「ゲーム脳よりでんじゃー。」
とある休日。
何も予定がなく、珍しいことに源ちずるも来ない。
久方ぶりの、一人の時間。
小山田耕太は勉強をしようとしたが、虚しい気がしたのでやめた。
色々考えた結果、数少ない荷物から引っ張りだしてきたゲームをやることにした。
ぴこぴこ。ぽるるーん。ちょりりん。
テレビから、奇妙な電子音が鳴り響く。
一昔前のゲームだった。その名も「ミスタードリラー」。
ドリルで地面のブロックを掘って、壊していくという、単純なシステムだ。
地中なので酸素がなくなるから、時折酸素補給のカプセルを取る必要がある。
なかなか、目的地の最奥部まで辿り着けない。
「耕太くーん、いるー?」
がちゃり。ドアが開いて、見知った姿がやってくる。
源ちずるだった。だが、耕太は目の端で見るだけで、決して顔を向けなかった。
ごんごん。ぎゅーん。きゅんきゅん。
今度こそ我慢するんだ、と。石のように、固い気持ちを胸に抱いて。
誰かがこんなことを言った。
――戦わなきゃ、現実と。
また、他の誰かはこんなことを言った。
――えっちなのはいけないと思います!
そのとおり、と耕太は同意したい気持ちだった。
「もう、耕太くんってばー、聞いてよー」
早速、ちずるがゲームをする耕太の背中に抱きついてきた。
ゆややん、ぎゅー。うりうり。にゅにゅにゅーん。
ちずるは背中から石の気持ちをほぐしていく算段なようだ。
え、えっちなことは……い、いけない……。
えっちなことに慣れきった体は、固い意志さえ崩していく。
「どんなゲームしてるのかな……へぇ、『みすたぁどりらぁ』? どれどれ……」
ちずるは耕太の背中を離れずに動く。
ぴこりん。ぱいぱーい。ぷぷぅ。ぎゅいいーん。
だんだん、耕太の集中力が途切れていく。
えっちなことは……えっちなことは……いけ……。
テレビ内の、ドリラーが酸素欠乏で倒れた。ゲームオーバーだった。
耕太とちずるは床に倒れこんだ。
ちずるはぱっくまんになって、耕太をいぢめる。
すっかり耕太のかたまりだましいは、みすたーどりらーに。
プレイの仕方は「二人でドリラー」。難易度は今までの中で最高。
ゆっくりと、得点を稼ぐために掘っていく。どりらーは焦りながらも、ブロックを削っていく。
わぎゃーん、と喜びの雄たけび。
目的地が近い。クリアーは目前だ。がんばれ、どりらー。
「あっ!」
「ひゃあっ!」
そして、ているず・おぶ・ふぁんたじあへ。
――結論。えっちはいけないけど、いいと思います。
耕太はそんなことを思った。