―梁山泊。
そこはスポーツ化した格闘技に溶け込めない豪傑や
武術を極めてしまった達人が、集う場所。
そして我らが主人・公白浜兼一が、武術と恋に、青春を燃やす場所である。
しかしながら、この兼一ときたら、武術の才能はゼロ。
美羽としぐれのお色気をエサに、かろうじて修行を続けているものの、
知識偏重でキレやすく飽きっぽい、という現代っ子の典型だ。
それで唯一の才能が「努力する才能」だから、救われない。
こんな若者を弟子にしているのだから、梁山泊もよほど後継者問題が深刻なのであろう。
ところでこの「努力する才能」とは、甲越寺秋雨の造語にほかならない。
要するに、にゅう弱な兼一を修行に向かわせるための、お上手である。
しかし兼一は、こんな見え透いたヨイショを、本気で受けとめてしまうお調子者だ。
本気で自分に「努力する才能」があると信じこんでいるから、なんとも始末におえない。
ああ、兼一君よ。
「よく頑張りました」「努力しました」でほめられるのは、学生時代まで。
ポストバブルの「新競争時代」を生き抜く資格は、君に無い。
かくも頼りない兼一だが、梁山泊の達人豪傑たちは、けっして彼を見捨てない。
意地でも、兼一を一人前の武術家にしたてようとする。
彼らの辞書に、「あきらめる」という言葉は無いのである。
なかでも熱心なのは、兼一の入門以来、一貫して指導にあたっている甲越寺秋雨。
「哲学する柔道家」の異名を持つ、梁山泊きっての理論派だ。
得意のID修行で、ひ弱だった兼一の肉体改造に成功しつつある秋雨。
この理論派武術家の次なる目標は、兼一の精神改造であった。
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「では兼一君、二日間しっかり修行しよう!!」
古びた道場に、秋雨の厳しい声が響いた。
しかし秋雨にこたえる兼一の声は、ひどく暗く、みるからに気乗りしない様子だった。
「で…ドラえもん…これ…なんですか…?」
兼一が怖がるのも、ムリはない。
いま兼一は、なにやら大掛かりなマシンに、すえつけられているのだ。
抑制帯の締まるカチャカチャという金属音が、ひどく冷たく薄気味悪い。
兼一の不安を察した秋雨は、つとめて快活に説明を始めた。
「私はドラえもんではない。甲越寺だ。
そしてこれは独自に開発した武術精神注入マシーン。
名づけて"きょうせい君ぐれ〜いと"!!」
胡散臭さ全開のネーミングに、カンの悪い兼一も、さすがに不安を隠せなかった。
名前の「きょうせい」が「矯正」であるのか「強制」であるのか?
ひどく気になる兼一だったが、
いずれにせよ尋常ならざるマシンであることは、一目瞭然だった。
秋雨は、そんな兼一の不安を払拭するべく、熱弁をふるった。
「早急に高等戦技を教えたいのは山々だが、
精神力は、武術家にとって、体力と並ぶ、命ともいえる大事な要素だ!!
君はハッキリ言って、精神力が弱すぎる!!
精神力の弱い武術家など、この世にはいないからね。」
兼一は、いかにも不満そうな表情を浮かべた。
「女性に手をあげないから、ぼくの精神力が弱いということですか?
でしたら、それは間違っていると思います。
それに強い精神力とは、単なる武断主義・強力主義の類ではないのでは?」
いつもながら、どことなく一人よがりな兼一的「正論」。
秋雨にしてみれば、そんなことは、兼一に言われるまでも無いことだ。
大得意で利口ぶる兼一の言動が、少しばかり秋雨のカンにさわったのだろう。
「哲学する柔道家」は、わずかに語気を強めた。
「女性に手をあげない…なるほど一般論からいえばまったく正しい。
しかし武術の世界にあっては間違いだね。
いかなる相手でも、拳を交わす相手には全力で戦うこと…
これは武術家としての最低限の礼儀にほかならない。
相手が女だから手加減するというのは、これほど無礼なことはないな。」
ここで秋雨は、効果を出すために、一拍おいた。
「美羽を見たまえ。
彼女は技量の劣る兼一君が相手でも、けっして手を抜かない。
それは美羽が君の事を、バカにしていないからなのだよ。
そして君は、せっかく組手の相手をしてくれる美羽を、バカにしたいのかな?」
アムウェイ式とも言えるほど欺瞞的な秋雨の錯覚論法。
しかし効果は絶大だったようで、兼一はシュンとしてしまった。
これをみて、秋雨は言葉をやわらげた。
「兼一君、君に足りないのは勝負の場での敢闘精神だ。
何が何でも相手を打ち倒す敢闘精神。
兵法を使ってでも勝利を勝ち取ろうとする執念、といってもいいだろう。
ともかく勝負の場での、情けや思いやりほど、余計なモノは無いんだ。
それは相手に対しては無礼で、君自身にとっては致命的だ!」
兼一を「論破」した後も、秋雨の説教はまだ続く。
「ともあれ、安心して欲しい。
この"きょうせいくんぐれ〜いと"が、強い精神力を養ってくれる。
とりあえず、大急ぎで正当な暴力への抵抗感を、取り去ろう。
さもないと、いくら美羽と組手をしても、効果があがらないからね!」
そう言い終えると、秋雨は兼一とマシンを接合する最終処置を施していった。
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兼一のアナルと尿道に手早くチューブが挿管され、電極が体の各所に貼り付けられた。
繊細な部分への痛みに耐えかねて、うめき声をもらす兼一。
「ウゥゥ・・・本当に…ここまでやらなければ…いけないんですか…?」
と訴えたが、これはアッサリ却下。
「今は、一分一秒の時間も惜しい!トイレに行く時間など、まったくない!
それに電極は、君の体調をモニターするタメにぜひとも必要なのだよ。」
と取りつくシマもないアリサマだった。
挿管と完全拘束が終わると、今度は目への処置が始まった。
目が閉じられないよう、まぶたがテープで固定された。
目がどうにかなってはしまいかと、兼一は心配したが、これは不要な心配。
人工涙が常に目に注入される器具が装着された。
いかにも秋雨らしい周到な措置である。
最後に装着されたのは、ヘッドマウント・ディスプレイ。
ヘッドフォンともども、拘束具を使って兼一の頭部にガッチリと固定された。
これで兼一は、イヤでも準備されたコンテンツを視聴させられるところとなる。
手足の自由を失い、さらには排泄の自由も、視聴覚の自由も失った兼一。
言葉巧みに誘導されてきたが、こうなれば、さすがに恐ろしくてたまらない。
「いじめられっ子のカン」が激しく警報を鳴らしていた。
しかし、秋雨の顔を見ると、何も言えない。
文句や質問など、とうてい言い出すことが出来なかった。
言い出せない分、ストレスがたまり、汗が吹き出し、胃がキリキリと痛み始めた。
そんな様子の兼一をまえに、秋雨は仕事を急いだ。
「やや不自由だが、たかだか48時間だからガマンしよう。
あと、本当に辛くなったときは…バージェス…と合言葉を叫びたまえ。
マシンは48時間たたないと、外せない仕組みだから」
兼一は、「バージェス」という言葉にピンときた。
そこで酷薄な表情で笑う秋雨に、大あわてで話しかけた。
「あ…あのバージェスって、まさか「時計じかけのオレンジ」のバージェス…」
そう言い終わるか終わらないかのうちに、口枷が兼一の口に噛まされた。
「おっと、口枷をつけるのを忘れていたよ…、舌を噛んだらタイヘンだからな。
で、何か質問はあるかな?」
兼一は、目を見開いて何か叫んでいたようだが、ギャグに阻まれ声にならない。
「質問はないようだから、始めることにしよう。」
ぶっきらぼうにそう言うと、秋雨はマシンを起動させ、プログラム開始を入力した。
ウィィィィイイイイイイイイン。
重低音のモーター音が、道場中に響きわたっていった。
マシンから逃れようと、必死になってももがく兼一に、秋雨はやさしく語りかけた。
「兼一君、今のうちに手早く説明しておく。
"きょうせい君ぐれ〜いと"は条件反射を利用した画期的な自動性格矯正マシンだ。
刺激と反応のパターン化によって、被験者を指定された性格に改造することができる。
といっても「強い精神力」などという抽象的なモノはプログラムできない。
われわれには自明の「武術精神」も、マシンには難しすぎるんだ。
だからとりあえず、君にはサディストになってもらおう。
幸い連続婦女暴行犯の性格データがある。
法務省矯正局のご好意で提供してもらっているのでね。」
いちおう立ちいって説明しておこう。
兼一の場合、これおから視聴を強いられるのは、ドギツイSM映像の数々だ。
女王様モノと女奴隷モノが、交互に絶え間なく、上映されるところとなる。
この映像だけなら、特に問題はない。問題は体に取りつけられた電極である。
マゾ男が女王サマから虐待されるシーンでは、電流で耐えがたい苦痛で与えられる。
逆に女奴隷が虐待されるシーンで与えられるのは、快楽。
オナホールと微弱電流が、兼一の快楽中枢をトロけさせる。
また勃起した場合は、映像の種類と勃起硬度の具合によって、
ひときわ大きな苦痛と快楽が、選択的に投下される仕組みとなっているのだ。
いうなればアメとムチ。
パブロフの犬の原理を使って、個人固有の性格を、人工的に歪めるシステムである。(←?)
プログラムが終わるころには、兼一の性格はだいぶ変わっているハズ。
必ずや、女性を責めることに病的な嗜好をもつ「強い精神力」を身につけるコトだろう。
秋雨の説明はまだ続く。
「効果は、関係者限定の極秘実験ですでに実証済みだ。
法務省らのウケもいい。
じっさい名古屋刑務所からは、発注のオファーがきているぐらいだ。
だから、国のお墨付きをもらったものと考えてくれ。
少々辛い部分もあるが、どうか安心して身を任せてほしい。
48時間後には、遠慮なく美羽と戦えるようになるからね。」
すすり泣くような声が聞こえてきたが、秋雨は気にしない。
秋雨の関心は、修行の効率性のみ。
兼一の心中などまったくもって、考慮の外だ。
(これで美羽と兼一の組手の教育効果が、革命的にあがるはず!)
などと考えているのだから、実に怖い人格である。
「ウギャアァァァァァァァァァァァァーッ!!!!」
突然、すさまじい苦痛の絶叫が響いた。
それは間違いなく通電にあえぐ兼一の悲鳴。
どうやら「上映プログラム」が始まったらしい。
秋雨はモニターをみて、再生中のプログラムを確認した。
モニター上に表示されるのは、見るもおぞましいビデオタイトルの数々。
いずれも秋雨の個人コレクションだ。
近年流行の「アタッカーズ」系陵辱ビデオを「ヌルい」と言う秋雨。
欧米のペイン系SMを愛すハードSMマニアの秋雨のことだ。
きっと凄まじい内容のモノを、兼一は観ているに違いない。
「ホゥ、最初のビデオは"家畜人調教!ダメ亭主は貴婦人の人間便器"か…。
マゾビデオで勃起するとは、やはり兼一君はM男だったのだな。
しかしマゾの武術家は大成しない。
打たれ強いのは良いが、攻撃力に問題がある。
確かにマゾの打たれ強さは、魅力的なのだが…」
そこでふと、なにやら考え込む秋雨。
「哲学する柔道家」は、どうやらまた新しい研究分野を発見したようだ。
絶叫して悶え苦しむ兼一をそのままに、秋雨は新らたな仕事にとりかかっていった。
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キッカリ48時間後、兼一はようやく"きょうせい君ぐれ〜いと"から解放された。
長時間にわたる苦痛と快楽の交互で、肉体はだいぶ憔悴していた。
しかしどこか雰囲気が、今までの兼一とは違っていた。
たしかに独特の温和な言葉遣いや物腰に、大きな変化は見当たらない。
しかし兼一の瞳は、妙にギラギラと燃えていたのである。
そして"きょうせい君ぐれ〜いと"での調教成果が試されるときが来た。
数時間の休息時間をおいて、兼一は、美羽と組手で対決したのであった。
「ふーん、今日の兼ちゃんはスゴイね。
ものすごく勢いがあるよ。」
馬剣星がそう評したのも、当然であろう。
ふだんとはうって変わって、開始当初から、攻勢一本槍。
拳と蹴りを、遠慮なく繰り出していったのである。
火を噴くような敢闘精神に、豪傑・達人一同は、大満足。
長老すらも、目を細めて観戦しているのだから、大した戦いっぷりだったといえよう。
いっぽう美羽はとみれば、兼一の気迫に押されたのか、こちらは逆に防戦一方だった。
矢継ぎ早の攻撃を防ぐのが精一杯。
どうにも攻撃の機会が作れない様子だった。
反撃できないことをいいことに、兼一の攻撃はさらに勢いをましていく。
とはいえ美羽もほんらい実力は、兼一の数段上をいく。
カウンターはとれないにせよ、そつなく攻撃を跳ねのけ続けていた。
「兼一のヤツ、ひょっとすると、美羽から一本とれるかもな」
と兼一の勝利に期待するのは、逆鬼至緒。
「でも形勢は伯仲している…かもね」
と冷静に分析するのは、香坂しぐれ。
「防御だけで勝てる達人はいないね。」
と自説の攻防バランス論を強調するのは、馬剣星。
「まあ諸君見ていたまえ、兼一君の勝利は確実だ。」
と自信満々なのは、甲越寺秋雨である。
ちなみに「はんばーぐが食べたいよ」と何も考えていないのが、アパチャイだ。
さて組手の展開に、視線をもどそう。
どんなに攻撃をかわされても、兼一はあきらめない。
技の未熟を精神力で補い、観る者の魂魄を揺さぶるような激しさで、責め手をゆるめない。
「どうしました、美羽さん?
手を出さなければ、絶対に一本とれませんよ!!」
兼一の分際で態度がデカイぞコノヤロウ!と言いたくなるトコロだが
ともあれ、その燃えるような闘志は、美羽の技量を圧倒しつつあった。
そして闘争の常として、結末は突然あらわれた。
顔面への突きを美羽が避けたその刹那!
美羽は鳩尾に、突如として耐えがたい苦しみを覚えた。
「うあああ……!!」
たまらずに、目を剥いて苦悶の声をあげる美羽。
みれば兼一の拳が、美羽の柔らかな下腹部に突き刺さっている。
見事に決まった兼一の突き。
それは兼一の得意技、"抜塞大"の中の山突であった。
山突の効果は、すでに対筑波戦で実証済みだ。
美羽のダメージは途方もなく大きかった。
オトリの拳を避けようと、美羽は意識を上半身に集中していたのだ。
だから自然と腹筋がゆるんでしまい、ダメージを大きくしてしまったのである。
ゆるんだ下腹部への一撃に、おもわず体から力が抜けおちる。
へなへなと崩れていく美羽のカラダと重心。
そこへ間髪をいれず炸裂したのは、兼一お得意の連続技だ。
「カウ・ロイ!!」
「鳥牛擺頭!!」
「朽木倒し!!」
瞬く間に繰り出された技の連続に、美羽はボロキレのように叩きのめされた。
最後の朽木倒しでは、膝をもっていかれ、激しく床に転倒。
倒れたところで、兼一渾身の一撃が、美羽の顔面に容赦なく叩き込まれた。
トドメの一撃である。
美羽は悶絶し、白目をむいて悶絶し、失神した。
時間が止まったような勝利の瞬間。
一瞬の沈黙をおいたのち、歓声が沸きあがった。
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「美羽から一本…とった…よね?」
思いがけない結末に、いつもは無口なしぐれも、そのときばかりは多弁だった。
「どんな魔法を使ったの…秋雨…?」
周囲の視線が集まるのを肌で体得しながら、秋雨は口をひらいた。
「まえにも説明したが、"きょうせい君ぐれ〜いと"を使ったんだ。
しかし兼一君は、並はずれて重度のマゾヒストでね。
マシンをもってしても、期待したほどの効果はあげられなかったんだ。
予定では、病的なほどのサディストになるハズだったのだが…」
秋雨は、いかにも残念そうな表情で、チラリと兼一の姿をながめた。
歓声でわれに戻ったのか?兼一はかなり狼狽していた。
それはそうだろう。
愛しい美羽をボコボコにしてしまったのだ、狼狽しないほうが不自然である。
そこでさっそく、いつもながらの「フェミニスト」ぶりが、もう復活。
倒れた美羽をやさしく抱き上げて、一生懸命に介抱していた。
意識を取り戻した美羽に、今度は土下座してペコペコと謝る兼一。
そんな兼一をみながら、秋雨は続けた。
「今の兼一君はみてのとおりだ。もう前の彼に戻ってしまっている。
どうやら兼一君のマゾ根性を、私は過小評価していたようなのだよ。」
電気ショックをもってしても、改造できない兼一のドマゾ根性。
やはり兼一は、「意思の人」ということなのかもしれない。
いかにも仕方がない、というように秋雨はため息をついた。
けれでも、これでは兼一勝利の方程式は説明できない。
そこで馬剣星が尋ねた。
「じゃあどうして兼ちゃんは、美羽から一本とれたの?
兼ちゃんの攻撃能力がそんなに向上していないとすると…」
「いかにも。
"きょうせい君ぐれ〜いと"をもってしても、
兼一君の攻撃本能はそれほど増大しなかった。そこでね…」
秋雨の目が光った。
「美羽も改造することにした。ただし美羽はマゾヒストに改造したのだよ。」
兼一のみならず、美羽もまたマシンによる精神改造を受けていたのである。
なるほど、美羽の防戦一方だったのも、これで説明がつく。
驚愕の事実に、さすがの豪傑たちも声がでなかった。
「美羽も美羽で、組み手でほとんど手を抜かない。
真剣勝負ならそれでいい。
だが兼一君相手の場合は、もう少し手を抜いてもらわないと困る。
さもないと兼一君にはいつまでたっても、自信というモノがつかない。
かといって、すぐにやられてしまうようでは練習にならない。
だから打たれ強く、それでいて攻撃精神に欠ける練習相手が必要になる。
そこで美羽にはマゾになってもらったのだよ。
負けたり叩かれたりしただけで発情してしまう、病的なほどのマゾヒストにね。」
自信満々の秋雨だったが、ほかの師匠たちは、意外と引き気味だった。
「すげえ荒業だな…でもホントにいいのか?コレで…。」
と呟いたのは逆鬼。やはり基本的には善人なのだろう。
アパチャイにいたっては、「美羽、可愛そう…」と涙目だった。
けれども秋雨はまるで動じない。
唖然とする面々を安心させるように、表情をやわらげて、先を続けた。
「性格改造と言っても、もちろん機械のやることだ。
美羽のマゾも、半年もすれば直ってしまうだろう。
だがその半年うちに、兼一君は適度な自信をつけるはず。
この自信は、最強の弟子完成への大いなる布石となるのだよ、諸君!!」
はじめのうちは、美羽と兼一に同情していた師匠たち。
しかし本質的には、武術の究極をめざす異能の豪傑たちだ。
こう言われてしまえば「最強弟子育成」への欲求が、ムズムズと湧いてくる。
最初に声をあげたのは、長老だった。
長老は、実の孫娘を変態マゾ女に改造されたにもかかわらず、大満足の様子。
「さすがは甲越寺君じゃ。
若者の心をよく理解して、コントロールしておる!!フォフォフォフォ…」
などと秋雨に対する賞賛を惜しまなかった。
このジジイの鬼畜発言が、豪傑たちの本能を解放してしまった。
さっそく師匠たちの間で話し合われるのは、美羽を練習台にした兼一の「技修行」。
「美羽を練習台にして、兼一君にはソーク・クラブを習得してもらいたい…」
「兼一に武器を与えてみよう…か。美羽なら避けられる…はず…」
「それなら寝技のほうが、学習効率が高そうね…」
「カウ・ロイ!!カウ・ロイ!!美羽なら壊れないね。ダイジョーブ、ダイジョーブ!!」
ああでもない、こうでもないと物騒な会話が続くなか、
逆鬼だけはいまひとつノリ気になれなかった。
「やっぱ美羽も女の子だぜ…練習台にするのはヤバくないか…?」
本気で心配する逆鬼に、秋雨はやさしく語りかけた。
「安心したまえ逆鬼君。それは杞憂だ。
我々には遠く及ばないものの、美羽も一般的には達人の域に達している。
ワザと手加減するにせよ、兼一君の攻撃程度では、まず怪我をする恐れはない。」
「イヤ、それでもだなあ…」
それでも納得しない逆鬼の弁を秋雨はさえぎった。
「それに、逆鬼君、見たまえ美羽の股間を。」
みれば美羽のボディー・スーツの股の部分には、大きな染みが出来ていた。
フフンと笑いながら秋雨は付け加えた。
「素人童貞の君にはわかりにくいだろが、アレは失禁ではないよ。」
そうあれは、小便ではない。
兼一に組み敷かれたとき、美羽がおもわず分泌してしまった淫汁である。
「強くなった」兼一の足下にひれ伏すコト。
このコトは、ハードマゾになった美羽にとって、至福の快楽だ。
マゾ的快楽はいまだ持続しているらしく、股間の染みはひろがるばかり。
美羽は目を妙に潤ませながら、介抱する兼一にしだれかかっていた。
ナニを想像したのか、前かがみになった逆鬼に、秋雨は付け加えた。
「やや倒錯的な欲情だが、相手はもともと気になっていた兼一君だ。
さほどの問題はないと思うよ。
それに、あの二人のコトだ。少々荒療治をしなければ、結ばれないな。」
結果オーライを、意地でも自分の業績と結びつけようとする秋雨。
「哲学する柔術家」の発想は、常人の理解を超えていた。
ともあれ美羽と兼一は、幸せそうだった。
「あの…兼一さん、もしよろしかったら、お風呂場まで連れて行って頂けません?
ちょっと汚れちゃったんですけど…まだ脚が少し痛くって…。」
「もちろんお手伝いします。
でも美羽さん、こんなコトになって、本当にすみません。」
心からすまなそうにする兼一だったが、美羽は気にしていなかった。
「では…その…お風呂場の中でも…お手伝い頂けますか…
手も…少しだけ…痛みますのですわ…。」
兼一は自分の耳を疑った。
「はい…?」
呆然とする兼一に、美羽は顔を真っ赤にしながら、蚊の鳴くような声で呟いた。
「あの…お礼に…兼一さんの身体も…洗わせて…頂きますです…わ。
わたくし…しっかり…ご奉仕…いたしますの…」
そう言いながら、美羽はおずおずと、兼一の高ぶるイチモツをまさぐっていった。
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おそまつ。