「史上最強のフェチ男ケンイチ」
梁山泊。
そこはスポーツ化した格闘技に溶け込めない豪傑や
武術を極めてしまった達人が、集う場所。
―そしてナイスなエロバディたちが集うオカズ天国である。
そんな梁山泊にあって、厳しい修行生活送る兼一クン。
さまざまな意味で充実した青春を謳歌している。
しかし思春期全開のお年頃だから、悩みも意外と多い。
そこで兼一が師匠に相談した悩みは…。
兼一は、おずおずと馬剣星に相談を持ちかけた。
しかしどうにも話にくいらしく、ひどく迂遠な物言いをした。
「馬師匠、最近どうしても、しぐれさんが気になって仕方がありません。」
「しぐれどん?いいんじゃないの。
美羽だけがオンナじゃないね?
たくさん女の子とつきあうのも修行のうちよ。」
「いや…実はしぐれさん本人はどうでもいいんです…」
顔を赤くする兼一。
照れる愛弟子に、馬は訳知り顔でこたえた。
「ああ誰でもいいのね。
じゃあチケット買ってヤリコンに行くといいね。
合ドラでキメてくといいよ。
なんなら冷たくなるヤツ、あげようか?合ドラじゃないけど
コレさえ持ってれば、モテない兼ちゃんでも王様になれるね。
女の子たちのほうから勝手に寄ってくるよ。
おいちゃん先週、黄金町で3パケほど仕入れてきたから…」
さすがは大陸系マフィアとコネがある馬剣星。
さっそくゴソゴソと懐を探りはじめた。
しかし兼一としては、この年齢で犯罪者になるのはマッピラごめんだ。
「いや師父!ちがうんです!そうじゃないんです!」
「じゃあ何よ。隠さず正直にいってごらん。」
兼一は、思い切ってうちあけてみた。
「しぐれさんの、ストッキングがたまらなく好きなんです!!」
(筆者注・あれはストッキングといったらストッキング。断じてタイツではない!)
香坂しぐれといえば、武器と兵器の申し子。
それだけではなく、美羽と並んで梁山泊お色気要員の双璧をなすムチプリ美女だ。
マイクロミニ着物からつきでた、カタチの良いスト美脚はなんとも、なまめかしい。
だが兼一の関心は、「しぐれ」という美女の汗と体臭が染み込んだストッキング。
しぐれ本人は、あくまで関心の外に置かれているのである。
やや倒錯的な嗜好だが、兼一をみつめる馬の目は、ひどくやさしかった。
「わかるぞ、我弟子よ。」
馬は、いつになく真剣な表情で、兼一の手をしっかり握りしめた。
「おいちゃんのコレクションを分けてあげようんね。」
数分後、兼一に茶色い紙袋が手渡された。
「しぐれどんのストッキングは、色気がないね〜。
オシャレ心がないから、単色の黒と紺だけ。
でもしぐれどんは、アブラ足だから臭いはすごいよ。
今日あげたのは、しぐれどんが旅に出ていたとき、履いていたヤツね。」
馬は意味ありげにニヤリと笑い、先を続けた
「たぶん、二三日ぐらい履きっぱなしだったんじゃない?
脱いでから丸一週間たったブツだけど、それでもまだ、クラクラするほど…。」
兼一はゴクリと息をのんだ。
馬の説明を聞いていると、いまにも紙袋から、しぐれの足臭が染み出してくるような
気すらしてくるのだから、不思議なものだ。
(このなかに、そんな臭気フンプンたるストッキングが入っているなんて)
(あのキレイなしぐれさんの足が、臭いアブラ足だなんて…)
考えただけで、兼一の胸は高鳴り、袋を持つ手が自然と震えてしまった。
「師父…あなたは…あなたという人は…最高の中国人だ!!!」
狂喜乱舞する兼一に、馬も満足そうだった。
「でも兼ちゃん、なんで美羽に頼まないの?
使用済・臭いつきストッキングをくれって、お願いすればいいんじゃないの?
兼ちゃんには、美羽がいるんだからさ。」
意外な質問に、兼一はあわてた。
そんなコトを美羽に頼めるわけがない。
軽蔑されるのは確実だ。
そうなれば、死んだほうが、まだマシである。
それにだいいち、美羽はナマ足派だから、ほとんどストッキングを身に着けない。
「…でも師父、
美羽さんとボクは…つきあっている…ワケじゃないし…
それに…そんなコト頼んだら…美羽さんに嫌われちゃいますよ…。
そうなったら…ボク生きていけない!!!」
つっかえ、つっかえのシドロモドロ。
情けなさ全開の兼一だが、馬はあくまで兼一に優しかった。
「でも兼ちゃん、何事もやってみなければわからないよ。
嫌われることを恐れていたら、何もハナシは進まないね。
思い切って、正直に自分の気持ちをぶつけることも、大切だね。」
正論である。
しかし、だからといって思いを寄せる女の子に
「使用済ストッキングをください」とは、とても言えるものでもない。
物事にはやはり順序というものがある。
むろん「人生経験豊富な馬剣星も、そのへんはよく心得ていた。
「いちばん大切なのは、兼ちゃんの真摯な思いね。
まずこれさえあれば、だいたいのことは何とかなるよ。
結果は後からついてくるものね。」
ここで馬は、神妙に聞き入る兼一に、あらためて問いかけた。
「ところで本当に、しぐれどんのストッキングが欲しいの?
しぐれどんの足臭が、いちばん嗅ぎたいの?
兼ちゃん、どうよ?」
馬の問いかけに、兼一は目をつぶって少し考え込んだ。
そののち、今度はハッキリした声で、断言した。
「ボクが本当に欲しいのは、美羽さんの使用済ストッキングです!
美羽さんの足の臭いが嗅ぎたいんです!
美羽さんの臭いじゃなければ、ぜったいに、ダメなんです!」
言い終わると兼一は、ためらうことなく、紙袋を馬に返した。
「師父、ご好意だけありがたく頂戴します!」
ニッコリと清々しい笑顔を浮かべる兼一。
その表情には、一点の曇りもなかった。
「それでいいね。我弟子よ。
いちばん大事なのは、自分の思いね。
あと勇気をもって、その思いを実現させることね。
思いがあれば、結果は後からついてくるものよ。」
そう言いながら、ふと天井をみあげる馬剣星。
そして思い出したように、つけくわえた。
「もっともこれは、兼ちゃんだけにいっても、仕方がないね…。」
すると天井裏から、コトリと小さな音が聞こえてきた。
それから数日後、梁山泊にひとつの変化がおきた。
ナマ足派の美羽が、ストッキングを身に着けるようになったのである。
それもほとんど24時間常時着用だから驚きだ。
登校するときはもちろん、組み手のときですら、ストッキングをはいたまま。
これは美羽しか知らないことだが、なんと寝ているときもはいているのだ。
しかもほとんど、履き替えていない様子。
靴を脱いだ美羽に近寄ると、プンと足臭が漂っていた。
ここまでくると、さすがに少々常軌を逸している。
「最近、冷え性気味なので」などと本人は弁解したが、その不自然さは、あきらかだ。
しかし達人たちは、気づいているでか、何もいわない。
ただ、しぐれと馬が、訳知り顔でニヤニヤするのみだった。
大喜びなのは兼一だ。
美羽が、大好きなストッキングをはいてくれるのだから、喜ばないわけがない。
しかも組手中は、誰に恥じることもなく、堂々と触れるのである。
乱どりの展開しだいでは、触わるだけでなく、鼻をつけて嗅ぐこともできる。
運がよければ、味わうことも可能だ。
自然と修行に力が入るようになった。
ストッキングに包まれた美羽の脚技を恐れなくなったし、寝技も厭わない。
何度美羽に倒されても、
「美羽さん、もう一本お願いします!」と再び立ち上がってくる。
そんな健気な兼一を投げ飛ばしながら、美羽は内心苦笑した。
(ホント、手がかかる弟をもった気分ですわ)
美羽にしてみても、少々兼一を喜ばすのはやぶさかではない。
それに、兼一の修行が爆発的にはかどるなら、ストッキング着用などお安い御用である。
とはいえ、全身スパッツにストッキングの異装には、美羽とて抵抗がある。
異装にもまして、美羽を閉口させるのが、やはり臭気であった。
ただでさえ、体臭のキツイ美羽のこと。
はきっぱなしのストッキングは、相当の異臭を放っていた。
(かなり臭っているはずですもの…これはけっこう恥ずかしいですわ。
でも兼一さん、ほんとうに臭くないのかしら?)
もちろん臭いに決まっている。
だがこの臭さが、武術に恋にと修行に励む兼一にとって、なによりのガソリンだ。
実際、今投げ飛ばしたばかりなのに、もう兼一は立ち上がっていた。
「美羽さん、もう一本お願いします!」
かなりのキツメの美羽の足臭のとりこになっている兼一。
(私の汚い臭いがすきなの?本当におもしろい人ですわ!)
美羽は兼一を心の底から兼一のことを愛しく感じた。
自然と、股間から分泌される体液が、腿をつたい、ストッキングに染み渡っていく。
稽古中、兼一が鼻で味わう、美羽のストッキングの香り。
その一部が、美羽の淫汁の臭いであることを、兼一は知らない。