「で、どーしてこんなことになったんだ?」
弥彦は呆れて、怒る気にもなれなかった。
赤べこは、ちょうど夕食時でにぎわっており、仕事帰りの男たちが一杯やっていた。
「おい、燕」
燕は申し訳なさそうにうつむき、おろおろするばかりで何も答えない。
弥彦は仕方なく妙に視線を移した。
妙も困っているようで、腕を組みながら立ち尽くしていた。
「たえさぁーん、もぉいっぱーい!」
その時、たちの悪い酔っ払いが…顔を真っ赤にした薫が叫んだ。
「薫ちゃん、もう止めたほうが…」
「いいんですよー!今日は、飲めっ!」
完全に酔っ払っている薫はわけのわからないことを叫び、いつのまにか男たちと相席をして飲み会をしていた。
「一体、いつの間にあんなに飲んだんだよ…ってゆーかなんで飲ませたんだ」
弥彦は何度めかの溜息をついた。
燕は申し訳なさそうに
「ごめんなさい、私もよく分からなくて…気がついたら、あそこのおじさんたちと一緒にお酒を飲んでいたの」
今日は薫と弥彦は赤べこに夕食に来ていた。普通に最初は食事をしていたのだが、弥彦が燕と話しこんで薫を一人にしてしまい、ふと気付いたらいつのまにか薫は泥酔していたのだった。
「…剣心がいないからムシャクシャしてんのかもな」
ぽそっと弥彦は呟いた。
「けんしん〜?ですって?」
薫は弥彦の呟きを耳ざとく聞き付け、詰め寄った。
「けんしんなんてどぉでもいーのよ!」
「分かった分かった」
酔っ払いに絡まれてはかなわないので、弥彦は適当に受け流した。「剣心さんどこかに行かれたんですか?」
燕の問いに、ぱたぱた酒臭い息を手で払いながら、弥彦は面倒臭そうに答えた。
「恵に買い物に突き合わされてどっか行った」
「あ、なるほど…」
「たえさーん、もぉーいぱーい!」
薫の飲み会はまだまだ終わることはなさそうであった。
「ぎもぢわるい…」
左之助に背負われながら、薫は死にそうになっていた。
「ったく、飲めねーくせに飲むんじゃねぇよ!」
左之助は意外と重い薫に辟易しながら毒づいた。
「ホントに左之助が偶然来なきゃ赤べこに泊まることになってたぜ」
弥彦は人ごとに側でその様を眺め、大きなあくびをした。
「それもこれも剣心のせいだよなぁ〜」
三人は神谷道場に向かってゆっくりと歩いて行った。
道場に着くと、門の前に月の光を受けて、人影が佇んでいた。
「剣心?」
「おろー、やっと帰って来たでござるか」
暢気に剣心は言ったが、やがて三人が近づくにつれて薫の様子に気がついた。
「薫殿?どうしたでござるか?」
「後で聞けよ…説明するのもメンドクセ」
弥彦はまた溜息をついて言った。
左之助も薫を下ろし、重さから開放されてほっとしたように溜息をつく。
「じゃあー後は剣心に任せていいよな?おりゃー帰るぜ」
「おぅ」
「あっ、かたじけない左之」
左之助は肩を自分で揉みながら、かったるそうに来た道を戻っていった。
「さて、拙者達も中に入るか」
「そーだな。もう俺は疲れたぞ」
いつの間にかすやすやと寝ている薫を剣心は抱き上げた。
二人は道場に入り、弥彦は自分の部屋に、剣心は薫を部屋に連れていくため別れた。
薫を抱いているので、仕方なく障子を足で開けた。薫に見られていたら行儀が悪いと怒られるところだろう。
中は当たり前だが真っ暗だった。
しかし今夜はよく晴れて、満月が煌々と輝いていた。
その月の光が部屋の中に流れ込んで来て、畳を青く照らした。
剣心が取りあえず薫を下ろすと、肌寒い夜風が吹き剣心の髪をふわりと揺らした。
「風邪ひくといけないでござるな…」
剣心は布団を敷き、薫を寝かせようとまた抱き上げた。
が、そこでひとつの問題に気がついた。
「…着替えさせるべきなんでござろうか?」
しばらく考えていたが、考えているうちに関係ない生々しい想像に展開してしまい、顔がみるみる赤くなる。
と、そのとき薫が目を覚ました。
「ん…?」
まだ酔いが残っているらしく、ぼんやりとしている。
「か、薫殿起きてしまったでござるか」
「けん…しん?、頭いたっ…」
「頭痛でござるか?風邪ひいたか…」
そこで薫に顔を近づけ、剣心は顔をしかめた。
(酒くさい…)
薫殿酒を飲んだでござるか?と聞く前に薫は手足をじたばたさせた。
「はーなーしーて!」
「あぶ、あぶないっ」
慌てて薫を布団の上に下ろすと、じたばたしたため着物から脚が膝上まであらわになり、剣心はどきっとした。
「薫殿、大丈夫でござるか?」
「うるさいわねぇ〜」
まだ酔っ払いモードなのか、たち悪くからんでくる。
ふらふらしながら薫は上半身を起こした。
が、膝を曲げた拍子に白い太腿までが覗き、剣心は思わずごくり、と生唾を飲み込んだ。
「薫殿、ちょっと…その」
「なによぉ〜」
薫は酔いが抜けないのか、頬はまだピンク色で、目はトロンとしている。
剣心はさっきから本当に少しだが、確実に衝動が高まってくるのを感じていた。
だが、まだ理性の方が優勢なのでさっさと寝かせて部屋から出ようと立ち上がった。
「それだけ元気なら一人で着替えて寝られるでござるな、じゃ拙者はこれで」
剣心が薫に背を向けると、
「まってよ!」
薫がその背中にぎゅっと抱き着いた。
ふわりとした柔らかい感触に剣心の心臓を打つスピードが倍速になった。
「薫殿?」
「…」
薫は剣心から離れ、彼の先に出ると、障子に背を向けてぱたん、と閉めた。
障子を通して差し込む月の光が逆光になって薫に影を落とす。
薫は髪を結んでいたリボンをほどいた。
「か、薫殿、酔ってるのでござるか?」
剣心の空気を読まない発言に、薫は唇を噛み締めた。
「酔ってて悪い!?」
「えっ、あんまり良くない…」
薫は剣心に詰め寄り、ほっぺたをつねった。
「剣心こそこんな遅くまでどこ行ってたのよ!」
「拙者はもう三刻以上前に帰っていたのでござるが…」
「うるさいわね!」
しかし怒鳴った自分の声が響いたのか、薫はふらふらとよろめいた。
「ほらほら、もう寝るでござるよ」
剣心は大人しくなった薫を布団まで連れて行き、横にした。
「薫殿、自分で着替えられるでござるか?」
しかし、薫は返事をしない。
耳をすますと、規則正しい小さな寝息が聞こえた。
寝てしまったようだ。
「やれやれ」
毛布をかけてやろうとすると、薫は寝返りをうった。
暴れたため乱れた着物から、すらりとした脚が太腿から今度はモロにあらわになり、剣心の心臓は再び跳ね上がった。
今度は脚はおろか、胸元さえはだけ、小さな谷間が見えている。
剣心は慌てて着物を整えようとしたが、誤って腿に触れてしまった。
適度に引き締まったその感触に、剣心は火傷でもしたようにぱっと手を離した。
障子から差し込む青白い光に照らされた薫を見つめ、剣心は段々とさっき危惧していた衝動が大きくなるのを感じた。
いや、そんなことはいけないと振り払ってはみるが、視線はつい、呼吸の度に上下する胸から離すことができない。
さっき薫に誘惑されたことをさらに思いだし、剣心の中のもう一人の剣心−いわゆる本能−が優勢になりはじめた。
そっと、また薫の脚に手を伸ばす。
「ん…」
その時また薫が寝返りを打ち、剣心は手をまた慌てて引っ込めた。
仰向けになった薫は片膝をゆっくり立て、それはまるで剣心を誘うかのようなポーズだった。
剣心は薫が静かになると、そっと、だがさっきより大胆に彼女の白い脚を足元から膝まで愛撫した。
その手を段々上まで滑らせ、着物の上から腰、胸元へと移動させた。
体を薫の上にそっと滑りこませ、片手を顎に到達させるともう片方の手で頬を撫でた。
透明な肌でほんのり桜色の頬に、剣心は思わず口づけた。
(薫殿…)
「剣心…?」
その時薫がうっすら目を開けた。
剣心はしまった、とそこで固まってしまった。
だが、薫は夢でも見ているかのように優しく剣心の頭を撫でた。
「いいよ…」
「え…?」
薫は両膝をたてて剣心の体を挟み、両腕を背中に回した。
剣心ははやる本能を必死で抑えた。
「薫殿、拙者は…」
「お願い…」
しかし薫に見つめられ、剣心の中で劣勢ながらも奮闘していた理性は、あっさりと白旗を上げた。
「…拙者も男だから、途中では止められないでござるよ」
薫はこくりと頷いた。「泣いても止めないでござるよ」
また、頷く。
剣心はそれを見て、上の着物を脱ぎ始めた。
上半身裸になり、剣心は薫の頬に、唇に優しく口づけした。
何度も何度も口づけを重ね、その唇は顎、首筋、胸元へと下っていく。
薫の着物の帯を緩め、乱れた襦袢から肩を、そして胸をあらわにさせた。
まだ成熟しきっていない果実のような白い胸が、青白い光に照らされた。
薫は頷いたものの、さすがに恥ずかしさに頬を染めて剣心から目を背ける。
しかし剣心は薫の顔を自分の方に向けさせた。
「薫殿、ちゃんと拙者を見て」
「でも、恥ずかしくて…」
「これくらいで恥ずかしがってたらとてもじゃないけど最後までいけないでござるよ…」「え…あ、あっ」
ピチャ、ピチャッ
剣心が薫のピンク色をした乳首をやさしく、だがいやらしく嘗めた。
片方の乳首を吸い、もう片方を指でこねまわす。
「あ、あ、あん」
薫は上擦った声をあげた。
剣心は柔らかなその胸を、円を描くように撫で、揉みしだいた。
薫は緊張で体に入れていた力が崩れるように抜けるのを感じた。
「あ、あ…」
「敏感でござるな…もう硬くなってる」
いつのまにか硬く突起した薫の乳首を摘み、剣心は笑った。
そして剣心の手が薫の脚にのび、内側を足先から腿に向かってツーッと撫でていく。
しかし付け根に近づくにつれて、再び脚にひどく力が入っていくのが分かった。
「薫殿、力を抜いて」
「あ、でも…」
「ほら」
薫はそこで突然剣心にぐいっ、と大きく脚を広げられ、びっくりして脚をくっつけようとした。
「薫殿」
「待って、待って…」
秘部がさらされるようなあまりにも無防備な感覚に、薫は驚いたのだ。
「ダメでござるよ。
大丈夫、すぐに良くなるから、拙者を信じて」
剣心は薫を許さず、また脚を広げさせた。体の柔らかい薫の脚は力を抜けば難無く開いた。
薫は緊張で心臓が高鳴り震えていた…が、決して悪い気持ちではなかった。
次第に、恥じらいの中にある快感が薫を支配し始めていた。
「どれどれ」
剣心は着物の中に手を入れ、手探りで薫の秘唇をそっとなぞった。
ヌルッと体液が剣心の手に粘り着く。
「はぁぁん…!」
触れられただけで、電流が走るような快感に襲われ、薫は喘いだ。
「おろ、随分濡れてるでござるなぁ」
剣心は指についた愛液を薫に見せ付けるように嘗めて言った。
そして着物をめくり、明るい月の光の下で薫の蕾をじっくり見つめると、薫はぎゅっと目を閉じた。
「いやぁ、剣心、あんまり見ないでェ」
剣心の視線が薫の秘部に突き刺さり、その刺激で愛液がとめどなく溢れる。
剣心はその愛液をそっと嘗めとった。
クチュクチュと卑猥な音をたてて舌が動く度、薫は声にならない悲鳴をあげながらビクン、ビクンと体を震わせる。
そして剣心は、小さくも突起した豆の皮を舌で剥き、尖らせた舌先でつついた。
「はあぁあぁぁぁん!」
薫は思わず叫び、身をくねらせた。
はぁはぁと呼吸が乱れ、振り乱した髪は汗でべっとりと額や首筋に張り付いていた。