「どうしてこのあたしがこんなことしなきゃなんないのよ!」
机の上に山と積まれた有馬に命じられた仕事。
そう、私は今や有馬の下僕なのだ。
私の正体を知った有馬はしばらくはおとなしくしていたものの、
「僕の役に立ってもらうよ・・・・」
そういって彼は「優等生」から「とっぽい兄ちゃん」へと変身した。
それからというもの、私は毎日のように有馬の仕事を手伝わされている。
今日ももう7時だというのにまだ仕事が終わらない。
「あーっ!もう、絶対負けない!今度はあいつの秘密かなんかつかんでこっちが仕事押しつけてやる!」
「僕にはそんなもんないよ。」
!?
「宮沢と違って」
有馬が、いた。
「こんばんわv有馬君v」
「ぶっても駄目。もうそっちの手口は知ってるんだから」
(ちっ・・・)
「今心の中で舌打ちしたろ」
「(ぎくっ)べ、別に・・・・」
「ていうかまだそんなこと考えてたんだ」
「そんなこと?」
「僕の弱み・・・とか言ってたでしょ?」
「ああ、あれは、こう・・・・流れの中で出てきた何の意味も持たない可愛いポエムみたいな物で・・・」
「えらく攻撃的なポエムだったけど?」
「・・・・・」
「まったく・・・」
「まあいいじゃない、ほら仕事は全部終わったわよ!さあ帰りましょホホホ・・・」
「終わり?今日はまだ残ってるよ?」
「え?全部終わってるでしょ?」
「・・・・あるんだよ」
「・・・何いってんのよ早く帰りましょ?」
教室を出ていこうとする宮沢。
その腕を有馬が掴む。
「きゃっ!・・・何?さっきから・・・!」
有馬の手がいつの間にか自分の胸のふくらみにふれている。
「・・・・」
「・・・・」
「ダッシュ!」
「甘い!」
逃げようとした瞬間襟元を捕まれ逃亡にあえなく失敗する。
沈黙
おそるおそる聞いてみる。
「・・・あの〜、有馬君?」
「なに?」
「さっき・・・・その・・・手が・・・」
「手?なにかおかしかった?」
「いや、胸に当たってたんですが・・・・」
「そうだろうね。当ててたから。」
「・・・・(絶句)」
「75のB・・・ってとこかな?」
「失礼ね!もうちょっとあるわよ!」
言ってから後悔する。
恥ずかしさで赤面しながら叫ぶ。
「大体どうして触るのよ!」
「いや、人肌恋しい時期だし・・・・だったらいっそ宮沢さんで暖まろうと思って・・・」
「なんでそうなるのよ!他の人にしなさい他の人に!」
「いや、いっそ弱みを握っていることを利用しようと・・・」
「人間性は何処いったのよ!」
「僕はいつもと変わらないんだけどなぁ・・・・でも宮沢・・・・断るの?」
「!・・・・・」
「シンキングタイム5秒〜♪」
「早っ!」
「5♪」
どうしよう・・・
「4♪」
どうしよう・・・
「3♪」
どうしよう・・・
「2♪」
どうしよう・・・
「1♪」
どうしよう・・・・!
「さあ・・・what's your answer?」
「・・・・ok」
自分を、捨てた。
背後から有馬がゆっくりと抱擁する。
その呼吸は若干荒ぶっているのが耳元で解る。
徐に有馬が手を上に上げ胸を触る。
「・・・っん・・!」
思わず声を上げてしまう。
かまわず有馬は胸をもみしだく。
今度はこちらの呼吸が荒ぶっているのが有馬に解るだろう。
「気持ちいい?宮沢・・・」
「よく・・・ないわよっ・・・・!」
バレバレのうそをつく。こんなに下手な嘘はこの人生で一度もなかったろう。
無言で有馬は私の制服の上着を脱がしブラウスの中に手を入れ、ブラの上から胸を揉みはじめた。
有馬の体温が近くなり、体がほてる。
「クラスの男子にこんなとこ見られたら殺されるかもなー」
笑いながら有馬が話す。手は止まらない。
「・・・・殺されちゃえ」
「無理だよ。僕強いもん。」
「今私が殺してやりたいよ・・・」
「はいはい。強気な君が好き。でもそんな君を従わせてる僕がもっと好き。」
不意に手がお尻に当たる。
「・・・・痴漢」
「うーん、結構いい感じ・・・・でも実際にはやれないしなー」
「今やってるじゃない!」
「同意の上だから痴漢じゃないもん」
「あれを同意と取るのかお前は・・・・」
「さて、僕だけ楽しむのも悪いし・・・・宮沢にも楽しませてあげてもいいかな」
「?」
抱擁を解き有馬が笑顔で語りかけた。
「宮沢さあ、フェラチオって知ってる?」
本日二度目の絶句が訪れた。
「・・・・知らないv」
「嘘つき」
「・・・・言葉くらい・・・かな?」
「何事も実践が大事だよ。宮沢。」
「何?あたしにやれっての?」
「ああ、まだ蹴られたおなかが痛い・・・」
「解ったわよやりゃあいいんでしょやりゃあ!」
「・・・・ていうかあたしが脱がすの?」
こくん。はじけんばかりのさわやか笑顔でうなずく。
「・・・・ジッパーおろすだけでいい?」
「う〜ん、百歩譲ろう。」
少しの間の後無言で有馬にかしづきジッパーをおろす。
勿論他人のそんなとこをさわったことなどない。
開いたチャックの隙間から青いトランクスが見えた。
(これが俗に言う「テント張り」状態なのかな?)耳年増に年が追いつく。
そしてトランクスの中に手を伸ばす。直に有馬のモノに触る。
基準が解らないから大きいのかどうかは解らないが少なくとも幼い頃風呂で見た父のモノよりは大きいだろう。
「にぎってるだけじゃなくて早くやってよ。」
「わかってるわよ!ちょっと動転してんのよ。」
ふと宮沢に考えが浮かんだ。
(・・・・大逆転・・?)
ギュウッ!!宮沢が有馬の睾丸を強く握り揚げた。
声にならない声がした。
時が、止まった。有馬の顔には脂汗がだらだらと流れている。
「このやろ〜・・・・」
「おっとお兄さん!下手に暴れるとつぶれちゃいますぜ?」
さすがにそれを言われると反抗はできない。
「形勢逆転・・・って奴?」
「ん〜・・・宮沢さん、落ち着いて話そう?ね?」
「う〜ん、話し合おうねぇ・・・・」
より強く握る。有馬の整った顔が苦痛にゆがむ。
「この今までの無賃労働の恨みはらさでおくべきか!」
頭突きをかまそうと思いっきり頭を後ろにそらす。その瞬間だった。
「スキあり!」
有馬が突然指であごの裏側をついた。すると急に体の力が抜けて呼吸が苦しくなってしまった。思わず手を離し、床にうずくまる。
服を整えた有馬が背中をトンとたたくと嘘のようにさっきの苦しみは去った。
「・・・・何今の?」
「秘孔を突いたの。ほら僕って女の子に間違われて痴漢とかに遭うこともあったからそういうの詳しいんだ。」
「死ぬかと思った・・・・よく女の子にこんなことできるわね?」
「だって正当防衛じゃない。」あっ。
「なんか面白いこと言ってたよね宮沢〜・・・?」やば・・・
「恨みはらさでおくべきかとかなんとか・・・・?」ああああ・・・・
「お仕置きかな?」やっぱりそうなるの?
「でもなー、もう遅いしなー。」
「うん遅い!帰らなきゃ・・・」
有馬が帰り支度をしながらささやいた。
「今度僕の家来てね。じゃあね〜。」
有馬はダッシュで去っていった。
・・・
「マジっすかぁ!?」
下手な抵抗なんかしなきゃよかった。そう強く思う夕の光浴びる少女。たたずんでみた。
「あ、そうそう。今度の日曜ね。忘れないでね〜。」
「わざわざいいに帰って来んな!」
「あははっ!じゃあまたよろしく〜!」
「・・・また?」
嫌な響きの言葉が強く残る。二人の高校生活はまだ始まったばかり。
「うわ・・・・デカ!なんかあこぎな商売とかそういうことかしら?」
「黙れ。」
ありったけの力で日曜が来ぬよう願ったが来る物は来る。
有馬に家に来るように言われた日曜もその例外ではない。
結局来てしまう自分もどうかと思うが、きっちり交通費を支給する有馬も相当どうかと思う。
「おうちの方は?ご挨拶しなきゃ。」
「そんなへまは僕はしないよ。今日はお出かけ。」
「へま?なんのこと?」
「そのたぐいまれなる演技力で両親の前で
僕を悪役に仕立て上げようと計略を練ってなかった?宮沢。」
ヒュウ。
「まさかこのわたしがそんなひきょうなことするわけないじゃないほほほほほ」
「漢字変換されてないぞ。句読点も打ててない。しかもなんか宮沢、心の中で口笛吹いただろ。」
「五月蠅いわね!だったらどうだっていうのよ!」
「いや別に?それより宮沢、部屋いこ?2階だから。先あがってて。」
そういって有馬はキッチンへと歩んでいった。
「ちょっと先制攻撃されたけど・・・・絶対今日で立場逆転してやるんだから!」
ハンドバッグの中では最新鋭デジタルカメラ。
戦いの火ぶたは切って落とされた。
「おまたせ・・・・何見てんの?」
「日記」
・・・・
「殴らなくてもいいじゃないのよぅ!」
「どうやって鍵掛けてる引き出しから出したんだよ!」
何も言わずヘアピンをクイクイッと動かす動作をする。
「そんなんで開くの?」
「まあ、技術者の腕でしょうね。」
「・・・・・ま、これでもお飲みなさい。」
真っ赤なジュースをそういって有馬は差し出した。
「あ、ありがとう・・・・これ何味?」
「七味」
・・・・
「叩くことないだろ!」
「うるしゃひわね!みはふは(味覚が?)しんじゃったじゃない!」
「何ていってんのか全然わかんないって。あーあーそんなにこぼしちゃって・・・・」
「どうしてくれんのよ!白の服の汚れなんて落ちないのよ!」
「ホント?」
「ホント!」
「じゃあ早く着替えなきゃ!」
・・・・・・用意周到なことで。
「いやあ、災難でしたねぇ。」
「ええ、ホントに。」
脱衣所の扉を隔てて行われる二人の会話。
「・・・・ところで有馬くん?」
「ん?」
「・・・・代わりの服はもらえないのかしら?」
「うん。」
「・・・・だったら私はどうすればいいのかしら?」
「『自然に帰れ』byルソー。」
「たわけたことぬかしてんじゃねーよこのタコ助!」
「とはいうもののさすがに女の子にそれはかわいそうかなと思いの母の服を用意していた優しい僕。」
「やっぱり有馬くんってそういう人だと思・・・・」
「に向けられた矢継ぎばやな言葉の暴力。」
「反省しております。」
「口では何と言うことも可能。」
「じゃどうすりゃいいのよ!」
「ん〜・・・・おお。名案。」
「なに?」
「♪〜なら態度で示そうよ・・・・続きなんだっけ?」
「・・・・ほらみんなで?」
「♪お風呂入ろ。」
「うちの家族はみんな温泉がスキでね。よく旅行に行ったもんだよ。」
パサッ。
「・・・・」
「熱海とかベタだけどいい宿多いんだ。鬼怒川とかもよかったなぁ。」
シュル・・・
「へぇ・・・・そう・・・」
「多分大勢でお風呂入るのスキなんだろうね。宮沢、脱がないの?」
プチ。
「何であんたはさっきから淡々と服脱いでるのよ!!」
「何でって・・・・今からお風呂はいるからじゃあ?だからほら、宮沢も脱いだ脱いだ。」
「あーっ、自分で脱げるからてつだわなくっていいって!」
「わあ!宮沢さん自分で脱いでくれるんだ!」
「も、そういうことじゃなくってぇ!」
「それは見逃せない、ビデオ何処っだったっけ・・・」
「手前はとっとと湯につかっとれ!」
有馬の顔が瞬間で曇ったようだ。
「・・・・何それ。」
「何かおかしいことある?」
「その全身を覆うバスタオルはなに?」
「あら、誰も一糸まとわず、なんて言ってないじゃない。」
「ふーん・・・・・そういう行動に出るか・・・・まさかそれで浴槽につかるつもり?」
「あら、あたし浴槽にはいつも入らないわよ。軽くシャワー浴びて終わり・・・・何おちこんでんの?」
「だってさ・・・・せっかくいろいろ準備したのにさ・・・・」
「はいはい、とりあえず髪洗うわよ。シャンプー貸してね。」
「・・・・・どうぞ」
そういって彼女は髪を洗い始めた。有馬はちょっと堪えたか、黙っていた。
いつもと違うシャンプーの匂い。
うちの家の人たち解るかな・・・などと考えていると背筋に冷たいものが走った。
慣用句ではない。
本当に冷たい?
ふと振り向くと、シャワーで冷水を浴びせてる奴がいた。