―深夜、梁山泊の離れは馬剣星の居室。  
 
馬剣星は、突然目をさました。  
物音が聞こえたからでもなければ、人の気配を感じたからでもない。  
人の気配や物音の全く存在しない真っ暗な部屋の中。  
馬剣星の拳法家としての本能は、わずかな振動を全身で察知したのである。  
かかる研ぎ澄まされた本能は、あっという間に振動の発生源を識別した。  
「こんばんは…しぐれどん。用事はいつものアレ?」  
「……。」  
暗闇のなかで、しぐれはコクンとうなずいた。  
「ヤレヤレ…ちょっと待ってね。今探すから。」  
馬剣星は、明かりもつけず、手探りでそこらをゴソゴソと探しはじめた。  
 
「はい、お待ちかねのブツはコレね。」  
取り出されたのは、小さな茶色い紙袋。  
「…。」  
しぐれは無言で紙袋を手に取った。  
「でも、最近は回数が多いね。  
 まあ理由はあえて聞かないけどね。」  
「…。」  
しぐれは受け取った包みを、さっそくあけた。  
 
ぷう〜ん  
 
鼻を刺す、酸っぱい臭気に、馬は鼻をつまんだ。  
中に入っていたのは、兼一の下着。  
しかも汗臭さ全開の汚れものだ。  
 
「これは、今日兼ちゃんがつけていた下着ね。  
オマケは兼ちゃんのお着替えナマ写真集。これは明るいトコでみてね。  
とにかく下着は、さっき脱いだばかりだから、まだ新鮮よ。」  
鼻をつまむ馬の表情が、汚れ物の「新鮮さ」をものがたっていた。  
そんな兼一の汚れ物だったが、しぐれはまるで意に介さない様子。  
手にとった汚れ物を、ジッとみつめていた。  
全くの無表情だったが、その目はひどく切なげだった。  
それからおもむろに、下着に顔を埋めた。  
 
「むふぅ…ハアハア…ふぅ…ハアハア…すぅ…ハアハア…」  
 
思いきり臭いを嗅いでいるのだろう。  
暗闇の中、しぐれの息づかいが、妙に悩ましく聞こえてきた。  
普段クールなしぐれが、兼一の下着で興奮していることは、間違いない。  
気がつくと、ペチャペチャという舌を鳴らす音さえ聞こえてきた。  
 
(あらら、しぐれどん…もう始めちゃったね…。)  
もちろんそんな物音で興奮するような馬ではない。  
性の達人としても、その名をはせた馬剣星だから、女性のある種の性行動にも、十分な免疫がある。  
馬は、しぐれの異様な行動を、ただ優しい目で見守っていた。  
(…でも、こういう愛のカタチは、ちょっと可哀想ね。)  
確かに渡したブツで、しぐれが喜んでくれたのは、馬にとっても嬉しいコトだ。  
しかし、こうしたイビツな愛情は、やはり不憫だった。  
 
兼一登場によって、梁山泊の雰囲気が一新されたことは、周知のとおり。  
その出現は、豪傑たちの鬱積したマンネリズムやニヒリズムを、一掃した。  
なかでも大きく変わったのは、「剣と兵器の申し子」こと香坂しぐれ。  
心を閉ざしたまま、武器修練に生きる情熱のすべてを注ぐ、梁山泊の紅一点である。  
 
かつては、他人の存在にまるで無関心だったしぐれ。  
だが年相応(?)の兼一の出現は、しぐれの心に大きな変化をもたらした。  
いやヒョットすると、兼一と美羽の微笑ましい結びつきが、影響したのかもしれない。  
いずれにせよ、しぐれは明るくなり、人との交わりに、積極的になった。  
わずかながらも、多弁になったし、食事も皆と一緒にとるようにもなった。  
かつての孤独な生き方を考えれば、ひじょうな進歩といえよう。  
 
そこまでは、よかった。  
問題は、しぐれが兼一に並々ならざる関心をもったコトである。  
「関心」というのが、いささか婉曲すぎるならば、「特別な思い」とでも、言い換えてもよいだろう。  
兼一への「関心」は、すでに「好意」の域を超えていた。  
「最強の弟子」修行への協力を惜しまないのは、むろんのコト。  
指導時間以外も、兼一の観察を怠らない。  
あまつさえ、兼一の居室に忍び込むことすら、しぐれは何度もやってのけたのである。  
 
だから、「兼一の…下着が欲しい…かも。」と、しぐれがおずおずと言い出したとき、  
馬はさほど驚かなかった。  
ただ、自分の思いを表現できないしぐれを、心の底から不憫に思った。  
他人への思いを行動で表し、結果にむすびつけること。  
この心と身体の相互行為は、本来誰でも身についているはずの、言うなれば愛の作法。  
そんな愛の作法を知らないしぐれが、馬には、哀れだった。  
しぐれの多くの部分を犠牲にしてしまった過酷な武術修行が、  
ひどく惨いモノに感じてならなかった。  
 
(出来るコトなら、何とかしてあげたいね…。)  
痛切に願う馬剣星だったが、出来るコトはほとんどなかった。  
(せめて美羽がいなければ、なんとかなったのかもしれないね。  
でも兼ちゃんは、美羽にぞっこんだから…)  
などと思うこともしきりだった。  
しかし馬は、頭の奥底で気がついていた。  
しぐれと兼一が、本質的に同じ道を歩めないことを。  
「剣と兵器の申し子」として修羅の道を征くしぐれ。  
兼一がそんな修羅の道を歩むとは考えにくかった。  
また師父として、可愛い我弟子を修羅道に追いやることは、どうにもためらわれた。  
 
そこで馬は、しぐれのささやかな願いをかなえるために、下着ドロに励むところとなる。  
せめてもの心の慰めとして、兼一の下着を渡し続けたのである。  
もちろん、最初のうちは下着ではなかった。  
愛情の表現が苦手な人間の常として、しぐれは兼一の着衣全般に関心を示した。  
おそらくこれは、思いを寄せる相手との自己同一をはかるもの。  
ただし兼一との交流が増えるにつれ、これは少しづつエスカレート。  
現在に至ったワケである  
 
ただひたすら、兼一の下着に集中するしぐれ。  
しぐれは、兼一の下着の臭いを嗅ぎ、しゃぶり、味わい、そして吸う。  
 
「ハアハア…ピチャ…ピチャ…ハアハア…ジュルルル…ハアハア…ズルズルズズ…ハアハア…」  
 
一見、狂態のようにも見える。  
だがしぐれにしてみれば、これはこれで愛の儀式なのである。  
何かを啜り尽くすような、吸引音の大きさが、兼一への思いの大きさだ。  
味わいつくすかのように、しぐれは下着の臭気や味を、すべて舐め吸いとっていった。  
ときどき聞こえる  
「…ンッ…ンッ…ンンッ」  
というひときわ大きな息づかいの正体がナニであるのか?  
たとえ目でみなくても、馬には良く分かっていた。  
忘我の境地のなか「…兼一…」と呟くしぐれの声が、馬の心を突き刺した。  
 
荒い息遣いや舌づかいの音が、突然ハタと止まった。  
おそらく、終わったのだろう。  
あの下着は、シミや匂いがすべて舐めとられ、真っ白になっているに違いない。  
その代わり、しぐれが分泌した様々な液体で、グショ濡れになっているはずである。  
 
(そろそろね…。)  
頃合を見計らって、馬はしぐれに声をかけた。  
「しぐれどん、コッチくるね。  
生殺しのまま帰るのは、辛いね。  
いつものようにするから…分かっているね。」  
すると、しなやかなしぐれの肉体が、スゥっと布団にもぐりこんできた。  
馬の身体に跨るその身体は、羽毛のように軽い。  
「じゃあ、しぐれどん…いくよ。」  
かすかに光るしぐれの秘所に、馬は手を差し入れた。  
 
「あっ…」  
しぐれが小さく息を吐いた。  
ついた息は小さかったが、指に感じる締めつけは、相当のものだった。  
(さすがはしぐれどん…華奢なようでいて、全身が鍛え抜かれているね…)  
そう思いながら、馬は指を動かし始めた。  
くりだされるのは、豪快にして繊細な馬の指さばき。  
拳法家ならではの指さばきである。  
これがしぐれの尿道下からクリトリスを、こすりあげるように、さするように、刺激していく。  
「はあ…はあ…はあ…はあ…」  
しぐれの息が再び早くなっていった。  
 
もちろん、一箇所責めに終始するような馬ではない。  
片手は白桃のようにみずみずしい乳房をまさぐりあて、  
舌は少し汗臭いワキの下をネブり倒す。  
ワキの下は、しぐれの性感帯だから、とりえわけ慎重かつ入念に舐めまわます。  
しぐれの口を吸わないのは、故郷においてきた妻への義理立てである。  
 
ただし、馬が少々のズルをしているのも、明らかだった。  
いくら先ほどまで下着をオカズに自慰をしていたとはいえ、これは興奮しすぎである。  
実は馬は、ひそかにしぐれの性感ツボのいくつかを、刺激していたのである。  
鍼灸の達人であるからこそできる、まさに秘技といえよう。  
とはいっても、性感ツボの位置は、そのときどきの体調や周囲の環境条件によって  
絶えず変化している。  
最適なタイミングで刺激を加えるには、かなりの技量が必要だ。  
女体の興奮ぐあいを推し量るのは、並大抵のことではない。  
これができるのだから、馬はやはり性の達人である。  
 
馬の左手が感じとるのは、勃起してきたしぐれの乳首。  
馬の鼻が嗅ぎだすのは、分泌著しくなってきたしぐれのフェロモン臭。  
そして右手の指で感じとるのは、膣内のヌメリ加減だ。(←おい!!)  
秘所の締めつけと、腰のうごきがシンクロしてきた頃合が、エンジンのかかりは始めである。  
「ハン…ハン…ハン…」と鼻を鳴らすような、しぐれの呼吸音  
試しにクリトリスをやさしくヌルリとナブってみる。  
「んはあぁ…あん…あん…」  
たちまち、しぐれが発するのは、押し殺すような、ちいさい嬌じの声。  
しぐれのほっそりとした上半身が、ピクっと反り返った。  
(…しぐれどん、そろそろいい具合になってきたね。)  
 
馬は、イチモツをとりだした。  
それも小兵に相応しからざる、堂々たるイチモツ。  
そしてグッと腰に力をいれ、淫液したたり落ちるしぐれの蜜ツボを、一気に串刺しにした。  
「ンッ…!!」  
短くうめいたのは、もちろん、しぐれ。  
声にならない声をあげた、というべきか。  
それは、寡黙なしぐれが、めくるめく快楽をむさぼるときに出す声。  
厳しい武術修行で身につけた、悲しい性癖であった。  
(好き勝手にエッチ声もあげられないなんて…しぐれどんも可哀想に…。)  
そう思う馬だったが、クールな頭と裏腹に、身体はかなりご満悦。  
まるで貪るような、しぐれの腰のうごきに合わせて、怒涛を何度となく打ち込んでいた。  
叩き込むように、刺すように、えぐるように。  
ネバリつき、包み込むようなしぐれの秘所に、馬もまた、ご満悦であった。  
 
とはいいても、長くエッチをしているワケにもいかない。  
(楽しみすぎるセックスは、やっぱりママに悪いね…。  
 それに兼ちゃんの代用品なのだから、長すぎるのも具合が悪いね…)  
しぐれの素晴らしい肉体を、もっと味わいたい、という気持ちもある。  
しかしそこは、達人である。  
常人離れした克己心をもって、めくるめくセックスを、終わらせるコトにした。  
もちろん終わらせるにせよ、しぐれをサッサと追い込まなければならない。  
それも十二分な満足を与えて。  
 
そこで馬がどこからともなく取り出したのが、中国針。やや柄が太い馬の愛用品だ。  
馬は、激しいグラインド運動の中、しばし息をとめて、精神を集中した。  
そして暗闇の中、揺れるしぐれの首筋の一点に、すばやく正確に針を刺しこんだ。  
 
そこで馬がどこからともなく取り出したのが、中国針。やや柄が太い馬の愛用品だ。  
馬は、激しいグラインド運動の中、しばし息をとめて、精神を集中した。  
そして暗闇の中、しぐれの首筋の一点に、すばやく正確に針を刺した。  
 
「うああっ…ああ…ああああ…おおおお…」  
はばかるコトなく、かなり早めな絶頂の声をあげるしぐれ。  
その身体は、しなやかに弓なりとなり、そりかえった首は、尻につきそうな勢いだった。  
 
針が刺さったそのツボは、中国鍼灸術で言う緒流我孔。  
体中の性気が集まるターミナルポイントであった。  
「イクね。」  
馬は刺した針をピンとはじいた。  
「あ…」  
次の瞬間、しぐれの身体は、力を失ったように崩れおちた。  
 
************  
 
あけて翌日、梁山泊。  
 
「師父、あなたは日本一素晴らしい中国人だ〜。」  
兼一は感涙にむせていた。  
そこまで感動するのも当然だろう。  
何といっても、兼一が手にしているのは「香坂しぐれ・マル秘写真集・セカンドエディション」。  
妖艶な美貌と、「ドン・キュッ・ドン」と美羽にも勝るプロポーションを兼ね備えた、しぐれ。  
そのしぐれの、エゲツないポーズが満載のエロ写真集だ。  
しかも、今回の写真集は、ファーストに比べてかなりのハード版。  
これで喜ばなければ、兼一は兼一ではない。  
 
じっさい兼一は、鼻息も荒く、股間を硬くしながらページを繰っていた。  
「すごい…師父すごいです!!このアオリのポーズ…乳首がちょっと見えてます!!」  
「いや、コッチはもっと凄い!!しぐれさんの…しぐれさんのハミ毛が、フンドシからーっ!!」  
「おおっ、これはしぐれさんの入浴シーン!?なんとトイレシーンまで!?」  
「うあああーっ、こっちはマンマンが透けて見えるーっ!!」  
「見える」「透ける」といったトコロで所詮はソフトコア。  
けれども週刊現代の袋とじでヌケる兼一だから、写真集の出来には大喜び。  
ガキのようにハシャギまくっていた。  
 
そんな兼一を、馬剣星は複雑な気持ちで眺めていた。  
喜ぶ我弟子を見るのは、師父としても、同好の士としても、実に気持ちがいい。  
だが、しぐれのことを考えると、どうにもスッキリしないのである。  
(こんなエロ写真集を作ってみても、気持ちが動く兼ちゃんではないのにね…)  
ふと背後に視線を感じ、馬はうしろを振り返ってみた。  
案の定、そこには、ネズミを連れたしぐれがひとり。  
柱から顔だけだして、兼一の様子をうかがっていた。  
 
もちろん、いっけん無表情。  
だが、よくみれば、照れくさそうな、それでいて嬉しそうな、しぐれだった。  
自分の裸体が写ったエロ写真集で大喜びする兼一を観察しながら、  
(エッヘン、どんなもんよ)  
とでも言いたそうな、表情をうかべていた。  
 
(しぐれどん…これまた悪いところに…  
しぐれどんのコトだから、これでまた、下手な期待を持ってしまうね…。)  
馬は頭をかかえてしまった。  
しぐれの全面的な協力によって生まれたあの写真集。  
少しでも兼一の関心を引くこうとしていたのであろう。  
しぐれは惜しげもなく、その妖艶な裸体を、馬のカメラの前にさらしたのであった。  
知恵を絞って色々なエロポーズに挑戦した。  
「乳首チラ」も「マン透け」も、実を言えば、ほかならぬしぐれ本人のアイデアである。  
健気にも、兼一に見せたい一心で、オッパイや性器のモロダシにすら、挑戦した。  
ただし、さすがにこれは「兼ちゃんには刺激的すぎる」と馬にとめられた。  
今回に限って言えば、馬はむしろブレーキ役。  
ワザとらしくないよう、盗撮にみえるよう、必死になって、しぐれを制止していたのである。  
そんなしぐれだから、兼一の興奮ぶりには、さぞ満足したコトであろう。  
 
だから馬は、大いに困ってしまった。  
しぐれのセクシーポーズを見て、能天気に前を硬くしている兼一が、  
今日ばかりは、みょうにカンにさわってならなかった。  
しかも兼一は、間の悪いオトコ。  
そんな時に限って、  
「師父、これどうやって撮ったのですか?  
 しぐれさん、カメラ目線で大股開きなんですけどぉ…?」  
などと、余計な質問をしてくるから、困りものである。  
 
この兼一の能天気が、馬の怒りを  
「そんなコトより我弟子よ!!修行よ!修行ね!!  
脱力腕振り訓練、町内十周!!すぐ始めるね!!」  
しかし兼一は、いまひとつ、修行の厳しさが分かっていない甘えん坊だ。  
思わず、グチと甘えが口から飛び出してしまう。  
「え〜、また基本ですかぁ!?  
もっと技系の修行にしましょうよ。ねぇ、師父ぅ〜。」  
ナメた不平をいう弟子には、十倍返し。  
「町内百周に変更ね!!すぐ始める!!」  
「はいっ!!」  
(いけない、師父は本気だ。)  
言葉を荒げた馬に、兼一はあわてて腕振り訓練を始めた。  
逃げるように、門から出て行く兼一を、馬はタメ息をつきながら見送った。  
あたりを見渡せば、しぐれの姿も、すでにない。  
今頃は、敷地の外へでた兼一を、人知れず追跡しているのであろう。  
ヒョっとすると、前を硬くした兼一の姿に、少々興奮しているのかもしれない。  
あとに残されたしぐれのオンナの匂いに、言いようのない徒労感をおぼえる馬剣星であった。  
 
********  
おそまつ。  

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