「お、お風呂、お風呂入ります。お風呂に入らなきゃ」  
真山の顎をおでこでアッパー喰らわせた格好になり、よろけながらシャワールームを目指す柴田。  
「あれ?どこ?・・あ、ここかな?あれっ?キャー」  
自分がばらまいた書類の山に足を取られ転倒する柴田。  
「ばか、ばーか」  
抱き起こす真山。  
「いった・・いたーい。」  
ふと目を開けると間近に真山の胸板があった。  
うっすらビオレの香りが鼻をかすめ、  
「真山さん、いい匂い・・」  
とだけ言い残し、気絶する柴田。  
打ち所が悪かったのか、心配だったがとりあえずベッドに寝かせることにした。  
 
ベッドに横たわる柴田を改めて見てみる。  
冴えない服に身を包み、化粧っ気もなく、髪はベトついてボサボサ。  
こんなマイナス要素の固まりのような身なりの女に惹かれたのは初めてだった。  
しかし、以前から気付いていた。  
この女、べらぼうに端正な顔立ちをしている。  
まじまじ見ても欠点がない。  
吸い付くような美しい肌。  
ふと、柴田に触れたくなった。  
柔らかそうな唇を指でなぞってみる。  
真山は体が熱くなるのを感じた。  
「俺が?柴田で?」  
笑う真山。  
柴田でなければいけない自分には気付いていた。  
「キスしてください」  
「・・・」  
目を閉じたまま柴田が言い放った。  
「何度も言わせないでください。私真山さんとなら・・して・・」  
口をふさぐように舌を絡ませ覆い被さる真山。  
柴田の頭は真っ白になり、溶けてなくなってしまいそうだと思った。  
きつく抱きしめあいながら、真山がボソッと  
「服、脱がすよ」  
「はい・・」  
お風呂にはいってないので躊躇したが、口はそう呟いていた。  
 
「野暮ったいもん着てんな〜お前は」  
長いマフラー、ダボダボのコートを剥ぐ。  
ベストも脱がし、白いブラウスに手をかけた。  
「お前、女子中学生か」  
クマのプリントがついているブラが透けていた。  
「あ〜 コレ、初めて買ったもので、なんか捨てられなくて、つい着けちゃうんです」  
頬を真っ赤にして言い訳をする柴田。  
表情を変えずにボタンを外し、クマが水玉のリボンをしているのまでハッキリ見える状態になった。  
「お前さぁ〜」  
「はい?」  
「いい加減目開けたら?」  
恐る恐る目を開ける柴田。  
真山の顔にピントが合うまで少し時間がかかった。  
「俺でいいの?」  
「なにがですか?」  
「柴田の初めて」  
「・・・」  
まじまじと真山の目を見る。  
私の王子様はこの人だったのだ。  
「あぁん、あはん・・・・・・・・・・うふん」  
ハウツー本が脳裏に浮かび、練習の成果を発表する柴田。  
「・・・ばーか。入れちゃうよ?」  
 

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