ある昼下がりの事である。  
 高須相子は、久し振りに自室で寛いでいた。大介はもちろん、寧子も留守だとは珍しい。  
 銀平と安田万樹子の婚約が整い、相子は自らの手腕にうっとりとしていた。  
 今や強大な万俵財閥を操るのは、大介ではなく自分だとも思えてきた。  
「フフフ……」忍び笑いを洩らし、ティーカップのお茶を啜った。  
 昼間の服装にしては露出の多い胸元が大きく開いた黒いドレスを纏った相子は、  
お気に入りのアンティークなソファの上に長々と寝そべっていた。  
 この黒いドレスも今夜戻って来る大介の為の装いだ。何故か大介は、このドレスを  
いたく気に入り、これを引き剥がしながら相子との夜を楽しむのが恒例となっていた。  
 今夜、妻の役を演じるのは自分の番だ。大人しい寧子が慎ましやかに目を伏せて自室に  
引篭もる姿が、今から目に浮かぶ。  
「いくら華族のお嬢様でも、体じゃ私に敵わないのよね……」  
 そんな独り言を呟くと、大介に抱かれた自分を妄想し、早くも内股の辺りは濡れ始めて  
いた。  
「いやだわ……私ったら……」  
 手を伸ばし、ティッシュボックスから二、三枚のティッシュを抜き取ると、誰も見て  
いないのをいいことに、ドレスを捲って秘部を拭き取った。  
   
「……恥ずかしい姿ですね。昼間からどんな妄想をしていたんですか?お義父さんとの  
今夜の事でも想像してたんですか?……」  
 突然背後から声をかけられ、驚いた相子は後ろを振り向いた。  
――美馬中。長女一子の夫で大蔵省主計局次長をしている男だ。  
「あ…中さん!何しにいらしたの!」  
「ご挨拶ですね。私はこの万俵家の娘婿ですよ。女房の実家に顔を出すのに、一々連絡が  
必要ですか……」  
「失礼だわ、ノックも無しに行き成り部屋に入ってくるなんて!」  
「私は貴女と違って立派な万俵家の一員ですよ。他人の貴女に理をする必要なんかない」  
『他人』――その言葉を聞いた相子はムッとした。  
 
(元は貧乏住職の小倅のクセに……私にむかって何という事を……)  
 
「あれ?気に障りましたか?この家を牛耳る相子さんらしくもないですね、ハハハ……」  
 中の乾いたわざとらしい笑い声は、相子の怒りを掻き立てた。  
 だが、相手は一子の夫である。それなりの礼を尽くすつもりで、平静を装い、穏やかに  
中に向かって告げた。  
「中さん。御用が無いなら出ていらして。恥ずかしい振る舞いをなさると主計局次長の  
お名前が泣きますわよ。それに一子さんがこの事をお知りになったら、どう思われる  
かしら?」  
「一子ですか……あれはそれなりに……元々、私の事などなんとも思っていませんよ。  
 それに、恥ずかしいのはどちらの方ですかね。お義父さんですか?それとも、あなた  
かな……相子さん」  
「中さんっ!なんという事をおしゃっるの!」  
 怒りを露わにするする相子に、美馬は突然襲いかかった。  
 
「イヤッ!中さんっ!何なさるのっ!!」  
 美馬は相子をうつ伏せにソファに押し付けると、黒いロングドレスの裾を捲った。  
「色気の無い物を穿いてますね……」  
 美馬は相子のストッキングに手をかけると、それを引き裂いた。  
 シルク製のストッキングは、女の悲鳴の様な音を立て左右に引き裂かれた。  
「止めてっ!中さんっ!あなたは、一子さんの夫でしょう?」  
「そうですよ……だから何だと言うんです?一子は、確かに貞淑な女でお嬢様ですよ。  
 だけどね相子さん、私は一子じゃ満足できない。一子の様な子供じゃ満足できないんですよ。  
 私が満足できる女……それは、例えば貴女みたいな……」  
 美馬は口元をイヤらしく歪めながら、相子のショーツに手をかけた。  
「嫌だわ!中さんっ!こんな事をあの方がお知りになったら!」  
「お義父さんですか?相子さん……貴女、本当にお義父さんで満足していますか?いくら  
万俵大介氏が偉大でも、貴女を満足させるには年を取りすぎていませんか?フフフ……  
本当の事を仰って構いませんよ――『私は大介氏じゃ、満足できない』と、本音を言って  
下さいよ。クッ……フフフ……」  
「イヤ――っ!!私に触らないでっ!!」  
 抵抗する相子に美馬は無理やり挿入した。その場所は思ったより濡れていた。  
「おや?もう、こんなに濡れてるじゃないですか、相子さん……素直だな……フフフ……」  
「嫌……違うわ……違う……」  
 相子の抵抗は段々と空しくなり、美馬に秘所を突かれる度に相子の腰は高く持ち上がった。  
「あぁ……あぁっ……んっ……あぁ―っ!!」  
 行為の強要というシチュエーションと大介氏とは違った美馬の熱い挿入に、相子は乱れ、  
我を忘れて行為に没頭していた。  
 美馬はそんな相子の乱れ具合を目にすると、自身も興奮の極みに達し、激しく相子を  
攻め立てた。  
「あぁ!!ア―ッ!!あ、あたるさんっ!!」  
「あ、あっ、、相子さん、、締まり具合がなかなか良いですね……い、いつも、ハァハァ、  
お義父さんに荒らされている割には、、、ハァハァ……」  
 興奮した美馬は、息を荒げて相子を激しく突いた。  
「ダメっ!あたるさんっ!!中に出さないでっ!!!」  
「遅いですよ!ハァハァ……もう、もう、もちません……」  
 美馬は相子の体の中に、白い飛沫を放出した――。  
 
「嫌だわ……中さんったら……出さないでって言ったのに……」  
「妊娠の心配でもしてるんですか?それには微妙な年齢でしょ?」  
「……失礼だわ、本当に……」  
「フフフ……悪かった、言い過ぎです。仮にそうなっても構わないじゃないですか?  
お義父さんの子だと言う事にすれば良いでしょう」  
「それで?その子は一子さんの弟で、あなたの子供で、あなたと一子さんの息子の  
叔父か叔母で兄弟と言う訳なの?良い筈無いでしょう……」  
「いけませんか?乱れた万俵家には相応しいと思いますが……例えば鉄平さんとか」  
「中さん……そのお話は……」  
「血の乱れなんて、何て事ありませんよ。当事者さえ黙っていれば良いんです。  
 ……それより、相子さん。拭いてくれませんか?」  
「な、、なんですって?」  
「大介氏に、この事が知れてもいいんですか……」  
 美馬が大介に話す筈も無いのだか、多少自分の振る舞いに後ろめたさを感じて  
いた相子は、それくらいの事ならと思ってティッシュボックスに手を伸ばした。  
「ん?何してるんですか?誰がそんな物で拭けといいました?……拭くのは、それ  
でじゃなくてあなたの口で拭いて欲しいんです」  
 美馬の言葉に、流石の相子も体を震わせ怒りを露わにした。  
「あ、あんまりだわ!中さんっ!!」  
 相子の怒りを美馬は軽く流し、せせら笑いながら言った。  
「……欲しいんでしょ?次が……私もつい興奮して早く終わらせてしまいましたが、  
次は充分にもたせるつもりです。あなたが充分に満足する位に……それでも嫌ですか?」  
 確かに、興奮した美馬が果てるのは相子の予想よりも早かった。まだ、充分に満足し  
きれていない自分を相子は知っていた。  
 相子は屈辱を感じながらも、己の“淫靡な欲望”に勝てず、美馬の前に跪いた。  
そして、剥き出しになったまま萎えた状態の美馬自身のモノを口に含んだ。  
「くっ……ふぅ……ふぅ……」  
 自分の前に跪き自身のモノを舐め回す相子を見て、美馬は口元を歪めた。  
 
(素直だな……余程、大介氏に満足していないらしい。この驕慢な女を従わせるのは  
なかなか楽しい……良い女でもあるし、まだまだ利用価値はありそうだな……)  
 
 万俵大介氏に開発されたらしい相子のテクニックは、充分に美馬を満足させた。  
 相子の口内に含まれたモノは、やがて元の硬さを取り戻していった。  
 
美馬は再び、相子をソファに押し倒した。  
 そして、相子を全裸にすると自身もスーツを脱ぎ捨て裸になり、相子の  
体を抱きしめた。  
 先程の荒々しさは影を潜め、前戯は時間をかけて成されていった。  
 美馬の唇が相子の体を這って行く度に、相子の体はビクンと震え、裸体を  
捩りながら激しく喘ぎ声をあげていた。  
 美馬が相子にゆっくりと挿入すると、相子はいやらしく淫らに腰を震わせ  
ながら、美馬の背中を掻き毟った。  
 相子の体を激しく突いていくと、相子の喘ぎはより淫らに激しいものに  
変わり、美馬は、自分のテクニックもなかなかのモノだなと優越感に浸って  
いた。  
 たとえ大介氏といえども、若く有能なエリート官僚には敵わない筈だと  
思っていた。  
 国家を動かすのは一介の銀行家では無く、自分の様な高級官僚なのだと  
美馬は自惚れていた。  
 
(それにしても……この相子の乱れ様……そそるな……一子やお義父さん  
にも、見せてやりたい……一子もこれ位の感度があれば……)  
   
 ――優越感に浸り相子を責め続ける美馬   
 そんな美馬の姿を、相子は薄目を開けてそっと見ていた。  
 
(美馬中……馬鹿な男だわ……ほんとに私が感じているともで思ってるの  
かしら?……イク振りも大変だわ……でもいいわ。この万俵家での持ち駒は  
多いほうがいい……私自身の為にも……まあ、中さん。せいぜい頑張って……  
私の本当の“満足”は、今夜成される筈だから……)  
   
 美馬は相子の思惑を知る由も無く、激しい挿入を繰返し始めた。  
 そして、再び相子の体の中に熱い液体を撒き散らした――。  
 
                                       ―終―  
 

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