼紫はゆっくりと操の頭に右手を伸ばし、髪の毛を鷲掴みにした。
徐々に操の頭が引き上げられていく。
首が軋みこれ以上は上がらない所まで来ると、なおも泣き叫ぶ操の顔面を、渾身の力を込めて地面に叩き付けた。
「!!!!」
ぐしゃという嫌な音と共に、あれだけ暴れていた操は悲鳴ひとつあげず動かなくなった。
蒼紫は、掌で叩き潰した蚊を確かめるように、叩き付けられた操の顔を自分の方に向け観察した。
操の可愛らしい顔には大小無数の傷が刻まれ、閉じた右眼からは涙の様に血が流れ落ちている。
鼻と口からもおびただしい鮮血が溢れていた。
「……ぅ………ぁ………」
途切れがちな呻き声と自分を見つめる弱々しい瞳から、蒼紫は操が辛うじて意識を保っている事を知り、笑い声をあげた。
「ハハハハ!ソウダ、ソレクライシブトイ方ガ楽シメル!」
操は呻き声を止め、薄く開いた左眼で蒼紫を見つめている。
「ドウダ、最愛ノ男ニ痛ツケラレル気分ハ?」
だが操の左眼は弱々しくも、ひとつの確信を持って蒼紫の瞳の奥を射る様に見つめていた。
「…ナンダソノ眼ハ?」
蒼紫は笑うのを止め、操を仰向けに押し倒した。
地面に身体を横たえながらも、操はかすれる声で蒼紫の瞳の奥の狂気の炎に向かって問い掛けた。
「…なん…で…あんた…が……ここ…に………あんたは…緋…村に…」
「フッ」
蒼紫ではない『なにか』が冷酷な笑みを浮かべ、話し始めた。
「地獄ノ閻魔相手ノ国盗リナンザ簡単ダッタゼ。ダカラ次ハ現世ニ生キルオ前ラニ本当ノ地獄ヲ味アワセテヤロウ思ッテナァ…」
操は『なにか』を出せる限りの声で罵った。
「…こ…の…化け物…!」
『なにか』は操の言葉には耳を貸さず、続けた。
「抜刀斎ヤコノ男ノ様ナ手合イハ、自分自身ヨリモ、大切ナ人間トヤラヲ痛メツケラレル方ガ効クッテノハ知ッテルゼ! コノ男ガ目覚メタ時、自分ガ傷ツケタオ前ノ姿ヲ見タラドウ思ウカナァ!! ハーッハッハッハッ!!!!」
「…死ん…でも、狂ってる…の…ね…」
『なにか』は操の上に覆い被さり、両脚を押し広げた。
「マダ仕上ゲハ済ンジャイネェ」
先程よりも更に大きく怒張した陽根が、再び操の菊門に押し付けられる。
操は『なにか』を精一杯睨みつけ、吐き捨てる様に言った。
「…好き…に…しなさい……よ…!」
「イイ覚悟ダ」
その言葉が終わるか終わらないかの内に、操の菊門の中に陽根が物凄い勢いをつけて突き進んできた。
まるで布を引き裂く様な音が菊門のあたりから響いたと同時に、操はあまりの激痛に絶叫した。
「ひぎぃああああぁぁぁぁぁ!!!!」
全く濡れていない固く閉じた菊門は、巨大な陽根が力づくで侵入することによって、内に外に幾重もの恐ろしい裂傷を生んだ。
その侵入の衝撃に操は全身の筋肉を硬直させ、弓なりに仰反り、びくんびくんと大きく震えだした。
操と『なにか』の繋ぎ目からは、後から後から鮮血が吹き出ている。
『なにか』は何の遠慮も無しに、狭い操の中で激しい律動を繰り返す。
「…ひぐうぅぅ…うぐぅ…ぎいぃ…」
操は気が狂いそうな激痛の中、断続的にかすれた悲鳴を絞り出していた。
やがて流れる鮮血で滑りやすくなった為か、律動が目に見えて速く強くなっていき、『なにか』は操の顔のすぐ上で野獣の唸り声をあげている。
そんな地獄の責め苦が続く中、操は固く眼を閉じて必死に悲鳴を抑え、自分の愛しい人の名を呼び続けた。
「…あ…おし…さ…ま、…蒼紫…さ…ま…、蒼紫…様…、蒼紫様…」
『なにか』では無い、蒼紫の背中に腕を回して抱き締めたいと思ったが、両腕が折れていて動かないのでもどかしさが増してしまった。
しかし、操は諦めずに身体中の力を振り絞って頭を持ち上げると、蒼紫の頬に自分の頬をぴたとくっつけた。
そうすることによって例え痛みが増そうとも、蒼紫と頬を擦り合わせている方が痛みを忘れられると、操は信じていた。
「…あ、蒼紫様…蒼紫様……大好き…です……」
未来永劫に続きそうな苦痛とほんの少しの幸せを感じつつ、操は薄れゆく意識の中で、野獣の咆哮を聞いた様な気がした…
「…み、操? 操!」
たった今、抱き締めていた筈の操が、自分の身体の下で無惨な姿となっている。
蒼紫は困惑と動揺のあまり、自分の置かれている状況が全く把握できなかった。
「なっ…?」
下に眼をやると、操の中に自分の陽根が捻じ込まれているのに気付き愕然とした。
急いで引き抜いたもののその拍子に、不気味な音と共に操の体内から混じり合った血と白濁液が流れ出す。
「…そんな…俺がやったのか…?」
蒼紫は静かに操を抱きかかえ首筋に指を当てると、かすかに脈が触れた。
「生きてる…」
とはいえ、危険な状態なのは明らかだった。
傷だらけで血にまみれているのにも関わらず、顔面蒼白なのが一目瞭然である。
「操…」
すると操はうっすらと左眼を開けた。
「……蒼紫…様…?」
「…操、すまない…俺は…何故、こんなことを…」
操は暫く蒼紫の顔を見つめていたが、やがて弱々しくも優しい笑顔を浮かべた。
「…良かっ…た……蒼紫…様……だ…」
自分をここまで傷つけた者に優しい笑顔を浮かべる操に、蒼紫は唇を噛み涙を滲ませるしかなかった。
「…俺は…どうすれば…」
身体中の苦痛に打ち震えながらも、操は蒼紫の胸に擦り寄り微笑んだ。
「…じゃあ……お嫁に…もらっ…て…」
「…操」
「……へへ…」
微笑む操を見つめ続けていた蒼紫は、彼女の髪を撫で額にそっと口づけた。
そして自分の上着で操を包むと、抱きかかえたままゆっくりと立ち上がった。
「…早く帰ろう。手当てをしなければな。」
「…はい………………!!…ぅうっ…!」
操は突然苦痛に顔を歪めると、間も無く気を失った。
「操っ!」
急激に操の身体が熱くなっていくのを感じる。
「熱が……。少しの間我慢してくれ」
蒼紫は操をしっかりと抱きかかえたまま、林道を全力で走り始めた。
蒼紫の腕の中で笑みを浮かべる操の左眼には、狂気の炎が宿りつつあった…
終