見つめ合っていた時間は1分にも1時間にも思える。  
動いたのは真山だった。抱き寄せられ、柴田の膝から調書が滑り落ちた。  
壁に押しつけ、唇を吸い、歯列を割って舌が入り込む。  
舌先を刺激する煙草の匂いに、逃げ場のない息苦しさに柴田はくらくらして膝が震えた。  
胸元に真山の手が伸びてきて、化繊のリボンが揺れた。  
唾液が混じりあい、舌が絡みあってどちらのものかすらわからなくなる。  
息苦しさに顔を背けると、首筋を舐め上げられ耳朶に噛みつかれた。  
 
「ホントにいいわけ?やっちゃうよ?」  
 
言葉では躊躇うくせに執拗な真山の愛撫に、柴田の身体が思わず跳ね上がる。  
いつの間にか外されたブラウスのボタンが脇腹に触れ、自分が半裸になってることを知った。  
 
「結構胸あるんだな。知らなかった。」  
 
下着をつけていない柴田の胸を遠慮なく眺めた真山が「ブラくらいしろよ」と呆れたように呟く。  
「なんか・・・目がいやらしいんですけど。」  
「いやらしいことしようとしてんのに何言ってんだよ」  
スカートとストッキングを一気に脱がせ、その下の赤い下着に視線を這わせた真山は、  
ため息をついて下着の縁に手を掛けた。  
耳まで赤く染めた柴田が顔を背けると、いきなり真山の手が柴田の胸を覆った。  
親指の腹で頂点をこねられ、思わず身体が硬直する。  
舌で舐められ、転がされ、甘噛みされ  
柴田の身体が緊張と弛緩を繰り返す。  
 
「ひっ!」  
両足の付け根に湿った感触を覚え、思わず視線をやると  
顔を埋めた真山が見えた。  
真山の舌が執拗に一点を責めると、耐えかねた柴田から嬌声が上がった。  
ぴちゃぴちゃと卑猥な音を立てる自分の下半身が自分のものではなくなってしまったような気がして  
中を擦る真山の指にも、首を振る以外どうにもできなかった。  
 
柴田の中が真山の指を締め付け、そして弛緩するのを見届けた真山は  
すっかり準備の出来ている自身に目をやり、  
呆けて力の抜けている女の脚を抱え上げた。  
 
「いれるよ。」  
 
濡れた先端をあてがうと、慌てたように柴田が目を見開いた。  
「あのっ」  
「ん?」  
「・・・い、痛いんですかね?」  
「知らねーよ。俺、女じゃないし。」  
「そ、そうですよね。すいません。お願いします。」  
真山は柴田の震える脚を抱えなおした。  
 
「いれるよ。」  
「あのっ!」  
「ん?」  
「き、気持ちいいですか?」  
「・・・まだ入れてないんだけど。頼むから静かにしてて」  
ガッチガチに緊張している柴田を見て、「このままじゃ入るもんも入らねーな」とため息を吐いた真山は  
柴田の緊張をほぐそうと唇を寄せた。  
 
「あのっ!!」  
「何だよ!」  
「・・・やっぱいいです。」  
真山の剣幕に怯えたような表情を見せた柴田はぎゅっと唇を噛み、目を閉じた。  
真山は萎えそうになる気持ちをどうにか打ち消して、柴田の髪を撫でた。  
「何だよ。言えよ。」  
 
「・・・手を握っててもらえますか?」  
 
潤んだ柴田の瞳に弱さと強さが入り混じって見える。  
真山はぎゅっと掴んだ柴田の手のひらの冷たさに驚いた。  
「緊張する?」  
「は、はい。」  
「ほら。こうしてたら怖くねーだろ」  
「・・・はい。」  
幾分か力の抜けた柴田の両足が持ち上げられ、真山が加減をしながら入り込む。  
中の熱さに互いの息が荒くなる。何度か打ち付けると  
柴田が眉を顰め、苦しそうに喘いだ。  
 
「抜くか?」  
「大丈夫・・・。」  
柴田の表情を伺いながら、ゆっくりと奥まで入り込んだ。  
二人の胸が重なり、刺激を受けた乳首がそそり立つ。  
抜けかかるところまで腰を引き、ぐっと奥まで押し込んだ。  
柴田の腰が浮き、ねだるように揺れているのに気付く。  
硬くなった乳首を捏ね、舌を吸い、リズムを刻むように突き上げると  
柴田の高い声が真山の口の中で溶けていった。  
柴田の首筋に顔を埋め、激しく腰を打ち付けると  
二人の間でぐちゅぐちゅと濡れた音が漏れた。  
 
きゅうきゅうと真山を締めつけていた柴田の内部がさらにぐっと狭くなり  
か細い泣き声のような掠れた悲鳴を上げるとびくびくと身体を震わせた。  
それを見届けると、真山はさらに奥まで届くように柴田の脚を抱えなおし  
腰を突き上げ、本能のままに一気に達した。  
 
 
 
 
 
 
 
 
「動くなよ」  
 
「・・・ふぇ?」  
真山の声に微かな反応を見せた柴田は、吹っ飛んだ意識を拾い集め  
未だ自分に覆いかぶさる真山を視線だけで追った。  
「さすがにね、中に出すわけにはいかないでしょー。」  
疾しさを誤魔化すように、はたまた間を埋めるように言い訳を並べた真山は  
柴田の腹部に飛び散った白濁した体液を拭い取ると、丸めたティッシュを放り投げ、柴田の隣に寝転んだ。  
汗ばんだ柴田の額に張り付いた前髪を撫でつけた真山は、「柄にもないことを」と慌てて身体を離す。  
漸く理性が戻ってきた柴田は足元に丸まっていた毛布を器用に足ですくい、肩まで引っ張り上げた。  
 
「あのー」  
すでにウトウトと眠りに落ちそうになっていた真山は不機嫌そうに柴田を見た。  
「真山さんみたいに上手になるには、沢山の男性とこういうことをしないといけないのでしょうか?」  
「俺そんなに上手かった?処女にそう言われるとは自信ついちゃうね。」  
遠慮がちに肩に触れてきた柴田の指が、甘えるように真山の肌を引っ掻いた。  
 
「いてて・・・じゃあさ、俺といっぱいしとけばいいんじゃん?」  
「あ、そっか。その手があったか」  
ほっとしたように笑顔を見せた柴田は長い睫毛を伏せ、真山の胸元に頬を擦りつけた。  
真山は柴田の髪に顔を埋めると、すっかり慣れてしまった柴田の匂いに安心したかのように目を閉じた。  
 

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