その日、神谷道場の留守を預かる、高荷恵のもとに不意の客があった。  
 
長身に長い外套をまとい、刀身が通常の倍はあろうかという長刀を抱えている。  
外套から覗く黒の装束が、男の印象をさらに暗くしている。  
面長の顔で翳る目は氷のように冷たく、感情というものが感じられない。  
 
「抜刀斎は、どこへ消えた」  
 
その男、隠密御庭番衆・四乃森蒼紫は呟いた。  
以前、武田観柳亭で人切り抜刀斎・緋村剣心に敗れたのち姿を晦ましていた。  
 
(この男は剣さんの命を狙っている。合わせる訳にはいかない。。)  
 
敗れた蒼紫は失った「最強」の夢を取り戻そうと、緋村剣心を追っている。  
緋村剣心を斃せば幕末最強。それが蒼紫の正義である。  
剣心を慕う高荷恵は、不意の客、四乃森蒼紫に剣心の居所を教えまいとする。  
四乃森蒼紫が凝視する先で、高荷恵が答えた。  
 
「・・・さぁ、知らないわ。」  
 
女性としては長身の部類であろう。肩まで垂れた艶やかな黒髪。  
女医らしく清潔な白を基調とした和服の上に桜色の小花があしらわれ、  
紫苑色の道行を羽織っている。  
招かざる客を見つめる瞳は凛として厳しくもあるが、奥には優しさが秘められている。  
紅をさした、その口元からそう答えた。  
 
「・・・」  
蒼紫の表情は変わらない。  
いや、表情を司る感情を置き忘れているといったほうが正しいのかもしれない。  
蒼紫の望んだ、最強という華を、観柳亭に置き忘れたように。  
沈黙。  
大雪の止んだ真夜中のように、しん、とした冷たさを恵は感じていた。  
 
ゆっくりと、蒼紫が恵に近づく。  
恵の嘘を見透かしたのかは、その表情からは読み取れない。  
 
右手をすと、恵の髪に触れた。  
蒼紫の指から伝わってくる体温が、それが生霊ではなくなまの人間であることを感じさせた。  
蒼紫は恵を見つめ、呟いた。  
 
「答えないなら・・・・殺す」  
 
蒼紫の棲む氷の世界に引きずり込まれたかのように、背筋が寒くなった。  
氷で固められたような殺気が、恵を襲う。  
いきなり氷の刃で心臓を一突きされたようだ。恵の中が寒くなった。  
 
と、蒼紫の右手が恵の奥襟を掴む。  
蒼紫は恵の上半身を力任せに引き落とす。恵は横向きに崩れ落ちた。  
「痛っ!」  
蒼紫は恵の右手をつかみ、覆いかぶさるようにして体を預け、恵を仰向けにした。  
道行を羽織っているため裾は乱れなかったが、恵の白い脛がのぞく。  
 
蒼紫が恵に馬乗りになり、恵の頭を抱え込む。蒼紫が恵の口を吸った。  
「んっ」  
恵の口内に異物が入り込む。それは生暖かく、蛇が獲物に絡みつくようにうねる。  
蛇は逃れようとする恵の舌を見つけると、締め付け、押さえつけ、蹂躙する。  
「ん、ん・・」  
蛇は恵の舌に自らの唾液を擦り付ける。  
恵は体をくねらせ、両手に力を込め蒼紫の顔を振りほどく。  
 
「なにすんのよ、このネクラ変態!」  
 
ようやく自由になった唇で精いっぱいの雑言を浴びせる。  
手の甲で、汚されたその唇を拭う。  
 
「・・・抜刀斎は、どこだ。」  
「知らないわよ!」  
 
「・・そうか」  
 
蒼紫は、恵を組み敷いたまま体を起こす。黒装束の股間をまさぐりはじめた。  
「えっ?」  
眼前に黒い影が現れた。蛇のごとく口を開き舌なめずりをして、恵を凝視している。  
それは淫猥で醜悪。  
そして、むせ返るような異臭を放っている。しかしどこか官能的でもある。  
 
蒼紫が左手でそれをしごきはじめると、見る見る硬く弧張していく。  
怒張したそれが恵から視界を遮った。  
「いやぁっ」  
恵は思わず目をそむけた。  
 
蒼紫は恵の頭髪を掴み、引っ張りあげるようにして恵の顔を起こす。  
「痛い! 馬鹿! やめてよ!」  
 
蒼紫は恵の襟を掴む。恵の顔を引き起こし、それをあてがう。  
恵の唇にやわらかく、生暖かいものがあたった。  
「いや!」  
頬に、顎に、唇に、それが触れるたびに恵の矜持が、女としての本能がそれを拒絶する。  
 
襟首を力任せに引き、恵をそれに押し付ける。  
恵の唇に、固張した蒼紫のそれが横たわるようにして付着する。  
亀頭が唇にあたる不快さ、鼻に付く異臭が恵の唇をこじ開けた。  
 
恵の口内に再び蛇が入り込んできた。  
が、先ほどのそれとは違い、ずっと固く、ずっと攻撃的であり、ずっと官能的で、ずっと不快である。  
「んんっ」  
蒼紫は表情を変えない。恵の頭部を引きつけ、自分の物を押さえける。  
恵は蒼紫の手首をつかみ、蒼紫の腰を押し、振り払おうとする。  
が、巧みに抵抗はかわされる。押せば引かれ、引けば押される。流水の動きである。  
「ん」「ん」「ん」  
嗚咽がもれる。恵の紅く引き締まった唇を、蒼紫が前後に左右に犯し続ける。  
上あごに亀頭が当たる。舌上を這う。口いっぱいに屈辱があふれる。  
 
悲しい奉仕は蒼紫の操る蛇が終わりを告げる。  
どくっどくっと、強く鼓動を始めた。鼓動が穏やかになったと思うと  
白濁した粘液を放出した。  
「むっ」  
恵の口内がその粘液で満ちる。恵の口許から伝い落ちる。  
蛇は陵辱の標しを残すと、恵の口内から去っていった。  
「かっ、かはっ、」  
むせこむ恵。  
 
「――― 抜刀斎は、、」  
「・・知らないって云ってるでしょ! 何なの!」  
恵の涙であふれた瞳が蒼紫を睨む。無残に陵辱された唇が悲しげに叫ぶ。  
 
「・・・」  
蒼紫は恵の肢を見ると、足首を掴んだ。  
横に周り、道行を脚に這わせるようにしてめくりあげる。  
それにつれて着物の裾が腰の辺りまでゆっくりとあがっていく。  
「やめて!」  
恵は着物の裾を押さえる。  
蒼紫はその手を払いながら、着物をまくる。  
着物の裾が恵の手から離れるとともに、すらりとした雪のように白く、官能的な肢が現れる。  
華奢でもなく、程よく肉感的である。  
 
恵はうつぶせになり、這うようにして蒼紫から逃れようとする。  
蒼紫は掴んでいる右足をねじり、恵の下半身を上向きにする。  
既に8分まで露になっている恵の肢の間に入り込み、がっしりと恵の腿を脇で抱え込む。  
「嫌っ、もう!やめて!」  
 
乱れくつろげられた和服の裾の間から、恵の下腹部が覗く。  
豊かな茂みがそこにあった。  
恵は何とか隠そうと、手で隠し、体をよじらせ、脚を閉じようとし、蒼紫の手をのけようと抗う。  
それは悲しい努力だった。  
蒼紫は茂みに隠された恵の秘所を探し当てると、  
一度液を吐き出してもなお硬直し続けている肉棒をあてがった。  
 
恵の下の扉は閉ざされ拒否しているが、蒼紫は強引にねじいれる。  
「っ、痛い! 嫌! いっ」  
恵の声にならない叫びをよそに、蒼紫は扉をこじ開ける。  
 
「あ、んっ!」  
蒼紫が入ってきた。恵は背中で弧を描く。  
恵の唾液と蒼紫の精液とが潤滑油になっているせいか、一度門の中に入ってしまうと、  
その運動は滑らかに行われた。  
再び流水のように、恵の蜜壺をかき回す。  
 
苦悶の表情を浮かべる恵の額から脂汗がしたたる。蒼紫の表情は変わらない。  
恵の肉壁をたたき、回るように。時には速く。時には遅く。  
蒼紫の肉棒が恵の蜜の海を自在に泳ぎ、犯す。  
 
(どうして、こんな。。)  
恵の声が断続的になってきた。  
(剣さん。。)  
目に映る映像は色を無くし、意識は混濁としてきた。罵声の言葉も思いつかない。  
(剣さん。。)  
ただ恋いうるひとを想い、ただ時の過ぎるのを待った。  
 
二人のいる空間からは恵の嗚咽と吐息、乱れた恵の着物の衣擦れ、  
それに蝸牛が雨に濡れた紫陽花を這うような、ねっとりとした擬音のみがある。  
 
「抜刀斎は。」  
永遠にも感じられる陵辱のさなかに蒼紫が呟いた。  
 
「・・・京都。」  
混濁した意識のなかで恵は小さくこぼした。  
すると蒼紫の口角が少し吊り上る。  
恵は霧の中のような濛々とした視界で、それを見た。笑みともとれた。  
(・・・剣さん)  
 
「もう遅い」  
蜜壺を泳ぐ自分の肉棒を抑えきれないのだろうか。  
蒼紫は流水を激流に変え、恵に止めをさした。  
蒼紫の肉棒がうなりをあげると、熱い粘液が恵の中に注がれる。  
「うっ」  
恵は軽く反り返り、軽くうめき声をあげた。  
 
 
蒼紫は粘液の最後の一滴まで搾るように恵の胎内に注ぐと、  
肉棒を引き抜き、立ち上がる。  
 
蒼紫は、足元の、下半身のみが裸の、淫らに横たえる恵を一瞥もせずに  
神谷道場から消えた。  
おそらくそのまま京都に向かったのだろう。  
 
 
─── 四乃森蒼紫の正義  
 

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