「…触ってみろ」  
「!…ええええええっ!」  
あまりに唐突なしぐれの言葉に、兼一は鼻の下を伸ばしながら  
驚いた。  
触ってみろ。そう言ってしぐれが指すのは、自らの形よく膨ら  
んだ胸だ。  
しぐれの着物を押し上げる肉感的な胸。着物ごしに見ているだ  
けでもあまりに魅惑的なそれを、触っていい、と言われたのだ。  
断る事など頭の隅にも浮かばない。  
だが、それでも兼一は  
「でっでも…しぐれさんは僕の師匠だし…」  
とごねる。後で長老にばれたら大変だ、という考えもあるのか  
らもしれない。  
だが、しぐれはひかなかった。  
「兼一は…美羽と組手をする時、胸が当るとだらしない顔をす  
る」  
慣れていないからだ。  
そう言って、強引に兼一の手を自分の胸に押しつける。  
それにあらがう兼一の力は弱く、手はしぐれの胸に沈みこむ。  
柔らかく暖かなそれの感触は確かな弾力をもって、兼一の手  
を包みこんだ。  
写真からでは伝わらない重み。柔らかな質感。  
微かな息遣いさえ触れた胸から伝わるように思える。  
 
そんな視覚・触覚の情報から、ついつい薄布一枚と鎖帷子を隔  
てた先には…と思ってしまい、兼一は既に前かがみ気味だ。  
鼻血もいつ出てもおかしくない状態だろう。  
すぐにでもトイレに駆け込んで処理をしてしまいたい。  
そう思って  
「しっしっしぐれさんっ」  
自由なもう片方の手で鼻を抑えながら声をかけた。  
「…なんだ?」  
「僕、トイレに行きたいなぁ、とか思ったりするんですけど」  
という、兼一の必死の訴えも、  
「…駄目」  
しぐれの一言で却下される。  
その間にも手にあたる感触が気になって、落ちつかない。  
「何でですか?!」  
「ちょっと触っただけなのに…こんなに反応してる」  
全然慣れてないから、駄目。  
そう言ってじぐれが見るのは、兼一の股間だ。  
ただ胸に手を当てているだけだというのに、もう勃ちあがりは  
じめているそれは、布ごしでも存在が自己主張しているのがは  
っきり分かる。  
「駄目って言われても…」  
兼一はならどうしたらいいんだ、としぐれをみた。  
 
このままでは兼一は辛すぎる。  
だがしぐれは簡単な事だ、と言って兼一の前に膝立ちになり、  
「処理すればいいんだ」  
言いながら兼一のズボンと下着を一緒に下ろしてしまう。  
しぐれの目の前に現れたのは、一般男性に比べれば少し小ぶり  
な兼一の性器だ。  
それは小ぶりながらも雄雄しく立ち上がり、既に先端から先走  
りの露が流れている。  
兼一はしぐれの胸から手が離れてしまった事も忘れて、今の状  
態にひたすら混乱していた。  
「処理って…処理って一体どうする気なんですか?!」  
事前知識だけは豊富なのだから、冷静に考えれば兼一でもしぐ  
れがどうするのかわかっただろう。  
だが今は完全な混乱状態だ。まともな思考等できるはずもない。  
しぐれはそんな、どうしようどうしようと狼狽する兼一を一瞥  
すると、行動でその答えを示した。  
勃ち上がっている兼一の性器に手を添え、優しくしごきだした  
のだ。  
自分以外から与えられる快楽に、兼一は戸惑いながらも必死に  
声を押し殺した。  
気持ちいいのだが今声を堪えなければ、女性の嬌声のような声  
をあげてしまいそうだからだ。  
そうして声を殺そうと必死な兼一に気づいているしぐれだった  
が、手は休む事無く動き続ける。  
 
「…ッ…う…」  
自分で口を抑えているというのに兼一の口からは声がに漏れ始  
めてしまっている。  
今まで自慰か精々オナホールにお世話になっていた兼一には、  
こんな事は刺激的過ぎたのかもしれない。  
そうして兼一我慢が限界に近づいた頃、しぐれはすっとさっき  
までしごいていた兼一の性器から手を放した。  
口では止めてくださいと途切れ途切れに言う兼一ではあるが、  
やはりヤりたい盛りという事もあり、ここまで来たらいれさせ  
ろとは言わないまでも、射精するまで続けて欲しいのが偽らざ  
る本音だ。  
だが、まさか続きを催促する訳にもいかないし、しぐれの前で  
自ら性器をしごく事も根が小心者の兼一には出来ないだろう。  
唯一兼一に出来る事と言えば本当にもうどうしたらいいんだと  
戸惑いながら下半身の熱が収まる事を待つ事くらいだ。  
兼一がそうして我慢をしていると、さやかな衣擦れの音が聞こ  
えた。  
音の元は、まだ兼一の前に膝立ちで座ったままのしぐれだ。  
見ると刺激的な事にしぐれの着物が片方脱げ、その豊かな乳房  
が露出していた。  
どうやら今日は、いつも着物の下に着こんでいる鎖帷子は着て  
いなかったようだ。  
雪のように白い、という形容がぴったりの柔肌に、鮮やかは朱  
鷺色の乳首が映える。  
 
それだけなら芸術的、で終るのだがしぐれの場合は何カップか  
分からない位の乳房の大きさと張り、それに彼女自身の発する  
艶で唾などいくら飲み込んでも足りない扇情的な姿だった。  
そんな事を目の前でされてしまっているのだ。  
兼一の下半身にますます血液が集まってしまうのは仕方がない  
事だろう。  
しぐれは熱と煩悩がこもった兼一の視線を受けたまま、無言で  
もう片方の着物の袖から腕を抜いた。  
腕を落とした反動で、しぐれの豊かな乳房が小さく揺れる。  
兼一はたまらずまたごくりと唾を飲みこんだ。  
「兼一、1歩前へ出ろ」  
しぐれは兼一にそう命令する。  
すでに思考停止状態の兼一は、しぐれに言われるがまま、ふら  
りと1歩前に進み出た。  
元々二人の間にあった距離は大した距離でなかったので、しぐ  
れの文字通り目と鼻の先、という近さの所に、兼一の性器があ  
るという状態になる。  
しぐれはそのままでいろ、と兼一に言うと、自らの片手ではも  
てあます大きさの乳房で兼一の性器を挟みこんだ。  
ふにゅっという効果音でも付きそうな感触が、ダイレクトに伝  
わり、兼一はまた小さくうめき声をあげた。  
(これは…世間一般では…たッ確か…パイズリという…)  
兼一がそんな事を考えている間に、しぐれは自分の乳房を掴ん  
だまま、手を動かし始める。  
 
自分の性器が、師匠であるしぐれの胸でしごかれている。  
シチュエイションだけでも十分に美味しいものな上、しぐれの  
胸の谷間に自分の性器がある、という視覚的な刺激も強い。  
大してしごかれたわけでもないのに、いつ射精してもしょうが  
ない位に追い詰められた兼一は、しぐれを見た。  
今まで必死でイくまいと耐えていた兼一はわからなかったが、  
しぐれは兼一をずっと見ていたらしく、すぐに目線があった。  
いつもとかわらず表情が分かりずらい黒い瞳が、兼一を見上げ  
ている。  
だが、その瞳は心なしかいつもより濡れているようだし、頬も  
少し上気していて、いつもはほのかに漂う位だった牝としての  
色気が何倍にも増して見えた。  
「うッ…ああああッ」  
それが決定打となり、とうとう兼一は白濁をしぐれの顔にぶち  
撒けてしまう事となった。  
 
(続)  
 
 

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