モニターを見据え、グラスを傾けながら問い掛ける。  
「先程の話を覚えているか?」  
「え?あの、私にRBをくれる話かっ?」  
なんの疑いもなく嬉しそうにしているベス。  
世間知らずのお嬢様、か…それだけではなさそうだが。  
「乗りこなせるならそれもいいだろう。だが、別の話だ」  
突然立ちあがったキュベルネスに妙な威圧感を感じて思わず下がるベス。  
「『借りは返す』そう、言わなかったか?お嬢さん」  
ベスが下がった分だけ距離を詰める。  
「言った。だが、今の私には何もない」  
口惜しそうに顔を歪める。いい表情だ。  
こういう女は、泣かせてみたい。  
「あるじゃないか、その、立派な体が!!」  
「!!」  
 
自分の体を抱きしめるベス。  
そんな風にしては余計扇情的に見えるぞ。  
「さて、どうしてもらおうかな」  
くっくっく。笑いが止まらないとはこの事か。  
あんなに根拠のない自信に満ち溢れていた女がこうも変わるとは。  
さて、どういう事を望まれているか、解らない訳ではなさそうだが…?  
「わっ、私をどうするつもりだ」  
声が上擦った。  
微かに震えている。  
いいねぇ。随分とそそられる。  
「解らないか?借りを返してもらうんだ」  
言って距離を詰める。  
壁に追い詰められ、もう下がれずに俯くベス。  
「…知っているか?男が女に服を贈る時は“それを脱がせるのは自分だ”と思っているものだ」  
ベスの髪に触れる。  
「ふむ、長いのも良かったが…まぁ、これも悪くない」  
そのまま髪に口付ける。  
「なっ…!」  
驚いたベスが抗議の声をあげようとする。  
 
それも計算の内だ。  
こちらを向いたベスの口を口で塞ぐ。  
「んんっ…」  
いやいやをするように身を捩って逃れようとするベス。  
ふっ。誰がこんな美味しい獲物を逃すものか。  
舌を侵入させる。  
歯列をなぞり、口が開いた所で舌に絡ませる。  
もちろん舌を噛まれないように右手で顎を固定する。  
空いた左手で…何をしよう?  
この、手に余る胸の感触を楽しむのもいいし、  
むっちりとした尻を撫でるのも楽しい。  
ベスは既に抵抗する力を失ってくたりとこちらに凭れかかり、  
荒い息を吐いている。  
 
頃合か。  
 
「おい!現在の状況はどうなってる?」  
ロボット副長に声を掛ける。  
「イジョウアリマセン、キュベルネスドノ」  
「よし、では現状を維持。何かあればすぐに知らせろ…俺はこれからお楽しみだ」  
「カシコマリマシタ、キュベルネスドノ」  
 
ベスの体を肩に担ぐ。  
 
「どこへ、行く気だ…?」  
ほう、まだ気丈に振舞うか。  
「ここでは、体が痛いだろう。場所を変える」  
ふと悪戯心が起きる。  
「なんならここで、立ったままでも、甲板でも構わんが?  
 ローレン家のお嬢様はどれがお好みかな?」  
はっはっは。  
「キュベルネス!!」  
ドンドンと拳で背中を殴られる。  
そんなもの、痛くもない。  
 
これからお前に味わってもらう痛みに比べればな、お嬢さん。  
 
「キュベルネス、放せ!」  
相変わらず人の肩の上でじたばたとよく動く事だ。  
シュン  
キュベルネスの私室のドアを開ける。  
あまり家具のない部屋が沈黙を持って主を迎える。  
ドアをロックし、更に続き間のドアを開ける。  
部屋の中には大きめのベッドと、サイドボード。  
寝室だ。  
ただ、寝る為だけの部屋。  
そう思った時、急にベスの動きが止まった。  
やっと、今自分がどのような状況に置かれているか解ったのだ。  
寝室のドアが、ロックされる。  
「さて、お嬢さん。望み通り放してやろう」  
言うが早いかベッドの上に投げ出される。  
「私を、どうするつもりだ…」  
上体を起こしながらベスが問う。  
おやおや、最初より元気がないな。  
でも、もう少し、楽しませてくれなくては。  
「答えは自分が一番よく知っているのではないかな?」  
ベッドを軋ませながらベスの隣に座る。  
と、睨みつけられた。  
瞳は潤んでいるものの気丈な娘だ。  
 
だがそこがいい。  
逃げ出されては適わないが抵抗されないのも面白くない。  
まぁ逃げたところでどこに行けるわけでもないが。  
「さて、どうやって楽しませてもらおうか」  
体ごと、向き直れば  
「ま、待て!キュベルネス、話し合おう!」  
ベッドの上で後じさりながらベスが言う。  
往生際が悪いな。  
「今更何を話し合うんだ?」  
左手でベスの右腕を捕らえる。  
「…海賊の戦い方、とか?」  
なんとか腕を外そうともがくベス。  
「ふっ、そんなものは教わるものでは無い、肌で、感じるものだ」  
肌で、と言われた時にベスの肩の辺りがぞわりとした。  
「い、いやっ」  
本能的な恐れを感じてベスが抵抗する。  
随分とかわいい事だ。  
もちろん力をこめるまでもなく、腕は動かない。  
「一人で海賊をやるには色々と、な」  
ハッとしたようにキュベルネスの腕を見て項垂れるベス。  
「痛い…」  
少し強すぎたか。  
手を離すと赤い痕がついている。  
「痕がついてしまったな…」  
痕の上をベスに見せつける様に舐める。  
「ひゃっ」  
嫌なのか、イイのかわからないような声。  
今は必死で噛み殺しているのか。  
あと、1歩。  
 
ベスが顔を上げる。  
顔が赤く、目には涙がたまっている。  
「嫌だ、キュベルネス。止めてくれ。私は、私は……初めてなんだ」  
なるほど。  
慣れてはいないと思ったが…これは思った以上の上物だったようだ。  
「くっくっく。これはお笑い種だ。そういえば男は面倒くさがって行為を止めるとでも?」  
顔を至近に近付ける。  
「…逆だよ」  
ぞっとするような低い声。  
「そういう嗜好の男もいるかも知れんがね。この行為を止める手立てには成り得ないな」  
恥かしさを堪えてした告白も、男を止める事は出来なかった。  
ベスは、望みが断たれたのを知った。  
 
「さて、借りたものは返す。まず服を脱いでもらおうか」  
「そんな…!」  
「出来るだけ淫らにな。観客が一人で申し訳ないが」  
拳を握り締めて屈辱に震えるベス。  
こんな男に気を許したのか、とでも自分を責めていそうだな。  
気を許されたとも思えないが。  
「自分でできないのなら手を貸そうか?」  
手を差し出しながら出来るだけ笑顔で言ってみる。  
「結構だ」  
ジッパーを下げ、ベストを脱ぎ捨てる。  
なかなかいい脱ぎっぷりだが…  
「もう少し艶めかしくならんか」  
溜め息が出る。  
下には体にフィットする形のスーツ。  
ボディラインが丸見えだ。  
「取り敢えずそれでいい」  
なかなか次の行動に出ないベスに焦れて言う。  
服を着たまま、というのもいいだろう。  
「こちらへ」  
手を差し伸べる。  
この手を取るという事は、どういう事だろうな、お嬢さん。  
 
1歩、2歩。  
 
それがどういう事か、ベスには分かっていた。解っているつもりだった。  
しかし自分が実際にこんな所でこんな事になるなんて。  
聞くと見るじゃ全然違うように、それは本当に未知の感覚だった。  
 
ベッドの上で、後ろから抱きしめられる。  
「いやだ!!止めろキュベルネス!」  
そう言って体を強張らせるベス。  
やはり抵抗するか。  
まぁ次第に言葉だけの抵抗になって行く様を見るのも楽しいものだ。  
 
キュベルネスの手が、スーツの上から体中をゆっくりと撫で回し、時々思い出したようにつねる。  
唇は首筋をなぞり、耳朶を優しく噛む。  
それだけでベスの体の強張りが緩み、温度を増していく。  
 
知らない手が、唇が触れる。「次にどこに触れてこられるか」の予測がつかない。  
それだけでこんなにも感じ方が違うのだろうか?  
「…ふぅっ!」  
口を少しでも開けば、自分のものではないような声を上げてしまいそうな気がして、  
ベスは唇を強く噛み締める。  
 
それでも漏れ出る息が、体が熱い。  
 
その熱い息を楽しみながらキュベルネスの手がベスのスーツの袷に伸び、そこから侵入する。  
ブラジャーの中からたっぷりとした胸の感触を楽しみ、尖りかけた頂を軽くつまむ。  
「やっ…!」  
きつく結ばれていた口から声が漏れる。  
開いた口へはキュベルネスの舌が侵入し、口腔を蹂躙する。  
唇の端からは銀糸が垂れ、息とも喘ぎとも知れぬ音が部屋中に広がる。  
「…っは、んんぅ」  
初めてにしては感度がいい。  
それにお嬢さんは私の唇がお気に召したようだ。  
体の強張りが緩んでいる。  
前の時のように無理矢理に口を開けさせなくても舌を噛まれたりは無さそうだ。  
大人しく腹を決めたか…初めての快楽に溺れたか。  
どちらにせよ、相手も乗り気な方が楽しめるだろう。  
そのまま、ベスを押し倒す。  
 
一体どこをどうしたものか気付いた時にはベスのスーツはすっかりキュベルネスの手に納まっていた。  
そのまま床に投げ捨てられる。  
ベッドの上にはほてった体に淡いグリーンの揃いの下着だけのベス。  
少しでも隠そうと腕で体を庇おうとするがどう見ても逆効果だ。  
仰向けに寝ているベスに少々意地悪な選択肢を投げてやる。  
ここで無理矢理に抱かれるか、多少なりとも自分から身を任せるか。  
 
「この船には服の換えはあるが下着は無いだろう。  
 私は邪魔なものはこの剣で切る。  
 …嫌なら自分で脱ぐといい」  
 
右手を振って、剣を出して見せる。  
一瞬で、ベスの体が強張る。  
今までほぐしたのが台無しだ。  
ふと見ると、ベスの下着にはうっすらと染みが出来ている。  
気持ちはどうにせよ、体は案外従順だが、…どうするか。  
剣をしまい、優しく聞こえるように囁く。  
 
「抵抗すればお互い痛いだけだと思うが…?」  
下着の上から胸と尻をそっと揉む。  
 
体が熱い。  
下着越しの感触が直接触られるよりもいやらしい。  
「いや、止めて」  
膝を立て、体を丸めて顔を覆うベス。  
大事な所は守らなくていいのかな?  
ゆっくり、染みの出来ている下着のラインをなぞると、傍目にも解るほど反応があった。  
息をのみ、丸めていた体を一瞬反らす。  
「キュベルネス、や、やめて…」  
上気した頬、潤んだ瞳。  
そんな顔をして「やめて」と言われてやめる男がいたら見てみたいものだ。  
ベスの息が上がり、体が弛緩する。  
下着を取る気はないようなので、そのままそっと胸に当たっている部分を下にずらし、胸を露出させる。  
つん、と上を向いたままのたっぷりした胸。  
すっかり盛り上っている頂を舌でつつきながら、当たるか当たらないかという微妙さで下への愛撫も続行する。  
すると、触れるか触れないかといった感触に我慢しきれなくなったのか、ベスが自分から腰を動かした。  
「は、あっ…ん」  
指がイイ所に当たったのか今度ははっきりと喘ぎを聞かせてくれる。  
 
「随分と、気持ちがいいみたいだな」  
くっくっく、と意地悪そうに笑ってみても、解っているのかいないのか。  
今、ベスは快楽に押し流されようとしていた。  
下着の上からぐっと指を押し入れてみる。  
既にかなりの部分が濡れているようだ。  
ぐちゅ、ぐちゅっと、粘性の音が響き、それに合わせて声が上がる。  
「やァっ…んっ、はぁ…だめ、あん」  
嫌がっているのか誘っているのか。  
既に後者にしか聞こえない。  
そっと下着の脇から指をさし入れて直接掻き回す。  
「やぁん」  
侵入した異物に驚いて膝を閉めようとするがその間に体を割り込ませる。  
1本、2本は入るか。  
邪魔な下着を取り去る。  
そして徐々に、徐々に入り口を広げていく。  
その間に胸や、わき腹への愛撫も忘れない。  
ベスが時々手で庇おうとするが、その時は他の場所に触れればいいだけの事。  
結局、漏れ出る声を抑える為か、口元に落ちついた。  
残念だ、声を聞かせて欲しいのに。  
右手で入り口を愛撫しながら左手でベスの腕を掴み、口付ける。  
震えている。  
この快楽の先に何があるか、知っているのだろう。  
出来るだけ和らげてやりたくて丹念に口内に舌をはわせる。  
すっかり抵抗をやめたベスの腕を放し、自らのズボンに手をかける。  
ズボン越しにも解るほど、はっきりと存在を主張していた物を取り出す。  
とろんとした目で喘ぐベス。  
気づかれないようにそっと入り口にあてがう。  
 
「ん、ふぁ」  
己の限界が近い事もあって、ベスが力を抜いた瞬間に一気に突き入れる。  
「いやぁぁっ!!!」  
ベスが叫ぶ。  
微妙な抵抗があり、奥まで突き入れる。  
初めてという事と、体が強張った事できゅうきゅうと締めつけられる。  
「動くぞ」  
一応断りをいれてからゆっくりと律動を始める。  
 
快楽から一転しての痛み。  
体を強張らせて身を守ろうとするベスの胸を乱暴に捏ねる。  
痛みとは裏腹に嬌声が上がる。  
潤滑油も締めつけも充分。  
そのまま腰を打ちつけ、抽送を繰り返す。  
「あッ…や、いっ」  
痛いのか、イイのか。動きに合わせてベスが声を上げる。  
肌蹴られたブラジャーを着けたままの胸が揺れる。  
そろそろか。  
 
ベスの中に己の精を解き放つ。  
「う、ゃっ」  
声にならない声が上がる。  
自分のものだったか、ベスのものだったか。  
 
悲しいのか、いやなのか、気持ちいいのかベスにはわからなかった。  
ただ、ひどく涙が出た。  
 
 
「終わった…のか?」  
服を整え、出ていこうとするキュベルネスに  
泣き疲れ、蚊の鳴くような声でベスが呟く。  
振向き、それに応えるキュベルネス。  
「おやおや、これで終りとは。お前の借りとは随分と安いものだな」  
1歩、部屋に戻る。  
「それに、私の船に乗った以上、全て私の物だ。違うかな?」  
勝ち誇った笑み。  
 
ベスの夜明けは、まだ当分来そうになかった。  
 
**  
終  

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