「この場で身の程、分からしたりましょか?」  
「!!」  
 
先程までとはうって変わって、厳しく重いプレッシャーをかけるエディブル・ガーディアン-No.3,恵那恵。  
今まで強気だったマキトもこのプレッシャーにはひるむ。  
恵が掲げる携帯電話からは敗者復活戦会場にいると思われる藤堂の声が聞こえてくる。  
 
[・・・今日のところは引いて下さい!今日中にこちらから改めて連絡しますから!高円寺さんにも・・・]  
「やって…」  
「・・・」  
 
さすがにマキトもこれに逆らってまで今すぐ勝負をしたいと思っているわけではない。  
実際、今日ここに来たのも敗者復活戦が面倒だから、という理由の方が大きい。  
 
(コイツを倒せば一気に3番目まで行けると思たんやけど…。ま、しゃーないか)  
「・・・。邪魔した」  
 
こちらの申し出は拒否されたのだ。もうここにいる必要はない。  
そう判断してマキトは店の戸に手をかける。  
 
「ちょ、ちょっと待ちぃや!」  
「ん?」  
「わざわざ復活戦ブッチしてここまで来たんやろ?少しゆっくりしていき」  
「いや、別にオレは…」  
「ええから、ええから。アンタには結維のこととか色々聞きたいこともあるし。茶ァくらいなら出すよ?」  
 
「そこまで頼まれたらしゃーないな」  
「別に頼んどらんし。嫌なら帰ってもええよ」  
「ウソウソ!冗談やって!お言葉に甘えてお邪魔させていただきます」  
「ん。ほんなら店の奥入って。今は休憩中やけどもう少ししたら人来るから」  
「わかった。ほんなら、お邪魔しま〜す」  
 
マキトが通された店の奥は和室だった。  
ちゃぶ台と小さな棚しかない小さな和室。  
マキトがそこに座って待っていると、恵がお茶を持って入ってきた。  
 
「ホラ」  
「お?サンキュー!それにしても静かやなぁ。爺ちゃん達は?」  
「仕事場の方で本業の包丁造りに専念してる。他の連中は買い出しや」  
「ふ〜ん…」  
(ん?なんかコイツ、さっきと言うてることがどこか合わない気がすんねんけど、気のせいやろか?)  
「どうかしたん?ボーっとして」  
「え?あ、いや、何でもない…」  
「茶、冷めてまうよ」  
「あ、ああ…」  
 
静かで小さな部屋に女と2人っきり。どうも落ち着かない。  
以前、結維とは何度もこういう状況に陥っていたが、今はその時のように飛びかかるわけにもいかない。  
相手が相手だ。そんなことをしたら命の保証はないと思われる。  
 
数分後・・・。  
さっきから恵はそっぽを向いて黙ったままだ。  
マキトも話し掛けようと思ってはいるのだが黙ったままだ。  
 
(コイツが話したい言うから上がったのに…。何でよそ向いて黙っとんねん!)  
マキトはそう思いながら恵を見る。  
長い髪や鋭い目を中心とした整った顔立ち。  
大人の魅力、とでも言うのだろうか?結維にはない何かが恵にはあり、マキトはそれに魅せられた。  
 
(今までちゃんと見たことなかったけど、コイツも相当美人なんやなぁ…。結維とはまた違った魅力やな!結維はカワイイで、コイツはキレイや!そして結維にはないモンがもう一つ…)  
マキトの視線は恵の顔をはずれ、下へと降りてゆく。  
そこにあるのは恵のその豊満な胸。結維のよりも遙かに大きいそれは、恵が着ている分厚いセーターの下からでもハッキリとその存在を主張している。  
 
(でっかいなぁ…、触ってみたいなぁ…。でも、そないな事したら確実に殺されてまうなぁ…。それでもやっぱり、一度でええから触ってみたいなぁ…)  
あらぬ妄想に浸り始めたマキト。  
 
「何?ウチになんかついてる?」  
「お?え?あ!何にも!何にも見とらんで!」  
「はぁ?」  
「いや、何でもない…」  
「そう…。なら、ええけど」  
(なんや、また黙りか…。何か話し掛けた方がええんかな?)  
 
あまり結維以外の女性とまともなコミュニケーションを取った事がない(だいたいはエロスに走る)マキトは少し困り始めた。  
 
「なあ」  
「ん?何?」  
「結維とはどうなん?」  
「どうって?」  
「SEXはしたん?この前、ウチが結維にコンドームやった時はしてない言うてたけど」  
「な!?何をイキナリ言うてんねん!そんなん…」  
「もしかして、まだなんか?」  
「・・・まだや」  
「ハハハッ!度胸ないなぁ、アンタ」  
「しゃーないやろ!結維もどう思ってるかもわからんし!」  
「コンドーム持ってたやん」  
「だ・か・ら!そん時は酔ってて記憶がないって前にも言うたやろ!」  
「あっそう」  
「ったく…」  
「なぁ、高円寺」  
「今度は何や!」  
「もしかしてアンタって童貞なん?」  
 
ゴツッ!  
マキトは物凄い勢いで頭をちゃぶ台にぶつけた。マキトが空にした湯呑みが倒れる。  
 
「なぁ、どうなん?」  
「バ、バカにすんな、ボケ!オレ、23歳やぞ!童貞なんかとうに卒業しとるわ!」  
「じゃあ、何回くらい経験してんの?」  
「うっ!えぇと、それはやな・・・」  
「・・・童貞を捨てた一回きりか」  
「〜〜〜!!!ええやんけ!関係ないやろ!」  
「そんなんやから結維といつまで経ってもできへんねん」  
「むぅ・・・」  
「そやな…。ウチと一回やってみよか?」  
 
「ホンマか!助かるわ・・・って何やて!?」  
「だから、ウチが一回SEXしたろかって言うてんの」  
「な、何をバカ言うてんねん…。さっきアンタも言うてたけど、オレには結維が・・・」  
「SEXどころかキスもまだなんやろ?結維から聞いとるで?それに・・・」  
「それに?」  
「知ってんねんで、ウチ。さっきアンタがウチの胸ばっかり見とったこと」  
「あ、あれは…。その…」  
「ええで。触っても…」  
「え?」  
 
恵はちゃぶ台の向こう側にいるマキトの手を取り、自分の胸へと導く。  
そしてちゃぶ台を越えて、マキトに迫る。  
 
「え、恵那・・・」  
「ふふ、ウチが一から教えたるわ。大人しくしとき。気持ちよくしたるから…」  
「・・・」  
 
マキトは迫ってきた恵に押し倒された。恵がマキトにのしかかる。  
 
(ヤバい!コイツめっちゃエロい…。アカン、結維、ごめん…)  
 
結維への罪悪感を感じながら、マキトは目を閉じた。  
最後にマキトが感じたのは鼻を刺激する恵の妖艶な匂いと手の中にある恵の豊かな胸、顔に降りかかる恵のサラサラの髪、そして自分の唇に重なる恵の柔らかな唇だった・・・。  
 
 
続く、かな?  
 

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