「・・・うーん、朝か?」  
 
今日は何曜日だ  
土曜、いや金曜日か?  
眠気が頭の回転を鈍くしている  
ベットの中で横になったままぼーっとしていると目の前に黒髪の少女が現れる。  
 
「神山君はやく起きないと遅刻になってしまいますよ」  
 
何か少女が言ったがぼーっとしている頭じゃ何を言っているのかわからない  
 
「神山君、神山君」  
 
少女は俺の体を揺さぶる  
そんなに揺らさないで欲しい、寝ていられない  
俺は少女の手をつかみ、ベットに引きずり込む  
 
「きゃ!か、神山君。な、何?」  
「もう少しだけ・・・・・・眠らして」  
 
そう言って俺は再び目を閉じる  
 
「あ、神山君。テンコさんが来ちゃうか、から」  
 
腕を背中に回し、徐々に抱きしめていく  
少女の髪は柔らかく、甘い匂いがした。  
その甘い毒に侵されて、俺は静かに眠りに堕ちていく・・・・・・  
 
 
 
目を覚ます  
 
目に映る、天井。ここは俺の部屋か。  
寝ぼけた頭で自分のベットを探る。  
 
やっぱり、あれは夢だったのか。  
 
やけにリアルに残る感覚。  
夢であった寂しさと夢であった嬉しさが交じり合ったような奇妙な感覚が俺の中で浮遊している。  
時計を見ると、七時十五分過ぎ、いつもより十五分の寝坊。  
このまま布団の中に居てもいいのだがあいつはそれを許さないだろう。  
しかたなく俺は着替えを済ませ、階段を降りる。  
 
お、おはようございます。か、神山く、君。  
 
階段を降りて出会ったのは黒髪の少女。  
彼女は終始うつむき加減で俺の横を通り過ぎて足早に階段を上っていく。  
 
その時だった。  
 
彼女の通った跡に残されたあの香り、あの甘い毒が俺は再び出会った。  
夢であったはずのあの毒に。  
俺は彼女の方を見て、何も言えなかった。言葉が出ない。  
彼女はふと足を止め、振り返って言った。  
 
明日からは、ちゃんと寝ぼけないで起きてくださいね。  
 
そう言って彼女は笑った。  
無邪気で、真面目で、ただ真っ白な笑顔だった。(ただ彼女は少し赤い顔をしていたかもしれない  
彼女はそのまま階段を上っていったが、俺はそこでただ立ち尽くしていた。  
俺の頭はまだ動きそうに無い。そしてあの毒が身体から抜けることは無いだろう。  
そう。俺は再び?いや、これで三度目か。俺は彼女に三度目の恋をした。  
俺の身体の中に巡る甘い毒が消えるときは、この思いが淡く無くなるときだろう。  
 
 
その時まで、俺は彼女を好きでいたい  
 
 
 
 
 
 
 
おしまい  
 
 

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