あるとき。  
それはトイレにいったときのこと。  
扉をあけると、すぐにボクは気がついた。  
わずかだけれども、何か怪しげな機械音が聞こえていたんだ。  
たぶん、馬剣星がしかけた隠しカメラ。  
「しーしーでぃー」とかいうやつ、かな。  
 
調べてと、すぐに小さなカメラがみつかった。  
トイレ盗撮は珍しいことじゃない。  
これは馬とボクのゲームのようなもの。  
気にはならない、かな。  
互いのトラップ技量を高めあうためのもので、気にはならない、かな  
だから、カメラはすぐに壊すつもりだった。  
いつものようにね。  
馬には気の毒だけど、これがゲームのルール。  
誰だってこんなところを、撮られたはくないだろ?  
 
そのつもりでカメラに手を伸ばそうとしたとき、気がついた。  
仕掛けたのが、馬じゃないってね。  
よくみると、カメラの隠し方が、ひどく雑だったんだ。  
あの周到な馬の仕事とは、到底思えなかった、かな。  
誰の仕業かは、消去法ですぐに分かったよ。  
馬を別にすれば、盗撮なんてするのは、一人しかいないからね。  
でもいちおう、死角からカメラに近寄り、嗅覚を研ぎますしてみた。  
すると、かすかだったけど、ボクには嗅ぎとれたよ。  
兼一の体臭をね。  
 
…兼一のヤツ、そんなにボクの内緒の部分を見てみたいのかな?  
 
そう思うと、胸がドキドキした。  
もちろん、用をたすところは、見られたくないよ。  
見せられるものじゃないからね。たとえ、兼一にもね。  
でも、アイツが、ボクの女の子の部分を見たがっているだ。  
これには、ときめくものがあったね。  
ひょっとすると、ボクのことを、少しは気にとめているのかもね。  
べつに、決めつけたわけじゃないよ。  
ただそんな風に期待できるだけで、ボクはうれしかったんだ。  
 
そのまま、何も考えずに、喜んでいればよかった。  
けど、ここでボクの悪い癖が出てきた。  
冷静に考えちゃったんだな。  
兼一が、ほんとうにボクの内緒のところを、みたいのかどうかって。  
で、またまた気がついちゃったんだ。  
 
考えてみると、ボクが普段つかうのは、離れのトイレ。  
母屋のトイレを使うことは、ほとんどない。  
カメラなら、離れのトイレに仕掛けるはずだな。  
もし兼一が、ボクを狙っていたのならね。  
でもカメラはこの母屋のトイレに仕掛けてある。  
そう、カメラは、ボクを狙っていたのじゃない。  
だから、これは、美羽を狙ったカメラだ。  
兼一が見たがるのは、美羽の女の子の部分だったみたい。  
ボクのじゃなくてね。  
 
***************  
 
真相を知って、ボクは少しばかり落ち込んだ。  
勝手に期待を膨らませていた自分が、ひどくバカに思えたよ。  
いったいボクは、何を期待していたの、かな?  
兼一が美羽しか見ていないこと。  
これは、ボクもよく分かっていたはずなのに。  
分かっているようで、分かってなかったんだろうね。  
きっと。  
 
落ち込んだあとから、わきあがってくるもの。  
それは、ひどく落ち着かない気持ち。  
なんて言えばいいのかな?  
自分のことなのだけど、よく分からない。  
でも、あえていえば、納得できない気持ち、かな。  
なんだか、世の中が不公平にできているような気がしたんだ。  
 
兼一が好きなのは、ボクじゃなくて美羽。  
それは、よく分かるな。  
残念だけど、仕方が無いかな。  
いまさら考えたって、どうにもならない。  
あと、兼一が、女の子の内緒の部分をみたがるのも、分かる。  
アイツも男の子だからね。  
 
でも、どうして兼一は美羽のばかりを、見たがるのかな?  
ボクだって、女の子なんだよ。  
アイツの大好きなものが、ボクの身体にだって、ついている。  
胸だって、お尻だって、ボクのほうが美羽よりずっと大きいんだ。  
 
でも兼一は、離れには、カメラをしかけない。  
ボクの身体をみたくはないのかな。  
もし、そうだとしたら…  
そんなのひどいよ。  
ボクは、けっして多くを求めていないのに。  
せめてボクの身体だけでも、好きになって欲しいだけなのに。  
どうして、兼一はボクの身体をみようともしてくれないだ。  
なぜだ?  
とにかくボクは、納得できなかった。  
世界全体が、ボクにだけ不公平にできている。  
そんな風にすら、思えて仕方がなかったんだ。  
 
************  
 
それからボクがやったこと。  
自分でも、なぜやったのか、よく分からない。  
でもたぶん、兼一に見てもらいたかったのかな。  
ボクの女の子の部分をね。  
それで、兼一に知ってもらいたかったのだと思う。  
ボクの身体にも、兼一の大好きな部分が、ついていることを。  
美羽と同じようにね。  
 
ボクは便器に座ったまま、胸元を大きく開いた。  
それも思い切って。  
カメラにうまく映るようにね。  
少し恥ずかしかった。  
兼一の視線を感じるような気もしたしね。  
それにじっさい、ボクのこの姿を、これからみることになるのだ。  
恥ずかしくないわけがないよ。  
けど構わない。  
昔は邪魔で仕方がなかった、この胸。  
今ではボクの大切な武器だ。  
武器なのだから、使わなきゃ意味がないね。  
 
あらわになった胸を、ボクは突き出す。  
ボクは心の中で、兼一に呼びかけた。  
というか、ほんとうに兼一が、ボクの真正面にいる。  
そんなつもりだったんだな。  
 
どうだろ、兼一?  
ボクの胸なんだけど。  
美羽のよりは、ひとまわりは大きいかな。  
形はそんなに悪くはないかも。  
でも乳首がすこし大きくて、ちょっと恥ずかしいかな。  
よかったら、触ってもいいんだぞ。  
じかに触れてみて、確かめてくれ。  
ボクにも美羽と同じものがついていることをね。  
触るだけじゃない。  
好き勝手に、何をしてもいいんだぞ。  
それで、ボクの胸を気に入ってくれれば、それでいいんだ。  
 
でも、好き勝手するって?  
兼一は、ボクの胸に何をするのかな?  
何気なく想像してみた。  
手を胸にそえながらね。  
空想の兼一は、ボクの胸にいろんなことをしてくれた。  
…触ってくれたり、  
…吸ってくれたり、  
…もみほぐしてくれたり。  
やさしく、ボクのして欲しいことをしてくれたよ。  
すると、どういうわけかボクの乳首が、すこし硬くなってきた。  
指でさわってみると、大きくなっている。  
心臓の鼓動も早くなってきているのかも。  
体温もあがっているようだ。  
身体の芯から、疼くような感覚がわきあがってきた。  
 
気がつくと、ボクは自分の胸をいじりまわしていた。  
ボク自身の手を、兼一の手にみたててね。  
胸の疼きを、慰めていたんだ。  
そこでふと思う。  
いったいボクは何をしているのだろう。  
だって、やっぱりまずいよ。  
これじゃまるで、変態みたいじゃないか。  
兼一に変態扱いされるのだけは、ごめんだよ。  
ボクはあわてて、よからぬ空想をやめることにした。  
 
***************  
 
でもここで、ひるんじゃいけない。  
恥ずかしがって、ひるんでいたら、勝負は負けだね。  
けど、自分で楽しんでいるだけでもだめだな。  
兼一に見てもらわなきゃいけないんだ。  
ボクにも女の子の部分があるってことをね。  
 
ボクは、なんとか胸から手を離した。  
胸は十分に見てもらったはず。  
こんどはいよいよ、ボクの内緒の部分だ。  
心の中では、抵抗があったかな。  
ものすごく、ためらった。  
いままで、他人には見せたことがない部分だからね。  
でも兼一になら、見せてもいいかも。  
アイツがいちばん好きな部分だからね。  
きっと喜んでくれるはずだな。  
そう思って、ためらう気持ちを押し殺した。  
 
とはいっても緊張していた。  
だから、少しずつ、少しずつ。  
ボクはカメラに向かって、腿を開いてみた。  
でも、ちゃんとカメラに写っているのか、よく分からなかったかな。  
自分で自分の内緒の部分を覗き込むのも、へんな話だしね。  
兼一にみられているんだ。  
あんまりみっともないところは、みせられないよ。  
だから、女の子の部分を、指で広げてみることにした。  
兼一によく見えるようにね。  
 
ぐちゃぐちゃだったよ。  
中身のお肉が、はみ出したり、くっついたり。  
女の子の液でぬるぬるしていたんだ。  
おまめも、外にとびだしていたよ。  
充血してたのかな。  
ものすごく感じやすくなってたんだ。  
さわっただけで、ピクッとしちゃうぐらいね。  
 
どこを触ってもだめ。  
指で触れば触るほど、いけないことになる。  
ぐちゃぐちゃになっちゃう。  
困ったことに、女の子のエキスも、でてきちゃうんだ。  
どこが、どうなっているのか。  
ボク自身、よく分からなかったよ。  
おかげで、時間がかかったよ。  
でもどうにか、女の子の部分を、指で広げることができた。  
カメラにむかってね。  
そこで、ボクは心の中で呼びかける。  
 
どうだ兼一?  
ボクの女の子の部分が見えるか?  
ちゃんと、ボクにもついているんだぞ。  
だから、そんなにボクのことを怖がらなくてもいいんだ。  
ボクだって、女の子なんだ。  
怖いのは、むしろボクのほうなんだぞ。  
 

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