エノラは夜明けの船の廊下を怒りながら歩いていた。
なによ、おにーちゃんったらでれでれして!
原因は先の流氷墓場での一件である。
私の方が、おにーちゃんを、好きなのよ!
ふと立ち止まる。
「……」
私、おにーちゃんに、好きだって、ちゃんと言った事ない。
走り出す。
おにーちゃんなんて言っていつも誤魔化してたけど…私は、グラムが好き!
扉が開くのを待つ間ももどかしく、グラムの部屋に駆け込む。
「グラム!」
ベッドに寝そべって本を読んでいたグラムが起き上がる。
「なんだよエノラ、妹ごっこはもうお終いなのか?俺、結構気に入ってたんだけど…」
「そんな事より、大事な話があるの!聞いて!!」
「どうしたんだ?エノラ。そんなに怒らなくてもちゃんと聞いてやるから」
手を引いてエノラをベッドの端に座らせるグラム。
ポンポン、と頭を撫でられる感触が気持ちいい。
こんな風にされると妹のままでもいいかなって思ってしまう。
きっと優しい目をして私の事を見ていてくれてるんだろうと思うと顔が上げられない。
そっと、グラムの胸に凭れかかる。
「なんだよ、寂しいのか?」
そう、かも…私は、グラムが私から離れていくのが寂しい。
「ねぇ、私…」
意を決して顔を上げる。
そこにはやっぱり優しく微笑む“おにーちゃん”が居て。
急に泣きたくなってしまった。
他に、好きな人が居ても、一番近くに居られればいいと思ってた。
だから「おにーちゃん」なんて呼んで、自分を誤魔化して。
恥ずかしい。
自分が好きな人に好きって言えないような根性なしだと思わなかった。
でも、言わなくちゃ。
言わなくちゃ、私はずっとグラムの「妹」のままなんだ。
そんなの、嫌!
「私、グラムが好きなの」
やっと出した声は、小さくて、震えていて、みっともなかった。
私の頭を撫でてくれていた手が止まった。
「自分で“おにーちゃん”とか言い出しといてアレなんだけど…」
きっと困った顔をしてる。
「もう、妹じゃ嫌なの!」
「私、グラムが好き」
今度はまっすぐにグラムの目を見て言った。
真剣な瞳で見つめ返してくるグラム。
でも次の瞬間にはいつもの笑顔に戻って、
「俺もエノラは好きだよ」
…え?ホントに?
「でも俺の中ではもうエノラは妹なんだ」
天国から地獄。
「そうじゃないでしょ!…他に、好きな人が居るんでしょ」
「え?あ、いや、その…参ったな」
そうやって照れる所がむかつくのよ!
決めたわ。
「グラム・リバー!」
ベッドの上に立ちあがって、徐に服を脱ぎ始めるエノラ。
「一度でいいわ」
ブラウスを脱ぎ、スカートを取り去り、下着に手を掛ける。
「私を女として見て欲しいの」
「ちょ…待てエノラ!そんな事、おにーちゃんとしては…」
「一番近くに居られるなら妹でもいいって思ってた。そうやって自分の気持ちを誤魔化してたの」
ブラを外す。あまり大きくない胸だけど、結構形はいいと…思う。
「でも女として見て欲しい、女として愛されたい」
気持ちの押し付けだってわかってる。
一晩だけの情けに縋る女なんて馬鹿だと思ってたけど。
それでもいいって思っちゃったんだから仕方ないじゃない!
「抱いて下さい」
「エノラ…」
グラムが困ってる。
でも、どうしたらいいのかわかんないッ
終