―某日夕刻、白浜家。  
夕食の支度をする兼一の母・さおりの耳に、元気そうな声が聞こえてきた。  
「母さん、ただいまぁ〜」  
ひどく楽しそうで、屈託のないこの声。  
あきらかに野太く、兼一や、ほのかの声ではない。  
さおりは家事の手を止めて、玄関に急いだ。  
「おかえりなさい、あなた。お疲れ様でした。」  
 
「今日も少し早めに帰ってきてしまったよ。」  
声の主は、いかにも厳格そうな中年リーマン。  
謹厳実直な一家の大黒柱にして、息子思いの優しい父親。  
白浜元次である。  
 
確かに六時過ぎとは、リーマンとしては、かなり早めな帰宅といえよう。  
しかも元次は、最近いつもこの調子なのだ。  
土曜出勤もやめ、有休もすべて使い尽くすありさま。  
(カイシャの方は大丈夫かしら…?)  
少々不安なさおりだったが、最近夫と過ごす時間が長くなったコトは、大歓迎だった。  
 
「母さん、ほのかは?」  
「ほのかは、今日も学校のあと道場に寄ってくる、といってました。  
 夕御飯に呼ばれているそうですから、今晩も…遅くなるでしょうね。」  
これを聞いた元次は大喜びだった。  
「ホント!?」  
大喜びの元次に、さおりは苦笑した。  
「ええ、本当ですよ。ですから今日は…普段より長めにできますよ。  
 で、ご飯を先にします?それともプレイが先?」  
「さおり、分かっているだろ?もちろんプレイが先だよ!!」  
"母さん"ではなく"さおり"と名前で呼ばれるとき。  
さおりは自分がオンナであることを実感する。  
母親からようやくオンナへと戻ることが出来たような気がしてくるのだ。  
 
(これも、あの道場のおかげね…)  
さおりは、心の中で梁山泊に感謝した。  
兼一が住み込み修行を始めてから数ヶ月。  
ほのかも梁山泊に入りびたりとなり、元次・さおりの夫婦関係は大いに変化した。  
やはり子供の留守は、大きかったのだ。  
子供がいない時間が増えれば、夫婦水入らずの時間も増える。  
それに元次も、もともと「家庭第一」がモットーだ。  
ほのか出産後は、ほとんど絶えていた夫婦生活は、見事に復活した。  
しかもエッチ頻度は新婚当初を上回るペースで、必然的に元次の帰宅時間も早まっていった。  
夫婦の交わりは深まり、しかも息子はイジメ地獄から脱出。  
さおりとしては、梁山泊に足を向けて眠れない気持ちだった。  
 
「ねえ、見て!!見てよ!!  
載ったよ!!掲載されたよ、わしら夫婦のコトが!!すごいよ!!すごいよ!!」  
さおりがふと我に返ると、元次が一冊の雑誌を手に、はしゃいでいた。  
その雑誌の名は大学館刊『投稿ニャンタラ倶楽部』。  
いわずと知れた、エロ投稿誌である。  
「いやですわ、こんな雑誌…」  
さおりは、頬を紅くそめながら、付箋のついた頁をめくった。  
*************  
 
「★特大バイブをアナルに咥えこみながら、チンポ乞いに平伏する  
かつて社のアイドルだった美人妻は、羞恥衣装の着用だけでアクメ声★  
                                投稿者:Pオリジナルネクスト」  
**************  
 
ひどく頭の悪そうなキャプション。  
むろんこれは元次ではなく、編集部がつけたモノだから仕方が無かろう。  
真実はカケラもないが、このエロいウソこそ大人のファンタジーにほかならない。  
さおりは、ドキドキする気持ちをおさえながら、先に進んだ。  
 
**************  
「お嬢様育ちで、結婚当初はフェラチオという言葉すら知らない妻でしたが、以来十数年間、  
毎日欠かさず私のマラ棒で教育した甲斐あって、今ではすっかり私好みのド変態女に成り下  
がりました。しかも年齢のわりに妻の肉体はいまだ魅力的。  
整ったボディには適度の肉がついてムチムチで、熟した色香がただよってくるような錯覚さえ覚  
えます。  
ですから飽きるということが無く、わが愚息も妻の前ではいつも大張り切りです。  
もちろん妻はド変態女ですから24時間発情しっぱなしで、水を向けると、すぐ私の股間に  
顔を埋めてきますから、まさに真性の淫乱です。  
最近は面白半分に、股下ゼロセンチのマイクロミニの常時着用を命じ、下着一切の着用を  
禁じましたところ、さすがは変態女らしく、勝手に自慰を始めてしまいました。  
私のチンポ教育の成果とはいえ、あまりの常識ブレイカーぶりには、やや閉口しましたが、  
何も知らないお嬢様だったわが愛妻が、ここまで色ボケしたことに、深い感慨を覚えました。  
そこで「あの社内でも有名だった清楚な美人OLもこうなってしまえばオシマイだね」  
「昔のご学友に写真を送ってあげようか」などと言葉なぶりをしたところ、  
「どこまで辱めれば気が済むの」と恥辱の涙を流していましたが、  
「これが欲しくないのか」と黒光りするわが愚息を眼前に差し出すと  
「あなた、お願いです、おチンポください〜」とプライドが性欲にあっさりと屈服。  
お気に入りのバイブをアナルにハメながら、しきりに愚息を欲しがり土下座すらする始末でした。  
やむなくハメてやったところ、愚息の子宮連打とアナルのバイブで悶絶し、「おチンポ最高ぉー」と  
絶叫しながら何度も昇天していました。」  
***************  
 
このテのエロ雑誌では、じつにありがちな「投稿」と言えよう。  
元次オリジナルの文が、レイアウトの都合から、数倍に水増しされていた。  
しかも描写は淫語全開・変態全開のワンパターンだ。  
もちろん、中身のほとんどは誇張ないしは虚偽である。  
たとえばさおりのミニスカの話は、ココ数ヶ月のコトではない。  
ミニスカとラメいりストッキングの着用は、第二子出産以来のコトだった。  
それも元次が強制したワケでもなく、あくまでさおりの自発的意思。  
むろん40近いオバハンのマイクロミニとは、何とも年齢に不釣合いというほかない。  
「水戸黄門」でいえば「お銀」のレオタードを彷彿させるエログロである。  
かといって、さおりを変態扱いするのは、いささか気の毒であろう。  
これはもともと、夜がご無沙汰になった元次の関心を引きための、小細工なのだ。  
自分をオンナとして見てくれなくなった亭主への、イジマしい誘惑だったのである。  
 
ともあれ、文章はすさまじかった。  
しかし、読み終わってもなお、さおりは胸の高まりをおさえきれなかった。  
(勝手に私が変態女にされている…)  
その点は、やや不本意ではあった。  
けれども「変態女」として紙面に登場することは、一種の快感でもあった。  
(こんな風に性欲まみれで生きることができたら、素晴らしいかもしれない…。)  
むろん本名アリの目線ナシはゴメンだが、こういうカタチなら問題は無い。  
オンナとしての性欲を、安全にさらけだせるようで、ひどく心地よかったのである。  
 
内容のほとんどが誇張だったが、全部が全部ウソというワケでもない。  
絶叫アクメはほんとうの話だったし、アナル責めは、今のさおりのマイブーム。  
ついでに言えば、「お嬢さま育ち」も、さおりにしてみれば、真実である。  
「アイドル女子社員」「美人妻」も同様であろう。  
それになにより、掲載されている画像は全て、ホンモノだ。  
風呂場で、自分のアナルから恍惚の表情でビーズを引きずりだしているのも、  
ニッコリしながら肥大化した肉ビラを自分の手で広げているのも、  
おいしそうに元次のイチモツを咥えているのも、  
みな白浜さおり、そのひと本人なのである。  
掲載承諾書にサインしたのも本人であることは、言うまでも無い。  
 
もちろん、ハメ撮被写体の常として、目線の細さや近所バレは、気になるところだ。  
しかし次頁の「美愛奴・紀理香の美麗緊縛姿」云々の記事を目にして、  
そんな懸念は吹き飛んだ。  
そこでは体重推定80キロのデブ中年女がボンレスハムのように緊縛されていたのである。  
目線があっても「紀理香」の不細工は隠しようが無い。  
そのSMアクメ姿は、衝撃画像とでもいうべきだろうか、目を覆わんばかりの大惨事。  
脂肪だらけの醜い身体が繰り出すマゾ媚態は、女のさおりがみても、醜の一言に尽きた。  
 
(やっぱり綺麗に写るのがいちばんね。)  
近所バレは怖かったが、さおりは目線をいれるかわりにサングラスをつけて、  
撮影に臨んだのである。  
じっさい、コレだと目は隠されていても、自慢の端整な顔立ちは、あまり損なわれない。  
「これほどの美人妻がこんなハードプレイを…編集部員一同、羨望の念を禁じえません。」  
との編集部コメントは、あながちウソではないだろう。  
さおりは、サングラス着用を提案してくれた夫に、心の底から感謝した。  
 
「ねえねえ、すごいでしょ!!でもコレだけじゃないんだよ!!」  
ふと見れば、永久保存用の『投稿ニャンタラ倶楽部』を手に、元次が目を輝かせていた。  
示されるまま頁を繰ると、そこには若いカップルの投稿が載っていた。  
 
***************  
「★半年前まで処女だった女子学生は陰毛を剃られたあげくノーパン露出登校で発情する★  
                                  投稿者:Pコンビネーション1号」  
**************  
 
さおりは、全裸の美少女にフェラ奉仕をさせている若い男の画像に、目を見張った。  
美少女に咥えさせながら、さも得意そうにVサインをするこの男。  
たとえ目線は太くても、生みの親の目はゴマかせない。  
だいいち、あの特徴的な髪型や凛々しい眉毛が、荒い画像からも用意にみとれるのだ。  
しかもエロのツボは見事に父親譲り。  
 
むさぼるようにして、さおりは投稿文に読み入った。  
 
***************  
「つきあい始めてまだまもない女子学生の彼女を紹介します。  
成績優秀、容姿端麗でしかも新体操部のエースと、非の打ち所のない彼女。  
才色兼備で、周囲からの評判も上々の彼女ですけれど、じつはボクの可愛い  
チンポ奴隷なんです。  
処女だったので、最初のうちは痛がって泣いていました。  
ですが、やはり生まれつきの淫乱なのでしょう。  
今では、ボクのチンポをみただけで「ハメてくださいましですわ〜」と  
尻を差し出してくるありさまです。  
ピンク色だったキツマンも、なんどもジュポジュポ出し入れしているウチに、  
具合よくネットリとチンポに絡みつく黒マンになりました。  
それでも新体操で鍛えた膣筋・括約筋は健在で、挿入したその瞬間から  
ネチョネチョ・ギュウギュウと、程よくボクのイチモツを締めつけてくれます。  
あんまり淫乱なので、チンポをエサに「ノーパン登校」を命令したところ、  
ご丁寧にもブラジャーまでつけずに、登校してきたから驚きです。  
とおりかかった同級生に、偶然を装ってスカートの中のアワビを露出させ、  
「あっ!しまった!ノーパンでしたわ!」  
などとのたまうのですから、真性の露出狂なのでしょう。  
大きめの乳首や乳輪も、かなり使い込まれて黒くなってきましたが、  
できれば孕ませて、一生添い遂げたいボクの淫乱な彼女でした。」  
 
**************  
 
さおりは、ひとときオンナから母親にもどり、感慨にふけっていた。  
「昔から、何をやってもすぐ逃げ出していたあの子が今…」  
やはり兼一を信じて梁山泊に送り出して、ほんとうに良かった。  
親のひいき目があるにせよ、写真に移った兼一の姿は、なんとも頼もしそうだった。  
梁山泊への感謝の念をあらたにするさおりだった。  
兼一の「勇姿」には、元次も感動したようで、口から感嘆の言葉があふれてきた。  
「あの兼一が、女の子とお付きあいできるようになるとは…  
いや、あいつにはわしらの血が流れているのだから…なあ母さん!」  
「ええ…あなた!」  
しっかと抱き合い、親としての喜びを分かち合う二人であった。  
 
しかしいくら夫婦の時間が増えたとはいえ、時間は有限である。  
さおりは、再びオンナの顔に戻ると、こんどはひどく酷薄な口調で、元次に話しかけた。  
「ところで「ニャンコ倶楽部」の件はありがとうございました。  
でもアレは、少々ウソが多すぎません?  
ハメさせて下さいと、いつも言ってくるのは、あなたからと記憶してますけど?  
なんなら証拠のビデオも投稿しましょうか?あのブザマなビデオを!!」  
 
「エッ、母さん…だからアレは…ホラっ、投稿誌だから…」  
とまどう元次に、さおりの激が飛んだ。  
「誰が母さんよ!!もう忘れたの、この間抜け野郎!!  
 言ってごらん、アタシは誰で、オマエは何っ?!」  
そこで夫・元次の前に、スッと差し出されたのは、妻さおりの爪先。  
ストッキングに包まれた美脚のムレた先端部である。  
さおりの熟れた脚線美と、脚のムレムレ臭が、速やかに元次の脳をトロかした。  
 
「さおり女王様、失礼しました。  
あなた様こそ、美の女神にして、真の支配者、究極のドミナ。  
ワタクシは、さおり様の下僕にして哀れな男奴隷の元公であります。」  
元次は、「さおり女王」の足下にひれ伏した。  
差し出された爪先を口にしたが、そこにためらいというモノは、まったく見当たらなかった。  
 
さおりは、元次の服従ぶりに満足すると、手早く衣服を脱がせ、首輪を装着した。  
「オラッ、歩くんだよ!!」  
鎖を手に、さおりが元次を引き立てていくその先は、「プレイルーム」。  
リフォーム費用500万円を投じて作った完全防音の「オトナの遊び部屋」である。  
期待感でビンビンになった元次のイチモツを眺めながら、さおりは思った。  
(あなた、今日はほんとうにありがとうござました。  
 お礼に、マゾのあなたが大好きな前立腺を、タップリ責めてあげますわ…。  
 それこそ、カラカラになるまで絞ってあげますからね。)  
 
相思相愛の二人であった。  
**************  
おそまつ。  

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