からくりサーカス  

〜涼子の目覚め〜  

(ううん……何よぉ、こんな夜中に……)  
間近で聞こえてくる人の声に、涼子は夢の世界から引き戻された。  
トレーラーの中は薄暗く、頭に残る気だるさからも、今がかなりの深夜である事が判る。  
一言文句を言ってやろうと、涼子は声のする方向に顔を向け、重い瞼をゆっくりと開いた。  
(……えっ!? な、なにっ!?)  
しかし、視界に飛び込んで来た光景に、涼子は声を出す事すら出来ずに硬直する。  
すぐ傍の布団の上で、リーゼとヴィルマが半裸で絡み合っていたのだ。  
(なななっ、ふ、二人とも、何をしてんのよっ!?)  
涼子の視線にも気付かず、二人は見た事もない表情を浮かべながら、甘い吐息を洩らす。  
リーゼの細い肢体を這い回るヴィルマの手が、白い蛇のように淫らに揺れ動く。  
直感的に見てはいけないものだと悟り、涼子は慌てて寝返りを打ち、二人に背を向けた。  
(あ……、あれは、なに? あたし、あんなの、知らない……)  
激しく高鳴る胸を両手で押さえて、涼子は朱に染まった耳を隠すように、布団に深く潜り込んだ。  
行為の意味は判らないが、自分が起きている事を二人に知られたら、とてもマズい事態になるような気がする。  
幸い、二人はその行為に夢中になっているようで、涼子の目覚めに気付いた様子は無い。  
しばらく息を潜めていた涼子は、どうやらバレずに済んだと知り、そっと安堵の溜息をついた。  

「フフ……。随分感度がいいみたいだけど、もしかして……自分で触ったことある?」  
「ひァ!? え、ア、ダメ、……汚……ッ! ッァ!」  
(……リーゼさん、気持ち良さそう……)  
背後から聞こえてくる、リーゼの快楽に震える声を聞き、涼子の下腹部がズクン、と疼いた。  
脳裏に焼き付いた二人の痴態が、涼子の未成熟な女の部分を刺激する。  
涼子はぎゅっと目を瞑ったまま、自分でも気付かないうちに、太股をもじもじと擦り合わせていた。  
(何だろう……。あそこが、じんじんして……)  
むず痒さに耐え切れなくなった涼子は、おずおずと片手をパジャマの中に差し入れた。  
無毛の丘を伝い、奇妙な罪悪感に一瞬指を止めた後、思い切って熱を孕んだ亀裂に触れてみる。  
幼いスリットは微かに湿っており、そこに触れた途端、涼子の背筋に甘美な痺れが走った。  
(な……に、これっ……! おしっこ……じゃ、ないよね……?)  
湿り気の原因は少しぬめっとしていて、涼子にはそこにある雫の正体が分からなかった。  
小水ではない証拠に、それは陰核からではなく、その下の割れ目から滲み出てくる。  
指先でそっと拭ってみると、ゾクゾクする快感が強さを増し、新たな蜜が股間を濡らした。  
「濡れてるの、分かる? 音がするでしょう?」  
「……!! イヤ……! イヤ、イヤァ!」  
(リーゼさんも……、濡れてる、の?)  
ヴィルマの声と共に、涼子の背後から音高い水音が響いてきた。  

風邪を引いた時のようにはっきりとしない頭で、涼子はゆるゆると指を動かしながら、リーゼの悲鳴を聞く。  
「あのね、気持ちいいと、女の子はみんなこうなるんだよ?」  
(そう、なんだ……。みんな、こんな風に……)  
ヴィルマの言葉に安心を覚え、涼子の指は陰裂の表面を何度もなぞるように蠢く。  
溢れた快楽の証が指先に絡み、ショーツの中央に染みを広げていった。  
「アァ! や、やぁーッ! あはァ…、くぁ、あ、ヤ!! アア!」  
(あっ……だ、め……。こえ、でちゃいそ……)  
リーゼのように叫びたい気持ちを懸命に抑え、涼子は枕に顔を強く押し付け、自分の口を塞いだ。  
二人に気付かれたらと思うだけで、涼子の胸に熱い高まりが込み上げる。  
「アァ!! イ、あ、あ、あ!!!」  
(なんか……くるっ……! どうしよう……ゆび……とまんないよぉ……!)  
絶頂の予感に慄きながらも、涼子の手は独自の意識を持ったかのように、幼い秘唇を弄り続けた。  
割れ目からは絶え間なく粘液が零れ、布団の中でぐちゅぐちゅといやらしい音を立てる。  
リーゼの喘ぎに同調して、ビクビクと身体が震え、意識が白く染まってゆく。  
「リーゼ、ほら、イキな!」  
「あ! ア!! アぁーーー!!?」  
(だめ……。だ、めっ……、────っ!!)  
リーゼが達するのと殆ど同時に、涼子は初めての絶頂に襲われ、そのまま意識を失った。  

                  ◇  ◇  ◇  

「誰も……いないよ、ね?」  
翌朝早く、涼子は辺りをキョロキョロ窺ってから、小さく丸めたパジャマを抱え、トレーラーを降りた。  
最寄りの水道は、少し先の公園にしかない。  
涼子は足音を忍ばせて、見るからに挙動不審な様子で公園へと向かった。  
「……あれ、涼子ちゃん、おはよう。今朝は早いんだね」  
「ひゃんっ!?」  
いきなり背後から声を掛けられて、涼子はその場で30センチほど飛び上がった。  
いつの間に現れたのか、勝は寝ぼけまなこを擦りながら、朗らかに笑いかけてくる。  
勝の無邪気な笑顔に、涼子は訳も無く頬が紅潮するのを感じた。  
「いっ、いきなり声を掛けないでよっ! びっくりするじゃない!」  
「あ、うん、ごめん。……どうしたの、パジャマなんて抱えて」  
「な、な、なんでもないわよっ! トレーラーの中は暑かったから、汗で湿っちゃったの!」  
本当は、もっと恥ずかしい染みが出来てしまったのだが、勝に言える筈もない。  
「昨日の夜は、寒かったと思うけど……?」  
「どうでもいいでしょ、そんな事っ! ……ちょっと、何でついて来るのよ!?」  
「え? 僕は、顔を洗いに行きたいんだけど……」  
怪訝な顔をする勝の返答に、涼子の頭は呆気なくパニックを起こした。  
勝のいる所で、染みの付いたショーツを洗うなど、涼子にとっては論外だ。  
「後にしてよっ! いい、あたしが戻って来るまで、ここで待ってんのよ! 絶対だからねっ!?」  
「あ、ちょっと……」  
勝を怒鳴りつけると、涼子はパジャマとその中に隠したショーツを抱え、ダッシュで公園に向かう。  
「えーっと……。何なんだろう、あの態度……?」  
後には、目を点にして立ち尽くす勝が、一人ポツンと取り残されていた。  

〜END〜  

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