灯りを落とした部屋の中、鳴海とエレオノールは唇を重ね合わせていた。
2人は一糸纏わぬ姿のまま、無言でただ互いの唇を貪り合う。
聞こえるのは吐息と、唾液の混ざり合う湿った音だけ。
唇を合わせながら、鳴海は膝の上に抱き込んだエレオノールの肌に
優しく手を滑らせる。
エレオノールも鳴海の首に腕をまわし、火照った体を摺り寄せた。
今日の彼女は、何時になく積極的だった。
自分から体を預け、差し入れた舌を激しく絡ませてくる。
いつもなら鳴海の求めに応じて体を開き、恥じらいながら身を任せていた。
だが今夜、誘いをかけてきたのは彼女からだった。
いくら求め合ってもまだ足りないというように、ひたすら縋りついてくる。
鳴海は彼女の太腿の付け根に片手を差し入れ、銀色の茂みの奥に
指を潜り込ませようとした。
「だめ!」
エレオノールは鳴海のその手をパチンとはたいた。
「おい、何でだよ?」
鳴海が不満気な声を出すと、彼女は膝の上から下りて、正面に向き直った。
「今日は私がしてあげるの。」
そう言うと、エレオノールは太くがっしりとした首筋に口づけた。
赤く艶やかな唇が、浅黒い皮膚の上をゆっくりとたどっていく。
濡れた舌がチロチロと、逞しく鍛えぬかれた男の肉体を這い回る。
エレオノールは筋肉の感触を確かめるように、しなやかな指を滑らせ
柔らかな唇でキスの雨を降らせた。
歯を食いしばり、鳴海は甘い責め苦に耐える。
エレオノールの唇が、胸の突起を捕らえた。
「うっ・・・。」
鳴海は思わず声を漏らした。
彼女は口に含んだものを、優しく甘噛みし、滑らかな舌で弄ぶ。
それからさらに唇を下にたどらせ、くっきりと割れた腹筋の硬さを味わった。
それが終わると、エレオノールは鳴海の両足の間にひざまずいて
前屈みになった。
目の前にあるものは、快感の証しに半ば立ち上がり始めている。
しばしの間、エレオノールはじっと見入っていたが、
やがて両手の指を優しく添えると、そっとそれを口に含んだ。
「くっ!」
鳴海はビクッと肩を揺らした。
初めはおずおずと、だが徐々に大胆に、何度も何度も口づけをする。
繊細な指と、ふっくらとした唇で、エレオノールはそれを愛おしげに愛撫した。
ベルベットのような舌で丹念に舐めまわし、
柔らかな唇で押し包んで、吸い上げる。
動きは拙いが、彼女の一途な奉仕は鳴海を昂ぶらせた。
「く・・・、あ・・・。」
堪えようとしても、意思に反して口からは絶えず喘ぎが漏れる。
鳴海のものは完全に立ち上がり、硬く張り詰めていた。
「おい・・・、もういいだろ?」
息を荒げながら鳴海が言うと、ようやくエレオノールは顔を上げた。
鳴海は彼女の体をシーツの上に横たえさせようとした。
だがエレオノールはそれに抗う。
「だめよ。今日は私がするって言ったでしょう?」
そう言うと全体重をかけ、鳴海の上にのしかかってきた。
「うわっ!お、おい・・・。」
彼女の愛撫のせいで、すっかり力の抜けてしまった体は
安々と押したされてしまった。
仰向けに倒された鳴海の体の上に、エレオノールはそっと覆いかぶさった。
「お、お前、何を・・・。」
「しっ・・・、黙って。」
エレオノールは人差し指で鳴海の口を塞ぐ。
そして両足を大きく開き、鳴海の上にまたがった。
白く細い指を自分の中に差し入れ、肉の襞を掻き分ける。
そこはもう、すっかりと濡れそぼり、透明な蜜を溢れさせていた。
熱い塊をそこにあてがい、エレオノールはゆっくりと腰を下ろしていった。
「あっ・・・、はぁ・・・。」
彼女の口から甘い吐息がこぼれる。
濡れた花弁が、張り詰めた太い肉塊を飲み込んでいく。
自ら体の奥にそれを埋めていきながら、エレオノールは堪らなげに喘いだ。
「ふぅ・・・ん、あふ・・・。」
鳴海の胸に両手をつき、銀色の髪を振り乱して、
エレオノールは夢中で体を上下させた。
深々と貫かれた肉の襞は、滴る蜜でクチュクチュと淫靡な音を立てる。
桜色に染まった肌は、真珠の粒のような汗で光り輝いている。
紅潮した顔に陶然とした表情を浮かべ、
半開きにされた唇からは唾液が伝い落ちた。
快楽に乱れる彼女の美しさに、鳴海は思わず見惚れていた。
体の動きに伴い、エレオノールの豊かな乳房も激しく揺れる。
鳴海は腕を伸ばし、大きな手のひらで、それを包んだ。
2つのふくらみをやんわりと揉みしだき、硬く尖った乳首を摘まんでやると
彼女は弾かれたように背中をそらせた。
「はっ、あぁん・・・、あっ・・・。」
最早、声を押さえようともせず、エレオノールは我を忘れて動き続けた。
絶頂が近いのか、時折電流が走ったかのように体を震わせる。
絡み付く肉壁にきつく締め付けられ、鳴海も限界が近いのを感じた。
乳房を弄んでいた手を離し、彼女の腰を掴んで思い切り揺さぶってやる。
「いやっ・・・、あん・・・、だ、だめ・・・、もう・・・、あっ、あぁ!!」
激しい突き上げに耐え切れず、エレオノールは絶頂に達した。
一際高い歓喜の声をあげ、全身をがくがくと痙攣させる。
鳴海もまた、彼女の中に解き放った。
エレオノールは息を弾ませながら、鳴海の胸に倒れ込んできた。
その重みを受け止め、鳴海は彼女の体をしっかりと抱きしめてやる。
しばらくの間、2人は言葉も交わさず、汗ばんだ肌を重ね合わせていた。
「ところで、お前。あんなこと・・・その、口で・・・いつのまに覚えたんだ?」
激情が去った後、鳴海はボソッと切り出した。
「ヴぃルマに言われたの。女の人は、みんな、こうするんだって。」
「しろがね、あんた、そんな事も知らないのぉ?マグロじゃ男に嫌われるよ。」
「そんなことないわ。ナルミはお刺し身大好きだもの。」
「いや、そーじゃなくて・・・。とにかくねぇ、それぐらいやんなきゃ飽きられるよ。
あんた、あいつに嫌われてもいいのかい?」
「き、嫌われる?そ、そんな・・・どうしたらいいの、ヴィルマ!」
「まっかせなさーい。私がばっちりと、男を歓ばせるテクを教えてやるからね。」
「またか、あの女〜。」
無知なエレオノールに、面白がって色々入れ知恵をするヴィルマに
一度言ってやらねばと思っていたのだが・・・。
「ナルミ、良くなかった?」
「いや、まあ、その・・・。」
しっかり楽しんでしまった手前、今更文句は言えない。
「ごめんなさい。私、上手にできなくて。もっともっと上手くなるように
一生懸命努力するから。」
熱血漫画のヒロインの如く、瞳を燃やして誓うエレオノールに
どう返事をしてよいものやら、悩む鳴海だった。