弔問客が皆帰り、家の中はがらんとしてしまった。  
灯は義父を探して家の中を歩いていた。  
義母は息子と孫の両方を凄惨な事件で一度に失い、心労で倒れて入院している。  
義父は息子と孫の遺影の前に居た。  
「お義………」  
灯は声を掛けようとして止めた。  
暗がりのなかで義父は背中を丸め肩を震わせている。  
ときおりしゃくり上げるような嗚咽が漏れる。  
灯はその背中に声をかけられずにいたが、  
「お義父さん…申し訳ありませんでしたっ……」  
絞りだすようにそう言って土下座をした。  
 
義父が振り返り、嫁の灯を見据える。  
行き場のない怒りに口元を歪め目を泣きはらしている。  
喪服姿で髪を結い上げているため、なまめかしいうなじが覗いている。  
息子に連れられた灯を初めて見た時も思ったが、地味なのにどこか男を惹きつける色気がある。  
その色香が今の義父には疎ましく思えた。  
 
「 何が申し訳ないんだ? 」  
低く押しつぶしたような声でそう呟く。  
「結局、あいつもお前の色香に騙されてこんなことに…」  
喪服で土下座する灯に怒りの言葉を投げつける  
 
「ち、違います…私は義弟を誘惑なんかしていません…信じて下さい…!」  
「お義父さんが許していただけるなら… 何でもします 」  
それは心からの言葉だった。  
残された自分に出来ること…それは自分のために傷ついてしまった人に対する贖罪。  
「 何でもするだと?」  
だが義父には灯の献身的な態度が白々しい演技に思えた。  
下手に出れば出るほど怒りが燃え上がる。  
ーーそうやっているが内心はオレをバカにしている…  
 
気がつくと義父は怒りにまかせ灯の肩を突き飛ばしていた。  
「きゃっ!」  
倒れた灯の喪服のすそが乱れ色白の太ももがむき出しになる。  
生白い太ももを見た瞬間義父の中で理性が消えた。「何でもする?じゃあこうされても文句は無いんだな!」  
 
後ろから抱きつくと、喪服の前合わせに手を書け一気にはだける。灯の乳房がこぼれ落ちて露わになる。  
「いやぁ!や、止めて下さい!」  
義父の手を引き剥がそうとするが男の力にはかなわず、義父は灯の胸を荒々しく揉みしだく。  
「この胸も弟に揉ませたのか?えぇ?」  
愛撫するというよりは、自身の行き場のない怒りをぶつけるような手つき。  
灯は痛みに涙を浮かべて  
「お願いですっ…止めてっ下さい…主人の前で…」  
「何を言ってるんだ?弟と浮気して…いまさら誰に抱かれようが一緒だろうが!」  
そういうとうなじに分厚い唇を押しつけ、吸い付く。  
そのまま首筋まで舌でいやらしく舐め上げていき、さらに痛いくらいに乳首をつまみ上げる。  
 
夫と息子の遺影の前で義父に無理やり体を求められるーー  
そんな背徳的な状況のなか灯は何かを悟ってしまった。  
全て私が悪いんだ…  
母親に愛されなかったのも、義弟が私に言い寄り夫と息子を焼き殺し自殺したのも…  
そして、目の前の義父…  
全てすべてス ベ テ  
私が…  
 
「お義父さん…私の事を彼の前で抱いて下さい」  
灯の弁明をし謝罪をしても、やり場のない怒りを抱えた義父は救われない。  
義父の贖罪のために選んだ道、それは義父が恨む悪女になりきること…  
そして義父の責められながら思うがままに抱かれることだった。  
「ふん、旦那の親に抱かれたがるなんてな…やっと本性がでたな、この淫売め!!」  
そう蔑んだ笑いを口元に浮かべると  
「そうやって息子やあんたの弟を誘惑して弄んだんだろ!被害者づらするな!」  
 

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