心臓が危険なくらい高鳴っていて。身体に駆け巡る血が出口を求めて  
噴出しそうだった。  
 
ごめんね雨水くん。雨水くんには迷惑ばかりかけてるね。  
お互い様だろ。真赤にはいつも世話になってるし。  
 
押し倒し、その首筋を露にして、牙を突き立てる。  
血が、私の血が雨水くんの身体に。恥ずかしい。恥ずかしいよ。  
いっそ消えてしまいたい。けれど、雨水くんがいいと言ってくれたから。  
わたしを受け入れてくれたから。  
 
永劫にも近い時間の後、わたしは雨水くんの身体から身を剥がした。  
本当はもっと抱きしめたかった。抱きしめていたかった。  
いつからだろう。そんな風に思う様になったのは。  
 
彼を噛んだのは二度目だった。バイトの帰りだった。  
その前日、都合のいい人が見つからなかったのが運の尽きだった。  
 
押し倒して曝け出して牙を突き立てる。いつもの倍以上に恥ずかしかった。  
(あぅぅ、恥ずかしい。ついに噛んじゃったよ雨水くんを・・・ !)  
恥ずかし過ぎて、終わってからは彼の顔も見られずに、そのまま 走って帰った。  
逃げ出したと言い換えてもよい。  
何が恥ずかしかったかというと、コトの最中に(反射的なことであろうが)  
彼がこちらを抱きしめてきたことである。まして、  
――あ、気持ちいいかも  
とか、  
――このまま抱きしめて欲しいかな  
とか、そう思ってしまったことなど。言えない。誰にも言えるはずがない。  
注入後だというのに身体中の血が沸騰しそうだった。  
 
 
そして二度目の今日。公園の中で。  
「真紅・・・」  
気づいたら彼に押し倒されていた。さっきまで抱きついていた彼に。  
なんで?いや、なんでっていうかヤバイ。彼の荒いの吐息が吹きかかって。  
彼の身体は危険なくらい熱くて。その瞳は爛々と輝いていて。  
果林は女性として本能的な危険を感じた。感じた時には事態は抜き差しなら  
ない処まで進んでいた。ごめん、と彼が呟き、その唇が押し付けられる。  
恥ずかしいとか照れくさいとか、そんなことを感じている間もなかった。  
彼の唇が熱い。  
「雨水く、ん・・・」  
離れた時、ようやくキスされたことに気づいた。  
(あ、ああああ、キキキキキ、キスされた!?私雨水くんと !?)  
「ごめん真紅、俺、我慢できなくて」  
いつになく血色が良い顔で、けれど何か哀しげな表情で彼は言った。  
彼とて本意ではなかったのだろう。果林に血を注がれたものは一転してなに  
かが変わるのだが、こんな例はなかった。  
(記憶を消していないせい?)  
不思議とクリアーな頭脳がそんな推測をする。けれど、未だに押し倒された  
ままなのは変わらなかった。  
 
胸を揉まれる。ゆっくりと揉まれる。働くことに慣れた彼の指。  
「うぁ、う、すいく、ん・・・」  
言葉が上手くでてこない。こんなのはイヤだ。でも彼ならいいかも知れない。  
受け入れてくれたから。こんな自分を彼は受け入れてくれたのだから。  
だから、彼を受け入れるのは当然なのだろう。  
耳たぶを舐められてゾクリとする。こんなことをするなんて知らなかった。  
こんな気分になるとは思わなかった。他の人なら嫌悪と恐怖があっただろう。  
なのに、今は――  
「ふぁ、くっ・・・雨水くん・・・」  
身体が熱かった。血を出したばかりなのに、新しい血が身体を駆け巡っている。  
首筋に吐息が吹きかかる。それだけでも反応してしまう。  
「真紅・・・」  
こちらを覗き込む彼と視線が絡む。  
果林は――頷いた。彼を、受け入れようと思ったからだ。  
 
 
いろいろ段階を飛ばしている様な気もした。  
それでも、いい。彼ならば。  
出会いから今迄の思い出(果林的主観なのでかなり美化されている)が  
駆け巡る。  
決して、知られてはならない恋心だったはずだ。何せ種族が違う。  
友達でよかった。そうやって想いを押し込めてきた。こちらが一方的に想う  
のは自由のはずだ。そうやって自分を誤魔化してきた。  
 
                  全て偽りだった  
 
こんなにも彼の唇は温かくて。こんなにも触れ合った部分が熱くて。  
深く口付けして、彼の舌を受け入れる。たどたどしくも、自分も彼を  
抱きしめ、舌を動かす。少女漫画に描かれる、触れるだけのキスとは違う。  
自分も、どうにかなってしまったのかも知れない。ざらざらとした感触が心地よい。  
このまま溶け合ってしまえば・・・そう思う。  
 
風が吹く。自然公園の木々がざわめく。  
荒い吐息。水音。それは、舌と舌が絡んでいるからで・・・  
「ん・・はぁ、う、雨水くん・・・ふはぁ・・・」  
「真、紅・・・うむぅ・・・・」  
短い口付けの合間に名前を呼びあう。唇の間で舌と舌がじゃれあうように絡む。  
熱い。熱くて気持ちいい。止まらない。止める気もない。  
果林の身体に覆いかぶさりながら、貪欲に唇を求める健太。  
もうそれだけで達してしまいそうな気配がある。  
彼自身、この様なことをした経験は未だなく、そしてこれが初めてだった。  
そしてそれは果林も同様である。  
だからお互いに不安だった。上手くできている自信がなくて。  
相手が満足そうなので、お互いにそれでよしとした。  
本人同士が満足しているのなら、それ以上に必要なものなど何もなかった。  
 
やがて、健太の腕が動き、果林の胸を求めた。  
触られた刹那、果林に緊張が戻る。それを敏感に察した  
健太が腕を止める。そして不安な顔になった。  
こんな時でも、彼はやはり優しかった。だから好きになったのだと  
いまさら実感する。だから勇気を出す。  
「あの・・・いい、よ・・・」  
この機会を逃したら・・・・そう思うとやめる気にはならなかった。  
先のことは意識の外へ。種族の差異も意識の端へ。  
ゆっくりと彼の掌が胸を包み、そして愛撫する。愛撫というには拙いが、  
身体が反応する。ただ、触られているという実感だけがあり、他はよくわからない。  
「柔らかい・・・真紅の胸、凄く気持ちいい・・・」  
健太がしみじみと呟く。恥ずかしくて、くすぐったくて、でも嬉しい。  
好きに人に喜んでもらえたから。  
 
胸を揉まれている。ただ純粋に、彼が柔らかな膨らみを求めている  
のを感じて、不思議と安らぐ。つい、彼の頭を撫でたくなった。  
そうして揉まれているうちに、奇妙な感覚が生まれてきた。  
じんわりと熱い。そして不思議と切ない。  
これが快感であると、自慰の経験すら多くない果林にはわからない。  
ただ、胸の奥が締め付けられるような・・・  
 
――雨水くん・・・なんか、切ない、よ・・・  
――嫌、なのか  
――ううん、嫌じゃないの。ちょっと変な感じがしただけ・・・  
 
――見てもいいか?  
――・・・・・うん・・・いいよ・・・・  
 
やがて服を捲りあげられる。薄い桃色をしたブラが露わになる。  
彼が生唾を飲み込むのがわかった。  
恥ずかしいので顔は両腕で隠す。ただ、胸は隠さない。  
 
また彼の腕が――いや、指が、胸の膨らみを求める。  
布一枚なので、先刻より揉まれているという感覚がはっきりとする。  
そうしているうちに、自分の吐息に甘いものが混じる。  
時間の感覚が曖昧になってきた。  
ブラが捲られる。先端は既に硬く尖っていた。  
触られると思い、身を硬くするも、彼はまた掌で揉みはじめた。  
 
――ふぅ・・・あっ・・・あ・・・やぁ・・  
吐息が漏れる。いや、これはもう嬌声であった。  
悶えながらも、この感覚に身を任せる。いや、事の初めから既に  
彼に任せっきりであった。  
忘れた頃に唇を求められる。求められるままに唇を重ねる。  
そのまま胸を揉まれている。舌と舌が絡む。そして乳首が刺激  
されて身体が跳ねる。  
 
唇が乳首を含んでいる。舌で舐めて強く吸う。  
それを繰り返す。それだけで嬌声が止まらなくなる。  
 
乳首を吸われる。下腹部がきゅんとなる。子宮が疼いている。  
果林にはそれが理解できない。体感しても、知識としては知らない。  
ただ、嬌声が止まらない。艶っぽい、自分のものとは思えない声。  
空いた手で反対の乳房が揉まれる。今度は力強い。けれど、痛みは感じない。  
その寸前で力を抜いているからだ。こんな状況でも、根本的な優しさをなくさない  
彼が、本当に好きだと思う。  
喘ぎ声の合間に彼の名前を呼ぶ。熱っぽく、媚を含んだ声で。  
時折、彼もこちらの名前を呼ぶ。真紅、と。  
ほかの言葉を忘れたように。熱に浮かされた声で。  
 
散々乳首を吸われて、かなり追い詰められた果林に追い打ちを掛けるように、  
健太の興味の対象は下半身に移った。  
スカートの裾から、手を入れられる。ショーツに触れられる寸前、身体を捩る。  
流石にそこは怖かった。  
 
「あ・・・・」  
声を上げる。彼の手が触れる。布地の上から。  
「やっ・・・!」  
反射的に逃げそうになる。彼の指がその部分を撫でている。  
慎重に、傷つけないように。触れらているという事実が、実際に触れてられ  
ているという事より恥ずかしい。  
――そんなところを触るなんて・・・  
知識として朧げに知ってはいたが、本当に触られるのは格別に恥ずかしい。  
もう一度顔を腕で覆う。太股をピタリと閉じる。  
彼は慌てず太股を撫でた。ひゃん、と叫ぶ。  
 
時間の感覚が曖昧になってゆく。ともあれ彼は焦らなかった。そして止める  
気もないようだった。果林もここまできてやめる気にはならなかった。  
健太の触り方は、終始気遣いに満ていたからだ。  
太股と言わずあらゆる部分を官能的に撫でられ、やがて緊張がとけてゆく。  
身体の深い部分が熱い。彼を求めているのだ、と果林は思う。  
 
布地が引き下げられる。果林の秘められた部分が露わになろうとしていた。  
 
するりと脱がされた。右足から抜かれて、左足首に丸まっている。  
「真紅のここ、見ていいか?」  
そんなことを今更訊いてくる。  
「うぅ・・・嫌って言ったら?」  
これ以上ないくらい赤面しながら問い返す。  
「嫌なら見ないよ」  
「でも・・・触るんでしょ?」  
「触らないと、できないんじゃないのか」  
「・・・じゃあ、雨水くんも脱いでよ。わたしだけ、ずるい」  
「ここ、外なんだけど」  
「あ・・・・」  
今更の様に思い出す。なるほど、こちらは所謂半脱ぎなので、  
いざという時は素早く元に戻れるが、彼は、完全に脱いでしまうと些か  
問題がある。もっとも、こんな場所でこのような行為をする方が、  
もっと問題はあるが。  
 
彼の指が、その部分に触れる。いや、その外側を撫でている。  
緊張と羞恥と興奮が襲い掛かる。自分でもめったに触れない聖域に、  
男の子の指が触れているのだ。彼を受け入れると決めたとしても、この  
感覚は消えないし、消せない。ただ、途切れ途切れに喘ぐだけ。  
――あっ・・・はっ・・・変な感じが・・・  
身体の内側から、何かがこんこんと溢れ出す。彼の愛撫にこれ以上ないほど  
身体は反応していた。内心の戸惑いとはあまり関係なく。  
指でそこを開く。見られている。もう彼の顔を見れない。  
――綺麗だ、真紅のここ、花みたいだ  
彼が何か言っている。もうわからない。くらくらする。  
ただ彼に任せてもう何も考えたくない。考えられない。  
 
唇が寄せられて。吐息が吹きかかる。  
もう、恥ずかしさが臨界点を超えて、ただ『そうされている』ということしか  
わからない。思考はすでに停止して、ただ彼の行為を感じるだけになった。  
触れる。彼の唇が。花弁に喩えられるその部分に。  
キスされている。吸われている。  
舐められている。水音がする。  
力が抜ける。ただ任せよう。もう何も考えられない。  
唇は勝手に嬌声を紡ぎ出す。雨水くんとその名前を呼びながら  
喘いでいる。そうしている内に、舌が一番敏感な部分を突付く。  
一際甲高く啼く果林。そこはだめ本能的に叫ぶ。  
健太が頷く気配があった。  
そして、  
――もう、してもいいか?  
問われる。  
――・・・・・・来て  
答えた。  
 
ジッパーを下ろす音がする。秘所に熱い何かが触れる。  
知識としては知っているアレだ。男性のシンボルだ。  
慌てふためいたりしない。そんな段階は超えている。後から『来る』かも  
知れないが・・・  
彼が何か言っている。わからないが頷いておく。  
脚が広げられて。ズルッ・・・入ってくる。秘裂の中に、彼の熱いものが。  
内側から溢れ出た蜜が、進入の手助けをしている。  
身体が裂けるような痛み。  
――イッ・・・・・  
反射的に叫びそうになる。彼の進入が止まる。  
果林に気遣う言葉をかけてくれる。しかし、半端に入ったモノが  
痛みを与えているのに変わりはない。  
――大丈、夫、だから・・・一気にして・・・  
途切れ途切れに言った。むしろそちらの方がいいと思ったのも事実だ。  
やがて彼が行動を再開する。ズブズブと一気に入って来た。  
手首を噛んで苦鳴が出るのを抑える。そして彼が息を吐き切った。  
もう入ったぞ。大丈夫か?彼がそんなことを訊いてくる。  
痛いけど、平気、嬉しかったから。少女はそう答えた。  
 
嬉しかった。本当に嬉しかった。どれだけ想いを寄せたとしても、それは叶わぬ  
関係であったから。だから、初めてを彼に捧げることができて、本当に嬉しかった。  
反射的に彼の腰に脚が絡んでしまう。もっと深く繋がりたいという想いが出てしまった  
のだろうか。暫くの休憩は挟み、彼は動き出した。内壁が擦れる度に苦鳴が漏れる。  
必死に彼の身体にしがみ付く。ゆっくりと動く。繋がった部分から粘着質な音がして。  
時折、気遣う言葉をかけてくる。破瓜の痛みはまだ去らない。それでも平気と答える。  
彼は動く。気遣いと欲望をこめて。やがて繋がった部分が痺れてくる。  
痛みも鈍くなってきた。彼のものに成れつつあるのだろうか。  
「あっ・・あっ、あっ・・・あぅ・・・」  
喘ぎ声に甘いものが混じってきた。感じているのか。これが感じるということな  
のか、果林にはわからない。彼は、というと、もどかしいような、祈るような、そんな  
表情をしている。短く息を吐きながら、身体を動かしている。  
 
「くっ、真紅のここ、熱くて、気持ちいい・・・!」  
微妙な顔のまま、彼はそう言ってくれた。どう答えるべきか。  
いや、正直そんな余裕はなかった。  
「あっ、やぁ、熱い、熱い、雨水くん、熱いの・・・!」  
鈍い痛みの奥から込み上げてくる新たなる感覚。  
 
――気持ちいい?気持ちいいのかな?初めてなのに?  
 
わからなかった。しかし、痛みは去りつつある。彼の動きが大胆に  
なってくる。ぐちゅぐちゅという音が聞こえてくる気がする。  
「はあ、ふぁ、雨水くん、変、身体が変だよ、わたし、おかしく・・・!」  
無意識の内に腰が動いている。貪欲に貪欲に目覚めた快楽を貪ろうと  
動いている。  
「ま、真紅、俺、もう駄目だ・・・!」  
それが何を意味しているかぐらいは理解できる。脚を外さないと。  
子供はできないとは思うが、彼は気にするだろう。  
でも、このままでもいいような気もする。彼と離れたくなかった。  
終わったら離れなくてはならない。  
「嫌!雨水くん、このまま来て!」  
言ってしまった。  
 
激しく動き回っていたモノが、膣の中で爆ぜる。  
その先端から熱い液体が流れ出てきて、膣の中を満たす。  
 
――真、紅・・・ごめ・・・  
――謝らないで、わたしがしてほしかったんだもん。  
 
人間である彼と、一応吸血鬼である自分が、子供を作れるはずがない。  
もしそれができたなら、どれだけ素晴らしいことだろうか。  
意識の片隅に放置していた、種族の違いの問題が、再びよみがえる。  
 
ハンカチで性交の残滓を拭い去り、身なりを整える。  
その間、健太は複雑そうな顔で俯いていた。  
「雨水くん、身体、平気?」  
「あ、ああ、大分落ち着いたけど・・・あのさ・・・」  
「謝らないでってば」  
何となく、いつもと立場が逆転してるなぁ・・・そんな風に思う。例え、増血しても、  
気遣いを忘れない彼が、本当に好きだと思う。この人を好きになって、本当によかったと思う。  
「帰ろうよ」  
「・・・そうだな、帰ろう」  
二人連れ立って自然公園を後にする。  
二人寄り添って歩く。いつもより二人の間の距離が近い気がする。  
いいや、気のせいではない。ついに一線を越えてしまったのだ。二人とも予想すらしていない形で。  
そもそも、いろいろ手順を飛ばしている気がするし・・・  
「あ」  
「ど、どうした?」  
「ううん、何でもない」  
慌てて頭を振る。踏むべき手順の中で、もっとも重要なことを言い忘れていたことに、  
今更ながら気付く。  
――わたし、雨水くんが好きだっていってなかった・・・  
 
果林は自室のベッドの上に寝転がる。何もする気力がなかった。ここまで来るのが限界  
だった。まだ内股がひりひりするし・・・  
「うー・・・」  
どさくさに紛れて、告白しておけばよかったかも・・・そんな事を思う。  
明日、言ってみようか。そんなことを思う。種族は違っても、繋がることはできるのだし・・・  
「どうしてるかな、雨水くん・・・」  
ぼんやりと呟き、想いを馳せる。  
 
果林は知らない。この先にあることを。  
健太も知らなかった。この先にあることを。  
神ならぬ身であれば当然である。  
二人とも、何も知らなかった。この先に起こることを。  
 
                                       『終幕?』  
 

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