隊士訓練の後。
道場裏の井戸端に佇むセイの姿があった。
「神谷さん」
聞き慣れた、優しい声。
「はいっっ?」
後ろからいきなり抱きつかれたセイは少なからず狼狽した。
沖田はそのまま神谷の胸元を稽古着の上からまさぐる。
「お、おきたせんせえ・・・・・・」
「いけませんねえ、鎖は常時着用の事。約束じゃないですか」
「す、すみませっっっ」
今日はたまたま、鎖をつけていなかった。重さは気にならなくなったが、
毎日ともなればさすがにむれてしまう。そこはセイも女子故、半日ぐらいは
何もつけずに過ごしたい・・・と思った矢先の出来事。
まさかこんなに早く感づかれてしまうなんて。
胸元に置く手はそのまま、沖田はセイの耳元でささやいた。
「士道不覚悟」
耳から火が出るかと思うほど赤面し、とっさに身を翻そうとするセイ。
しかし沖田は逃げる隙を与えず、そのままセイの襟元へと指を進入させた。
「!ななな、何をなさるのです、沖田先生!ご冗談は・・・っ」
「おや・・・今日はさらしも巻いていないのですか?これは困ったなあ」
硬直するセイ。
稽古着の下は素肌で、沖田が指を忍ばせているその先には露わになった小さな乳房があった。
「・・・どうしよう」
「どうしようって・・・沖田先生・・・!」
「こまったなあ」
言動とは裏腹に、沖田の手は冷静にセイの乳房へと伸びてゆく。
「こまった」
「ぉ・・・き・・っせんっせっ・・・!」
指が、的確に柔らかな部分をとらえた。
無論セイは、必死で抵抗しているつもりである。
しかし、まったく力が入っていないのは自分でもわかっていた。
奥底では、このまま触れられる事を望んでいるから。
でも、そんな自分を認めたくない。わたしは女子じゃない、武士なんだ・・・!
心の内ではそんな葛藤を繰り広げつつも、身体のほうは慣れぬ刺激に俄に泡だっている有様だった。
沖田の無骨な指は官能的とは言い難い、まるで検分するかのような動きだったが、
それでも生娘のセイを刺激するには十分に足る物であった。
「・・・・神谷さんの胸は求肥(ぎゅうひ)みたいですねえ」
「・・・は?」
「やわらかいなあ。・・・甘いのかな」
「・・・え?」
「食べてもいいですか?」
にっこりと笑う沖田に、二の句が継げないセイ。
「ああでもここじゃあさすがにまずいですよね。甘いお菓子は夕餉の後。ね?」
「・・・はあ」
「じゃあ、そういう事で、今晩」
何事もなかったかのようにセイの襟に入れていた手を抜き、肩をぽんぽんと叩いてから
童のように駆けていく沖田であった。
その背を呆然と見ながら、セイの思考は停止している。
もろ肌脱ぎになった肩が風にさらされて冷たい。
「沖田先生・・・どうしちゃったの・・・?」
そして私は今晩どうなるの?てゆーか食べられちゃうの?
これって?これって!?
正気を取り戻して、大変な事をされたのだと気がつくまでに小半時かかった。
再び井戸端にしゃがみ込みながら襟元を正し、先刻の出来事をリピート再生し続ける。
やはり女子のセイであった。