「有馬と浅葉の事情」  
 
 
有馬があやしい。  
どうも今日の有馬の様子が変だ。  
朝からソワソワと落ち着きがない。  
昼休み、教室に浅葉が遊びに来ると、二人してヒソヒソと内緒話を始めた。  
浅葉はニヤニヤと笑い、有馬はこころなしか赤面している。  
あやしい──宮沢雪野の目はごまかせない。  
 
「ねー、有馬ー。さっきあさぴんと何はなしてたの?」  
「な、なんでもないよ!そうだ宮沢、来週の委員会のことでさー」  
いつも冷静な有馬があわてて話題をかえる。  
何かある。  
宮沢の勘がそう告げる。  
──彼女の私に隠し事とは、なんてことかしらん。  
もちろん宮沢は、このままにしておくつもりはなかった。  
 
放課後。  
宮沢は「今日は、椿たちと帰るとから」と有馬につげて、さっさと教室を出て行った。  
有馬は浅葉と一緒に校門をくぐって下校する。  
その2人の後をつける影がひとつ、有馬と浅葉は尾行者に気づかない。  
 
有馬と浅葉はまっすぐ家に帰らなかった。  
電車で数駅、小さなショップの立ち並ぶ通りを浅葉と有馬は歩く。  
すれ違う女子は、かならず振り返るほど目立つ美男子二人だ、尾行者が見失うことはなかった。  
二人はあるショップに入った。  
尾行者(もちろん宮沢雪野)は驚愕した。  
そのショップはコンドーム専門店。  
宮沢も噂では聞いたことがある、コンドーム以外にも様々なHグッズが取り揃えられているとの話だ。  
男二人でこんないかがわしい店に入るとは!  
 
しばらくすると有馬と浅葉はショップから出てきた。  
有馬は紙袋を持って、恥ずかしそうに周りをキョロキョロ見ている。  
浅葉は満面の笑顔でそんな有馬を見ている。  
 
宮沢雪野はあまりのショックにその場を動けなかった。  
仲の良い高校生男子、特に浅葉の方は有馬を偏愛してると言ってもいい。  
まさか、まさか、二人は・・・・・・  
 
気がつくと二人を見失っていた。  
宮沢はあわてて立ち上がった。  
おそらく行き先は有馬邸だ。  
浅葉はいつも有馬ん家に入り浸っている。  
宮沢は走った。  
 
宮沢は有馬邸にたどり着くと、すごい勢いで何度もインターフォンを鳴らした。  
──ピンポンピンポンピンポンピンポン!  
中に人がいる気配はあるのに、なかなか出てこない。  
いったい中でナニをしているのだ!  
──ピンポンピンポンピンポンピンポン!  
数瞬後、ドタドタとあわてた風で有馬が玄関をあけた。  
顔が色っぽく上気していて、やや衣服が乱れていた。  
「み、宮沢?どどど、どうしたのさ突然!?」  
宮沢の目がギラリと光る。  
「浅葉が来てるでしょう。浅葉はどこ!?」  
言いながら、問答無用で家に押し入った。  
ズンズンと有馬の部屋をめざす。  
有馬があわてて制止するが、宮沢は止まらない。  
バン!  
有馬の部屋のドアを勢い良く開けると、まさにそこに浅葉はいた。  
「み、宮沢!?」  
あわてる浅葉。  
宮沢は絶句する。  
宮沢がそこで見たものは──  
 
床の上にコンドーム専門店の紙袋。  
紙袋から出されたコンドームのパッケージ。  
パッケージは開けられ、コンドームのひとつは封が開けられている!  
ベッドに腰掛けた浅葉。  
ズボンとパンツを膝まで下ろし、買ったばかりのコンドームはナニにかぶせられている。  
 
一瞬でそれらを見て取った宮沢雪野の拳が震えた。  
「こ・・・の・・・ホモ野郎〜〜〜〜!!!!!」  
「どげぇっ!!!?」  
怒りのコークスクリューパンチが浅葉を吹っ飛ばす。  
壁まで吹っ飛び、気絶する浅葉。  
「うわ!」  
宮沢に続いて部屋に入ってきた有馬が、驚きの声を上げた。  
「宮沢!?何してんだ!」  
「な〜にしてたかだとぅ〜、ナニしてたのはあんた達でしょうが!」  
鬼神のごとき宮沢が有馬の胸元を掴み、すごい腕力でやや下げる。  
ちょうど殴りやすい位置だ。  
「み、宮沢?なにか勘違いをして・・・・・・」  
「問答無用〜〜〜!!!」  
「うぐぃp@ど@あぽふじこp@ああdふれj1?」  
宮沢の鉄拳制裁が有馬を襲う。  
ゴツゴツと骨がぶつかる音がする、本格的なパンチだ。  
有馬は胸元を掴まれてるので逃げられない。  
それは有馬が気絶するまでつづけられた。  
 
しばらくして気がついた浅葉は見た。  
とっくに気絶した有馬を殴りつづける鬼神のごとき宮沢を。  
浅葉は泣きながら羽交い絞めにして鬼神・宮沢を止めた。  
 
「いや、だから誤解なんだって」  
浅葉がいきさつを説明した。  
「有馬がさ、え〜と、その〜・・・ゴムが欲しいって・・・俺に相談したのね。  
「どうも有馬のナニは大きくて、コンビニやドラッグストアに売ってるようなのは、痛くて入らないらしいんだ。  
「だからコンドームの専門ショップを教えてやって、一人じゃ恥ずかしいからと俺も付き添って  
「ついでに正しい付け方もレクチャーしていたとこなんだよ」  
一気に喋った浅葉、うさんくさげな宮沢。  
「ほんと〜に?」  
「ほ、ほんとデス」  
恐怖からカクカクと頷く浅葉、笑顔になる宮沢。  
「テヘッ、勘違いしちゃった。ゴメンね」  
「ごめんで。すむか〜〜〜〜〜」  
地獄から搾り出すような声の主は復活した有馬総一郎。  
顔がボコボコにされてても美男子は美男子。  
有馬が本気で起こってるのを見て取った宮沢は、ウルウルと涙を流し始めた。  
「うっうっう、ごめんなさい・・・・・・あたし、あたし・・・・・・」  
「その手には乗らないよ」  
「むぅ」  
「さー、どうしてくれようか」  
宮沢の嘘泣きをあっさりと見破った有馬、しばし考えて名案を思いつく。  
「早速コンドームを使ってみよう、宮沢、協力してくれるよね」  
「ええ?それってつまり」  
「ふっふっふ、逃げることはできないよ」  
強気な有馬におののく宮沢、すでに立場は入れ替わっていた。、  
「それはいい!名案だね。俺も手伝うよ」  
「浅葉!何言ってるの!」  
「何ってナニだよ、な〜、有馬」  
「あきらめるんだ宮沢」  
ガシッ、と有馬は宮沢の肩を掴む。  
コンドームのパッケージを片手ににじりよる浅葉。  
悲鳴を上げる宮沢。  
「いやあぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」  
 
二人の男子から入れ替わり立ち代り”おしおき”を受ける宮沢雪野。  
その悲鳴は数時間続いたという。  
 
☆おしまい☆  
 

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