「今日は随分冷えますね」
「そうだね。真夜中だからねッ」
「だからさっきから謝ってるじゃないですか」
「誠意が足りないの。毎度毎度本気でそう思ってるなら、早く帰ること覚えろよ! あー寒い畜生―」
「12月も終わりですからね。それは寒いです」
「いちいちムカつくんだよお前は」
「あぁ、そういえばもうクリスマスなんですね。ほら、大きいツリーです」
「そうだねデカいね。いいから帰るぞオラぁ」
「知ってますか? あのツリーにはロマンチックなジンクスがあるんですよ」
「知ってますか? 俺はさっさと帰りたいんですよカカリチョー」
「あのてっぺんのお星様、時間によってランダムに色が変わるんです。赤とか青とか」
「会話がキャッチボールだってことを感じさせてくれるよねお前って。お前の投げる球、みんな暴投だよ暴投。拾えるか畜生ッ」
「何言ってるんです、真山さん。それでレアなのがピンク色なんですけどね…」
「聞けよ、聞け人の話! …分かった、それ見ると何か貰えるとかだろ。百万?」
「違います。もー真面目に聞いて下さい。そのただでさえレアなピンクのお星様をクリスマスに見た二人は、必ず結ばれて幸せになるんです」
「それのどこが真面目に聞ける話なわけ」
「なんてロマンチック〜トレビアン」
「くだんねー。大体さ、男同士とか女同士で見ちゃったらどーすんのソレ」
「野暮なこと言わないで下さい! 心の淋しい真山さんには私の女心が解らないんです」
「知ーりーたーくねぇー」
「いいです。私を理解してくれる優しい未来の旦那様と見……」
「ハイハイ一緒に見てもらえよ、優しい旦那様にさ。ほらあれだろ、ピンクのお星さ……」
「……あの、ひょっとして」
「……。」
「……。」
「迷信だよ迷信! うそっぱちだねっ」
「そうおっしゃってる時点で既に信じてるんじゃ……」
「あぁん? 何か言ったぁ?」
「私だって真山さんなんかが運命の人だなんて冗談じゃ…いたっ」
「すっげぇムカつく。お前にだけは言われたくねー。つーか俺の台詞だよコノヤロウ」
「大丈夫ですよ。あのジンクスはクリスマス限定ですから」
「えっ? あ、そっかそっか。 ひゃっほうやったね」
「そんなに喜ばなくても…」
「あー残念だったね〜、クリスマスって明日じゃん」
「…………」
「あ? ナニ下向いてんのー? 柴田? しーばーた」
「真山さんどうしましょう」
「なに」
「日付、変わっちゃってます。今、にじゅう…」
「聞きたくないから。絶対知りたくないから。いやっヤメテー」