今日は朝から、エレオノールの機嫌がすこぶる悪い。  
昨日突然、鳴海の師匠の娘で女優のミンシアが、仲町サーカスに遊びに来たからだ。  
新作映画のキャンペーンで来日し、一日だけオフが取れたということだった。  
鳴海は一日中、観光だ、ショッピングだと、有無を言わさず引っ張りまわされ  
エレオノールはひとり、置いてきぼりを食らっていた。  
ミンシアは上機嫌で帰って行ったが、エレオノールはすっかり御冠だ。  
何しろ、この2人は仲が悪い。  
フランシーヌ人形の一件で、ミンシアはエレオノールに敵意を剥き出しにし  
エレオノールもまた、自分達の問題に介入しようとするミンシアに反感を持った。  
出会いからして最悪だった上に、色々あって何とか収まった今も、  
鳴海を挟む2人の女の対抗心は相変わらずだった。  
ミンシアにとっては、よりにもよってフランシーヌ人形の生まれ変わりといえる女が  
鳴海と恋仲になった事が、今でも気に入らないのだ。  
エレオノールも、姉貴風を吹かせ鳴海との仲に口出してくるミンシアが癪に触る。  
顔を合わせる度に喧嘩をする2人に、鳴海は頭の痛い思いをさせられていた。  
傍から見れば、妻と小姑の諍いに手を焼く情けない亭主のようだった。  
 
「もういい加減、機嫌直せよ。いつまでも不貞腐れてたら見っともねぇだろが。」  
その夜、2人きりになってから、鳴海はエレオノールの御機嫌取りに努めた。  
昨夜も何とか宥めようとしたが、彼女は口も利かず、布団を被って寝てしまっていた。  
「だって、あなたが悪いんじゃない。いつもいつもあの人の言いなりで。」  
「仕方ねぇじゃねーか。昔っから姐さんには頭が上がんねぇんだからよぉ。  
なんつっても尊敬する師父のお嬢さんだし・・・。」  
鳴海はもごもごと言い訳をする。  
「それにだな、勝が俺達に気ィ使って可哀相だろ?」  
確かに、若い男どもはザマーミロ、親父達はやれやれと言う顔で傍観している中  
ひとり勝だけがエレオノールの顔色を窺い、オロオロしていた。  
だが、勝の事を持ち出しても効き目は無く、彼女はますます突っ掛かってくる  
挙句の果てには「私とあの人と、どっちが大事なの!」と言い出す始末。  
最初はひたすら平身低頭していた鳴海も、ついにぶち切れた。  
「あーもう、うるせーな! いつまでもつまんねー事をごちゃごちゃ言いやがって!  
これだから女は・・・ブッ!!」  
鳴海の顔面に枕が直撃する。  
 
「て、てめー!! 何しやがる!」  
怒鳴りつける鳴海に、エレオノールは尚も枕を叩き付ける。  
「なによ! 自分が悪いんでしょ! ナルミの馬鹿!」  
「って、おい!こら!・・・ったく、いーかげんにしろ!!」  
鳴海はエレオノールの両手をつかんで、床に押し倒した。  
「痛っ・・・。は、放して。」  
手首を強く押さえつけられ、エレオノールは身を捩って逃れようとする。  
だが鳴海は力を緩めず、そのまま彼女の上に覆いかぶさり、強引に唇を重ね合わせた。  
「・・・ん、んん・・・。」  
最初は抗っていたが、舌を絡め取られ、口内を弄られる内に力が抜けていく。  
解放されて、しばらくはボーっとなっていたが、エレオノールはやがて我に返り  
頬を上気させながらも、キッと睨みつけてきた。  
「こ、こんな事ぐらいで誤魔化されたりしないから・・・。」  
「あー、そうかよ? だったら、これならどうだ?」  
一向に折れようとしないエレオノールに、鳴海もつい向きになる。  
左手で彼女の両手首を頭の上で一纏めにつかみ、右手でパンツのファスナーを下ろすと  
下着の中に指を潜り込ませた。  
「んっ・・・!」  
エレオノールの体がピクンと揺れる。  
 
節くれだった指が、柔らかな花弁を掻き分け、敏感な芽を捉える。  
指先で摘まれ弄ばれると、忽ちのうちに襞の奥から蜜が溢れ出してきた。  
「ん・・・、くぅ・・・。」  
快感に体を震わせながらも、エレオノールは声を上げまいと必死で耐える。  
それが鳴海の嗜虐心を刺激した。  
更に指を深く突き入れ、わざと淫靡な音をぴちゃぴちゃと大きく立てさせてやる。  
「いいんだろ?声出せよ。」  
エレオノールは唇を噛みしめ、首を左右に振る。  
「し、知らない・・・。」  
絹糸のような銀の髪が、汗で濡れた頬に張り付く。  
苛立った鳴海は、彼女をもっと苛めてやりたい衝動に駆られた。  
彼女のTシャツを捲り上げ、伸ばされた両の手首に巻きつける。  
さらにブラを剥ぎ取り、下着ごとパンツを一気に引きずり下ろした。  
「い、いや・・・。」  
彼女の白く輝く裸身が、余すところ無く晒される。  
両手を縛られ、強い腕に押さえつけられ、体を隠すことも出来ない。  
「いや、放して・・・。」  
エレオノールが羞恥に身を捩らせると、豊かな胸がふるふると揺れる。  
鳴海は意地悪く微笑むと、その白いふくらみに手を伸ばした。  
 
大きな掌が乳房を押し包み、ゆっくりと揉みしだく。  
「んっ!!」  
硬く尖った乳首をきゅっと摘まれ、エレオノールの体が跳ね上がった。  
太い指で敏感な突起をこりこりと弄られ、思わず声を上げそうになる。  
それでもエレオノールは硬く目を閉じ、甘い責め苦に耐えようとした。  
「おっ? まだ強情を張る気か? じゃあ、これならどうだ?」  
鳴海はピンク色の乳首を口に含み、舌先で転がす。  
「ん・・・ふ・・・、ぅん・・・。」  
丹念な愛撫に艶めかしく体を揺らしながらも、彼女は必死に声を噛み殺した。  
口で乳房を愛撫しつつ、鳴海は右手を彼女の両足の付け根に差し入れた。  
柔らかな銀色の茂みの奥は、十分に潤っている。  
しっとりと濡れそぼった花芯の中へ、鳴海は指を埋めていった。  
「・・・ん・・・あぁっ!!」  
もっとも感じる場所を探り当てられ、エレオノールは耐え切れず声を上げた。  
彼女の反応に気を良くして、鳴海はさらに執拗に責め立てる。  
「あっ、あぁん! あ、ふぅ!」  
髪を振り乱し、身を捩らせて、エレオノールは喘いだ。  
頭上で縛られた両手の指が、空しく宙を掻く。  
「あっ、あっ・・・、いやぁ・・・あん・・・。」  
知らず知らず、彼女は自ら両足を大きく広げていた。  
 
先ほどまでの強がりも何もかも、彼女の頭から消し飛んでいた。  
体の奥で蠢く指に与えられる快感を、ただひたすら夢中で追った。  
「うふぅ・・・ん、あぁ・・・、ナ・・・ルミ、・・・い、いい・・・。」  
絶頂を間近に迎え、彼女の体が小刻みに震える。  
だが、急に鳴海は手の動きを止めた。  
「え・・・?」  
エレオノールは潤んだ瞳で、彼の顔を見上げる。  
「ナ、ナルミ・・・、なぜ・・・?」  
鳴海は不敵な顔で、戸惑う彼女に言い放った。  
「どうして欲しいんだ? 言ってみろよ。」  
エレオノールは最初、きょとんとしていたが、やがて彼の言っている意味が分かった。  
「いや・・・、そんな・・・そんなこと言えない・・・。」  
彼女は真っ赤になって、顔を横に背けた。  
「言わなけりゃ、ずっとこのままだぜ。いいのか?」  
確かに、途中で放置された彼女の体は、熱く火照ったままだ。  
蜜を滴らせた花弁の中は、彼を求めて激しく疼いている。  
「ねえ・・・、意地悪しないで・・・、お願い・・・。」  
「駄目だ。どうして欲しいのか、自分で言うんだ。」  
「いや・・・いや・・・。」  
「言えよ。」  
懇願しても無駄だと分かり、エレオノールは消え入りそうな声で言った。  
「わ、私の中に・・・あなたの硬くて熱いものを・・・入れて・・・。」  
 
鳴海はエレオノールの中に、自分の猛ったものを突き入れた。  
彼女のそこは、しっとりと彼を包み込み、難無く受け入れていく。  
「あぅ・・・ん・・・。」  
エレオノールは甘やかな吐息を漏らし、体を大きく仰け反らせた。  
肉の襞が生き物のように絡みつき、彼を奥へ奥へと誘い込む。  
その温もりを味わいながら、鳴海は奥まで刺し貫いた。  
「ふ・・・ぅん・・・あっ、あん・・・。」  
自分の中を満たす圧迫感に、エレオノールは歓喜の声を上げる。  
鳴海は彼女の両足を抱え、動き始めた。  
「あっ、あっ・・・あぁん! はぁっ・・・あん!」  
彼女の声に煽られ、鳴海は次第に動きを速めていく。  
肌が擦れ合う音と、止めどなく溢れ出る愛液の濡れた音が淫らに響く。  
「ああ、ナ・・・ルミ・・・、ナルミ・・・、い・・・い、もっと・・・。」  
エレオノールは狂ったように彼を求め、ひたすら嬌声を上げ続けた。  
時折、電流が走ったようにびくびくと震え、彼を飲み込んだ花弁が激しく収縮する。  
顎を仰のかせ、エレオノールは一際大きな声を上げた。  
「くぅっ! んんっ! あっ、ああぁん!!」  
全身を突っ張らせ、彼女はエクスタシーに達した。  
 
息を荒く弾ませ、エレオノールはぐったりと力無く横たわった。  
その顔には陶然とした表情が浮かんでいる。  
だが鳴海はタフであることを証明するように、すぐ二回目の行為に取り掛かった。  
彼女の背中に腕を回して抱き起こし、うつぶせに寝かせる。  
「まだ、これからだぜ。」  
「・・・あっ!!」  
エレオノールは顔を床に伏せられたまま、下半身だけを高く持ち上げさせられた。  
円やかなラインを描く双丘と、その奥の秘所が剥き出しになる。  
透明な液体が、太ももの内側を伝い落ちてゆく。  
恥ずかしさに身悶える姿はエロティックで、なおさら鳴海の扇情をかきたてた。  
「い、いやぁ・・・あん!!」  
鳴海は太ももを押し広げ、濡れた花弁の中に舌を差し入れた。  
ぴちゃぴちゃと音を立てて、舌が蠢く。  
「く、ふっ・・・、ん・・・、あっ、あん・・・。」  
溢れ出した彼女の蜜が、シーツを濡らす。  
自由にならぬ手が、シーツをギュッとつかむ。  
エレオノールはいつしか自分から腰を揺さぶっていた。  
彼女の中を舌で十分に味わい、鳴海は顔を上げた。  
そして彼女の腰に手を当て、背後から一気に貫いた。  
 
「ああぁ・・・あん!!」  
エレオノールの艶めかしい声が部屋の中に響く。  
「あぁんっ、・・・ふぅ・・・ん・・・、ナルミィ・・・。」  
鳴海はいっそう強く彼女を攻め立てる。  
高々と持ち上げられた尻を淫らに揺らし、エレオノールはよがり狂った。  
やがて絶頂を迎え、彼女の体が激しく震える。  
鳴海もまた彼女の中に解き放った。  
 
嵐のような時間が過ぎ去り、鳴海はようやく彼女の手の戒めを解いてやった。  
「ごめんな。ちょっときつかったか?」  
「ううん、大丈夫・・・。」  
鳴海は優しく彼女の体を抱きしめてやる。  
エレオノールは甘えるように、厚い胸板にそっと頭を預けた。  
「でもな、お前があんまりわけわかんねーこと言うからだぞ。苛めちまったのは。」  
「だって・・・、あなたはいつも人の為に一生懸命になるから。  
私のことなんか忘れてしまうんじゃないかって・・・。」  
「ばーか。忘れるわけねぇだろ? 俺には誰よりもお前が大事なんだからな。」  
「分かってるわ。あなたはただ困っている人を放っておけないだけなんだって。  
でも、綺麗な女の人に優しくするあなたを見ると不安になる。  
信じてないわけじゃない。でも、あなたが私以外の女の人を見るのは嫌・・・。」  
 
鳴海はあやす様に彼女の髪の毛を撫でてやる。  
「俺の女はお前だけだ。一生、離さない。だから安心しろ。」  
「ええ、愛してる、ナルミ・・・。」  
2人は固く抱きしめ合い、口づけを交わした。  
 
翌朝、周囲が呆気に取られるほどに、エレオノールは上機嫌だった。  
昨日までの仏頂面が嘘のような晴れ晴れとした表情で、朝食の仕度をしている。  
「鳴海兄ちゃん、しろがねと仲直りしたんだね。よかったぁ。」  
「ま、まあな。」  
無邪気な勝の言葉に、鳴海は気恥ずかしそうな顔をする。  
「昨日、あんなにつんつんしてたくせに、人間ってよく分かんないっすよ、まったく。」  
勝の肩に止まり、呆れたようにグリュポンが言った。  
テレビからは、朝のニュースを伝える声が聞こえてくる。  
『・・・いよいよ明日、ローエンシュタイン公国のエリ大公女が初来日します。  
ヨーロッパ中の男性を魅了する、若く美しいエリ大公女は大の親日家で、  
以前、大変お世話になった御友人が日本にいるので、滞在中に是非会いたいと・・・。』  
「うひゃー、こりゃまたすごい別嬪さんですねぇ、マスター。」  
「ほんとだ。綺麗なお姫様だねぇ。 ・・・あれ? 鳴海兄ちゃん、どうしたの?  
顔が引きつってるよ? ねぇねぇ、お兄ちゃんてば・・・。」  
 

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