――――ある日、桑野設計事務所にて。
「桑野さん、今度飲みに行きませんか?」
英治は椅子に座り、クルクル回りながらパソコンに向かう信介に声をかけた。
「...今日なら空いてるぞ。」
パソコンに向かったまま信介が答える。
「え?」
「今日は嫁がいないからな。」
「どっか行ってるんっすか?」
「あの、みちるとか言う子の所にお泊まりだとよ。」
「へぇ...。」
「で、行くのか行かないのか?」
「い、行きますっ!」
その夜、仕事を早めに終え、信介の行きつけのバーに行く二人。
「―――で、何だ?」
「え?」
「何か話があるんだろう?」
信介に尋ねられ、英治は遠慮がちに口を開く。
「...桑野さん、早坂さん...じゃなかった、夏美さんとうまく行ってますか?」
「フ...何かと思えばそんな事か...。」
唇の端を上げて笑う信介。
「ちゃんと掃除も家事も俺がやってるし、休みの日は車で買い物にも付き合ってるし、こないだも...」
(うわ、夏美さん愛されてんなぁ〜。)
「いえ、俺が言ってるのは...夜の営みって言うか...。」
「なんだ、そっちか。」
信介は鼻で笑う。
「週に3回はやってるな。」
(うわ、夏美さん大変だなぁ〜。)
「そ、そうっすか。」
「なんだ、言いたい事があるならハッキリ言え。」
視線を泳がせていた英治は口を開く。
「こないだ、沙織にSEXがマンネリでつまんないって言われてですね、桑野さんの所は、その、どうなのかなって...。」
「俺はいつも同じだ。」
「えっ!マジッすか!?」
思わず声を上げる英治に、信介は眉間にシワを寄せる。
「なんだ、いけないか?」
「や、そう言う事じゃなくて...夏美さん、何も言わないですか?」
英治の質問に不思議そうに答える信介。
「ああ。お互いの顔も見れるしな。」
(高校生かよ!)
「それならイイんっスけどね...。」
「お前は、さっきから何が言いたいんだ?」
少し苛ついて尋ねる信介に、英治は
「こないだ、雑誌で読んだんっすけど、いつも同じSEXは女に飽きられるって書いてあったんですよ。」
そう答える。
「ふーん」
信介は興味無さそうにマッカランを一口飲む。
「あ、やっぱり桑野さんには必要無いって言うか...興味無いですよね。」
すると、信介が振り向く。
「誰が興味無いって言った。」
「え?」
(興味あんじゃん。)
「それで、色々調べたんですけど...」
英治は鞄からゴソゴソと何かを取り出した。