お父さんとお母さんの高校、北栄高校の入学式の前日、私は秀明さんに告白をした。  
──好きです。秀明さんが好き。  
そのときの秀明さんは、心底驚かれたようで世にも奇妙な顔になっていました。なんだかかわいそうになってきたので、その日はそれ以上は追求しませんでした。  
その後も何度かアタックをかけてみましたが、軽くかわされてしまいました。  
秀明さんは長いこと私の父親気分だった人なので、私のことをなかなか女の子として見てくれようとしません。  
でも私は知っているのです。  
秀明さんは私以外の女性を本気で好きになることはない、ということを。だから私がずっとそばに居て、彼を幸せにしてあげるのです。  
 
入学式で新入生代表(昔のお父さんと同じです)を無事やりとげてから、しばらくたちました。  
学校の方はいたって順調なのですが、私の恋はなかなか進展しません。  
覚悟を決める必要がありそうです。  
 
今日も私はいつものようにお隣の秀明さんの家に遊びに出かけました。  
合鍵を使い、音を立てずに静かに入ります。アトリエをそっと覗くと、秀明さんが絵筆を握ってキャンパスに向かっているのが見えます。  
秀明さんは現代の夢二と言われて美人画で有名ですが、実は風景画、特に花のモチーフを描くのも好きなのです。  
今、彼が描いているのは桜。堤防の桜並木とコンクリートの建物の一角が見える。  
──私はこの場所を知っています。  
私の通う北栄高校、18年前にお父さんとお母さんと秀明さんが出会った学校です。  
キャンパスに向かう秀明さんの横顔は凛々しくて、思わず見惚れてしまいます。そしてこの人が好き、という気持ちがあふれてきました。  
お父さんのようでお父さんでない男性。いつからこの秀明さんのことが好きになったのかわかりません、物心ついたころからずっと好きでした。  
 
私は忍び足でゆっくりと秀明さんの背後に迫ってみました。  
「だーれだ」  
「うわっ、咲良ちゃん!」  
「あはは、驚きましたか?」  
「あー、驚いたよ。インターホンを鳴らしなさいって何度も言ったでしょー」  
「いやです。合鍵を持ってる恋人がインターホンを鳴らすのっておかしいです」  
「だれが恋人かー!」  
秀明さんは困ってるような怒ってるような顔で怒鳴りました。  
「合鍵だって君たち家族に渡したものであって、咲良ちゃん個人に渡したものじゃないんだよ?」  
「わかってます。この合鍵は私の宝物です」  
「わかってなーい!いや咲良ちゃんは頭がいいから、わかってるのでわざと僕を困らせるようなことばかりするんだ」  
「ひどいです。そんな風に見られてたなんて…」  
と、私はすこしショックを受けたように顔をうつむけてみました。  
しかし秀明さんには通じるはずもありません。  
「うわー、その悪魔っぷりはどこかの誰かを彷彿とさせる」  
秀明さんは頭を抱えて左右に振ります。どこかの誰かというのはきっと私のお母さんのことでしょう。お母さんの高校時代の武勇伝はイロイロと聞いています。  
 
こういった会話もとても楽しい。  
でも今日の私はある決意をしてきたのです。  
「──秀明さん」  
少しばかり真剣な声のトーンでわかったのか、秀明さんが私の目をじっと見ます。  
「今日は私を描いてくれませんか?」  
すこし微笑んで、彼は答えます。  
「そうだね、咲良ちゃんの高校の制服姿はまだ一枚もかいてなかったね」  
そう、秀明さんはいままで私を含めて私たち家族の絵を何枚も描いてくれてます。  
でも今日は違うんです。  
「ちがうんです。私の──裸婦を描いてください」  
言った瞬間、秀明さんの微笑みが消えました。真剣な顔で私の目をじっと見つめてます。  
「裸婦ってヌードだよ?」  
「はい」  
「ダメ」  
「どうしてですか?」  
「僕は裸婦は描かないんだ」  
「ウソです」  
秀明さんはウソをついています。  
このアトリエは私がまだ小さかった頃のかっこうの遊び場でした。探検をしているうちに、隠されていた大量のヌード画を見つけたことがあります。  
大半は知らない女性ばかりでしたが、なかには知っている女性もいました。  
瀬名りかさん、芝姫つばささん、井沢真秀さん、佐倉椿さん、沢田亜弥さん。みなさん私のお父さんお母さん、そして秀明さんの高校時代からのお友達です。  
私も何度もお会いしてる、綺麗で才能あるすばらしい人たちばかりです。  
それらの絵は、彼女たちの高校時代のヌードデッサンでした。どれも真剣に描かれた美しい作品です。  
秀明さんお女性を描くタッチは今と少しも変わらない、被写体の女性への限りない愛が込められています。  
そして──お母さん、宮沢雪野(当時)の裸婦画もありました。お母さんはいまでもとてもキレイだけど、その高校生の頃のヌード画はとても美しくて不思議な感じがしました。  
私は父親似とよく言われますが、目元とかは母親似だと思います。お母さんのヌードを見ていると、まるで私が裸になったような気がしました。  
私も高校生になればお母さんのような女性になれるのだろうか。  
いつしかその想いは”高校生になったら私もヌードも描いてもらおう”という願望にかわったのでした  
 
そのことを秀明さんに説明すると、彼は「ふぅ」とため息をつきました。  
「そうか、あれを見たのか。……どう思った?」  
「とても、キレイでした」  
「裸になるんだよ?恥ずかしくない?」  
「大丈夫です。覚悟はしてきましたから」  
「そう…」  
そう言って、秀明さんは描きかけの桜の絵をイーゼルから外して、かわりに真っ白キャンパスを乗せました。  
 
とうとうやりました!  
長年の念願が今日叶うのです。  
私はゴクリと唾を飲み込んでから、キャンパスの前に歩み出ました。  
秀明さんはじっとこちらを見つめています。  
とても静かです。  
私はワンタッチ式のタイを外して、フローリングの床に落としました。上着を脱ぎ、スカートも脱いで床に落とします。  
シュルシュルという服の音だけが聞こえます、それと私の心臓の音。トクントクン。  
それともこの鼓動は秀明さんのものなのでしょうか、まるで世界に2人だけしかいないような、そんな静けさがアトリエを満たしています。  
シャツのボタンひとつひとつを外して行く、ほんの数秒のことなのに妙に時間が長く感じます。  
できるだけ平静にシャツを脱ぎ、ブラを外し、パンツも脱いで、これで全裸です。  
と、思ったら靴下を脱ぐのを忘れていました。なんだかマヌケだなぁ〜とあわてて靴下を脱ぎました。  
これで、全裸になりました。  
15歳の高1女子としてはやや高い身長、腰まで伸ばした黒髪、控えめな胸(お母さんに似たのでしょうか…)、武道をたしなみ引き締まった腰、色の薄い陰毛、小さなお尻、スラリと長い足。  
まだまだ子供の体かもしれません、それでも日々、自分の体が女性へと変化していっているのは確かです。  
いまの私を見てもらいたい。胸を張って全裸を晒しました。  
でも秀明さんは真剣な顔のまま眉ひとつ動かしません。  
なんだか悔しいです。  
「うん、じゃあ咲良ちゃんはキレイに背筋が伸びてるから、直立姿勢にしようか」  
「は、はい」  
「自然体で、顔はこちらに。足は交差させないでまっすぐ…そう。軽く微笑んで、視線を上げて、僕を見て」  
秀明さんの心地よいトーンの声で次々に指示をだされて、私は言われたとおりにしました。  
 
春の午後、穏やかな陽光の入るマンションの一室で私はヌードモデルとなり、大好きな秀明さんがデッサンをとっています。  
シュッシュッとという木炭の音、開け放たれた窓の遠くからかすかに聞こえる車の音、トクントクンという私の心音。  
私を見つめる秀明さん、秀明さんを見つめる私。  
幸せなひととき。  
 
しかし、秀明さんはあまりにも真剣に私を見つめています。  
最初のうちこそリラックスしていた私ですが、だんだんと落ち着きを失い始めました。  
私の体におかしなところはないだろうか?たくさんの女性の裸を見てきたであろう秀明さんから見られると、なんだか気になります。  
胸は小さすぎないだろうか?武道で体を鍛えすぎて、筋肉が浮き出ていないだろうか?陰毛の形や色はおかしくないか?座っている秀明さんからだと、性器も一部見えてるはず……私のアソコは他の女性と比べてどうなんだろう……  
性器に意識が向くと、なんだかアソコがムズムズいてきました。痒いようなオシッコに行きたいような…でもまさか、見つめられてる目の前で、性器を触ったりトイレに行ったりしたくありません。  
ああ、一度集中力が途切れると、もう雑念が頭からはなれません。  
心拍数が高くなり、顔が紅潮してきたのが自分でもわかります。  
モゾモゾし始めた私をしかし、秀明さんは何も言わずにじぃっと見つめたまま熱心にデッサンを取り続けます。  
がまんできずに私は言いました。  
「あの…秀明さん、トイレに…」  
「ダメ」  
「そんな…」  
「咲良ちゃんはトイレに行きたいんじゃないよ。僕はね、女性を描いているとモデルが今何を考えて感じているかわかるような時があるんだ。咲良ちゃんは自己抑制のよく効いた出来た子だけど、その殻がもうすぐ破れそうなのさ」  
「どういうことでしょう」  
「僕に向かってもっと自分を開放してみて、ここには僕と君しかいないんだから、誰にも見せたことのない本当の咲良ちゃんを見せてくれ」  
秀明さんの心地よい声、じっと見つている瞳、その瞳から目が離せない。  
私は催眠術にでもかかったかのように軽くトランスした気がした。  
体が熱くてフラフラする、体の中心が熱い、子宮がうずいて膀胱を刺激する。  
陰毛がざわつく。  
乳首が自然と硬くそそりたって乳首の先が秀明さんの方に向く。  
私の性器の少しめくれ気味の大陰唇がひとりでに左右に開かれていくような気がする。  
秀明さんに見つめられた私の体が  
体が、開かれていく───  
 
ドタッ。  
私は眩暈を感じてフローリングの床に座り込んでしまった。(冷たい床にペタリと座ると、むき出しの性器が押しつぶされて妙に気持ちよかった)  
秀明さんは私のそばにやってきて、手を差し伸べてくれた。  
手を取って立ち上がりながら私は言った。  
「あの、私…すいません」  
「いや、悪いのは僕のほうさ。もう1時間もたっている。慣れたモデルでも1時間同じ姿勢でいるのはツライものだ。ましてや初めてのモデルだと10分で休憩を入れるべきだったね。ゴメン」  
私は立ち上がると背の高い秀明さんを見上げました。すると秀明さんは私のむき出しの肩に手をのせて顔を近づけてきました。  
「ごほうび」  
と、にっこり笑ってキス。  
「あっ」  
唇が触れた瞬間、脳天に落雷のような衝撃を受けました。そしてかるく唇をついばまれると、私は…その…ほんのすこし、おしっこをもらしてしまったようです。ふとももに一筋流れる熱い感触。  
恥ずかしさで顔が真っ赤になりました。  
「ト、トイレにいってきます!」  
と、走り出そうとする私の手を秀明さんが取りました。  
「離してください!」  
「どうしたの」  
「お、おしっこが…」  
「ああ、それはおしっこではないよ。ほらっ」  
秀明さんがなにげない仕草で私の性器を撫でました。  
「きゃあ」  
そして秀明さんは濡れた指の匂いを嗅いで言います。  
「ほら、おしっこの匂いじゃない。咲良ちゃん、君は感じて濡れたんだよ。男に見つめられてキスしただけで、アソコを濡らしたんだ」  
「いやっ、離して!」  
恥ずかしさのあまり逃げようとする私の腕を、秀明さんは強く掴んで話してくれません。  
私の細い腕が、秀明さんの大きな掌で力強くギリギリと締められる。  
──怖い。  
男の人なのだ。私を無理やり組み伏せようと思えばいつでもできる。私は始めて男の人を怖いと思った。  
秀明さんが私の腕をつかんだまま、もう一方の腕を私の性器に伸ばしてきた!  
「あ、ああっ!」  
その敏感な場所を触られただけど、全身から力が抜ける。  
「いやっ、ああんっ、熱い!だめ!秀明さん触らないで!きゃあっ」  
足がガクガク震える。  
秀明さんのの長くて繊細な指が私はとても好きでした、今はその指が私の性器をかき乱しています。  
華奢に見える指も、実際には男の人の指であって、私の指よりもはるかに無骨で力強いのです。  
「咲良ちゃん、すごく濡れてるよ。それに淫乱だ。こんなに感じるなんて」  
「はぁはぁ、いやぁ、そんなこと無い!痛い!腕を離してぇ」  
膝の力が抜けて、もう私は一人では立てない状態だ。秀明さんに掴まれた腕に体重がかかってとても痛い。  
それにアソコが熱い。自分でも濡れているのがよくわかった、秀明さんは性器を乱暴に扱ってるようで、けっして処女膜を傷つけないように、それでいて的確に性感ポイントを刺激してきた。  
私の性感が一気に高まっていく。  
「あっあっあっ、だめ!何かヘン、あっ、熱いよ!あぅぅ、もうだめぇぇ」  
嫌がる仕草をする私の腕を、秀明さんはけっして離してくれません。  
執拗な性器への刺激を一定の強さで続けます。  
「ああぁはぁ、そ、そんなずっと触られたら。私、わたし…あぅっ」  
私はだんだんと昇りつめ、目の前が真っ白になる。  
「きゃあーーーーーー、あっぁっう。やぁーー」  
私はせいいっぱい背をそらして叫んでしまった。  
それでも性器への刺激はまだ容赦なく続いている。連続で軽いアクメを体験した私の腰がビクビクと跳ねた。  
気絶するかと思ったとき、腕は離されて、私は床に崩れ落ちました。  
冷たいフローリングの床に倒れ、押し付けられた乳房がつぶれ、尖りきった乳首が床に擦れて痛い。  
気がつくと、私は今度こそ本当におしっこを漏らしていた。  
床におしっこの水溜りが広がっていく、そのおしっこの暖かい感触がふとももやお腹に感じられました。  
羞恥心を感じる余裕も無い。  
私の体ははただ、激しい絶頂の余韻に震えたのです。  
 
遠くで秀明さんの声が聞こえます。  
「明日もモデルにおいで。絵の続きを描こう」  
意識が朦朧とする中、私は「はい」と素直に答えていた。  
 
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