彼氏彼女の事情  
 

最近のありまに、私、宮沢ゆきのは魅力を感じなくなっていた。  

何も言わないありまだが、明らかにおかしい。目が笑ってない。  
一緒にいても何だか不自然。自然っぽいのが、余計不自然。  

ありまのエッチはやさしい。すごく。自分を大事にしてくれてるのがわかる。  
有馬の手は、ガラス玉を扱うように、そっと、私の体に触れる。  
それが初めの頃は嬉しかった。でも、このごろ物足りなくなってきた。  
ノーマルなエッチしかしたことがない。わたしはなんでもやってあげたいんだけど・・・。  

いつもと同じ朝。まだ誰も来ていない。  
上履きに履き替えるため、げた箱を開ける。あ・・・ラブレター。  
久しぶりだ。ありまとつき合うようになってから、  
なんとなく学校中に知れ渡ってしまってて、先生達までもに公認状態。  
嬉しいけど、今までのモテモテ環境からは随分遠ざかってしまった。  
久々にわくわくしてきた。現役を退いたとはいえ、やっぱりモテるのは気持ちがいいもの。  

「あなたが好きです。放課後、裏庭の桜の木の下で待ってます。いつまでも。」  

なかなか古典的なラブレターね。でもこういうありそうでなさそうな感じが、逆に胸をどきどきさせる。  
ありま以外の男の子ってどんな感じなんだろう?そう思うことが、たまにある。  
今、ありまは剣道の大会で遠征に行っている。しばらくあえない。  
電話とかはしてるから、さびしいと思ったことはないけど、  
もしかしたらそれは違うのかもしれない。  

行ってみようかな・・・。  

 
 
 

「おはよう、ゆきのん。相変わらず早いわねー。」  
桜椿。私の友達。背が高くてデルモ体型。色も白い。  
「宮沢、ウーッス。」十波君。椿とつき合ってる。  
「おはよう。」この二人、背が高いから並ぶと迫力なんだよね。  
でもすごく似合ってる。この二人は・・・もうエッチしたのかな・・・?  
やだ。最近こんなことばかり考えてる。ありまと会えないから、  
こういうことばかり考えちゃうのかな。  

「おはよう〜。ゆきのん。」「おはよう!」  
あやちゃんとりかちゃん。「おはよう。今日はあやちゃん朝から来てるんだ。」  
「うん、テスト近いしねー。原稿も、もうすぐ上がりそうだし。  
ふあ・・・。」眠そうにあくびをする。大変だなあ、売れっ子小説家は。  
「ふあ、何だか私も眠い・・・。あやのあくびが移っちゃったかな?」  
つられて?りかちゃんもあくび。手芸作品を夜遅くまで作ってたのかしら。  
りかちゃんの作品は繊細で美麗。とっても時間かかるんだと思う。  
「りか、アンタ昨日夜遅くまで兄さんとしゃべってたじゃん。」  
「え、あや、聞いてたの!?」りかちゃんが真っ赤になってあわてる。  
「そりゃあ、締め切り前に、深夜、隣の部屋でぼそぼそ聞こえちゃ気になるよ。」  
あやちゃんのお兄さんて、たしかりかちゃんの好きない人・・・。うまくいってるんだ。  
「ごめんね、あや。恭ちゃんにちょっと聞いてもらいたいことがあって・・・。」  
「ふーん、電話じゃなくて外で会えば?」  
「ええ?夜中だよ!?」さらにあわてるりかちゃん。なんかかわいいな。  
「夜中だからいーんじゃん。真っ昼間に会っても何にも進展しないよ。2人とも奥手だし。」  
さらっと言い放つあやちゃん。  
「あや!?ななななななに言ってるの、そんなこと!」  
大胆なこと言うなあ。もしかしたら、ポルノ小説書いたら結構いけるんじゃ・・・って  
何訳の分からないこと考えてんだろ、私ってば。さっきからこんなのばっかり。  
「あ、真秀ちゃんだよっ、おはようっ」わたわたしてたりかちゃんが、窓の下を歩いてる  
まほさんを見つけ、うわずった声をかける。  
その声に気づいたまほさんがこっちを見た。「おはよ、3人とも。」  
「おはよー。」と、あやちゃんと私、同時に。  
まほさん、相変わらず美人だなあ。28歳の歯科医師の貴志さんとお付き合いしてる。  
オトナの彼とつき合ってるから、というわけではないんだろうけど、まほさんはとても大人っぽい。  
ここだけの話、胸も大きいの。いいなあ、私もこんなにスタイルがよければありまにもっと  
喜んでもらえるかもしれないのに。どうして私はBカップなのかしら・・・とほほ。  
ありまもやっぱりおっきいおっぱいのほうが好きかな。  
胸はもうちょい欲しい。大豆や、牛乳飲んで頑張ってるんだけどなかなか。  
揉んだら大きくなるってよく聞くけど・・・まほさんももしかして貴志さんに・・・。  

ありまに、もっと強く揉んでくれるように言ってみる・・・?  
・・・ってそんなこと、女の口からはとても言えないよ、もう。  

キーンコーンカーンコーン。あ、予鈴。  
あれ?つばさちゃん見てな・・・。ドドドドドド。  
な、なに?何かがもの凄い早さで、こっちに迫ってくる。  
「セーーーーーーフ!」  
それ、はつばさちゃんだった。息を切らして、ぜえぜえ言ってる。超、美少女、芝姫つばさ。  
お父さんは有名な子供服デザイナー。山の手の大きなおうちに、この間再婚した看護婦さんと  
その連れ子さん、一馬君と4人で暮らしている。  
つばさちゃんは一馬君ととても仲がいい。何だかうまくいっているみたい。  
見てるこっちが恥ずかしいくらい、ラブラブ。あの二人は彼氏彼女じゃないんだろうか?  
私とありまも、あんな風に人前でべたべたしたいけど、そこは、ね・・・。  
「はあっ、はあっ、はあ・・・。」  
「・・・・つばさちゃん、大丈夫?」  
「ふう、何とか間に合ったわ。」とめどなく吹き出る汗を腕でぐいっとぬぐう。  
「・・・教室、向こうだよ?」  
「!!!!!」  
ドドドドドドド・・・・。つばさちゃんは回れ右して、再びすごいスピードで走っていった。  
朝から元気・・・。  
「いけない、私も早く席に着かなきゃ。」窓際の、いちばん後ろ、ここが私の席。  
結構気に入っている。下に、あの桜の木が見える。  
1時間目の教科書とノートを用意する。あ、ラブレターのこと、相談するの忘れた。  
・・・まあいいか、言わなくても。どっちにしても桜の木の下に、行くし。  
もちろんお付き合い断るためにね。  

6時間目が終わった。ふう、やっと終わりだ。椿たちに、ラブレターのこと、  
何度も言う機会はあったんだけど結局言わなかった。  
まあ、告白の1つや2つ、騒ぐほどのものでもないし。  
それに、何故かあんなシンプルでどきどきしたラブレター、書く人の顔、一人で見てみたいし。  
まあひとりで浸りたい気分なのよ、いまラブにちょっと飢えてるから。  
深い意味はないの。本当に。  

 

椿は部活、つばさちゃんは一馬君が迎えに来てくれて、一緒に帰っちゃった。  
りかちゃんとあやちゃんも用事があるらしく、ついさっきバイバイしたところ。  
では、桜の木の下へ行こうかしら。んふっふ〜v  
「おお、宮沢。」ぎくり。  

・・・・・・・用事を頼まれてしまった。どうしよう。  
しかし幸い、この教室からは桜の木が見える。  
もう来てるのかな、と思い、窓から下を見てみるが、誰もいなさそうだ。  
しかし空はどんより曇っていて、今にも雨が降りそう。早く行った方がいいかも。  
「まだか。・・・だけど時間とか書くよね、普通。」  
だが、シンプルで曖昧な手紙の内容が逆に興味を引いたのは確かだった。  
だからこそ、私の胸はいつになくドキドキしている。ただ誰なのか、確かめて断るだけなのに。  

手紙の字は、きれい。ありまの字に似てるかも。でも、この字は少しばかり右斜めに上がってて、  
ありまの字癖とも違う感じがする。ありまのは丁寧で、もっと整っている。  
それに、ありまが今、私のげた箱に手紙を入れることは不可能。誰なのかしら。私の知っている人?  

ガラッ。誰かが教室の戸を開けた。  
「おー、宮沢!?何してるんだ?」・・・あさぴん。  
浅羽秀明、単なるビジュアル系女好き。ありまが大好きみたいだ・・・。  
ありまも、何だかんだで気を許しているところがある。正反対の二人なのに、妙に気が合うみたい。  
「先生の信頼厚い優等生ゆえ、頼まれごとが耐えないの。見て分からないかしら。」  
ありまが試合でいないのに、しょっちゅうこのクラスに来る。「・・・ふう。」  
「何々、ため息なんてついちゃって。俺手伝おうか?」  
「結構よ。あなたがありまレベルでもない限り、一人でやった方が早いから。」  
クールにぴしゃっと言い放つ。  
「ぐっさぁ。傷つくなあ。ま、俺も用事あるし、手伝いたいのはやまやまだけど、ごめんな。」  
あさぴんはそう言うと、右手ですまん、のポーズをして、帰っていった。  
何しに来たんだろう、この男。用事って集団デートかしらね、忙しいわね・・・。  
ガラッ。再び戸が開いてあさぴんが顔を出す。  
「言い忘れてた。もうすぐ台風が来るってよ。宮沢も早く帰った方がいいぜ。」  
「う、うん、ありがとう。」・・・これを言うためにわざわざ見に来てくれたのかな?  
あんなチャラチャラしてて、一見単なるバカに見えるけど、意外に気の付くところがあるんだよね。  
そんなところもありまが気を許している理由のひとつかもしれない。  

「さあ、ちゃっちゃーと終わらせて、と。」もう半分終わった、あともうちょっと。それまでに来るかな・・・。  
用事をこなしながら、何度となく窓の下を覗いてみるが、人影らしきものはない。  
「は、まさか!」・・・この桜の木の下じゃないとか・・・?  
―――でも、この学校で桜の木って言ったらここよね、いちばん大きいし。他にもあるにはあるが、  
いくつもならんでいて、場所が特定できない。しかも、グラウンドをぐるりと囲んでいるので、  
人を呼びだして、告白でもしようものなら運動部の奴らにバレバレだ。でも今日は雨降りだしてるし、奴らはもう帰ってるかもしれないけど。  
その点、こちらは校舎のいちばん端、他に花壇なんかもないので、人もあまり来ない。  
まあこの教室からは丸見えだけども、大体の生徒は部活か、テスト間近なので、  
教室にも残らず帰宅するので、人に気づかれる心配は少ない。  
・・・いや、だとしたらもうとっくに来てるのかも・・・?  
窓から見えると言っても、もちろん死角もある。「・・・・!」空から雨がぽつぽつ降り出した。  
先生からの頼まれごと(ちなみにアンケート集計です。)を、半ば強引にもの凄いスピードで終わらせ、  
鞄をひっつかんで教室を出る。  
先生、社会科準備室にいるって言ってたわね。回り道になるけど、仕方ない、急がなきゃ。  
体育10のカモシカ・・・いえ、イノシシのような走りで社会科準備室に向かい、戸を開ける。  
誰もいない。先生もこの台風で帰ったのかしら。奥の机に整理した資料を置き、再び全速力で走る。  
目指すは桜の木の下。ゴロゴロ・・・。雷が鳴り出した。  

ばしゃっ。「きゃっ」  
勢いよく校舎の外へ出たはいいが、水たまりの中に足を入れてしまった。  
「ああもう、靴下の中までどろどろに・・・」  
ぶつぶつ言いつつも、私は雨の中を走り続けた。  
雨はどんどん激しくなってきていた。傘は一応、折り畳みを毎日持ってはきていた。  
突然の雨で、髪がぐちゃぐちゃになったり、今みたいに足下が見苦しく汚れてしまうのは  
完璧な私にはあってはならないからだ。  
性格面での、徹底した演技はやめていった私だが、外見的には手を抜くつもりはなかった。  
というか、これは単に身だしなみの問題であって……。  
ありまの前では綺麗でいたいもの。恋する乙女なら誰だってそう。  
ありまの横に並んでるのが不細工でみっともないのは、申し訳ない。  

だけど、今私は、傘も差さずに一心不乱に桜の木の下を目指して走っている。  
もちろん髪も体もずぶ濡れ、足下に至っては、ふくらはぎのあたりまで  
泥が飛び散ってしまっている。  
―――どうして私はこんなに急いでいるのだろう。  

裏庭の桜の木の下へは一度、反対方向の正面玄関から校舎の外へ出て回らないと、  
行けないようになっていた。つまり、私は自分の教室から、  
校舎の一番東の社会科準備室へ行き、Uターンして正面玄関を目指す。  
そこから外へ出て……ぐるりと校舎の裏へ回るり、また教室の下の桜の木の下へ  
行かなくてはならない。やれやれ、とんだ回り道だわ……。  
その為、スカートもすっかり水を吸って重くなってしまい、  
走る速度もだんだんと鈍ってきていた。……まだいるとは限らないのに。  
いいえ、そもそも来ているかもわからないのに。たちの悪い冗談だったら―――。  
一番考えたくないことだった。  

運動部の連中も皆帰ったようだった。校舎の中を走っているときも、  
人っ子一人見あたらなかった。先生の何人かは残ってはいるのだろうけど、  
さすがに生徒は皆帰ったようだ。この豪雨じゃね……。  
空は灰色によどんで、時々稲妻が遠くで迸るのが見えた。  
木の下って、危ないんじゃなかったかしら。  
もし、私をこの雨の中待っていてくれているんだとしたら。  

『裏庭の桜の木の下で待ってます。いつまでも。』  

そう考えると、ただ走るしかなかった。  

校舎の角を左足を軸にし、鮮やかに曲がる。「!」  
桜の木が見えた。  
その下に、誰かがいる。やっぱり。待ってくれてたんだ、手紙の人―――。  
いつのまにか陽は落ちかけ、あたりはすっかり暗くなってしまっている。  
私は徐々にスピードを落としていき、最後はゆっくり歩きながら、桜の木の下にいる人物に近づいていく。  
その人物との距離はもう5メートルほど。  
「……今朝、手紙くれた人……?」  
私は、全速力で走りっぱなしで乱れた呼吸を整えながら、弱々しく言葉を発する。  
暗くて、よく顔がわからない。誰だろう。  

「そうだよ」  
と、その人物の口は動いたようだった。  
が、雨が激しく地面を打つ音と、稲妻の轟音で消されてしまった。  
「誰?暗くて顔がわからない」  
先ほど、稲光で少し輪郭が見えたが、たちまちあたりに溶け込んでしまった。  
髪は金色に見えた気がした。  
しかし、その人物との距離はわずか1メートルほどになったが、  
やはりこの暗い豪雨の中では顔が判別できない。  

「ごめんなさい、遅くなってしまって。こんな雨の中……ハアッ。」  
まだ息があがったままだ。  
「走ってきてくれたんだ」  
ようやく、声が聞こえた。が、やはりこの轟風雨の中では聞き取りにくかかった。  
どきどきしてきた。走って来たからじゃない、何だか聞いたことのあるような、  
心の奥底に響いてくるような、少し、かすれた艶っぽい声―――。  
でも私はこの声を『知らない』。  
なのにどうしてこんなにもどきどきするんだろう。  

 

「あの、私……」「こっちに来なよ。雨に打たれっぱなしはよくない」  
彼はそう言うと、ぐいと私の腕を取って、自分の方へ引き寄せる。  
そういえば、彼はほとんど雨には濡れていないようだった。  
「ここだと濡れないから」校舎の窓の上に、狭い屋根が付いている。  
そこの下で彼は待っていたようだった。  
だから教室から覗いても、誰もいないように見えたんだ。私が覗いてた  
三階の窓の真下の更に屋根の下だから、そこから覗いても隠れてしまうものね……。  
「傘、忘れたの?こんなに濡れて……」すぐ側で彼がささやく。  
雨に濡れてすっかり冷え切った私に、暖かい吐息がかかる。  
「雨、降っちゃったから……びしょ濡れになっちゃってるかもしれないと思って……」  
私は小さく答える。彼の顔を見ようと思ったけど、前髪がぺたんと張り付いて、  
前がよく見えない。やっぱり傘差して来ればかった。どうしちゃったの、私ってば。  

「君の方がびしょ濡れだ」そう言うと彼は手に持ってた鞄から、  
大きめのタオルを取り出して、私に差し出してくれた。  
「使わなかったから……綺麗だよ」  
大きなタオルを持っているということは、運動部なのかな。「ありがとう」  
私はそのタオルを素直に受け取り、まず、水を吸って  
すっかり重くなっているブレザーを脱いでから、桜の木の枝に引っかけた。  
そして髪の水分を押さえてるようにして取り、それから顔、首筋を拭った。  
と、そこで初めて気が付いた。ブラウスから、下着が透けて見えていることに。  
白いブラウスが雨で肌に張り付いて、その下のレースの形までがくっきりと浮かび上がっていた。  
「!」私は慌ててタオルを肩に掛け、手をクロスさせ前を覆った。そしてそのままうつむいてしまった。  
やっと顔が見られると思ったけど、恥ずかしくて顔を見ることができない。  
見えちゃったかな。それとも暗くて見えてないかな。  

今日の下着は真っ赤な上下。  
私は、体育の授業がない日の下着は結構派手目だ。  
赤や黒だと、着替えるときに目立つから、  
大抵つまらない無難な色とデザインにしている。  
その反動で、なにもない日は思いっきり濃い色とか、  
派手派手〜なデザインとかを着けたくなる。  
女の子のたしなみだもの、本当のおしゃれさんは、下着こそ気を抜かない。  
毎日ベージュのオバサンブラや、お子さまブラを着けてたら、  
にじみ出る色気も出ないから、というのもあるんだけど、  
実際のところはそんなのばかりじゃ、  
単に私がつまらないからってのが理由かな。  

元気になりたい日は、思いっきり明るいホットピンク、  
気合い入れたい日はきりりとした赤。  
ちょっぴり気分を変えたい日は黒、など。最近、テストが近いのに  
何だかだれてるから(ありまがいないからさみしい?)、今日は赤にしたんだった。  
ベストやブレザーなんかを着ていたらわからないしね。  
しかし、今日のはきりりとした赤には違いないけれど、私の持ってる中でも  
結構セクシーなデザインで、例えばパンティなんかはサイドも細身で官能的、  
そしてバックまでオールレース。つまり透け透けだ。  
ブラも下から持ち上げるタイプのシェルフカップで、デコルテがかなり強調されて  
盛り上がる。Bカップの私でも、なかなかグラマー気分に浸れるので、お気に入りのセットだった。  

お気に入りのセットだとは言っても、ありまといるときは、純白に決めている。  
ありまはきっと、ああいう派手でセクシーな下着は好まない。  
多くの男性はそうだろうけど、ありまも例外漏れずそうだと思う。  
ありまはどこか私を聖母のように思ってるような感じがある。  
もちろん、自分で言うのはすっごくアレだとわかっているし、  
私の思い上がりかもしれないけど、私を扱うときの優しさ、温かさは、  
少なからずそこからくるもののような気がする。  
だって、ありまとのエッチはいつもいやらしくない、綺麗なものだもの。  
ふたりがひとつになる―――温かく解け合い、白い楽園にいるような感じで、汚れとは無縁のもの。  

 

「寒くない?」彼は自分の上着を脱ぎ、私に掛けてくれた。  
上着は雨の匂いしかしなかったけど、とても温かかった。「ありがと……」  

「あの、手紙嬉しかった。でもお気持ちだけ受け取っておきます。  
私にはつき合っている人が」  
「俺はつき合うとかそう言うことは望んでいない。  
ただ俺が君を好きなだけだ」  
「え?」  
「どうしてもその気持ちを伝えたかった」あらら、何だか肩すかしを喰らった感じ。  
断ろうと思ったんだけど……でも、こんな感情の表し方もあるんだね。  
相手を求めるのではなく、そっと心の中で思う気持ち。  
私は、ありまと離れていると寂しいと思ってたけれど、  
それは本当にそうなのかな。本当に思い合っていれば、  
寂しさなんて感じないんじゃないかな。  
それだけ相手のことを信じてるってことだから。  

寂しいって思うのは、私のわがままでしかないんじゃない?  
ありまを信じていない。―――私が。  
それは本当に好きって事なの?  
最近ありまに魅力を感じなくなったような気がするのは、気のせい?  
ありまがありまでないような気がして、疑問に思うのも気のせい?  
信じているんなら恋人のこと、疑問に思うなんてことは……。  

思いたくなかったことが、頭をよぎる。  
それは、私の心がありまから離れていってしまっているということでは……。  
違う?本当にそうだと言える?  

「あ、あなたは誰」変な事を考えたせいで、動揺してるのだろうか、  
早鐘のように私の心臓はますます激しく高鳴っている。  
こんなに近くにいたら聞こえたりしないだろうか。  
「俺が誰かなんて、そんなに大事なこと?」囁くようなかすれた声で  
私の耳元で彼は聞き返す。「関係ないよ、俺が君を好きなだけ、  
あいつがいるんだから、俺が愛してもらえるとは思ってない。  
愛してもらおうとも思わない。でも」  
彼は私をすごい力で壁に押しやり、抱きしめた。  
羽織っていた上着が、勢いで地面に落ちる。  
「あ、上着が」そして皆まで言うことなく、私は唇をふさがれた。  
上着はすっかり雨でぬかるんだ泥の中に落ち、雨に打たれ続けた。  

 

「んっ、んんっ……んっ」随分長い間、お互い舌を絡ませていたような気がする。  
ありまとはしたことのない、激しいディープキス。拒むことはできなかった。  
もちろん、彼の力が強いということもあったが、多分それだけではなかった。  
「ふ……」ゆっくりと唇を離し、そしてすぐに、また彼は私をきつく抱きしめる。  

「ずっと君を見ていた。あいつのすぐそばで。  
君があいつに笑顔を向けるたび、心が痛んだ。  
でも、そんな資格はもともとないのはわかっている。  
だって俺は汚れているから」  
「汚れてる?」と、私は彼の背中ごしに問う。  
「そう。人に愛される資格なんてないんだよ。……でも来てくれるとは  
思わなかった。ちょっとした賭けだったのに」  
「それは……私はありまとつき合ってるから。それを―――」  
「君らはほぼ学校公認。特に目立つ2人がつき合っている……。  
知らない奴がいるわけないだろう?そのくらい、君だってわかってるはず。  
しかもこの大雨。普通、待ってるわけがない。誰かもわからないんだし、  
いたずらの可能性もある。無視しても誰も君を責めたりは  
しないと思うけど?」  
「わ、私は―――」やばい。顔から火が吹いてるかと思うくらい、熱い。  
雨が蒸発しそうなくらい、私の顔は真っ赤っかなんじゃないだろうか。  
「君は俺を知っている。ずっと前から。存在に気づいていながら、  
気づかない振りをしてるだけ。無意識にね」  
「なにそれ。わけわかんない」逃げなきゃ。この先を……。  
「期待してたんだろ?」  

「知らないわよ!」力一杯、彼から逃れようとするが、悲しいかな、  
やはり男の腕力は違う。  
私は再び唇を塞がれ、あえなく屈する。「ん……!!!!」  
これ。さっきの。何も考えられなくなるいくらいの、長い、熱いキス。  
抵抗なんか出来ない。だって、こんなキスされたら、  
唇が離れられるわけが、ない。でも理性はまだ残ってるのか、  
かろうじて腕で彼の背中のシャツを引っ張る。  
「おとなしくしなきゃあ。それとも、俺のシャツ、脱がせたいわけ?」  
「ふざけないで!」勢いをつけて一気に突き飛ばし、  
ようやく逃げかけるも、あえなく後ろからつかまり、そして3度目のキス。  
目から涙がにじんできた。哀しいのか、悔しいのか、それとも。  
「うっ……」  
「泣かないで。君を楽しませてあげる。最近元気ないだろう?  
だから楽しませてあげたいんだ」  
そう言うと、彼は私のブラウスのボタンを、器用に素早く上から順に  
はずしてゆく。「ちょ、ちょっと」  
「なかなかセクシーな下着を着けているんだね。  
ブラウスから透けさけてたのはわざと?」  

「そんなわけ!」「そうだよね、計算高い君でも、そこまでするとは  
思えない。普段は絶対にしないミスだよね。濡れたら透けるのは  
当然じゃないか、でも。……それを忘れるほど、俺に会いたかったんだよね……」  
恥ずかしい。図星だ。確かに私はこの誰かもわからない人に会うため、  
必死になっていた。彼の言っていることは、全く当たってないとは  
言い切れない。「結果的に誘ってるけどね」耳の後ろで温かい息が漏れる。  
意外にがっちりとした腕の中で、私の体は『離れたくない』、と言っているようだった。  

そう、私は期待していた。何に?わからない。けど、この胸の鼓動は、  
恋、というものに似ている。ラブレター1通、しかもあんなシンプルな  
文面だけで。どうかしている。既に私は彼に身をゆだねていた。  

彼は私のブラウスのボタンを最後まではずすと、今度はスカートを  
めくりあげた。あのエッチなスケスケパンティが顔を覗かせる。  
パンティも、雨粒でいやらしく光り、肌に張り付いていた。  
「こちらもセクシーなことで。君は清純派だと思ってたよ。  
これにはちょっと驚いているよ。でも、それもいいね、『俺』となら」  
そう言いながら、左手を大腿部に這わせ、右手は胸のふくらみを  
ブラジャーの上から確かめる。そしてサイドベルトの下から入り、  
ふくらみの先の突起をつまむ。「あ……」  
「へえ……」「な、なに」「いや、もう感じてくれてるんだ……?」  

「い、いや、やめて」口からはそう漏れるが、もはやその言葉に本来の意味はなかった。  
ゆっくりとブラジャーは上にめくりあげられ、小降りだが、  
形のよいテニスボールのような二つの乳房がぷるんと顔を出した。  
「窮屈だろうけど、ホックはずさないままほうが好きだな」  
「バカ……あっ」つっこみを返す間もなく、右手はこわばった乳頭を、  
時々親指と人差し指で強く押さえながら、後ろから激しく私の乳房を揉みしだく。  
そして左手はサイドからパンティの中に進入する。  
「あ、そこはダメ……!」「どうして?」  
答えられるわけがない。だって、さっきから、わかりすぎるくらいに  
そこは湿っているんだもの。もちろん、雨のせいではない。  
熱く、ねっとりとした液体が溢れて、パンティの裏側を包んでいた。  
ああだめ、こんなになっちゃって。ありま……。  
「嬉しいよ。強姦でもいいかと思ったけど、同意の上の方が罪悪感ないもんね」  
私はそっちの方が罪悪感増すわよ、と言いたいが、うまく喋ることができない。  
出るのは、短い喘ぎ声と、吐息のみ。「はあっ……」  
下半身の熱がだんだん上がってくるのを感じた。  

既に彼の手は丸みを帯びた丘に達していた。  
意外に優しい手付きで、柔らかな草を撫でている。かと思うと、  
おもむろに真ん中の亀裂に中指を這わせ、  
そのままゆっくりと侵入していく。  
「あ、ああッ……!」こ、心の準備が!  
中で指が蠢くと、体がびくんと跳ねた。  
いても立ってもいられない感覚に支配され、ただただ喘ぐしかなかった。「あん、あっ、ひ、あふっ……!」  

私は今何をしているの?恋人でもない、名前も顔もわからない男の子に  
、後ろから乳房とあそこを弄ばれ、こともあろうに、歓喜混じった声を  
あげている。―――歓喜。そう、きもちがい……っ。  
「あんっ、ああっ、うんっ」粘膜の表面をなぞりながら、指はリズミカルに秘部をまさぐっていく。  
淫液があふれ出してちゅぷちゅぷと卑猥な音をたてる。  
雨の音で少し聞こえにくいが、ここまで密着してるのだから、  
彼にもささやかに聞こえているはずだ。「いやらしい音、出すんだね」  
ほらね……。「あ、あ、あああ、あんっ」  
堪らなく恥ずかしさが込み上げてきて、喘ぎ声で少しでも下の音を消そうとするが、  
50歩100歩、どちらにせよ、恥ずかしい。  
だけど体は、声は、この快感を求めずにはいられない。  

「ああっ……!」絶えず快感を与え続けるいやらしい『指』は、  
しばらく音を楽しんだあと、その先にある、すでに熟れている肉芽に触れてきた。  

「ひわっっっ!」Bカップの胸がぷるんっ、と揺れるほど、私の体はのけぞった。  
「あ、ああっ、あ、あっ!!やぁ……んっ!」  
一番感じるところに触れられて、頭の中が真っ白になりそうになった。  
もはや目から涙が溢れ出ている。  
「ここだね」そう言うと彼は、激しく秘匿のつぼみを、愛撫し始めた。  
「あん、あーっ、ひ、ああんっ」  
もうなにも考えられない。あるのは、快感だけ。  
「裏切り者」  
「言わないでぇ……っ」  
ありまがいながら、私は今快楽におぼれている。最低だ。  
「でも気持ちいいんだろ?仕方ないよね」指は容赦なく力を入れてくる。  
「違……あっ、ああっ、ふうんっ、あ……!」  

「あ、……イっちゃった?」指がようやく解放してくれた。  
私は殆ど自分で立っていることが出来なくて、  
ずっと彼に支えられている形になっていた。  
信じられない。こんなことされるなんて。  

ありまは直接触れない。周りから快楽を与えてくれる。  
前に、私がちょっと嫌がったことがあるからだ。  
直接的なのは、まだ慣れなかった。  
感じすぎてセックスを楽しむことが出来ないから。不快感さえあった。  
しかし今日は、いつになく蜜が溢れてきていたせいか、嫌な感じはさほどなかった。  
むしろ、今までで一番の快感だったのかもしれない。  
指だけでイっちゃった……。  

 

「足下がおぼつかないね。そんなに感じちゃった?  
……もう無理ならやめようか?」  
「うん、やめて」  
一応、素直に言ってみるが、彼が思ってもいない提案を、受け入れるとは思えない。  
「ふん、本当は君も……そう思ってないくせに」  
反論する気力もない。  
実際その通りではないとは言い切れないからだ。最低だ、私。  
先ほどの愛撫の際、私の後ろに感じた。  
雨で体の表面は冷え切っているのに、あそこだけは彼の熱も感じ取れた。  
形容のしがたい快感に、我を忘れまいとしていた私だが、  
ほんの思考の片隅で、ずっとちらついていた。  
指で遊ばれてる中、これに耐えきれば次はあれがくるとどこかで思っていた。  
そして私はそれを待っている。  
熱い、鼓動。  

 

「しかし、すごい量だね」  
恥ずかしい。恐らく彼の左手には、私の愛液がたっぷりとからみついている。  
ありまのときでさえ、こんなに出ることはなかったはずなのに。  
この量は異常だ。恥ずかしくて死んでしまいたい。  
「そうだ。次はこうしよう」  
そう言うと、彼は私のびしょびしょ赤いパンティを、一気に下ろした。続いて短いスカートを全開させ、  
小さめの白いヒップを雨に打たせた。奥にはぬらぬらと、先ほどの部分が光っている。  
いよいよ、来るんだ……。  

「もうちょっと肉付きのいい方がいいけど……手、ちゃんと壁について」  
「え?」  
言うなりに壁に手をつき、体重を支えると、私を抱いていた両手が、今度はヒップの丸みに移動した。  
私はヒップを突き出したポーズで立ち、その後ろに彼がしゃがんでる形となる。  
包み込むように、両山を撫でたあと、親指で左右に割る。  
「ななな何!」  
アヌスがあらわになる。動揺している私をよそに、先ほどのたっぷりと滑らかな液をそこにこすりつけ、  
ゆっくり周りを押して馴染ませていく。「もういいかな」  
まさか。そんな!  

そう思った瞬間、まだ十分に液でまみれた左手の中指が、たぷんとその中に入っていた。  
変態かこいつは!アナルセックスなんて今時珍しくも何ともないけど、  
未体験の私にとっては、知識はあれど、想像することはできなかった。  
だって入るわけないじゃない。確かに色々なエッチをしてみたい、とは思っていたけど、こ、こういうのはまだ先だと思ってた……。  
私が思っていたのは、体位や、シチュエーションを変えてみたいってことだったのよ。  
コスプレとか楽しんで出来るような。セックス自体の方法を変えるわけではなくて。  
ていうか、来るんじゃなかったの!?そう思ってたのに、こんなこと!  
何だかちょっと頭に来た。じらされてるのかしら。  

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