(今日は夏美さんがウチにお泊まり...w
今日こそ私の気持ちを受け入れてもらうのよ...ウフフ♪♪)
一人そんなヨコシマな妄想をするミチル。
「ミチルちゃ〜ん、お風呂ありがとー。」
頭をタオルでガシガシ拭きながら、夏美がバスルームから出てくる。
パジャマ姿の夏美に、鼻血を少々抑えつつ、ミチルは冷蔵庫から缶ビールを出す。
「夏美さん、お風呂上がりにはヤッパリこれですよね〜♪」
「わー!さすがミチルちゃん♪」
嬉しそうにビールを受け取る夏美。
「ほかにも焼酎や日本酒もあるし、おつまみもいっぱい用意したんで、ドンドン飲んで下さいねー。」
「わ〜い♪」
不適な笑いを浮かべるミチルに気が付くはずもなく、嬉しそうにビールを飲む夏美。
ーーー2時間後。
「ーーでさ〜、桑野さんったら...」
(...おかしい。かれこれだいぶ飲んでるのに、夏美さん全然酔っぱらわないじゃない...。まさか、こんなに酒豪だったとは...。
よし、こうなったら...。)
ーーゴソ。
ミチルは鞄から、小さな瓶を取り出した。ラベルには、沢山のハートとドクロマークが描かれている。
(フフ...英治のヤローから奪い取ってやった、この媚薬で...ww
大体、英治のヤローこんなモノ使って、沙織とニャンニャンするなんて生意気なんだよ。)
「ミチルちゃん、どうかした?」
ふと我に返ると、キョトンと顔を覗き込んでくる夏美と目が合う。
「い、いえっ!」
(そんな無防備に可愛い顔されたら...。)
ミチルが夏美に飛びかかろうとした瞬間、玄関のチャイムが鳴った。
「誰だろ?」
夏美はミチルに気が付かずに、玄関の方へ振り向く。空振りしたミチルは、テーブルにオデコを打ちつけた。
「?ミチルちゃん?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと出てもらっていいですか?」
オデコをさすりながらそう言うと、夏美はイヤな顔一つせず、玄関へ向かった。
(ーーよし!今よ!)
ミチルは例の瓶のふたを開け、夏美の飲みかけの焼酎にコポコポと注いだ。
(フフ。これで良し...ww)
ミチルが一人でニヤニヤしていると、玄関から何やら聞き覚えのある声が聞こえてきた。
玄関に行ってみると、そこには隣人の桑野信介がひょろりと立っていた。
「あ、桑野さんがシュークリーム持って来てくれたの。」
嬉しそうに説明する夏美の手には、ケーキの箱。
「あ、あなたが泊まりに来てるって英治に聞いたから...つ、ついでですっ!」
「はいはい。」
それでも、嬉しそうに話す夏美。
(英治のヤロー...!)
「あ、今ミチルちゃんと飲んでたんですけど、良かったら桑野さんもどうですか?」
一瞬、嬉しそうな顔をする信介だが、すぐに青い顔になり、
「い、いえ、僕は結構です...。」
そう言って、さっさと自分の家に帰ってしまった。
「?どしたんだろ?」
自分の後ろで、ミチルが信介をゴス睨みしていたなんて夢にも思わない夏美は、首を傾げた。
「そ、そんな事より飲みましょ飲みましょ!」
「そうね。」
信介が持って来たシュークリームを冷蔵庫へ入れると、夏美は飲みかけの焼酎を再び飲み始めた。
最初は何ともなかった夏美だが、段々目が虚ろになってくる。そして、
「ミチルひゃん...なんらか、へん...。」
呂律も回らなくなってきた。
(うおっしゃあ!来たど来たど!!)
興奮する気持ちを抑え、平然を装う。
「ちょっ、夏美さん、大丈夫ですか?」
夏美の肩を軽く揺すってみる。
「ふにゃ〜」
少し眠そうに、涙目で見つめてくる夏美に、ミチルの理性が吹っ飛ぶのに時間はかからなかった。
「好きだああぁーーっ!!!」
ミチルは夏美をソファーへ押し倒した。
「ん〜?にゃにぃ〜?」
無抵抗の夏美のパジャマを、ミチルはせっせと脱がしにかかる。
ーーーが、その時、背後から思いっきり不機嫌な声が聞こえてきた。
「何やってるの?」
振り向くと、そこには仁王立ちしている摩耶の姿。
「な、何で沢崎さんがここに!?」
「桑野の部屋からベランダの壁、蹴破って来たのよ!」
よく見ると、ベランダのカーテンが揺れている。
「桑野さんが人を部屋に入れるなんて...。」
「話があるってドアを開けさせて、隙をついてこじ開けたのよ。」
なんか、聞いたことある台詞だな...。
「桑野さんは?」
「私がベランダ蹴破って隣行くって言ったら、止められたから、エルボ食らわせて少し眠ってもらったわ。」
「なんちゅ〜女や!」
「あんたに言われと〜ない!英治が全部吐きよったわ。薬使って夏美さんをモノにしようなんて...この娘っ子が..。」
なんか言葉使い変わってるし。
「沢崎さんは桑野さんが好きなんじゃなかったんですか!」
「そんなのフェイントよ!私は夏美さんを一目見た時から、夏美さんにゾッコンだったのよ!」
「私だって!私なんか...」
その時、ソファーから夏美の呻き声が聞こえてきた。
「う〜ん...。」
胸元まではだけたパジャマに、閉じた瞳にはうっすらと涙が浮かび、薄く開いた口唇からは吐息が漏れている。
「...ミチルちゃん」
「はい」
「この勝負、一旦置いといて、取り敢えず二人で夏美さん頂いちゃわない?」
「はい」
ーーそんな訳で、夏美は二人においしく頂かれましたとさ。